Text & Edit Takumi Sato (kontakt)
Photography Asuka Ito
Published March 2, 2022
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Photography Asuka Ito
Published March 2, 2022
デビューしてから約12年。これまでにインドネシアや台湾、ロサンゼルスなどでライブを行い、今では日本のインディー・ロックシーンの中枢として欠かせない存在になっているロックバンド「ミツメ」。このバンドのメインボーカル・ギターをつとめ、ほとんどの楽曲の作詞を手掛けるのが川辺 素さん。彼の多才ぶりは音楽にとどまることなく、文学や映画への知見を活かし、雑誌などに寄稿も。マルチな活躍をする川辺さんが大切にし続けること、それは“余白”。感情の余白、考える余白。例えば、ミツメが曲の意図を前面に出さないことにもつながる。意外にもそんな“ミツメ”らしさが、ファッションにも通じる話に。
メンバーとのミーティングで使用するアトリエ兼事務所。
Coverall, Off White/Light Blue, Needles × BEAUTY&YOUTH ¥28,600
自宅の作業スペース。南向きの窓からたっぷりと自然光が入る。川辺さんが着用している<BEAUTY&YOUTH>別注の<Needles>のカバーオールは、シャツのような軽やかな着心地。
175cmの川辺さんはLサイズを着用。オーバーサイズすぎず、タイトすぎない。ちょうどいいリラクシングなシルエットのカバーオールは持ち合わせのパンツとの相性も◎。
Coverall, Off White/Light Blue, Needles × BEAUTY&YOUTH ¥28,600
作業着がルーツにあるカバーオールだが、目の詰まった生地感やスナップボタンを使用したことで、都会的な品のよさを醸し出している。
Coverall, Off White/Light Blue, Needles × BEAUTY&YOUTH ¥28,600
川辺さんのようにシャツやセーターの上に着る春の羽織りものとして活躍するカバーオール。
「もしかしたら日常に起こってもおかしくないかもなっていうぐらいのSFのような非現実感が好きです」と語る川辺さん。偶然なにかが起こりそうなワクワク感を掻き立てる歌詞に魅了されるファンも多い。
Interview with Moto Kawabe
Q: 中学、高校ともにバンド活動をしていたと伺いましたが、ソロではなくバンドを組もうと思ったきっかけを教えてください。
A: 子供の頃に聞いていた音楽の影響ですかね。かっこいいなって思うのがスピッツとか基本バンドが多くて、『みんなで演奏する』っていいなと。昔ピアノを習っていたこともあったんですが、一人で練習することがあまり好きじゃなかったんですね。グループ演奏と独奏の発表会があった時に、グループ演奏だったらあまり練習しなくてもバレないし、みんなで演奏しているほうが気楽だなって……(笑)。一人だと緊張しちゃいますし、みんなでやるとなんかまとまりがあっていい感じになるなってその頃からぼんやりと思っていました。
Q: そのほかに複数名でやるメリットはどこにありますか?
A: バンドでやることで、どこかでエゴを通せないことがあります。それは結果的に自分が狙いすましたものではなくなるけど、いい形になることが多いんです。それに、“一人でやる”っていうのは、いつでもできてしまうことだとも思っています。だからこそ、みんなでやらないとできないものを作りたいんです。
Q: ひとりでは生まれない意外性があると。自分らしさを失ってしまうと危惧することはないんでしょうか?
A: 僕個人は作ったものが自分的に納得いけばなんでもいいと思ってます。でもメンバーにもそれぞれの好みや意見があってバンドが形成されているので、大きくいつものミツメの感じから外れることは少ないです。自分にとって冒険したと思っていても結果的にバンドで演奏することによって「ミツメ」という形になっている。特にミツメというバンドには、プロデューサーもリーダーも不在。基本的には4人で物事を決定していく。劇的な変化をもたらせることは難しい部分もありますけど、バンドとしての軸はブレることなく自然と同じスタイルになりやすいのかなって思っています。
Q: 音楽を自己表現のツールのひとつとして考えていますか?
A: 表現方法というよりも、みんなおそらく体験したことがあると思うんですが、音楽を聞いていて『うわっー、めっちゃ気持ちいい』っていう瞬間を。そうした音楽を作りたいっていう気持ちが前提にあります。そんな感情を引き起こすような音楽をもっと“自分好み”に作りたいと思ったことが、曲を作るきっかけにあります。言いたいことがない訳ではなかったけど、積極的に人にこういうことを伝えたいというものがない……。だから何を表現しようとか、歌詞のメッセージ性に悩むこともありますね。
Q: 意図のない歌詞もある?
A: あまり狙いすぎないことを大切にしています。意図を前面に出しすぎてしまうと、それだけで「こういうイメージなんです」っていうのを聴く人に植え付けてしまうので。つまり余白の部分ですね。音楽って聴く場所や時間、自分の状態によって、全く違って聞こえたりもする。例えば、ある曲のフレーズをクラブで聴くことに意味があるとか。自分自身、最近はそういうものの良さが分かってすごく楽しめるようになってきてますが、でも作る上で僕が目指してきたのは、いつどんな気持ちで聞いてもニュートラルにいいと思えるような曲。曲自体にそこまで熱いメッセージがなく、聴いてくれる人の気持ちが乗る余裕があることがいいなと思っています。
Q: まるで洋服の話を聞いているようでした。川辺さんが考えるファッションと音楽に共通するところはなんだと思いますか?
A: 洋服好きの友達と洋服の話をするんです。彼は結構昔作られたシャツとかセーターとか、中でも特に変わった仕掛けのあるものを探すのが好きな人で。例えばボタンダウンシャツなんだけどボタンが襟の内側についていたりする洋服もあるんですね。それを見た友人が「意味のない実験をしているところがいい」って。それを聞いたときに、一見わからない些細なことだけど、デザインや機能性とは関係あるのかないのかわからないところで遊んでいることが音楽と似ているなと思ったんです。
Q: デザイン性や機能性だけで形を決めつけない。先ほどお話しいただいた川辺さんが大切にする余白の部分に通ずる話なのかもしれません。
A: 音楽にもBGMのように耳障りにならないように作られた曲もあれば、たくさんの人が楽しめるように作られたポップスがあったり……と、音楽にもいろいろな機能性があるんです。洋服もTPOではないですが、場に合わせて選んでいくこともあると思うんですね。それに洋服でいう一着という単位があるように、音楽にも一曲という単位があります。つまり制約。こうした制約があるなかで服も音楽も、余白という“遊び”を作ろうと思っている人が他業界にもいることにシンパシーを感じるんです。
PEOPLEはBEAUTY&YOUTHが大切にする“美しさ”と“若さ”の両方を持つオトナたちを紹介するメディアです。ときに知的で、ときに無邪気で、ときにラフで。年齢や職業にとらわれることなく、美しさと若さをまとうことが生活を豊かにするというファッションの本質を伝えます。