B&Y

Taku Obata
Artist
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Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham


Published February 26, 2021

Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham

Published February 26, 2021

“ノリ”と“作りこみ”の間の話を現代アーティストの小畑多丘さんとした。ノリだけだともの足りない。だけども作り込みすぎ(キメすぎ)もどこかカタいというかカッコ悪いというか。そのちょうど間に“カッコいい”があると。小畑さんと話をしていると今まで一方向でしか見れていなかった物事をまた違う角度から見ることの大切さを教わる。小畑さんの言葉を借りるのであれば、全てが“対”であるということ。作ると壊す。形と空間。そしてノリと作り込み。今までまったく逆と思っていたものを一緒に考えることで、何か新しい気づきが得られるような気がした。

Q&A with Taku Obata

Q: B-BOY(*ブレイキンするダンサーのこと)のダンスという身体表現や躍動を彫刻作品として表現されているところにオリジナリティを感じますが、小畑さんがやられていることは何アートと呼ばれるものなんですか?

A: 一応現代アートになると思います。

Q: 現代アートとはどんなアートのことを言うのでしょうか?

A: 自分もそんなに詳しくないので、なんと説明していいのか……。木彫だけでなく、絵画的な表現や、最近は磁器も素材として使っています。だから手法自体はすごくシンプルなので、どちらかといえばファインアートに近いかもしれません。モチーフがB-BOYだったりとポップに見えるかもしれないのですが、ものすごくクラシックかつアカデミックなことをやっています。しかも“あえて”やっているというよりも、自分が単に好きなんです。ルーツでもあるので。

Q: 小畑さんは元々ダンサーとして活動されていましたからね。一見、キャラクターっぽく見えますが、かなり綿密に設計された彫刻作品です。身体の重心、ボディバランス、そして腕のねじれなど、よくみるとパーツパーツの細部にまで作りこまれています。

A: そうですね。ダンスをしているなかでこれ自体を彫刻にできないのかな? というところからはじまっています。奇抜な事をやろうということではなくて、自分のダンスのスタイルや形を作っているんです。こうして作りたいテーマがある程度決まっている自分は恵まれていると思います。もちろんいつも作品は面白くしようとはしているので、周りのダンサーや友人からの“いいね!”っていうだけでも物足りない。彫刻作品として、またアート作品としても面白くないといけない。だからまずは自分が納得しないといけないんです。すごい!、いい!、やばい!、とかそういうものを一個に束ねて全部入れているつもりです。

Q: ダンサーが着ている洋服も作品の構成要素における大切な役割を担っていますね。

A: 基本的にはジャージやウィンドブレカー、ハンチングなどをモチーフにした洋服をまとっています。これらは自分が大きな影響を受けた80〜90年代のダンサーファッションで。しかしただこれらの洋服をおしゃれに着飾っているわけではなく、作品全体に水平垂直を入れたり、ねじれを表現したり、と身体の動きだけでは表現できないことを洋服の力を借りて表現しています。そう思うとある意味、ただ心地いい服を着ているわけではなく、身体表現の延長線上にある、つまりファッション的な考え方なのかもしれませんね。

Q: 小畑さんの彫刻作品を見ていて思うことがあります。小畑さんの彫刻作品のお話を聞いていると、肉体的にも時間も要している作品にも関わらず、そうは見えないところです。

A: 僕にとって「かっこいい!」と思えることって、ノリと作りこみの間にあると思っているんです。それはほとんどのことに言えることで、ダンスにしても作り込みすぎるとかたくなるし、ノリだけだと少し物足りない。ノリと作り込みが両方あることが1番カッコいいと思います。だけどもこの両方を入れ込むためには、当然両方ができないとダメです。作り込むところは完璧にしつつ、ノリは自分の感覚を信じる。この両端ができるからこそはじめて成り立つ表現だと思います。

Q: ファッションにおいても“かっこいい”と思えるものは、ダンス同様にノリと作り込みの間のような気がします。ちなみにノリの作品は、小畑さんにとってどんな作品になりますか?

A: 平面作品は完全にノリで作っていますね。なるべく考えずにほぼ感覚だけで。とにかく描いて。描いた線に反応して、描いてまた反応して。描き続けている途中これで終わりってなったら完成。逆に彫刻は絵画の対比にあります。最初にイメージを決めて何百枚とスケッチしてから計画的に作っていくんです。対比ですよ。ノリ⇄作り込み。形⇄空間。削る⇄盛る。こうしてすべてセットとして考えていくと、新しい角度から物事が見えると思います。

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