B&Y

Masayuki Kawabata
Interior craftsman
セットアップ

Text & Edit by Takumi Sato(kontakt)
Photography by Asuka Ito


Published June 29, 2022

Text & Edit by Takumi Sato(kontakt)
Photography by Asuka Ito

Published June 29, 2022

「肩書きは好きなように書いてください」と話すのは、独学で自宅を改築し、その優れた空間センスで内装の仕事も請け負う川端雅之さん。これから植物園でも働く予定だという彼は、ひとたびカメラを向けられれば、モデルとしての顔も見せる。明快な肩書きを持たず、ジャンルを横断した幅広い活動を続ける彼には、人生の選択をする上で一貫した決まりがあった。“不快と感じる環境に自らを置くこと”。それは、過去の自分を超え、物事をより多くの視点から捉えられるようにするための選択だという。

1996年生まれの川端さん。趣味は読書。本はジャンル問わずなんでも読む。

居住不可能な状態からすべて自身の手で作り上げた自宅。2階の床の一部を吹き抜けにし、夏場は涼しく快適に過ごすことができる。キッチン周りの食器棚も手作り。

Cardigan, Beige, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥16,500
Shorts, Beige, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥13,200

3面窓でたっぷり陽の光が入ってくる2階には、好きなアートや古本が綺麗に並べられている。「知らない小学生が描いた絵とか、一見よく分からないものが好きなんです。なかには拾ってきたものもあります」と川端さん。

Cardigan, Beige, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥16,500
Shorts, Beige, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥13,200
Bag, Beige, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥9,900

<snow peak>と<BEAUTY&YOUTH>の別注コレクション。タテ糸にナイロンとポリウレタン、ヨコ糸には綿・麻を組み合わせた生地を使用。天然素材の風合いに接触冷感やストレッチの機能性が加わり、都会とアウトドアどちらでも着られる一着となっている。

Cardigan, Beige, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥16,500
Shorts, Beige, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥13,200

「ちょうど隣の家を友人と改築している」と家の中を見せてくれた。

Shirt, Beige, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥14,850

ミリタリーシャツのデザインをモチーフに、胸元に2つのフラップポケットを配置したシャツ。バックには風通しを良くしてくれるベンチレーションがついているため、これからの暑くなる季節にも快適な着心地を実現。

よく訪れるお店と紹介してくれたのは西荻北にあるアンティークショップ<poubelle>。「ただの古道具屋さんじゃなくて、アートとか写真集とか幅広くモノを扱っているのがいいんです」と川端さん。

Cardigan, Black, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥16,500

シンプルなデザインのVネックカーディガン。着脱しやすいスナップボタン仕様や、バックには風通しを良くしてくれるベンチレーションなど気の利いた機能が備わっている。

Shirt, Black, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥14,850
Shorts, Black, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥13,200

50km離れた場所にも自転車を使うという川端さん。最近では自宅近くの公園に行き、本を読むことが彼の日課となっている。

Shirt, Black, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥14,850
Bag, Black, snow peak × BEAUTY&YOUTH ¥9,900

洋服と同じ素材で作ったシンプルなデザインのトートバッグ。縦長のコンパクトなサイズ感でありながら、中にはポケットがついており収納性も抜群。前面に刺繍を施したシンプルなsnow peakロゴが程よいポイントに。

「見た目とは裏腹に、意外なことやってるみたいなことが好きなんです」と語った川端さん。謙虚でありながら、難しいことに挑戦し続ける。そんな彼のギャップに人は魅了されるのだろう。

Interview with Masayuki Kawabata

Q: 大学ではプロダクトデザインを勉強されていたと伺いましたが、専攻した理由から教えてください。

A: 高校生の時からずっと絵を描いていたんです。ただその頃から、アーティストとして自己表現をするよりも、使いやすさなどの実用面を考慮して美しく作るデザインのような社会と繋がりのあるほうが自分には向いているなと思ったんです。大学ではグラフィックデザインや洋服作り、建築とかいろいろ経験してから専攻を選ぶんですけど、一番やりたくなかったのがプロダクトデザインだった(笑)。やりたくないってことは勉強のしがいがあるのかなって思って専攻したんですけど、やっぱり好きになれなくて。

Q: どんな部分が好きになれなかったのでしょうか…?

A: 例えば、ドライヤーをデザインするとして、まず過去の資料を集めますよね。調べていくうちに「過去にはこんなかっこいいのがあるんだ!」っていうのが見つかるわけですよ。ドライヤーという道具の最適解みたいなものがさんざん出ているのに、また新しく作るの? という疑問を持つようになっていって。昔のモノを見ていると理に適った良いものがあるので、僕にとって新たにデザインする意味を見出せなかったんです。

Q: ほとんどのものにはすでに正解があるんじゃないかと。そこで、古いモノに興味を持つわけですね。

A: 特別古いものが好きなわけではないと思っていたんですけど、今の家に引っ越す時に荷物をまとめたらボロいのしかないなって。なんでだろうって考えてみると、新しいモノは既製品で量産されているので、ちょっと簡単な感じがするんです。だから、古くて手間がかかるようなモノが欲しくなるんです、天邪鬼なんで(笑)。

Q: それで自らの手でご自宅も改装しようと。

A: そうですね。友人から「人が住める状態ではないけど隣に空いてる家があるから見に来ない?」って言われて。本当にひどい状態でしたね。当時は家の仕組みも建て方も何も知らなかったんですけど、すぐに住もうと決めました。もう決めたらやるしかなくなる。面白そうだし、直さないと暮らせないっていうのがすごく良かったんです。すでに住める家で好き勝手に改装するのは想像がつくけど、住めない家からはじめるっていうのがキタキタって感じがして(笑)。

Q: それは何に対するワクワクだったんですか?

A: 住めるのに改装するのではなく、住めないから改装するということが正しいことをしている感じがするから。今の状態になるまで約2年近くやっているんですけど、とにかく大変でした。

Q: 気が遠くなる作業ですね(笑)。

A: 辛いですね。僕、正直作るの好きじゃないんですよ。頼めるなら人に頼みたいし、やりたくないですけど、でも自分を追い込むのは好きなんです。新しいことをするときってちょっと嫌なくらいの方がいいと思っている節があって。

Q: なぜですか?

A: 結果論ですけど、これまでその思考でうまくいってると思っているので。大学の専攻を選ぶときも一番やりたくなかったことをあえて選んでいる。「なにしてんだろう」って自分でも思いますけど、結果今があるからいいかなって。惰性で物事が進んでいくより、わざわざ嫌なほうに進むことで、その都度考えなくちゃいけなくなるんです。たぶん自分は不真面目な人間なのでそうしないとダメなんです(笑)。

Q: それは昔から?

A: そうですね。キャンプしながら自転車で色んな所を回ったりもしていました。キャンプといっても、バス停にある椅子で寝るみたいなほぼ野宿ですが(笑)。思い返してみても辛いことしかなかったんですけど、ラクしているより、得るものがそれなりにあった。

Q: ラクをしすぎると思考が停止してしまう。

A: もっとこういうことをやった方がいいなと思っていて。ちょっと難しいとか、嫌なことを選ぶってラクしてるよりも結果的に良くなることが多い気がします。僕はモデルのお仕事もやっていますが、これも興味があったわけではない。でもやったことがないからやるべきなんだろうなって思ったんです。やってみたらまたちょっと知らない世界へ広がっていくじゃないですか?

Q: 「好きなことして生きていく」といった言葉をよく耳にしますが、プラス面だけが切り取られてしまっている印象があります。

A: 好きなことだけして視野が狭くなることが怖いんです。あらゆることに対して客観的な視点を持てるようになりたい。本を読むのも、知らない人の書いた知らない話なわけで、そこに対する想像力とか感性を持っていないと、たぶん人に対しても一方的に考えを押し付けたりしてしまうことがあると思う。自分の小さな世界の中で良いと思っていることだけを突き進めていくのではなくて、一つひとつ考えさせられるような時間を過ごしながら視点を広げていくように生きていきたい。

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