Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham
Published February 12, 2021
Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham
Published February 12, 2021
“器 つか本”は、実店舗を持たない。主宰の塚本憲央さんは、益子焼きの職人さんたちを中心に焼き物と私たちをface to faceで結ぶ行商。祖父母の影響を受けた音楽やアートと、さらに寿司割烹を営む両親の元、器や花器と触れる日常を過ごしてきた。そしてスケートボードやファッション。さまざまなカルチャーを通じて培ってきた塚本さんのセンスを頼りにする料理人も数多くいる。「どんな器を持ってきてくれるのか?」と。シンプルだけが正解ではない。現代的なデザインだけが正解ではない。ジャンクフードにすら豊かさをもたらす“器 つか本”の焼き物には品がある。
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Q&A with Norio Tsukamoto
Q: 焼き物の魅力について教えてください。
A: 一つとして同じ物がないところ、磁器も素敵だけど、ツルツルしたものより、陶器のゴツゴツとした人の痕跡がみえるところが魅力的だなと感じています。それは器だけに限らず、自分が手にするものに関して一貫しているもの選びの“癖”のようなものなのかもしれません。器だけの話ではないと思うのですが、現在主流となっているものは、古典的な手法で作られたものというよりも、新しいものであったり、パッケージングが上手なもの、さらにSNSで“映える”ものだったりする気がしています。ただ器の場合、実物を見たり実際生活に取り込むと、92歳の職人さんが作っているものの力強さに気づくんです。「あれ、なんか違うな」と。そんな瞬間が生活の節々にある。高齢化が進む陶芸産業で、ちゃんと作られているいいものをなくさずに残すことができないかなと始めたのが、器 つか本です。
Q: 確かに時代は無機質なものへシフトしていっていますね。色々な生活にも馴染めるもの。塚本さんが惹かれているものはどちらかというと、無機質なものよりも有機質なもの?
A: そうですね。人が作っているものなので。彼らは自ら土を取りに行き、その土を使い、粘土を作り、3〜5年ほど寝かせ、自分で作った窯で焼いています。燃やす木も自分で集めたりして……。人の痕跡があるものって、バックボーンを知れたりすると、大事に使いたいと思ってしまう。そして愛着が湧いてくれば、例えば割れてしまっても金継ぎをして、前以上の価値が生まれた物として楽しむことができるのではないかなと思います。
Q: 焼き物だけで生活するってことを勧めてるわけではない?
A: 全然そんなことないです。この世の中に買ってはいけない器なんてものは存在しません。好きに使いたいものを使えばいい。だけど、好きな物が定まって偏ってしまう方が多いと思います、固定観念というかなんというか。陶器は好きだけど、陶器ばかりになってしまうのもつまらないと思います。陶器のよさも知りつつ、磁器や、ガラスのよさも知った方が、幅が出るだろうし、毎日飲む水も気分によって、焼き物の器で飲むかガラスのコップで飲むか、その選択肢は持っておいたほうがいいと思っています。
Q: まるで洋服の話を聞いてるみたいです。
A: 同じです。自分にとっては10,000円のTシャツもヘインズのような3枚で3,000円ぐらいのパックTシャツも同じTシャツです。両方に別々のいいところがありますし、両方のよさを知ることが大切なんだと思います。多くの人が器や家具を、決まったカテゴリー内の価値観で見てしまっていると思うのですが、全部をトータルしてフラットな視点で見れば、必然とお金ができた時に買いたいものが洋服かもしれないし、器かもしれない。家電でも当然いいわけです。それでいいのかなって僕は思っています。
Q: 塚本さんが器を選んでしまうのは、なぜですか?
A: 職業にしていることも当然ありますが、家の中に気に入ったものがあると、心地良いというか安心感というか。器って、料理で言う洋服に近いものだから、毎日の洋服のコーディネートを楽しむように、器を楽しめたらより食生活が豊かになっていくような気がします。食べることが好きなので……。
Q: 面白いですね。洋服のコーディネートのように器を選ぶという発想が。
A: 今雑誌で、料理家の方とコラボレーションする企画を進行しているんです。作る料理に対して、自分がどんな器を選ぶのかという。こういう時にどんな器を考えるのかというと、洋服と同じテンションで考えています。色とか形で楽しんだり。楽しみ方は無限ですよ。
Q: まるでスタイリストですね。当然、塚本さんに選んで欲しいとおっしゃる人もいますよね?
A: 結構選んでくださいって、言われること多いですよ。オンラインでお問合せがあった時は、その人のインスタグラムを見て、趣味とか好きな音楽を試聴してみたりして、じゃあこんなのどうですか?とか。イベントとかであれば、「とりあえず持ってみてください。それで、こっち向いてください」とか。鏡があれば、「鏡で見てみてください」ってオススメすることもありますよ(笑)。
Q: 塚本さんが選ぶ焼き物に一貫していることはなんですか?
A: 品の良さだと思います。品のある器は、高級肉を載せても当然美味しく見栄えするだろうし、それこそ柿ピーやジャンクフードのような食べ物を入れても、なんか佇まいがいいんです。そして、器単体で見た時にどうか、というのをすごく大切にしています。たくさんあると、雰囲気でよく見えてしまいがちですが、一つのものとして単純にかっこいいなと思える焼き物を選んでいますね。
PEOPLEはBEAUTY&YOUTHが大切にする“美しさ”と“若さ”の両方を持つオトナたちを紹介するメディアです。ときに知的で、ときに無邪気で、ときにラフで。年齢や職業にとらわれることなく、美しさと若さをまとうことが生活を豊かにするというファッションの本質を伝えます。