Ben Davis
Editor & Researcher
バスクシャツ
Text Mikiya Matsushita
Photography Yuki Hori
Published September 17, 2021

Text Mikiya Matsushita
Photography Yuki Hori
Published September 17, 2021
自身の活動をまとめたプラットフォーム「The White Paper」では日本の伝統的なモノづくりをテーマに上質なジャーナルを発行し、雑誌やWEBメディアといった様々な媒体では地域文化やサスティナビリティへの知見でコンテンツを制作する編集者、リサーチャーのベン・デイビスさん。小さくとも価値ある物事や人々を求め、取材を続ける彼の口から多く出たのは「視点」という言葉だった。町工場で代々伝わる技術を受け継ぐ職人たちや新たなものを生み出すアーティストたちの視点とそれを観察し、原点に何があるのかを紐解いていく自らの視点。目の前に置かれたオブジェクトがいかにしてその状態に至るのか。作り手の頭の中を丁寧に、そして時間をかけて探るのが彼のワークスタイルである。「物事の最初と最後を評価するのは流行でも著名人の言葉でもなく自分の目です」。そう言い切れるのは、きっと彼が自らの身体を使い、興味の矛先を探求してきた自信から生まれるのだろう。


Basque shirt, Brown, Le Minor × BEAUTY&YOUTH ¥14,300
ベンさんの事務所はシンプルなワンルームながらも、<ポスタルコ>のメモパッドや<ハウトゥラップ>の置き物など、ベンさんのものづくりに対する興味が伺えるものが並んでいた。


Basque shirt, Navy, Le Minor × BEAUTY&YOUTH ¥14,300
Pants, Navy, Meme ¥14,300
「近くに住む人々の日常が観察できる公園という場所は私のお気に入りです」とベンさん。普段から仕事の合間に人間観察とリラックスを兼ねて公園に足を運ぶ。

Basque shirt, Navy, Le Minor × BEAUTY&YOUTH ¥14,300
Pants, Navy, Meme ¥14,300
ベンさんの愛車は<トウキョウバイク>のモノ。<トウキョウバイク>のオウンドメディアである「Aspect」にはベンさんが企画及び、ライティングしたコンテンツが掲載されている。


Basque shirt, Navy, Le Minor × BEAUTY&YOUTH ¥14,300
真剣にモノを見つめ観察するベンさん。物事に対する「視点」を大事にする彼の目には優しさの中に鋭さを感じた。

サスティナビリティへの知見や環境問題への意識も強いベンさんは、持ち物こそ多く無いものの、長い時間をかけて大切に使われていることが伝わるモノを使用していた。


Basque shirt, Brown, Le Minor × BEAUTY&YOUTH ¥14,300
1936年、フランス・ブリュターニュ地方、ロリアンで創業された<ルミノア>。天然素材をベースに「本物の良さ」を最も大切にした物作りを行い、快適な素材やディテールへのこだわりを追求している。


Basque shirt, Royal Blue, Le Minor × BEAUTY&YOUTH ¥14,300
Pants, Navy, BEAUTY&YOUTH ¥14,300
<ルミノア>に<ビューティ&ユース>が別注した今作は、定番のバスクシャツをベースにサイズをオーバーサイズに変更。一枚で着用しても様になるデザイン。


沖縄の伝統技術である首里織を受け継ぐ3人の織り手の作品をまとめた「四角い布」はベンさんが実際に沖縄まで赴き、取材とライティングを担当した。

Basque shirt, Navy/White, Le Minor × BEAUTY&YOUTH ¥14,300
袖に付く<ルミノア>のタグもサイズを一回り大きくアップデート。生地の生産から縫製まで、全ての工程をフランスの自社工場で行いそのクオリティの高さはフランス海軍に配給されるほど。

鋭い眼差しでモノを観察するリサーチの最中とは裏腹に、普段は素敵な笑顔と柔らかい人柄が魅力的なベンさん。「これからも、モノづくりと地域文化という私の興味の軸であるこの二つは変わることがないでしょう」と語った。
Interview with Ben Davis
Q:ベンさんは、ご自身のプラットフォームである「The White Paper」にてモノづくりや地域文化をメインテーマにコンテンツを制作しています。まず、肩書きのひとつでもあるリサーチャーという仕事について教えてください。
A:コンテンツ制作を含め、何かのプロジェクトを行う際、すでに完成しているものをアレンジして世に出すだけでなく、そのものの原点や背景を理解するためにリサーチからはじまります。そのリサーチで探り出した要素こそが重要なインプットです。私の場合、新しいホテル、ブランドや商品の開発に関わる機会もあり、地域やものの特定した背景についてもリサーチしています。
Q:コンテンツを作る仕事をする人たちは多くの場合、自身のことを編集者やライターと名乗りますが、あえてリサーチャーと名乗るのはなぜでしょうか。
A:私の活動を考えると、自分にはぴったりハマる肩書きがありませんでした。主な仕事である「編集する」ことと「リサーチする」こと、編集者とリサーチャーは私の中では別々の役割ではなく、自分にとって深く絡み合っているような気がします。ですので、リサーチャーという肩書きを加えました。
Q:オフの日はどんな過ごしかたを?
A:休みの日や仕事の合間にリラックスするため、今日の撮影と同じように、自転車に乗って、公園に行って考え事したり、バスケをしている子供たちを眺めたり。感染症の影響もあって街で人々の観察ができなくなっていますが、公園という街の人が集まる場所で人間観察すると気分が変わります。
Q:出身地を離れ、日本で活動しようと思ったきっかけはありますか?
A:オーストラリアのメルボルンに住んでいた頃は、サスティナビリティコンサルティングの仕事をしていました。その仕事で街づくりや都市計画、地域創生という分野に出会ったんです。でもそういう仕事をしているのに毎日PCに向かって仕事をしていることに疑問を持つようになりました。サスティナビリティのこと、自分自身で体験しながら学びたいと思い、元々興味があった、日本に行く事を決めました。
Q:今も「The White Paper」含め、モノづくりや地域文化、場所とヒトの関係に関する仕事が多いですよね。
A:日本に来たばかりの頃、自分の目でさまざまなものを見たいと思い、自然の多い田舎に訪れて半年ほど、住み込んで農業をやらせてもらいました。その時に、土地ごとの地域性や伝統がすごく面白く感じたんです。その後、東京でも同じことを思いました。東京は大きなひとつの都市ですが、エリアごとに特徴が大きく変わります。街の景観も住む人達も街によって全く違いますよね。その多様性に惹かれたんです。
Q:東京の小さな町工場にもよく取材に訪れていますよね。
A:どんな地域でも、職人の方々の話からはいつも新たな視点を感じます。その土地の素材を使ったり、伝統的な技法を代々守り継いでいたりと、その人たちのその土地に対する視点や考え方が新鮮でした。その地域にどんな素材があり、歴史があるか。それによってモノを作る感覚が私にとっては新しかったんです。
Q:完成したものがどういった経緯を経て出来上がるのか。先ほどもおっしゃっていたベンさんのリサーチの根底にある興味ですね。
A:そうです。もちろん完成したプロダクトの繊細さにはいつも尊敬していますが、それよりも作り手が何を見て何を考え、その果てにどういうものが完成するのか。それ知るための取材はこれからも続いていくと思います。
Q:大衆的なものへの興味もありますか?
A: 誰かにアプローチする際には、自分の目で見て判断します。他の人や流行に合わせて行動すると、考えも流行と同じようになってしまうと思うんです。なので大きな賞を取ったから、話題になっているから話を聞きに行くということはありませんね。もちろん興味がないわけではありませんが、最初と最後のフィルターは自分自身じゃないといけないと思っています。
Q:一回取材した職人さんたちとは、取材後も親交を続けるとおっしゃっていましたね。
A:物事を深く追求するのが好きなので、取材して原稿にして、そこでその人への興味がなくなることはありません。その後も仕事と関係なく、連絡を取ったり、会いに行ったりもします。今はまだ出来ていませんがスローメディアに挑戦したいと思っています。一人を長い時間かけてゆっくり取材してみたいですね。僕の取材テーマは一目見ただけではわかりづらいものなので、探り出すのには時間が必要なんです。
Q:そこまで多くの時間を使ってベンさんが世に発信したいこととはなんですか?
A:リサーチの過程で価値があるのに多くの人に知られていない職人さんや技術に沢山出会いました。その人たちのやっていることの価値が失われないように、世に発信することをある種自分の使命のように感じています。