#LIFESTYLE

革靴を嗜む

Shoes by Shoji Uchiyama(UNITED ARROWS)

「革靴をスニーカーのように履く」。え、そんな?と思うかもしれないが、革靴は(足のカタチやサイズに合ったものを選べば)履き心地も快適で、ドレススタイルまでカバーできるという点ではスニーカーに比べてもスタイリングの幅は広いかもしれません。極端な話、<ヘインズ>のパックTシャツに<リーバイス>501でも足元が革靴だと、品よくまとまる。「あれ?ちゃんとしていらしいますね」とか、「いつも気をつかってますね」とか。これは革靴自体が持つ品格が培ってきた社会性によるものだろう。その恩恵を授かりつつ、まるでスニーカーを履くようなマインドで試してみる。ユナイテッドアローズのメンズバイヤーを務める内山省治が打ち出す、革靴2.0。

2021.9.10

Text Mikiya Matsushita
Photography Hirokazu Kobayashi

「近年は、リラックスした空気感がファッションでも好まれ、それに合わせて靴もスニーカーが主流でした。しかし、最近は徐々に革靴を求める声も増えているように感じます。どちらが良い悪いはもちろんありませんが、革靴の魅力をお伝えするならば、比較的どんなシーンにも適応する“社会性”と言ったところでしょうか。あとはやはり印象。そんなつもりがなくとも革靴を履いていると『どこか上品』という印象を持ってもらえるはずです。

 そのようなお話をすると革靴は品よく履かなくてはいけないと思われてしまうかもしれませんがそんなことはないと思うんです。例えば私見ですが、スニーカーの中でもきれいに履きたいものと少し汚して味を出して履きたいものがあるように思います。その感覚は革靴でもあっていいと思うんです。丁寧にお手入れされたピカピカの状態が似合う靴とある種、ラフに扱われたような男らしさが似合う靴。

 ここでご紹介するのは、主に『今履きたい革靴たち』とそのコーディネート。永く愛される名品からこの秋冬の新作もピックアップいたしました。足の形に合った革靴はスニーカーにも決して引けを取らない履き心地ですし、コーディネートの幅も広がります。歴史やセオリーももちろん大切ですが、まずは純粋に『かっこいいから』で革靴を選んでみてもいいと思います」

 

 

 

マスターピースを捻ることなく合わせる
正統派のかっこよさ。

 

「とんでもなく価値観が変化してしまわない限りは、ずっと永く付き合っていける究極の定番シューズ。内羽根のストレートチップ自体は、フォーマルな場にもふさわしい格式のあるシューズのひとつでもあります。そのなかでも<ジョン ロブ>の「シティ2」は、もっともスタンダードな位置づけであり、最高のシューズであることは間違いありません。靴が持っている気品を生かすため、モノトーンで全体をまとめていますが、正統派な装いが改めてかっこよく新鮮に映るいま、こうしたマスターピースを捻ることなく合わせるストレートなかっこよさは健在です。また、こうしたシューズはやはりドレススタイルにこそ合わせるべきものですが、もう少しファッションとしてスタイリングを捉えたときには、ジーンズのような、カジュアルなパンツと合わせることでギャップが生まれて楽しいスタイリングが生まれるかもしれません。TPOはわきまえつつも、ルールを破ってみたり、あり得ないことがあり得たりしたときに可能性が広がりますよね」

JOHN LOBB CITY Ⅱ ¥192,500 ASK STORE

シャツ¥33,000(ソブリン)BUY NOW

ニットタイ¥9,900(ニッキー)BUY NOW

 

 

 

 

ドレスシューズにおける最もスタンダードなストレートチップで、細身のラウンドトゥ、程よいロングノーズが特徴となる、<ジョン ロブ>におけるアイコン的ラスト7000を採用。英国靴らしい端正さを保ちつつも、色気とエレガンスを感じさせる一足。

 

 

 

カジュアルな装いを
足元で“締める”オールデンの万能型プレーントゥ。

 

「現代的な視点で言えば、非常にユーティリティなのが外羽根のプレーントゥ。若い方は“オフィサーシューズ”などで馴染みがあるかもしれません。外羽根のプレーントゥの最大のメリットはドレスな要素とカジュアルな要素が同居していることにあります。つまり、スーツスタイルにも合わせられるし、カジュアルスタイルで履くこともできます。そう意味では革靴の良さを体現している靴と言ってもいいかもしれません。だから、スタイリングもドレスな要素とカジュアルな要素をミックスしてブレザーとジーンズを合わせました。 スタイリングを“締める”意味で<オールデン>のプレーントゥを合わせる。<オールデン>はこうしたスタイリングには本当によく似合います」

ALDEN プレーントゥ ¥127,600 BUY NOW

ジャケット¥46,200(ユナイテッドアローズ)BUY NOW

セーター¥17,600(ユナイテッドアローズ)ASK STORE

 

 

 

 

アメリカらしさを体現するブランド<オールデン>。最高品質のコードバンの美しさを存分に堪能できる外羽根プレーントゥは、バリーラストの990が代表的なモデルとして挙げられるが、こちらはモディファイドラスト。履きこんでいくことで深まっていくコードバンの経年変化も魅力のひとつ。

 

 

 

グレースエードの素材感で季節感を、
バックルの装飾性で遊び心を。

 

「由緒正しい歴史のあるモンクストラップデザイン。カジュアルなテイストの<パラブーツ>の「ミカエル」にこのモンクストラップを落とし込んでいるというところがまず絶妙です。ビットもそうですが、モンクストラップのバックルというのは、メンズ靴の中ではあまり多くない装飾性を施された靴の一つです。しかし、今回の靴は、カジュアルな佇まいのなかにある装飾性というバランス感。ちょっと足元で遊びを入れたい場合はこれぐらいのシューズをおすすめしたいですね。あとはグレースエードというところも新鮮に感じてもらえるポイントかなと思います。グレーと白のトーンでモノトーンのなかでもソフトでやわらかいニュアンスを大事にしています」

PARABOOT MICHAEL BRIDE ¥72,600 BUY NOW

セーター¥58,300(ヴァレット)BUY NOW

パンツ¥41,800(ハクロ)BUY NOW

 

 

 

 

<パラブーツ>人気の火付け役となった「ミカエル」のモンクストラップタイプが、写真の「ミカエル ブリッド」。ミカエルと木型は同じだがデザイン的にすっきりとした印象に見えるため、ボトムのシルエットや裾幅を選ばずにコーディネートできる。

 

 

 

足元に華やかさを加えたいのなら、
まずはタッセルというトッピングを。

 

「足元にお洒落さを出したい、取り入れたいと思ったら、まずタッセルローファーをおすすめしたいですね。タッセルは、スタイリングに華やかさを出してくれる、本当に素敵なトッピングなんです。そういう意味ですごくファッション性の高い靴だと思います。ここで紹介しているタッセルはスタンダードというよりはちょっと変化球タイプのもの。室内履きの流れをくんだ薄いソールで華奢な作りになっているので、とてもエレガントです。だからドレープがきれいに出る太めのスラックスとのバランスがすごく優雅で大人っぽい。そこにハウンドトゥースのシャツジャケットを合わせて、ちょっとフレンチをイメージしたスタイリングになっています。エレガントさのあるタッセルだからフレンチテイストとも相性がいいと思うんですよね」

UNITED ARROWS タッセルローファー ¥24,200 BUY NOW

シャツ¥55,000(ヴァレット)BUY NOW

パンツ¥39,600(ベルナール ザンス)BUY NOW

 

 

 

 

ベルジャンシューズをモチーフにしたタッセルローファー。シングルソールで華奢なフォルムでありながらも、驚きのクッション性により非常に高い履き心地を実現。素足履きも想定し、アッパーはソフトなレザーを使用。クラシカルな装いには適度なハズしが出てこなれた印象に。カジュアルな装いではエレガントな雰囲気をプラスする。

 

 

 

適度なボリューム感で汎用性抜群。
気負わずに履いてほしいペニーローファー。

 

「やはりローファーのいいところは、ドレススタイルのなかでは程よい抜け感を演出してくれますし、カジュアルスタイルでは品をプラスしてくれるところでしょう。革靴のなかでも一番履く頻度が高いっていう人も多いはずです。
そんなローファーに何を求めるかで選びかたも変わってきます。この<クロケット&ジョーンズ>のローファーは、とにかく“気軽に”、“ラクに”、まさにスニーカーのように履きたいという人にオススメしたいです。程よいボリュームがありつつも、合わせモカの仕上げですっきりとした印象で、例えば写真のようにファティーグパンツに畦編みのざっくりしたニットを合わせたスタイルでもローファーを合わせることで、品よくカジュアルアップします」

CROCKETT & JONES ペニーローファー ¥88,000 BUY NOW

セーター¥79,200(ソブリン)BUY NOW

パンツ¥14,300(ユナイテッドアローズ)BUY NOW

 

 

 

 

LAST376の木型を採用した<クロケット&ジョーンズ>の「Lincoln2」。適度なボリューム感のあるバランスで、ドレススタイルはもちろん上品なスポーツスタイルにも好相性な別注モデル。

 

 

 

オフのファッションを楽しむ
チャーチのミドルカットブーツ。

 

「チャッカブーツは長く愛され続けているものなので、改めてということでもないですが、品よく履いていただけるミドルカットのブーツって実はほかにあまりなかったりするんですね……。そんな中で<チャーチ>の「RYDER」は最もスタンダードなチャッカブーツと言えます。ミドルカットだからこそ、パンツのレングスで印象も変えられます。例えばこれからのシーズン、厚手のソックスなんかを履いて、靴とパンツ、ソックスの合わせを楽しむこともできますよね。夏になったらショーツと合わせるのもいいですよね。と、合わせがいのある靴で、オールシーズン履けるブーツだと思います」

CHURCH’S RYDER ¥102,300 BUY NOW

シャツ¥53,900(カルーゾ)BUY NOW

Tシャツ¥9,900(ユナイテッドアローズ)BUY NOW

パンツ¥30,800(セラードアー)BUY NOW

 

 

 

 

英国ドレスシューズの定番を数多く輩出している<チャーチ>だが、オフの日のファッションやドレスダウンスタイルに合わせやすいチャッカブーツの「RYDER」も名作のひとつ。毛足が長く、柔らかなスエードがこのチャッカブーツの魅力。