
トムウッド|シグネットリングが書き換えた、アクセサリーの境界線
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知ってほしいブランドについてファッションライターが語る連載コラム

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1989年にパリで創業した<フィリップ オーディベール(PHILIPPE AUDIBERT)>のアクセサリーは、身につけた瞬間に気分が変わり、手元や首元に自分らしさが宿る。お守りのような存在とも呼べるかもしれません。今回は彫刻家がつくるアクセサリーという、少し異色の出自を持つこのブランドの魅力を紐解きます。
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創業者フィリップ・オーディベールは、パリのボザール(国立高等美術学校)で学び、彫刻家として活動した後に<フィリップ オーディベール>を立ち上げました。アクセサリーブランドの出発点が彫刻というのは少し意外に聞こえるかもしれませんが、素材への深い理解やメタルの曲線や立体感に宿る独特の存在感に触れると、その背景にすんなり納得がいきます。
以前、ユナイテッドアローズのインタビューで語っていた「ジュエリーには芸術的な精神と社会的な機能性が宿る、という考え方が好きだ」(※1)というデザイナーの言葉通り、<フィリップ オーディベール>のアクセサリーは美しいだけではなく、実用的なだけでもない唯一無二の存在感を放っています。現代アートやモダニズム建築にも通じる美意識と、毎日身につけられる親しみやすさが同居しているからこそ、世代を超えて愛され続けているのだと思います。
ミニマルでありながら、流線型のフォルムと重ねづけしているような2連のデザインが手元に存在感を与えるブレスレット。幅広いスタイリングに馴染むつややかなシルバーが魅力。
現在は、写真家である娘のカミーユ・シュロー・オーディベールと共にコレクションを制作しているとのことで、よりユニセックスで洗練された独自の世界観を毎シーズン作り上げています。また、デザインから製作まで、すべてをパリのアトリエで完結させているのも見逃せないポイント。熟練の職人たちの手によってひとつひとつハンドメイドで仕上げるからこそ生まれる微細な表情の違いが、手元や首元にさりげない温もりを添えてくれます。
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<フィリップ オーディベール>が最初に世界の注目を集めたのは、80年代に発表したエラスティック(ゴム仕様)のカフブレスレットでした。メタルパーツをゴムで連結させることで、彫刻的なボリュームと驚くほどの軽さを両立させた当時の衝撃は、今もなおブランドのシグネチャーとして語り継がれています。
デザインは時代とともにしなやかに変化し、現在のコレクションはより洗練されたミニマルなラインが中心に。真鍮をベースにゴールドやシルバーのコーティングを施し、スワロフスキーのクリスタルなど異素材を組み合わせるなど、そのスタイルは多岐に渡っています。<パコ・ラバンヌ>、<アニエス・ベー>、<カール・ラガーフェルド>といったメゾンとのコラボレーションを重ねてきた実績も、デザイナーとしての信頼の厚さを物語っているといえるでしょう。
二種のチェーンを組み合わせたロングネックレスはゆったりとつけても、チョーカーのように短く留めて後ろに垂らしても◎。いつもの着こなしにバリエーションをプラスしてくれる。
それにしても驚くのは、メンズ・ウィメンズで合わせて200モデル近くのコレクションをシーズンごとに発表しているということ。これだけのラインナップを生み出し続けられるのは、フィリップの尽きない創作欲と、それに応えるアトリエの職人たちによる熟練の賜物といえるでしょう。
そしてそれらの豊富な選択肢があるからこそ、ひとりひとりの個性やその日の気分、なりたい自分にぴったりの一点がきっと見つかる。圧倒的な制作量は、常に時代にフィットしたコレクションを届けるための原動力であり、<フィリップ オーディベール>が幅広い世代から支持され続けている理由でもあるのです。
チェーンの先端にあしらわれた淡水パールのネックレスは、後ろに垂らしてバックシルエットのアクセントにも。前に垂らしてY字シルエットのシャープな印象をプラスするのもおすすめ。
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<フィリップ オーディベール>のアクセサリーを実際に手に取ると、まず感じるのはその軽さです。真鍮をベースにしたメタルパーツは、見た目のボリュームからは想像できないほど肌に馴染み、長時間つけていてもストレスにならない。ゴールドやシルバーのコーティングは上品な光沢がありながらギラつかず、肌の上でやわらかく光を受け止めてくれます。
シーンやスタイルを選ばずにどんな服にも合わせやすく、身につけることで “自分らしさ” を纏うことができる。シンプルなチェーンネックレスひとつとっても、通勤のジャケットスタイルから休日のリラックススタイルまで、自然と馴染みながら、なりたい自分であるためにすっと背中を押してくれるような存在感があります。
表面の仕上げも、つるりと磨き上げたものからマットな質感、テクスチャーを残したものまで多彩で、同じゴールドでもまったく違う表情を見せてくれるのも面白いところ。さらに、手仕事だからこそ生まれる微妙なニュアンスの違いが、ひとつひとつに「自分だけのもの」という感覚を与えてくれます。価格帯も1万円台からとパリ発のブランドとしては手に取りやすく、気負わず日常に取り入れられるのも大きな魅力です。
ブランドを象徴するエラスティックシリーズをモダンにアップデートしたリング。シルバーハートの連なるモチーフが装いに遊び心を加えてくれる。ストレスフリーの着用感も嬉しい。
芸術家親子の手からひとつずつ生まれるアクセサリーは、ひとつで主役になれるし、手持ちのアクセサリーと組み合わせて自分だけのバランスを見つけるのも楽しい。<フィリップ オーディベール>が届けてくれるのは、特別な日のためのものではなく、いつもの日常をほんの少し上機嫌にしてくれる、そんなささやかな高揚感そのものなのだと思います。
( Writer Profile )
ファッションライター
市谷未希子
1989年生まれ。美容師、ファッションメディアの編集者を経て、フリーランスのエディター/ライターとして独立。現在はファッションブランドの広告制作やオウンドメディアのコンテンツ企画、ファッション誌・ウェブメディアでの編集・執筆のほか、映画やカルチャー領域の記事も手掛けるなど、ジャンルを横断して活動中。
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