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Hideyuki Nakayama
Architect
バスクシャツ

Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham


Published February 1, 2021

Text by Takuhito Kawashima
Photographs by Gottingham

Published February 1, 2021

ヘリット・トーマス・リートフェルトの図面から起こしたという白い椅子がアトリエの真ん中に置いてある。建築家の中山英之さんが大学に入学する前に制作したものらしい。
「建築家にとって椅子は神聖なもの」と言う中山さんがこの約25年前に制作した椅子は、今のところ最初で最後の「椅子」だ。
 気鋭の建築家として知られ、東京芸術大学建築科でも教鞭を振るう中山英之さん。住宅建築に限らず、未完の建築「草原の大きな扉」や紙に石のテクスチャーを印刷して組み上げた「かみのいし」を制作したりと建築業界では特異な存在として注目を集める。スケッチしたり、言葉を書いたりすることから紡がれる中山さんの空間発想は制約に縛られない、なんとも自由で、ファンタジーで、感性を豊かにしてくれる。

Q&A with Hideyuki Nakayama


Q: BEAUTY&YOUTHのコンセプトに“永続的な美”と“精神的な若さ”という言葉があります。そのコンセプトを体現する建築ってどのようなものが思い当たりますか?

A: ローマ時代の建物、例えば水道橋とか、人や動物を決闘させていた闘技場って、今もイタリアやヨーロッパ各地に残っていますよね。闘技場などそうでなければ困りますが、造られた時代の機能はとうに失っていても、そこに存在することが許されている。道具としては役目を終えているけれど、まるでそれが当然であるかのように悠々と建ち続けているなんて、考えてみると不思議です。だって僕たちは、どんなに心血を注いで設計しても、それが役目を終えた後にどんな存在になるのかまでは、デザインできません。ローマ時代の技術者だって、それはきっと同じです。でも、道具としての生を終えた存在が、いよいよその存在感を示すようなことって、コロッセオに限らず、建築にはわりと普通のことなんですよね。

Q: 建築は、働きを終えてもなお美しい風景の一部として残り続けるということですね。それが永続的な美と精神的な若さ。スケールが大きい話です。

A: 僕たちが経験できる時間って、肉体的には80年とかそのくらいです。だからきっと建築は、自分が経験している時間の前後にもたっぷり時間があることの、証でもあるんだと思うんです。多分、自分の経験できる時間を超えた何かがその人にもたらす感覚って、大事だと思います。

Q: 何をしてる時にワクワクしますか?

A: それはもう、煮詰まった時に新しい考え方が見えてきた時です。

Q: それってご自身の経験上なのか、ハッと外部から?

A: ほぼ会話の中からですね。事務所の仲間との雑談とか。

Q: 常にヒント探しているんですね、無意識的に。

A: いえいえ、そんなストイックじゃないんですけどね。でも、ここにあるこれは、今自分たちが考えているよりももっと素晴らしくなるはずだって、いつもどこかで疑っているんでしょうね。そこに突然思わぬ角度から鮮やかな補助線が引かれて、「そういうことだったのか!」ってなることが、ほんとうに稀にあるんです。世紀の大発明とかじゃないですよ。でも、さっきまで積み上げたてきたものを、別の角度からもっとすっきりと説明できるような言葉や視点に行き当たった時には、ドキドキしますね。

Q: そういえば、撮影中に「椅子は神聖なものなんです」っておっしゃっていましたが、あれはどういう意味ですか? 

A: 一生頭の上にのっけて歩かなきゃいけないような、例えば僕が帽子を作っていたとして、一生その帽子をかぶって歩き続けられますか、というような。それが僕にとっては椅子なのかな、って。

Q: 一生使えるかってことですか?

A: その椅子を作った時の自分をずっと信じられるかということ。あの時はああだったけど、やっぱり違ったかなっていうのは許されないものが椅子です。

Q: それは歴史的に見て、建築家が手がける椅子とはそういうステートメントを持つものということですか?

A: そんなそんな、僕の椅子への一方的な感情です。

Q: 作ったことはありますか?

A: 設計したレストランに合わせて作ったりはもちろんしますよ。でも、どんな時代のどんな部屋にも、そこで「これが私の考える椅子です」と言える何かはまだ作れてないですね。頼まれるのを待ってないで、今から考えなきゃ。

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