Text & Edit by Takumi Sato(kontakt)
Photography by Asuka Ito
Published May 18, 2022
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Photography by Asuka Ito
Published May 18, 2022
自由とは徹底した研究と綿密な計画を完璧に調整することで成り立つもの。「今日漫画を描きたいと思ったら漫画を描ける人生が自分にとっての自由」と話すのは文筆家、画家、音楽家、建築家など多才な表現活動を行う坂口恭平さん。職種や業界に捉われることなく、さまざまな分野において幅広い知識や経験をもつ彼はジェネラリスト(万能人)として呼ばれ、日本だけでなくThe New York Timesの一面を飾るなど世界的にも注目されている。そんな彼は自由を手にするため、自身の躁鬱と向き合うことで研ぎ澄まされた感性活かし、思考し、そして試行錯誤を重ねる。その感性は、色彩や着心地といった服選びの話にも。
Shirt, AURALEE for BEAUTY&YOUTH ¥37,400
Shorts, AURALEE for BEAUTY&YOUTH ¥30,800
執筆活動を行っている書斎。毎朝4時に起きて8時まで執筆活動を行う坂口さんは「自然と言葉が溢れてくるんです」と、撮影中も原稿を書いていた。
Shirt, AURALEE for BEAUTY&YOUTH ¥37,400
Shorts, AURALEE for BEAUTY&YOUTH ¥30,800
<AURALEE>別注の半袖シャツとショートパンツ。エネルギッシュなカラーリングだけでなく、希少なギザコットンを使用した繊細な生地から品のよさも感じられる。
Shirt, AURALEE for BEAUTY&YOUTH ¥37,400
Shorts, AURALEE for BEAUTY&YOUTH ¥30,800
哲学や詩の全集、純文学などが多く並ぶ書斎の本棚。「本はじっくり読めないから、その時の気分で開いたページの中から自分に刺さる言葉を見つけるんです」
Shirt, AURALEE for BEAUTY&YOUTH ¥37,400
Shorts, AURALEE for BEAUTY&YOUTH ¥30,800
素材作りからデザインと考える<AURALEE>。二重織の生地は空気を含んだガーゼのようなふっくらとした風合い。また身幅をたっぷりととったシルエットでさらに快適に。
リビングルームには、海にポツンと浮かぶ一隻の船が描かれた大きなパステル画(右手前)やその横には最近購入したばかりのチェロ。
Shorts, AURALEE for BEAUTY&YOUTH ¥30,800
100年以上前からある熊本市内の建物の一角にあるmuseum 坂口恭平美術館。撮影を行った日には「いのっちの電話」を通じて知り合った写真家の作品が展示されていた。
1978年熊本生まれの建築家、画家、音楽家など。写真集には『0円ハウス』(リトルモア)。著書には『TOKYO0円ハウス0円生活』(河出文庫)、『隅田川のエジソン』(幻冬舎文庫)、『TOKYO一坪遺産』(春秋社)、『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(太田出版)などがある。また来年には熊本市現代美術館で個展を開催する予定。
Interview with Kyohei Sakaguchi
Q:よく今回のオファー受けていただきましたね。
A:いや、たまたまちょっと前に娘の買い物に付き合って南青山にあるAURALEEの直営店にいて。そのときにマドラスチェックの服を見ていて、いいなぁ〜と思っていたんです。本当にその2-3日後に連絡をもらって。逆にすごいタイミングで。
Q:「ギャラはいらないから服もらってもいいですか?」と言ってくださりましたね(笑)。このような洋服を着ての撮影ってあまりされていないですよね?
A:自分は躁鬱だから約束事が苦手で。それにファッションの撮影となると、ある程度たくさんの人が関わっているし、そんな人たちの都合を考えると、いつ鬱になるか分からない自分が大きな迷惑をかけてしまうかも分からないので。
Q:今はどのような状態ですか?
A:最近は調子がいい。今までは月に5日間ぐらいは鬱になることがあったんだけど、最近はその状態になることもなくなってきて。ちょっとずつ解決の道を見つけてきたというか。
Q:打ち合わせのときにも感じたのですが、坂口さんご自身が着るものに何か特別なこだわりがあるように感じます。例えば色。今回のマドラスチェックもですが、発色のいいブルーのシャツや、ご自身で編んだ真っ赤なニットも。
A:単純にそうなるんですよね。なんでかっていうと、鬱の時は色々なものがグレーにしか見えなくて。正確に言うとグレースケール。赤いものでも赤っぽいグレーに見えたり。色だけでなく、輪郭もぼやけて見える。だから鬱の時は、自分が着るものもある種グレーっぽいことが多かったり。家族も自分の洋服を見れば、今自分がどういう状態なのか分かるぐらい。
Q:鬱状態から、躁の状態にいくと洋服も変わるわけですね。
A:輪郭やエッジが綺麗に見えるし、色も粒子が飛んでくるように、めちゃくちゃ細部まで見えるようになる。すると色に対しての感情も沸いてくるので、選ぶ服、着る服が全然変わるんだと思います。鬱の時は服を着てなにかしようとかは思わない。服を着ることは当たり前のことなのかもしれないけど、服を選んで着るっていうのは、やっぱりちょっと特別なもの。強いていうなら、鳥のオスが求愛行動する時みたいな感じに近いのかもしれない。
Q:実際今回着ていただいているAURALEEは、色を出すのにも何度も工場とやりとりをしていると聞きます。
A:伝わってきますよね。このシャツの白も、白っぽいんだけど白じゃないし。この緑もパキパキのグリーンではなく、くすんだグリーンだったり。自然の色なんですよね。自分が最近パステルで描いた海と山の風景画があるんだけど、このマドラスチェックに使われている色とほとんど同じで。
Q:坂口さんご自身の服もいくつか見せてもらいましたが、生地だけでなく着心地の良さも選ぶ上で大切にしているのかなと思いました。
A:仕立てのいい服は気持ちいいですよ。
Q:仕立てがいい服とは?
A:自分が動きたいように動ける服ですね。それはアクションするきっかけをどんどん作ってくれるものです。
Q:今回の取材でも、チェロからサックスからドラム、それに畑仕事と縦横無尽に動いていましたからね。
A:服を使って動くっていうよりか、服の中で動ける方の気持ちよさが大事で。すると、振る舞いが生まれる。色も色で大事なんだけど色はどっちかっていうと、自分の振る舞いっていうよりかは見えないものに影響を与えてくれるもの。自分の感性の幅を広げてくれるものというか。さらに色に加えて仕立てが活かされてると、いい感じにその振る舞いに反応してくれる。だから突拍子もない服よりも、色が気持ちいいとか、仕立てがいいから動きやすい方が全然大切で。仕立てがいい服を着ると動きが変わるよね。
PEOPLEはBEAUTY&YOUTHが大切にする“美しさ”と“若さ”の両方を持つオトナたちを紹介するメディアです。ときに知的で、ときに無邪気で、ときにラフで。年齢や職業にとらわれることなく、美しさと若さをまとうことが生活を豊かにするというファッションの本質を伝えます。