B&Y

Akira Taneichi
Free Planner
Tシャツ

Text & Edit by Mikiya Matsushita(kontakt)
Photography by Asuka Ito


Published July 13, 2022

Text & Edit by Mikiya Matsushita(kontakt)
Photography by Asuka Ito

Published July 13, 2022

どんな洋服でも自分のものにしてしまう、フリープランナーの種市暁さんはまさにそんな人だった。ファッションだけでなく、長年続けるサーフィンやそれらを楽しむためのウェルネス。生活の中にあるさまざまな物事を追求する姿勢は、軸があるのに柔らかく、どこかファジー。ジャンルに固執せず、常に全体を見渡して自分が何をすべきか考えている。だから多くの人からみて、種市さんが何者なのかわからないし、彼も特定の何かになろうとはしない。装いも健康も周りにいる人たちも大切。だからこそ洋服とは、「何を着るかではなく、誰が着るか。」

Sweatshirts, Ash, POPEYE™×DOGTOWN ¥13,200
Sweat Pants, Ash, POPEYE™×DOGTOWN ¥13,200

着用しているのは、アメリカンコミックから生まれたキャラクター<POPEYE™>と、カリフォルニア・ベニスビーチで設立されたスケートブランド<DOGTOWN>のコラボレーション。アイテムには「クロスロゴ」などDOGTOWNのアイコンとPOPEYE™を掛け合わせたオリジナルグラフィックが施される。撮影に同行してくれたのは、種市さんの愛犬おから。

T-shirts, White, POPEYE™×DOGTOWN ¥7,150

ピグメント加工が施されたヴィンテージ感のあるTシャツは、セットアップのインナーとして着ても相性がいい。ポップな印象のアイテムでも、年齢を重ねたからこそ抜けのある大人らしさを楽しめる。

Bag, Black, POPEYE™×DOGTOWN ¥7,480
Knit Cap, Black / Gray, POPEYE™×DOGTOWN each, ¥4,400

普段からコーディネートのアクセントとしてハットやキャップをよくかぶる種市さん。<POPEYE™>と<DOGTOWN>のコラボレーションは、ウェアだけでなくトートやビーニーなどのアイテムも。使いこむほどに風合いが良くなるキャンバス生地のトートバッグは、日常使いからアウトドアまで気兼ねなく使える丈夫なつくり。

写真中 Long Sleeve T-shirts, Vintage Black, POPEYE™×DOGTOWN ¥8,250
写真下 Sweatshirts, Ash, POPEYE™×DOGTOWN ¥13,200
写真下 Sweat Pants, Ash, POPEYE™×DOGTOWN ¥13,200

撮影で訪れたのは、種市さんがディレクションを手がけた<Sanzou Tokyo>。バリエーション豊かなカレーが食べられるだけでなく、ギャラリーも併設している定期的に訪れたいカルチャースポット。

Long Sleeve T-shirts, Vintage Black, POPEYE™×DOGTOWN ¥8,250

業界問わず、「タネさん」と呼び慕う人は多い。人との付き合いを大切にしてきた種市さんの元には、ジャンルを横断してさまざまなオファーが寄せられる。

Copyright ® Hearst Holdings, Inc.

Interview with Akira Taneichi

Q:種市さんのインスタグラムを見ているとブランドのPRやモデルをしているかと思えば、カレー屋のディレクションを手がけていて、その次の日からは何日も海でサーフィンをしている…。一体なんの人?と思っている人も多いかもしれません。

A:前職の洋服屋から独立したタイミングで名刺を作ろうと思ったんですが、肩書きが何なのか自分でもよく分からなくて。いまの仕事としては、ブランドのディレクションやセレクトショップの商品開発にPR、スタイリングをさせてもらっていた時もあります。ある時、雑誌の取材で肩書きを聞かれて、無いと言ったら「フリープランナー」はどうかと言われて。それを今でも使っています。

Q:その何者かわからないことこそが種市さんらしさのようにも感じます。

A:昔から「らしく」振る舞うのが苦手なんです。洋服屋らしくが嫌で、店頭に短パンとビーサンで立ってみたり、アメカジらしくが嫌でサーフブランドとDries Van Notenのようなインポートブランドをミックスしてコーディネートしたり。

Q:らしく振る舞わないことがスタイルになっていった…。

A:洋服屋さんってどちらかと言うと、いい意味でオタク気質な人が多いように感じますが、僕はそこだけじゃなく、「モテる」みたいな要素もとても大切なんじゃないかと思っています。ファッションも長年続けているサーフィンも真剣に追求するんだけど、見られ方にも少し気を配ってみる。どれかに偏ってしまうと、見えなくなってしまうものもあると思います。

Q:たとえば老舗メーカーのクラシックなモノを着るときでも、種市さんの着こなしには、不思議と硬さを感じません。

A:普段こだわってスーツを着こなす人を連れて、サーフィンに行ったりすると、ショーツはあまり似合っていなかったりします。逆もしかりですが、それってすごい細かいニュアンスの話で。体型などの問題ではなく、ショーツであれば数センチ落として腰で履いてみたり、ネルシャツなら袖を手首の処で折り返してみたり、それが“こなし”になるんです。さっき話したバランス感覚はそういうことにも似ていて、その細かいニュアンスを言語化して伝えるのが僕の仕事だと思っています。

Q:そのニュアンスはどのようにして得たのでしょう?

A:当たり前のことですけど、実際に経験するのが一番ですよね。服にしてもカジュアルだけじゃなくて、本当に高級で良いものも着てみること。何も知らずに分かったようなことを言わないで、両方を経験した上で判断する。スポーツも同じです。僕を信頼して仕事を頼んでくれる人は、そういうところを良いと思ってくれているのかもしれません。

Q:スノーボードは最近はじめたそうですね。

A:友人に誘われてはじめましたが、スノーボードもサーフィン同様、雪山を理解してスタイリッシュにボードを乗りこなせる人が中心の世界です。いくら有名でお金を持っていても、一度雪山に入ってしまえばそんなものは一切関係ない。 僕は始めたのが遅かったので、とにかく上手い友人に教えてもらうんです。そこに年齢やプライドなんてものは関係なくて、年下だろうと彼らをリスペクトしています。

Q:そこまでしようと思えるのはなぜですか?

A:単純に好きなものだからですかね(笑)。陰で努力し、時には無理をしている時は誰にでもありますけど、 基本的には自分のやりたいことや興味があることを楽しみながら夢中になってやっているし、それがたまたま仕事に繋がったりした時は嬉しいですね。

Q:仕事の依頼も基本的には断らないとか。

A:そうですね。出来る限りやらせて頂いていますが、お金よりも人と内容を重視しています。高級車に乗ってラグジュアリーな家に住む幸せもありますが、今の僕には犬がいてサーフィンができれば部屋もシンプルで良いし車も機能性の方が大切。お金をたくさん稼ぐということは、それと引き換えに自由な時間を渡す場合もあるし、お金のために多くの時間を潰すよりも自分の趣味や健康の為にバランスよく生きていたいと思っています。

Q:昔と変わったことはありますか?

A:歳を重ねると感覚的に自分が取り入れるべきものがわかるようになってきます。昔は暴飲暴食しても全く問題無かったのですが、ここ5年位は食べ過ぎたり、無茶をすると明らかに体調やメンタルに影響が出るようになりました。調整の為にナチュラルなサプリや青汁を飲んだり、オーガニックコスメを使ったり。サウナにもよく行くようになりましたね。意識的に何かを変えようとしているのではなくて、身体が求めているものを感じて試して、健康管理をしています。中身が元気な人は何を着ても気持ち良く着こなせますよね。やっぱり洋服って何を着るかではなく、誰がどう着るかだとあらためてそう思います。

Q:健康やスポーツの話にしても、楽しいと思える幅が広いように感じます。

A:サーフィンに置き換えると、波が悪い日はいくらでもあります。僕が大切にしているのは、そこでいかに切り替えて楽しめるか。今日は代わりにウマイご飯を食べようとか自然を見にいこうとか。その柔軟な考え方が、楽しく生活する秘訣かなと思います。

Q:仕事もスポーツも健康も、すべて変わらないスタンスで柔軟にこなす…ということですね。

A:サーフィンの人ともファッションの人とも見られたくないし、何かに縛られたくもない。 僕の周りには 多くのデザイナーや俳優など才能豊かな人が沢山いて、僕は彼らのようにひとつにこだわって生み出していく才能が無いし、やる気も出なかった(笑)。でも今はそれがむしろ自分の強みだと思っています。軸はあるけど、あくまで柔らかくファジーに。だからこういう仕事をしています。全部のことをやるんじゃなくて、色々な人に頼ってバランスをとる。それが僕には心地いいんです。

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