B&Y

Kosuke & Yuka Yamato
DILL eat, life.
オーバーオール

Text Mikiya Matsushita
Photography Naoto Usami


Published August 20, 2021

Text Mikiya Matsushita
Photography Naoto Usami

Published August 20, 2021

東京から車を2時間走らせた先にDILL eat, life.は店を構える。山梨県北杜市八ヶ岳の山麓は東京がまだ、猛暑であるにも関わらず、秋の訪れを感じさせるような、涼しく気持ちの良い青空だった。9年前に東京を離れこの地にレストランをオープンさせたのは山戸浩介さんとユカさん。季節の野菜やローカル食材を使った料理を振る舞いながら、休日にはクライミングや登山、冬にはスキーやスノーボードなど自然と向き合い遊ぶように生活している。自然に囲まれた土地で暮らすコトや昨今の食に対する意識について聞いていると、話の節々で「当たり前だったはずなんだけどね。」と、私たちが日々、生活する中で忘れてしまっていた大切なコトをリマインドしてくれる。特別なことをするわけではなく、今あるモノや隣にいるヒトに感謝しながら毎日を過ごす。二人が教えてくれたのは豊かな生活を送るためのシンプルな思考。忙しなく出来事が起こり、時間が移ろう毎日を過ごすことで感じ取れていなかった、本来そこにあるモノがすっと身体に入りこんでくるような感覚がした。

Overall, UNIVERSAL OVERALL×BEAUTY&YOUTH, Olive ¥14,300

地元の生産者が作る有機野菜や平飼いの卵など、DILLでは新鮮かつ季節の料理を楽しむことができる。

八ヶ岳と南アルプスの麓に位置し、豊かな自然と水に恵まれた、山梨県北杜市にレストランはある。

休日の昼食を作る山戸夫妻。料理担当はユカさん、野菜の下処理や盛り付けは浩介さんの仕事。

Overall, UNIVERSAL OVERALL×BEAUTY&YOUTH, Beige ¥14,300

1960〜80年代のクライミングカルチャーにも造詣が深く、自身も趣味でクライミングを続ける浩介さん。テラスにはトレーニング用のクライミングホールドがちらほら。

Overall, UNIVERSAL OVERALL×BEAUTY&YOUTH, Black/Olive/Beige ¥14,300

<UNIVERSAL OVERALL>の代名詞を元に<BEAUTY&YOUTH>が別注したオーバーオールは街中でもアウトドアでも洗練された雰囲気で着用できる、ブラック、ベージュ、オリーブの3色展開。

「アウトドアと料理と音楽は一生付き合っていくものだと思います」と、かつてレコード輸入・卸の会社に勤務していた浩介さん。

撮影の日、東京は猛暑、一方北杜市は湿気もなく心地いい天気だった。「まるでカリフォルニアのようでしょ」と浩介さん。

Overall, UNIVERSAL OVERALL×BEAUTY&YOUTH, Beige ¥14,300

豊かな自然と共生する術を培い、共生する喜びを実感した山戸夫妻。衣服選びに関してもガラッと変化したという。

Overall, UNIVERSAL OVERALL×BEAUTY&YOUTH, Olive ¥14,300

庭で見つけた鹿のツノを使った手作りのオーナメント。物干し竿も木の枝を使用。「普段、作業用にしか着ることのないオーバーオールを日常に着ることは新鮮です」と浩介さん。幅広いシーンで着用できるように胸ポケットやツールポケットを排除。その代わりに胸元まであるジップを配することで着脱も楽な仕様に。

Kosuke-san wears: Overall, UNIVERSAL OVERALL×BEAUTY&YOUTH, Beige ¥14,300
Yuka-san wears: Overall, UNIVERSAL OVERALL×BEAUTY&YOUTH, Olive ¥14,300

全体的にスッキリとしたシルエットにアップデートし、素材は綿100%のオックス素材を使用。「着心地も良いし、肩も凝らなそうです。」とユカさん。

ブランケットにバーナー、コーヒー豆とお湯を大きなトートバックに詰め、「ちょっとコーヒーを飲みに」と向かったのは、近くの森。

食を中心とした山での暮らしや遊び方を提案するDILL。二人の趣味から、「山でも美味しいご飯」をコンセプトに生まれたのがザ・スモールツイストと呼ばれるトレイルフード。ハイカーたちに大人気だ。

Q&A with Kosuke & Yuka Yamato(DILL eat, life.)

Q:東京を離れ、ここ八ヶ岳の山麓でDILL eat, life.をオープンした経緯を教えてください。

Yuka:料理家として活動していて、お店を持つことが若い頃からの夢でした。生まれも育ちも東京なので、東京で出店することしか考えていなかったんですが、アウトドアスポーツをはじめて、休みのたびに郊外や地方の海や山に行って、仕事のために帰るといった生活をしてたんです。そんなときに、東日本大震災がありました。東京には様々な刺激もあるし、多様な文化もある。でも災害が起きたときに自分の身を自分で守ることが困難であることを知ったんです。知っているつもりではいましたが、水や電気、ガスがないと生きていくことが難しい場所であることに改めて気付かされたんですね。

Kosuke:移住を決断した際、今もそうですが、クライミングや登山に熱中していて、住むなら山の近くが良いと思っていたんです。妻の両親が20数年前に八ヶ岳に移住し、既にベースがあったので、ここにしました。

Q:今回の取材では、お二人の仕事だけでなく、日常生活もお見せいただきました。今もお二人がよく散歩に来るという森でお話を伺っています。こういった生活をしていて幸せの基準が上がってしまいませんか?

Kosuke:そんなに難しく考えたことはないですね。でも日々の生活には満足しています。若い頃は、レコード輸入・卸の会社のデザイン部署で働いていたので昼夜が逆転した生活を送っていました。でもここは、いわゆる田舎なので、暗くなったら寝るし、太陽が上がったら起きる。農家さんもそうですけど、そういうことがありがたいなと思うようになったんです。暮らしの中でやらなくてはいけない仕事ってたくさんあるんです。冬に備えて薪を割ることだったり、畑作業だったり、草刈りだったり。コロナ禍で外出することが難しい時でも、そういうことをしているとわざわざ遠くへ行かなくても、1日が充実するんです。特別なことをしているわけではないんですけどね。

Q:忙しくしていると一日の時間の流れ、ひどい時は四季さえを感じることがないときがあります。

Kosuke:私たちも元々はそうでしたが、ここにきてからは暮らしの中に四季をすごく意識するようになりました。空の色や雲の形でさえ、季節を感じることはできるんです。空気の匂いもそうですよね。ここは昨日から秋になりました。秋の八ヶ岳は、カリフォルニアのように湿度が低くて過ごしやすいんです。

Q:体に良いものを食べるという提案は移住してから始めたことですか?

Yuka:東京にいた頃からです。母がもともと添加物の含むものをなるべく食べさせないという考えを持っていたんです。私たちの世代は化学調味料が市場に並びはじめた世代なんですが、それに母は抵抗を持っていました。なので、お味噌汁を作る時も、鰹節を削って出汁を取ってくれていましたし、ずっとその味で育ったので、大人になるまで化学調味料の存在も知りませんでした。母の影響は大きいですね。

Q:化学調味料の存在を知った後も、使おうとは思わなかったんですね。

Yuka:本物の美味しさを知っていたので……。現在は食が二極化してしまっているように思います。スーパーマーケットの棚を見れば、インスタント食品だらけですよね。そういうので良いっていう人が大半で、その数は昔よりも増えていると思うんです。でも一方でオーガニックで安全なものを食べたいって人も増えてきています。ある一定数いますが、それでもまだ少数です。私は料理をすることが好きなので、インスタントで良いと思っている方たちに対して、「こういう料理もいいよ」っていう提案がもっとできたらと思っています。

Q:今日ご馳走してもらった野菜も美味しかったです。

Kosuke:美味しい野菜だったら大した調理しなくても、美味しいんですよ。DILLで使っている野菜は、農薬も化学肥料も一切使用せず、植物そのものの力と農家さんの手助けで美味しくなっているんです。

Q:美味しいし、体にも環境にもいいんですね。ちゃんと考えれば分かるはずなのに、新しい考え方のようにさえ感じてしまいます。

Kosuke:自分の食べているモノが、自分の血となり骨となり肉になっていくんですよね。食べたものでしか自分の肉体って出来ていないんです。そして肉体と精神のバランスが取れて初めて健康でいられますから。それをもっと広めていかないといけないなぁと。当たり前ですが、忘れがちなんですよね。

Q:お二人の考えるBEAUTY&YOUTH(美しさと若さ)について聞かせてください。

Yuka:歳を重ねていくと、その人がどう生活してきたかが、滲み出ると思うんです。どんなに肌が綺麗だったり、スタイルが良くても年に対しての違和感を感じる内面と外見のギャップがある人にはなりたくないんです。私は日々の暮らしや自分の周りにいてくれる人、全てのことに感謝していきたいなとずっと思っているんですね。その周りにいるのが世界中の人だったら良いけれど、自分が守れるのは、手の届く範囲の人だけなので、その人たちに愛情を注いで、共に生きていくことが美しさとして出てくるのではないかと私は思います。

Kosuke:若さは自分の好きなものを追求する姿勢だと思います。僕の場合はそれがクライミングや山登り、あとは音楽なんです。それを楽しむために体づくりをしたり、精神を養っておくと、たとえ年齢を重ねても対応できるんですよね。見た目だけでなく、若さっていうのは、好きなものを夢中になって語れることだと思います。

Q:今日着る洋服を選んでいただく際、生活が変わり洋服に道具としての役割を求めるようになったとおっしゃっていました。

Kosuke:作業やアウトドアをする際には、見た目よりも機能などの、必要な要素がたくさんあります。ただファッションという考え方をしたときに必要なことは、自分の気分がアガるかどうかが大前提だと思っています。僕の場合は素材とか縫製とか、見た目だけではない部分に惹かれます。歴史やどういうコンセプトで、どういう人たちが作っているのかを掘り下げれば、一つの商品から学べることはいくらでもあります。作っている側がどういう思いで作っているのか。僕らは食べ物をサーブしていますが、同じことのように共感できるんです。そういう人達の作るものは良いなと思いますし、それを知ることが自分にとっては大切だったりします。

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