B&Y

Akinobu Maeda
Art director
コットンニット

Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham


Published February 1, 2021

Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham

Published February 1, 2021

アートディレクター前田晃伸さんのデザインには“遊び心”がある。2012年にPOPEYEがリニューアルした時も、「情報を整理して伝える」だけでなく、ページを見るたびに洋服にはもちろん、ラーメンや街の風景にさえもドキドキ・ワクワクした。予想もしないグラフィックデザインでいつものものがいつもよりかっこよく見えたり、美味しそうに見えたり。そんな前田さんのデザインするうえで根底にあるのが、疑問を持つこと。当たり前のことを当たり前としない。そんなマインドが、今まで見えずらかった人や物や場所の美しさを伝えるのだろう。
「ものは減らしているつもりなんだけど」と言う前田さんのオフィスは、好奇心に満ちた前田さんの頭の中を具現化したような空間だった。

Q&A with Akinobu Maeda

Q: 何度かお仕事させていただいていますが、前田さんのグラフィックデザイン、特に誌面のデザインってどこか整ったバランスをあえて崩しているように見えることもあります。

A: まぁ、ある種の悪ふざけみたいなものです。

Q: 悪ふざけ……。いい意味での?

A: そう(笑)。なんかもうちょっと面白くしたいなって思っちゃうんですよね。

Q: 打ち合わせの席でも、ものすごくよく質問されますよね。

A: 他の方の進め方を知らないのでなんとも言えませんが、話しながらプロジェクトのニュアンスを掴んでいく感じです。話しがそれるかもしれませんが、常々思うわけですよ、決まり事が多いなぁと。「これって常識だよね」みたいなことに対してまず疑ってみることからはじめるんです。いわゆる、慣習とかなんとなく決まっている事とかね。「タイトルは一番上に置く」みたいなこともまずは「ここでいいのかな?」と自問自答していく。それは合理的に物事を進めたりとか、誰でも再現できるようにシステム化していくことは大事なことだと分かるのですが、それによってこぼれ落ちていくことが結構あるなぁと思うんです。もう一回、最初から考え直してもいいんじゃないかって。その分大変になることは分かっているんですけどね。些細なことにも疑問を持ち続けてブラシュアップしていくことが、みんなにとって「なんか違う」といったような印象を与えているのかもしれませんね。

Q: それが、一般的に見ると、“遊び心”や“悪ふざけ”になるということですね。

A: そうですね。そうだといいです! だから驚かしてやろうなんてまったく思っていないんです。ただただ真面目にやったらこうなったっていう感じ。

Q: ものは捨てますか?

A: 捨てますよ! これでも最近、結構捨てたんですけどねって散らかり放題ですが(笑)。

Q: 捨てられないものはなんでした?

A: 昔は、「あれもこれも大切なもの」みたいなところがありましたが、今となっては特にないのかもしれません。なんとなく置きっぱなしにしているものとかありますが、ゼロになっても全然大丈夫な気はしています。

Q: ミニマリストって言葉を最近よく聞きます。

A: 時代にもあってるし、ライフスタイルの在り方としてはいいと思う。でも、僕はミニマリストじゃないです。不思議なもので人ってわかっているようで、よくわからない生体じゃないですか。そういう意味で言うと、なんでもかんでもストイックに合理的にしていくことが人の生き方として正しいのかな?って思ってしまいます。

Q: 合理的。生産的。

A: 例えば、恋愛であったりとか何かに夢中になることって必ずしも合理的なことではなかったりすると思うんです。だけども、そういう営みがあるから生活が楽しくなったり、豊かになったり。それはファッションにも通じることだと思います。この自転車のサドルがついた椅子もまさにそれを具現化したようなもの。痛くて座れないけど、近くにあるだけで楽しいんです。職業柄なのか提案する側としては、色んなサンプルを駆使して、こういうことしたいんですって言わないと理解してもらえないことが多かったりもします。デザインでは伝わらないけど、二次的なものに置き換えたりすると伝わることもあります。考えごとをする上でのヒントになるかも・・・と思って、いまだ使い方がよくわからないけど、インドで購入したプロダクトとかもあります。なんだかワクワクするんですよね。

Q: インド旅行よく行かれていますよね。

A: 自分たちの常識が通じないし、合理的なところもない。言語も多すぎて共用語は訛ったインド英語。そんなハプニングを毎度毎度楽しんでます。

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