B&Y

Terry Ito
Director
アウターウェア

Text & Edit Mikiya Matsushita (kontakt)
Photography Asuka Ito


Published February 16, 2022

Text & Edit Mikiya Matsushita (kontakt)
Photography Asuka Ito

Published February 16, 2022

「笑えないと意味がない」はっきりとそう言い切ってしまったかと思えば、その次には「すごいね、えらいね」と人の些細な良いところを見つけては褒める。数十年という長いあいだ、テレビをフィールドに奇想天外なアイデアでいとも簡単に多くのタブーを覆してきた、演出家のテリー伊藤さんはそんな人だった。撮影日、自身の住む海沿いの街に現れた彼のコーディネートは言葉通り、私たちをアッと言わせた。見たこともない生地のボトムスに、見たことのない色合わせ。ファッションは自由で楽しくて、面白いモノ。着飾るのは誰かのためではなく自分のために。そうして生まれる“テリースタイル”はときに見た人を元気付け、忘れられかけていたファッションの力を思い出させてくれる。

Cardigan, Beige, SON OF THE CHEESE × BEAUTY&YOUTH ¥19,800
Shirt, Dark Green, BEAUTY&YOUTH ¥11,990

撮影を敢行したのは、テリーさんが住む七里ヶ浜。通りがかりの人に対しても「おしゃれなジャケットだね」とフレンドリーに話しかける。

写真上 Jacket, Navy, blurhms × BEAUTY&YOUTH ¥53,900
写真下 Blouson, Kelly, UNUSED × BEAUTY&YOUTH ¥40,700

私物をメインに数パターンのコーディネートを組んでくれたテリーさん。ピンクのフリルシャツやシルバーがあしらわれたエスニック調のボトムスなどテリーさんらしい癖のあるアイテムが映えるスタイリングだった。

<UNUSED×BEAUTY&YOUTH>のブルゾンに合わせたのは、ハンドペイントで牛が描かれた50sのヴィンテージタイ。ブルゾンにネクタイを合わせるのは、テリーさんならではのスタイリング。

朝から約2時間かけて鎌倉を散歩するのがテリーさんの日課。住んでいるからこそ知る馴染みのお店を紹介してくれた。

Cardigan, Beige, SON OF THE CHEESE × BEAUTY&YOUTH ¥19,800
Shirt, Dark Green, BEAUTY&YOUTH ¥11,990

<SON OF THE CHEESE>に<BEAUTY&YOUTH>が別注したのは、チルデンニットをベースにしたスクールカーディガン。アイビーな雰囲気がありながらも、要素を減らしミニマルにすることで大人にもよく馴染む。

写真上 Blouson, Kelly, UNUSED × BEAUTY&YOUTH ¥40,700
写真下 Jacket, Navy, blurhms × BEAUTY&YOUTH ¥53,900

「昔もジャケットやブルゾンはあったけど、サイズ感も着方も変わった。今は今のスタイリングができて楽しいよね」とテリーさん。

Blouson, Kelly, UNUSED × BEAUTY&YOUTH ¥40,700

<UNUSED>に<BEAUTY&YOUTH>が別注したブルゾンは、襟やウエストなど細かなデイテールを変更。トラッドな装いとも相性がいいタータンチェック柄。

「ストレスを感じることの多い現代で、海や花などをゆっくり見る時間はとても大切」と七里ヶ浜の浜辺を散歩しながら話してくれたテリーさん。

Jacket, Navy, blurhms × BEAUTY&YOUTH ¥53,900

<blurhms>のカーディガンジャケットをベースに別注したラフに羽織れるジャケット。ノーボタンの前タテにワイドなシルエット、ネイビーの深い色合いは幅広いスタイリングで楽しめる。

Jacket, Navy, blurhms × BEAUTY&YOUTH ¥53,900

行きつけのカフェ「Re:cha」に案内してくれたテリーさん。パワフルな人柄と他に類を見ないスタイルはこれからも多くの人々を魅了し続ける。

Interview with Terry Ito


Q: 色鮮やかで独創的、まさに“テリースタイル”のファッションを貫くテリーさんの根底にはトラッドやアイビーといったスタイルがあるとお伺いしました。そういったファッションが日本に入ってきた時のことを覚えていますか?

A: もちろん覚えていますよ。それはもう衝撃的でした。まだ学生服しかなかった時代に、コインローファーを初めて見た時の驚きや大人がハーフパンツを履いているのを見た時の興奮は忘れません。素直に面白いと思ったし、こんなに自由で良いんだと思いました。それまでの日本といえば、夏は白いシャツ、冬は黒いコートが常識の時代で。そこにファッションが入ってきて、日本がモノクロからカラーになったと、とてもわくわくしました。

Q: ファッションが日本に入ってくるのを目の当たりにしたその後、どのように今のようなオリジナルのスタイルを確立していったのでしょうか?

A: 僕が洋服にどっぷり浸かった60年代は今みたいに選択肢なんていうのはほとんどなくて。最初はあるものに必死に食いついたんです。たとえばアイビーやトラッドを始めとするアメリカンファッションを日本に持ち込んだVANには毎日のように通って、そこでファッションのルールのようなものを知ったり、イギリスの写真集を読みあさってこんなスタイルがあるのかと真似したりもしました。でもある時に思ったんです。ルールに縛られたり、何かに憧れたりするのはやめようと。人がやってないことをしない限り面白くはなれないと思ったんです。

Q: 面白いか、面白くないか。

A: みんながやらない事をやるというのが僕の考え方の根っこにあるものです。それは自分が演出家だから自然と行き着いた、ある種の職業病のようなものかもしれません。誰かが既にやっていることをしても人は笑ってくれないし、楽しんでくれない。だから誰もやっていない事をするわけです。演出とファッションはとても似ています。コーディネートを組むとき、考えるのは笑えるか、そして楽しいか。本当にそれだけなんです。

Q :「自分には似合わない」、その考えが洋服選びを制限してしまうこともありますよね。

A :ファッションはやった者勝ちです。「似合う、似合わない」とよく言うけど、僕はあれをウソだと思っています。帽子だって被った者勝ち、色は使った者勝ちですよ。少しでも気になるならまずは着てみないと。夏物と冬物を同時に着たっていいと思うんです。サマージャケットとツイードのように。ルールなんてあるようでないんだから、壊してしまえばいい。もっとやりたいように自由にファッションを楽しめば良いんです。

Q :いわゆるラグジュアリーな洋服だけでなく、デザイナーズや古着などさまざまな洋服をミックスできるのは、「面白さ」を軸にしたテリーさんならではのフラットな視点があってこそだと思います。

A :お金をかけることだけがファッションじゃないと思っています。もちろん高い洋服を着てみる経験も大切だけど、所有して満足してしまったらそれはもったいない。値段や誰かの評価にとらわれず想像することこそがもっとも大切だと僕は思います。

Q :ファッションとは想像力であると。

A :この洋服を買ったらこんなところに行きたいとか、こんな自分になれるだろうとか、それって想像力ですよね。家を買うときにモデルハウスにいくのもそうです。ここに住んだらどういうことをしようとか。そんな想像力を持たせてくれるのがファッションだと思います。例えば、コートひとつ買っただけでも、パリジャンみたいになれそうだなとか、セーターを買ったらインテリジェンスに見えるかなとか。そんなことを考えるのがすごく大切だと思うんです。自分の中の妄想や夢を思い出せてくれる。ファッションにはそんなパワーがありますよね。今こういう時期だからこそ、ファッションの力を信じるべきかもしれません。

Q :お話の中で「ときめき」という言葉がよく出てきますが、最近は何にときめいていますか?

A :洋服はもちろんそうだけど、花なんかもそうですよね。花を見てきれいだって思うのって決して当たり前じゃなくて、それを感じ取るための心の余裕がないといけない。ときめきもそう、身の回りに実はたくさんときめかせてくれるものはあるけれど、それを感じ取る余裕がないと見逃してしまうんです。

Q :テリーさんとお話しをさせていただいて思ったのは、変化していくことに対して肯定的だということです。

A :今の方がいいに決まっています。(笑) ファッションにしたって昔は選べるほどモノがありませんでした。どうしても人と違う物が欲しくてそれを見つけるのにたくさん苦労しましたよ。それが無駄だったとは思わないけれど、今はたくさんの選択肢がありますよね。それはとてもいいことだと思いますし、羨ましくも思います。

Q :悲観的に物事を見ないというのは、テリーさんの考え方に一貫してありますよね。

A :どんなに大変なときでも楽しいことを考える。そっちの方が楽しいよね。ビューティフルライフって映画があるけど、あの映画のお父さんはモノの見方ひとつで自分たちの置かれた状況を一変させていた。考え方ひとつで人間は不幸にもなれるし、幸せにもなれるんです。

Q :最近は舞台衣装なんかも買っているとか。

A :笑えるデザインが多いんですよ。それに僕は着たい服着ないと死んでしまうんです。これは大袈裟でなく、ずっとそうしてきたので。

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