B&Y

Ryosuke Kataoka
Artist
イージーパンツ

Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham


Published February 15, 2021

Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham

Published February 15, 2021

アーティスト・片岡亮介さんのセンスに憧れてしまう。センスという遊び心や好奇心。撮影当日、前日に制作したばかりという大きなペインティングがリビングルームの一角に飾ってあった。生のキャンバスに、石に緑のペンキをつけ、コロコロさせて制作したらしい。筆を使わないペインティング。見たことのないものを、考えたことのないような発想で平面から立体まで表現する片岡さん。手の込んだグラフィックTシャツでも、真っ白のプレーンなTシャツでも、美術館に飾られているような油絵でも、道端に転がっている石でも、人はハッとする状況がある。その瞬間をアーティストの片岡さんは探している。

Q&A with Ryosuke Kataoka

Q: 最近はどんな作品を作りましたか?

A: ちょうど昨日、キャンバスの上に石を転がしたペインティングを制作しました。

Q: この(トップ写真の片岡さん背景)作品ですね。

A: キャンバスを支持体として、筆以外でどう描けるのかというのを考えていたんです。当たり前に、僕たちは筆やペンを手に握って絵を描こうとするわけですが、「ちょっと待てよ」と、そこがおかしいよなと。例えばPCで描いたらこうなる。筆で書いたらこうなると、ある程度パターンが見えてくるのですが、そこから離れることができるないのか……と思いまして。この作品づくりのきっかけとなった出来事が、山を下りる経験からきています。また雨上がり、水たまりの上を子供が傘を引きずっているときに、水たまりと道路上に線ができているのを見てすごく綺麗だなと思った瞬間がありました。それでキャンバスの上に石を転がしてみようと思ったんです。

Q: 緑色にしたのはなぜですか?

A: 苔をイメ−ジしていました。石の上に生えた苔が減っていく、だけど苔は移動してキャンバスの上に繁殖していくような……。

Q: 減る⇄増える、という永続的な関係性なわけですね。

A: 減ってくものと増えてくものがキャンバス上に描かれていく。僕はいつも自分で見たことないものを作りたいと思っているのですが、「うわ、これは見たことないぞ!」と、昨日は興奮していました。

Q: そんな片岡さんのセンスに憧れてしまうのですが、センスってなんだと思いますか?

A: センスは知識と経験だと思います。

Q: では、センスというものは片岡さんに何をもたらすと思いますか?

A: 面白さと同時に退屈さをももたらすものです。服のコーディネートを考える時も同じだと思います。例えば、赤と白を合わせることで、赤色がより綺麗に見えるというのは、ある種知識です。先ほどの質問に戻りますが、以前までセンス=知識だと思っていました。だけども、そこにピンクや黄緑を持ってくると変な違和感が生まれる。それを見ると、ハッとするんですね。今までとは違う、赤の魅力を感じる。つまり知識があると、それをそう選べなくしてしまっている気がする。学生時代に大学の先生に言われたことがあります。「偶然の良いものを必然にするのが作品だ」と。できあがって「やばい!」って思えるものを確実に再現できることが大切なのかなと思います。

Q: センスがあるというのは、常にいいわけではないと。

A: だけども意図的に外すことはダサいと思っています。わざとらしさと、わざとらしくないのバランスですよね。今日撮影していて思ったのですが、家具をきれいに並べすぎかなって思ってしまいました。

Q: 棚に陳列しているものも面白いですよね。いわゆる石とアートを同等に見せるといいますか。

A: 自分のものの見方を具現化している棚です。ハンガーラックにかかっている新品の洋服もかっこいいですけど、工事現場に脱ぎ捨てられている服にもカッコよさがあります。この棚はそういう偶発的なものを再現しているつもりです。この石も、街で見たらハッとさせられるものですが、おそらく美術館で見たら面白くないなとか……。モノ自体がもつ魅力を引き出すための状況を試して、楽しんでいます。

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