#LIFESTYLE

Wardrobe Maintenances by 5 Professionals

物持ちがいい人たちは一体どんなことをしているのだろうか。2021年最後のコンテンツは年末の大掃除と一緒にワードローブのケアも。シャツや革靴、ウールのニットやデニム、そしてジュエリー。その道の超プロフェッショナルたちに、いろいろな「やっておくといいよ」や「知っておくと得だよ」というアイディアを聞きました。大切な洋服を長く素敵に着るための身近な工夫。

2021.12.22

Text by Takumi Sato(kontakt)
Photography by Toru Oshima

 

 

ウールのニットは生き物?
by ジェス・マクガイヤー・ダドリー(John Smedley グローバルブランド ディレクター)

ジェスさんは英国に本拠地を据える<ジョン スメドレー>のグローバルブランドディレクターとして活躍。デザインディレクションから“シーズナルカラー”と呼ばれるその季節のみ展開する色の提案まで、今の時代の空気感を読み取り、237年の歴史と2つのロイヤルワラントを持つ<ジョン スメドレー>のニットウェアに落としこみます。当然<ジョン スメドレー>のニットウェア愛はかなりのもの。そんなジェスさんが<ジョン スメドレー>だけでなく、お手持ちのファインゲージのニットウェアを長持ちさせ、ベストな状態で着るための方法を3つのステップで紹介します。

 

天然繊維は休息と水分を
一度着用したウールのニットは24時間休ませることが大切。しっかりと休ませてあげることで、ウール繊維が本来持っている弾力性と伸縮性が元の形へ戻してくれます。着用後は蒸気が充満する、例えばお風呂場などに吊るしておくといいでしょう。疲れて脱水状態のウールが水分を吸収し元気な状態になります。また蒸気の水分を含むことで繊維が膨らみシワを取り除いてくれます。ウールは天然繊維。つまり生き物です。休息の時間を設け、お水もしっかりと与えてください。

 

呼吸困難な状態はダメ
天然繊維には呼吸をさせてください。だからこそ裸のままが理想ですが、もし衣替えなどでクローゼットの奥や押入れにしまうことであれば通気性のいいコットン100%のものか、またはウールの保存袋を使うのがいいでしょう。クリーニング屋でもらうようなビニールの袋をかぶせて、縛るようなことはダメです。また衣類をティッシュペーパーで包んでおくと、保管中の黄ばみやひっかかりを防ぐこともできます。

 

虫食いの予防
保管するうえで、ウールやカシミヤなどのニットウェアで気をつけないといけないのが虫食い。ドラッグストアの棚にたくさん防虫剤が並んでいますが、私自身も含めてあの独特の香りがどうも苦手……。そんなかたにおすすめしているのが、レッドシダーやクスノキのブロックやハンガーを防虫剤の代わりに使う。虫食いの被害を防ぐだけでなく、深緑の香りも心地いいのでオススメです。

ジョン スメドレー エコブロック(4P)+カンフルオイル5ml ¥2,970


 

 

 

インソールで靴をいたわる
by 森 健(FOOTWORKS 代表)

シューズのインソールをオーダーメイドで作成する専門店<フットワークス>の代表 森健さん。彼の母親が体が弱いことから、どうにかできないかと父親が独学で始めたインソール作りを継承。現在ではプロアスリートも森さんが手がけるインソールを頼りに来店する。ちゃんと歩けるようになれば、ソールのすり減り方、シワの入り方も綺麗になる。

 

大切な靴を長く履きたいのであれば
「靴を履いた後のアフターケアももちろん大切なことですが、もっと長く大切な靴と付き合いたいということでしたら、“正しく歩く”ということが靴を長く美しく使うためのポイントだと思います。正しく歩くためには、真っ直ぐ立つ必要があります。体重のかけ方がアンバランスになってしまうと、例えば足をひねって歩いてしまったり……。するとソールが変な角度ですり減る。しかしこれは意識したからと言ってすぐに治るものではありません。体重がかかる位置を変えるのは難しい。ですから、インソールなんです。足は、全身を支えている部分。足の使い方を整えることで足のねじれ、歩き方、姿勢も整います。すると靴も美しい形のまま使いこまれていきます」

FOOTWORKS
〒107-0062 東京都港区南青山6-11-3 神通ビル207
03-6434-1098(※完全予約制)


 

 

 

デニムの洗い方と洗いどき。
by 藤原 裕(BerBerJin ディレクター)

原宿のヴィンテージショップ <ベルベルジン>のディレクターを務める藤原裕さん。ヴィンテージデニムマイスターとしてデニム業界のトップで活躍する。「週の6日はデニム」という藤原さんから、清潔感のあるかっこいいデニムに育てるためのコツを聞きました。

 

洗剤と色落ち
「デニム好きな人が一番気にするところはやっぱり洗濯による色落ちですよね。僕が実際に使用していたり、お店にくるお客様におすすめしている洗剤は<ビヨンデックス>のもの。この洗剤は生地の表面にコーティングを施し、色を落とさず皮脂・汗の汚れをとることができるように6年近く試行錯誤して作られたものです」

 

洗濯のしどきは膝から
「スラックスでいうクリースがピシッとまっすぐ入っていると清潔感を感じられるように、デニムには膝が出てるか、出ていないかで清潔感があるないの印象に大きく関わってきます。お客様からも『洗濯ってどれぐらいの頻度でしたらいいですか?』とよく聞かれます。頻度というよりも、膝の部分で判断してほしい。膝の部分がぷくっと浮いてきたら洗いどきです。それはデニム生地が膝の伸縮によって薄くなっている証拠です。放置しておくと破れにつながってしまいますから、水を通してあげることで、コットンが縮み生地組織が再び強くなる。色落ちやシワに関しては芸術的な部分がありますが、膝が出ているのは気をつけた方が良いと思います」

BEYONDEXX No.1 SPECIAL DENIM CARE WASH ¥4,290


 

 

 

ジュエリーの天敵は空気
by 芦沢 佳澄(Preek デザイナー)

“日本で作るジュエリーの新しい可能性”をテーマにしたジュエリーブランド<プリーク>のデザイナーを務める芦沢佳澄。「ジュエリーは残るもの」という彼女の言葉の通り、保管も大切。長く綺麗に使いたいのであれば“空気に触れさせないこと”がポイントです。ジュエリーボックス的なものに入れてきちんと保管されている方も多いと思いますが、実は身近にあったもう少し手軽に出来る保管の話。

 

業界に浸透している保管法
「素材によってもケアの仕方は異なるのですが、基本的にジュエリーは空気や汗などによって酸化し、それが黒ずみだったりの変色してしまう主な原因です。ですから、ジュエリーを外したらティッシュで拭いて空気にあまり触れないように保管するのがベストです。身近なものを活用するのであればジップ付きの袋。実は…あまりみなさまが目にする機会は少ないと思うのですが、工房から物流倉庫、そしてお店に納品されるまで、こうしたジップ付きの袋にジュエリーを入れています。極力空気に触れないように。ジップ付きの袋に入った状態であれば酸化するスピードが明らかに遅いという実体験もあります」


 

 

 

シャツのケアは“積み重ね”
by 栗野 宏文(ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブディレクション担当)

栗野宏文はユナイテッドアローズの中でも“物持ちがいい”として有名。当然ものに愛情を持っていたり、それぞれのアイテムにストーリーがあるからこそ大切にするという理由もあるが、それ以外にきっとなんかしら特別なケアをしているだろう……と思って話を聞いた。栗野が持ってきたのは40年以上着ているという<ビッグマック>と10年選手の<サルバトーレ ピッコロ>のシャンブレーシャツ。そんな長い付き合いをしているとは思えないコンディションだった。

 

ケア以前、シャツの買い方から。
「前提としてシャツは家で洗えるものしか買わないようにしています。ウールのシャツでも自宅で洗えるものを選んでいます。デリケートなものは手洗いですが、ほとんどが洗濯機で洗っていますね」

 

着たあとはすぐに洗う。
「基本中の基本ですけど着たら洗うことは続けていることです。皮脂などは付着してしまうと、黄ばみや痛みの原因になってしまいます。だからすぐ洗うこと。大事にしすぎて洗わない人もいますが、洋服はオブジェじゃないので着てなんぼだと自分は思っています。洋服は着るために買って、着ないなら買わない。シャツとの付き合いは大事に扱うけども丁寧にしすぎないことなんじゃないでしょうか?」

 

SEE MORE