Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham
Published February 19, 2021
Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham
Published February 19, 2021
ベーシックなアイテムだからこそこだわる。AURALEEの洋服には、デザイナー・岩井良太さんのそんな思いが込められている。パッと見だけでは伝わらないこともあるかもしれない。しかし触ってみたり、着てみたり、そして太陽の光に当ててみたり……。するとAURALEEの服の心地よさが理解できる。しっくりくるのが“日常着”という言葉。素材やシルエット、そしてカラーリング。ファッションという身に纏うものから、日常にある贅沢を探すヒントを岩井さんが与えてくれる。
Q&A with Ryota Iwai
Q: AURALEEが執拗なまでにシルエットや素材、色にこだわる理由とはなんですか?
A: 「さっきの人が着ていた服かっこよかったね」というよりも、「さっきの人、なんか雰囲気よかったね」と思えることが大切なのかなと思っています。それはつまり服だけに目線がいくことよりも、着用者の周りにある空気自体をいい雰囲気にしたいという思いで服を作っているんです。そのためにシルエットや素材、色味にこだわっています。
Q: 大切にしている人物像などはありますか?
A: 変に偏った考え方や見方をしない人に備わる品性のようなものは大切にしています。こんなことを言うとスタッフに怒られてしまうかもしれないのですが、もちろん全身AURALEEを着ていただくのもものすごく嬉しいことなのですが、他のブランドや古着にも合わせて、もっと楽しんでもらいたいと個人的には思っています。そんな服たちと合わせても見劣りしないような服作りはしているつもりですし、洋服というものに対してもっとフラットに楽しんでいただくための一端をAURALEEが担うことができればいいなと思っています。
Q: 岩井さんは、夜派ですか、朝派ですか?
A: ブランド的には朝です。AURALEEというブランド名が「日の当たる場所」を意味するように、朝の澄んだ光が似合う服にしたかったという気持ちを込めています。ただ仕事的にはしっかり夜派です。なので朝派には憧れています。
Q: 時代的にも夜を満喫している人よりも朝を大切にし、健康的な生活をしている人の方がカッコいいと思われているかもしれないですね。夜の色気があるように、AURALEEの服からは、朝の色気を感じます。
A: “朝の色気”、いいですね。
Q: 岩井さん自体が洋服選びで気にしていることは何かありますか?
A: 質へのこだわりは当然あります。とくにいい素材や仕立てには敏感になりがちかもしれません。
Q: そういった質は素人でもわかるものですか?
A: わからないこともあると思います。
Q: 例えば、AURALEEのTシャツとパックTシャツの違いについて。岩井さんはどう説明しますか?
A: 気分や着方もあると思いますし、選び方の差だと思います。例えば海に行くならヘインズにデニムの方がよかったりします。逆に、ちょっと目上の人に会うカジュアルな予定がある場合は、少し上品なTシャツを着ていこうかなとか。そういう選び方で僕はいいと思います。
Q: 今回、ビューティ&ユースでロングスリーブのTシャツを別注させていただきました。秋冬はウールやカシミアなどの印象が強いAURALEEですが、岩井さんにとってコットンとはどのような素材だと思いますか?
A: 結局一番使う素材ですよね。例えばシルクは、品が良くて大好きな生地ですが、タフな素材ではありません。だから僕の場合は、直接肌に当たるものとして毎日のように着るのはコットンかウール。中でもコットンはまさに生活必需品です。経年変化もしますし、洗い続けられる素材としてもかなり魅力的です。だからこそどう見せるのかが難しいところでもありますけどね。
Q: どう見せるのかが難しいとは?
A: 特にこのロンTは、 生活必需品であるTシャツとして使えることだけでなく、プラスアルファの価値をつけたいと考えて作ったものです。品の良さを出すために超長綿を使い、そして編み方や度目を微調整し、試行錯誤しながら形にしていきました。コットンのTシャツという最も汎用性が高く、スタンダードなアイテムのひとつだからこそ、各工程を丁寧に行いながら、作りこんでいきました。実験的に色々な素材やプロセスを試してきましたが、現状これがベストと言えるものです。この別注品は、製品染めで仕上げたものになっています。
Q: 糸の段階で染めるともう少しツヤが出るところをあえて製品染めにしたのはなぜですか?
A: 元の素材がよければラフな染め方をしても上品に仕上がるからです。それにこのツヤツヤすぎないテクスチャーが、力の抜けたいい雰囲気を作ると思います。
Q: 質の高さと品の良さは比例するものだと思いますか?
A: 基本的には比例しないと思っているのですが、自分の物作りのなかでは比例させてしまっているかもしれません。もちろん必ずしもそうだと断言できないのですが、結局のところ着ている人が重要なように思います。「何を着るかではなく、誰が着るか」と言いますか。
Q: 器の行商をされている人に「品のいい器とは?」と言う質問をしたんです。彼は、高級肉でもジャンクフードでも美味しく見せられる器と答えていました。そういう点で、AURALEEの洋服と重なります。
A: そうだと嬉しいですね。色々な着る人の空気感に寄り添うこと、そして日常からその人が纏う空気感をより素敵に見せたいと思いながらデザインしています。
PEOPLEはBEAUTY&YOUTHが大切にする“美しさ”と“若さ”の両方を持つオトナたちを紹介するメディアです。ときに知的で、ときに無邪気で、ときにラフで。年齢や職業にとらわれることなく、美しさと若さをまとうことが生活を豊かにするというファッションの本質を伝えます。