#LIFESTYLE

わがままな音楽

Interview with Peter Barakan

ゆっくりと音楽に耳を傾けたい。ウトウトしてしまうような心地いい音楽、気分をアゲてくれる音楽。YouTubeやSpotifyで検索するのもいいけど、やっぱりラジオ。ふと耳に入ってくる音楽はある意味サプライズプレゼントみたいなものに近い。知らなかったアーティスト、聴こうとしなかったジャンルの音楽に出会わせてくれる。毎週日曜日夕食前の6時は、いい音楽に出会う時間。インターFM897「BARAKAN BEAT」でラジオパーソナリティを務めるピーター・バラカンさんにラジオの楽しさ、そして音楽との付き合い方について教えてもらいました。

2020.10.30

Photography Yasuyuki Takagi
Edit Sohei Oshiro

ピーター・バラカン
1951年ロンドン生まれ。80年代のYMOらとの仕事を皮切りに、音楽番組の司会やラジオのパーソナリティとして活躍。現在もフリーのブロードキャスターとして、複数のラジオ番組や自身が監修するフェスを通して、素晴らしい音楽を世の中に広め続けている。

「音楽をどう聴いていいかわからない」「何を聴いていいかわからない」と思う方がたくさんいると思うのですが、バラカンさんの周りはどうですか?

 

確かに音楽とどう付き合っていけばいいか分からないという相談はよく受けますね。今はレコードやCD、それに配信などなんでもあるから、何から入ればいいのかわからないんだと思います。でも、そんなに難しく考える必要はないと思いますよ。例えばYouTubeのおすすめで出てきた曲を聴くのもありですし、Spotifyで用意してくれたプレイリストを聴くのもありです。もしくは趣味があう友人におすすめしてもらうとか。友達が「これ面白いよ」と言ってくれたものを聴いてみて、それが気に入ったらそのアーティストの他の曲や関連の曲を聴けばいい。そこから自然に広がっていくはず。“そんなあなたにおすすめの音楽”はすごく便利なツールですよ。あとはやっぱりラジオ。

 

“やっぱり”というのは?

 

私自身が長年DJをしていることもあるのですが、ラジオから流れてくる音楽ってどこか夢があるものなんですね。実際に多くのリスナーから、「誕生日プレゼントとしてこの曲をかけてください」とか、「この曲をぜひかけてください」とかのリクエストがあるんです。そんなの自分でかければいいじゃんと思うかもしれませんが、電波を挟んだり、不意に聞こえてくるだけで同じ曲もまた違った聴こえ方をするんです。故意的に探すインターネットもいいですが、それとは違ってラジオはいわば偶然の出会いのような場所。僕のラジオは出会いが起こる番組であってほしいと思っています。

 

バラカンさんのラジオ番組では何を基準に選曲しているのですか?

 

本当に自分が好きな曲、自分が知って欲しいと思う曲しかかけていません。だから僕は自分のことは決して評論家とはいわないんですね。評論家だったら産業ロックから今のヒットチャートまですべて知らないといけないじゃないですか。でも僕はそういったものは知らないし、知ろうとも思わないし、語ろうとも思いません。それでいいと開き直ってます。

 

 

 

 

外出している際に、イヤホンなどで音楽を聴くことはありますか?

 

イヤホンでは聴かないですね。新幹線や飛行機などの移動時間が長い時ぐらいですかね。

 

それは音楽を聴く際に何かバラカンさんご自身が気をつけていることですか?

 

そうですね、音楽を聞く時、特に新しい音楽を聞く時は自分の精神状態がすごく大切。例えばある友人からおすすめの曲のリンクが送られてくるとします。その曲を仕事のことで急いでいる中で聞くのと、気持ちに余裕がある時にゆっくり聴くのとではまた音の感じ方が大きく違います。僕は車を運転する時によく音楽を聴くんですが、運転するのに余計なことは考えてない、頭の中は道順のことぐらいだから、音楽がスッと入ってきます。

 

スピーカーもそうですが、レコードやCDの状態やリマスター盤などにこだわりはありますか?

 

もちろんなるべく良い音で聴きたいという気持ちはありますが、こだわり始めるとキリがないですからね。でも、悪い音楽を良い音で聴くよりは、良い音楽を悪い音で聴いた方がまだいいと思っています。悪い音楽という言い方も失礼ですけどね(笑)。

 

常に音楽に囲まれた生活をしていると思いますが、音楽を聴かない時間もあるんでしょうか?

 

自宅でも番組での選曲のことを考えながら音楽を聴いていることが多いです。でもそうしていると音のない時間も欲しくなるので、晩御飯食べているときは聴かないですね。

 

朝の時間は好きですか?

 

僕にとって頭の回転が一番いいのは朝ですから、早寝早起きの生活が一番性に合っています。学生時代もあまり夜更かしはしていませんでした。マジメなのかな……。今も雨が降っているとき以外は、だいたい6時に起きて、服を着てそのまま家を出ます。駒沢公園で45分ほど散歩をしてから、シャワーを浴びて、メールを見て、8時ぐらいに朝ごはんを食べ、その後から家で仕事か、外で収録をするか。何も変わったことはしていませんよ。

 

朝ごはんに全粒粉のベーグルを食べるという習慣は現在も?

 

毎朝、ミルクの入った紅茶を飲みながら全粒粉のベーグルを食べていますよ。あとは女房が切ってくれる果物。ずっと昔から変わらない私の朝ごはんですね。恐怖のワン・パターン人間です。好きなものがあったらそれでいい、そういうタイプなんです。ワインだって同じ。近くのスーパーで手頃な値段のもので僕のお気に入りと、妻のお気に入りを買って帰ります。誰かに勧められると試してみますが、基本的にはここ何年も同じ銘柄ばかりを飲んでいます。好き嫌いが多いので好きなものを素直に求めています。

 

コロナ前と今とで何か心境の変化はありましたか?

 

精神状態も聴いている音楽も、何も変わりません。もちろんリスナーからのリクエストは変わるし、対応はします。けど、自分自身が聴く音楽は何があっても変わりませんね。いつもと変わらない生活を送り、いつもと変わらない音楽を聴く。そしてできるだけ平常心でいたいと思っています。

ピーター・バラカン
1951年ロンドン生まれ。80年代のYMOらとの仕事を皮切りに、音楽番組の司会やラジオのパーソナリティとして活躍。現在もフリーのブロードキャスターとして、複数のラジオ番組や自身が監修するフェスを通して、素晴らしい音楽を世の中に広め続けている。