#LIFESTYLE

How to use handkerchief by UNITED ARROWS
とても恥ずかしい話だけど、今年32歳になる“立派な大人”の僕は今までハンカチを持つ習慣がなかった。こんな時代だというのに、手を洗った後には髪の毛をかき上げるようにして拭いたり、当たり前のようにペーパーを使ったり。そんなのは不衛生だしエコじゃないし、カッコ悪い。それでもなかなか抜け出せないでいた。そんな僕がハンカチを持とうと思ったきっかけは、ユナイテッドアローズのスタッフたちのハンカチ使いを目の当たりにしたからだった。拭くのはもちろん、滑らせたり、かけたり、香らせたり、合わせたり……。そこには僕の知らないハンカチの世界が広がっていた。彼らにとってハンカチはファッションであり、マナーであり、生きざまだった。UA流のハンカチ使いを知ったのなら、もうハンカチを持たずにはいられない。
2021.6.25
Text Sohei Oshiro
Photography Shunya Arai
靴べらの代わりに使う。
そんな使い方今まで見たことも聞いたこともなかった。ただ、ユナイテッドアローズのスタッフの中ではどうやら常識らしい。確かに靴べらがないときには、無理やり指を入れて履くか、足を無理やりシューズにねじ込むか、コツコツして徐々に入れていくしかない。でも、どちらもカッコいいとは言えないしシューズにダメージを与えてしまう。ハンカチを使えば踵もシューズも傷つかないし、何より所作がスマートだ。ポケットからハンカチを取り出し、スッと踵とシューズの間に入れる。ポイントは折りたたんだハンカチの角をインソールにつくかつかないかの位置に入れること。それより深いと抜けなくなるし、浅いとそもそも入らない。これみよがしにハンカチを使うのではなく、あくまで周囲の注目を外しながら自然体で行うことが大切らしい。
ハンカチも含めてスタイリングする。
「マナーとしてもスタイリングとしても、カジュアルでのハンカチも基本はドレスの考え方と一緒なのかもしれませんね」。そう教えてくれたのはチーフクリエイティブオフィサーの松本真哉さんだった。ポケットチーフのように、フーディーのポケットにもハンカチを差し込むなんて考えたこともなかった。でも、グレーのフーディーのポケットからのぞいた黒のエーデルワイス柄のハンカチのカッコよさを見れば、その発言にも納得だ。もちろん、ハンカチを収める位置としては定番のバックポケットだって忘れてはいけない。メンズバイヤーの内山省治さんは、オールネイビーのコーディネイトに鮮やかな黄色のハンカチを合わせていた。「ハンカチを選ぶ基準は色々ありますがネクタイも大好きなので、それを選ぶ感覚で色柄を決めることも多いですね」とのこと。ユナイテッドアローズのスタッフにとって、ハンカチはもはや日々のコーディネイトに欠かせないアイテムなのである。普段洋服では取り入れにくい柄物や色もの。しかしハンカチというポイント使いであれば、確かに大胆なものを気分によっては選びたい。ドレススタイルにおけるVゾーンが、現代のカジュアルスタイルではこんなところに潜んでいた。
水滴を拭い、コースターとして使う。
日に日に日差しが強くなるこれからの季節、喉は冷たい飲み物を欲する。でも、すぐに容器は水滴だらけになるし、デスクやテーブルも汚してしまう。そんな時にもハンカチが役に立ってくれる。ユナイテッドアローズのスタッフとの打ち合わせ中、容器周りをサッと拭ってコースター代わりに敷く人を見かけたことがある。その一連の動きはとても紳士的だったし、何よりミーティングテーブルが一枚のハンカチのおかげで華やかになった。美しいマナーのおかげで、いつもより充実した打ち合わせができた気がした。
食事の際はナプキン代わりに。
食事のときこそ人柄が出るとはよく言ったもの。何を注文するのか、注文の仕方、周囲への気配り、テーブルマナーなど、あらゆるところでその人となりがわかる。ユナイテッドアローズのプレスを務める藤原さんと一緒にランチした際、「パスタどうですか?」という提案にYESと応えたものの、彼は白シャツ。若干不安になったのだが、いざパスタが届くと、彼はバックポケットからハンカチを取り出し、当然のようにナプキンの代わりに使っていた。その所作やマインドがあまりにカッコ良かった。美しいマナーとして、サステイナブルなマインドとして、食事中にもハンカチを持とう。そう強く心に誓った昼下がりだった。
香りのクッションとして使う。
香水は好きだけど、香水の香りが強すぎる人は苦手だ。どれだけいい香りだとしても、度を超えて周りに香りをまき散らせば、それはもはや“スメルハラスメント”になってしまう。だから朝自宅を出るときには、スメハラにならないよう体のどこに付けたらいいのかいつも迷っていた。でもまさか「体につけない」という選択肢があるとは思わなかった。自称香りフェチのプレスの渡辺健文さんは、体ではなくハンカチに香水をまとわせていた。そうすることでほのかに香るし、手を洗って水滴を拭き取るたびにフワッと香りが目の前だけに広がる。なんて素敵な香水とハンカチの使い方なんだろう。早速僕も真似してみようと思った。
上品に汗を拭う。
フーフー息を切らせながらダラダラと流れる汗を、ハンカチを上下させてゴシゴシと拭う。僕はそういう光景を見ると少し嫌な気持ちになる。生理的に受け付けないという人も多いはずだ。でも汗をかくのを止めることなんて出来やしない。自分自身があの姿にならないためにはどうしたらいいのか。その答えをPRマネージャーの橋本さんの振る舞いから教わった。橋本さんは、決して汗を雑に拭わない。片手で(たいていの場合は両手)でハンカチを持ち、縁で肌を抑えつけるようにして汗を拭き取る。その所作があまりに上品で、周囲の人に不快感を与えるどころか感心されてもおかしくないぐらいだ。僕も汗を拭う際には橋本さんのように、スマートさを心がけようと思う。
これまでハンカチを持たずに生きていた僕は、ユナイテッドアローズのスタッフのハンカチ使いを知って、いてもたってもいられなくなってハンカチを買いに走った。でも、得たものは単にハンカチやハンカチを持つ習慣だけじゃない。ハンカチという一つのアイテムを通して、美しいマナーやスタイリッシュな着こなし、周囲を憚る気持ちなど、多くのことを学ばせてもらった。彼らにとってハンカチとはファッションであると同時に生きざまなのだ。UAのスタッフこそ今の時代の紳士であると思う。僕も彼らのような存在でありたいと思い、今日も後ろポケットにハンカチを忍ばせている。
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