Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham
Published February 8, 2021
Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham
Published February 8, 2021
ごくごく当たり前にある光。普通、光を見て普段感じるのは、“明るい”や“暗い”といったことだろう。しかしアーティストのWAKUさんは、光という当たり前に存在するものを、抽象化し、そして何かしらの形に具現化する。
バナーの炎がゴー、ゴーと音を立てる。WAKUさんはチューブをくわえ空気を吹き込みながら、ネオン菅を曲げていく。WAKUさんが手がけるネオンの光はある種彫刻的でもある。“美しい”や“なんか最高”といった直感的に放ってしまう言葉だけでなく、光に対する新しい感情を鑑賞者に与える。
Coverall Jacket, Dark Gray, ATELIER BETON × BEAUTY&YOUTH ¥19,800
Coverall Jacket, Light Gray, ATELIER BETON × BEAUTY&YOUTH ¥19,800
Q&A with WAKU
Q: 2年近く前、まだWAKUさんがニューヨークに行く前に少しお話しする時間がありました。当たり前ですが、当時と現在とを比べると大きく変わった気がします。約1年に及ぶニューヨークでの滞在期間で何を学びましたか?
A: 特にこれというものを挙げるのは難しいのですが、色々なモノやヒトに出合うことができたり、さまざまな場所を見ることができたことなど、すべてが今につながっているように思います。ネオン制作という技術的な部分に限らず、異なった文化に触れることで自分自身の立ち位置を改めて実感しました。実際に展示機会を与えて下さる方が現れたり。看板製作だけでなく自分の思い描いた光を環境に合わせて設置する機会をいただいたのはとても貴重なことだったと改めて思います。
Q: 帰国後は、ネオンサインの制作はもちろんのこと、渋谷の廃ビルで開催した「Dimention」、原宿のCOMMONでは「In Person」、最近だと森アーツセンターギャラリーでミッキーマウスをテーマにした光の作品を展示されていました。
A: 渡米する前から、自分が扱うメディアとしてネオンに可能性を感じていました。ネオンの光を見ることが何より好きでしたので、自分にしかできないものがあるはずだと。
Q: 光を扱う面白さってどういうところにあると思いますか?
A: 実家がお寺を営んでいるのですが、小さい頃から本堂で御行じゃないですけど、仏を前にして手を合わせることが日課でした。不思議なもので、本堂や仏を照らす灯明、ろうそくの光や電灯によって空間が変わります。照明によって照らされている仏は、彼自身から光が放たれているように、輝いているように見えていました。ネオンが放つ光は、その仏が放つ輝き、空気感とどこか重なるものがあります。それがネオンの光を選ぶ理由かもしれません。
Q: WAKUさんにとって、好奇心を掻き立てられるものが光だったのですね。
A: そうですね。光というもの自体は、みんな毎日目にするものです。ごく自然な形で、日常に潜む美しいものだと僕は思います。
Q: 雨の音が音楽にきこえたら、雨の日が嫌いじゃなくなる。いい服を着て、ご飯を食べればなんかいつものご飯よりも美味しく感じるのと重なります。つまり日常をどう自ら豊かにするために行動していくのかということ……?
A: 僕の作品があることによって、日常に溢れ見過ごされている光というものに再び目を向けるきっかけになれば良いなと思っています。僕の作品を見た後、今までの駅から家までの帰り道にあるパチンコ屋のネオン看板を見るだけで、ちょっとだけその道が楽しくなったりするかもしれませんからね。
Q: どのようなことをすれば、それに“気づく”のでしょうか?
A: 単純ですが、自分の時間を大切にしています。その中で巡り会う素晴らしいと思える物事に真摯に向き合うことなのかなと。僕自身、周りを気にして生きてきた人間だったのが関係しているかもしれませんが、他人を気にせず自分の思いを素直に表現できる人達を羨んでいました。でも、音楽や製作に没頭している時など、そんな僕にも周りを気にしない瞬間があります。こうした素直な感覚に対して正面から向き合うことは、普段から心がけていることのひとつです。
PEOPLEはBEAUTY&YOUTHが大切にする“美しさ”と“若さ”の両方を持つオトナたちを紹介するメディアです。ときに知的で、ときに無邪気で、ときにラフで。年齢や職業にとらわれることなく、美しさと若さをまとうことが生活を豊かにするというファッションの本質を伝えます。