Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham
Published February 22, 2021
Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham
Published February 22, 2021
10歳でサーフィンをはじめ、高校時にはオーストラリア留学。20歳でプロの世界へ。そして現在、ほぼ毎朝海に入っているようにサーファーとしての軸は変えなくとも、スノーボード、登山やキャンプ、さらにコーチングやレッスンなどを開講したりと多種多様な活動をするのが和光 大さん。サーフィンをはじめとするアウトドアアクティビティを通じて世界中を旅し、自然と対峙し、そしてさまざまな人に出会い、さまざまな光景を見てきた和光さんだからこそ辿りついたのが、“ウェルネス”というシンプルな思考だった。
Q&A with Dai Wako
Q: ヘルシーという観点はこれからビューティ&ユースが大切にしていきたい言葉の一つです。肉体的ヘルシーと精神的ヘルシー。和光さんにとって、精神的ヘルシーとはどういうものだと思いますか?
A: 今でこそ、“ウェルネス”という言葉を巷で頻繁に目にしたり耳にするようになってきましたが、少し前までは、ヘルシー=肉体的なヘルシーさを意味することがほとんどだったと思います。精神的ヘルシー=メンタルヘルスと呼ばれるものですが、実は肉体的ヘルシーと大きく関わっているものです。体だけに目をむけていても効果がないですし、精神的な部分にだけ目を向けていても、本当の意味でヘルシーとは言えません。だから僕にとってのヘルシーは、素直に生きて、自分が満たされることをするということに近いのかもしれません。
Q: だからこそサーフィンを始め、旅をしたり、映像や写真を撮影したり、キャンプや登山など、いろんなものにチャレンジしているわけですね?
A: でも、僕ももともとは違って、サーフィンに夢中だったんです。“囚われていた”というとおおげさに聞こえるかもしれませんが、プロサーファーとしてコンペティションを勝ち進むためには、他のことを考える余裕が当時の僕にはなかったんです。ただある時、自分の中にふと疑問が生まれてしまった……。もっと色々なことをやりたいのが本来の自分なんじゃないかって。そこからサーフィンだけでなく、色々なことに挑戦するようになりました。人それぞれだと思いますが、僕にとってのウェルネスは多くのことに挑戦することだったんです。前向きに楽しんでいくといいますか。
Q: 具体的に、サーフィン以外にどういうことをされていますか?
A: ベースにあるのは、自然と遊ぶことです。サーフィンも水と戯れるようなことですよね。それに山に登ることも好きですし、登ってキャンプすることも好きです。また今シーズンからスノーボードやバックカントリーもはじめました。まだまだやりたいことがたくさんあるので、これから増えていくと思います。
Q: 2018年には、3ヶ月をかけて、インド、スリランカ、エジプト、モロッコ、スペイン、ポルトガル、フランス、アメリカ、カナダの全9カ国を回った旅を記録されていましたね。
A: そうですね。最近は行けていないですが。
Q: その長期間の旅で感じたことを題材にした映像作品“Simple Living”を制作しました。なぜ“シンプル”という言葉を?
A: 3ヶ月もの間、日本に戻ることなく旅を続けていました。そこで改めて気づいたことが、“生活する上で本当に必要なもの”が実は少ないということ。今は物で溢れている時代ですし、多くの人がそれに慣れてしまっています。便利な物の恩恵を受けることも当然ありますが、僕にとって、旅路のミニマルな生活がどこか気持ちよかったんですね。ストレスを感じることが少なくなりましたし、そして時間やエネルギーを他のことに使える余裕が生まれたんです。これは自分自身の幸福感が増えるだけではなく、ただ消費する生活から何が必要なのかを考えるきっかけにもなります。この映像では、バンで生活している人たちなどに取材をしていくなかで感じた「シンプルな生活が人生を豊かにする」というメッセージを込め、“Simple Living”というタイトルにしたんです。
Q: この旅でどのような発見がありましたか?
A: やはり限られたものしか持っていかない、持っていけなかった旅だったので自分に本当に必要な"もの"や"こと"がはっきりわかった3ヶ月だったと思います。そこからなぜ買うのか、なぜ必要なのか、再利用する事は出来ないのか? という事を今一度深く考えるきっかけになりましたね。
Q: そんな和光さんとって洋服ってどのようなものなのでしょうか?
A: 洋服は、その人らしさが出るものだと思います。そして自分がなりたいようにもなれる。水みたいなものだと思っています。どんなシェイプにもなれば、誰が着るかによっても変わってくる。かっこいい人の真似をしても同じようにはなれませんしね。
Q: 洋服を「水みたいなもの」と例えるのは和光さんらしいですね。
A: “いい服”を定義することがなかなか難しいと思いますが、ただ着るということだけでなく、「これが良い!」とか「こういうものを着たい!」という意識を持って着ると、気持ちも変わるものなのかなと思います。
Q: 和光さんがサーフィンだけでなく、色々なアクティビティにチャレンジしている感覚と同じですね。「これもやってみたい」というウェルネスな感覚といいますか。
A: そうですね。意識を持って着ることでその生産背景も知ろうと思えるはずです。安いからいいのか、このブランドだからいいのか……。それを本当に着たいのかを考えることが大切なんだと思います。
Q: 勝負服みたいなものってありますか?
A: 勝負服はありませんが、着心地だけでなく、どこか居心地の良さを感じる服はあります。少し値段が高くてもそれを着ることによって、落ち着くこともあれば、高揚したり……。僕はファッションをそういうものとして捉えています。今の時代、選択肢はたくさんあります。しかし何においても“なんで?”なのかを深掘りすることが大切だと思います。その過程を経ると、はじめて誰に何を言われても気にしない自分ができてくるんだと思います。
PEOPLEはBEAUTY&YOUTHが大切にする“美しさ”と“若さ”の両方を持つオトナたちを紹介するメディアです。ときに知的で、ときに無邪気で、ときにラフで。年齢や職業にとらわれることなく、美しさと若さをまとうことが生活を豊かにするというファッションの本質を伝えます。