
ヒト
2025.02.20
ロールプレイング大会ファイナリストが語る、接客への想いとこだわり。
1995年から毎年開催されている、「SC(※)接客ロールプレイングコンテスト」(一般社団法人 日本ショッピングセンター協会が運営)」は全国のショッピングセンターで活躍する接客スキルが優れたスタッフを選出するコンテスト。今年は〈オデット エ オディール〉渋谷シンクス店の寺尾 円香さんがファッション・物販部門で優勝を果たしました。寺尾さんとともに全国大会へと進出した〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉 名古屋タカシマヤ ゲートタワーモール店の伊藤 聡さん、〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉 岡山一番街店の市川 莉緒さんを迎え、3名がコンテストに挑む理由や接客に対してのこだわりについてお聞きしました。
※SC:ショッピングセンターの略
photo:Yuco Nakamura
text:Mikiko Ichitani
コンテストに挑戦し続ける意義と気づき。
寺尾 昨年に引き続き二回目の挑戦となりましたが、時代に伴い変化してゆくニーズや年々高くなる接客レベルの中、自身の接客スキルを測る貴重な機会だと思い出場を決意いたしました。
〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉タカシマヤ ゲートタワーモール店の伊藤 聡さん
〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉 岡山一番街店の市川 莉緒さん
− 本大会出場へ向けて、日々どのような意識で接客と向き合ってこられたのでしょうか?
伊藤 普段からお客様の心が動くポイントを探すように意識しています。商品の魅力はもちろん、店頭で心が動いた結果として買っていただけているという実感が日々あるので。お客様と接するうえでうまく噛み合わないなど違和感を感じたら店舗のメンバーに同じような設定でロールプレイングをしてもらったり、その都度クリアしていくようにしてきました。
〈オデット エ オディール〉 渋谷シンクス店の寺尾 円香さん
市川 研修やコンテストを通して、接客の3大要素である「お客様のニーズ」「お客様の魅力」「商品特性」を掛け合わせた伝え方を意識するようになりました。お客様の表情や目線、仕草からニーズや魅力を察知しつつ、決めつけにならないように言葉でしっかりと確認しヒアリングするように心掛けています。また、魅力を伝える際の言葉選びも凡庸にならないよう自分で調べたり、ほかのメンバーの接客から盗むように日々意識していました。
− みなさんそれぞれの視点で日々の接客からスキルアップを目指していらっしゃるのですね。ご自身の強みはどのように捉えていますか?
寺尾 真面目にみられることも多いヘアメイクやスタイルで店頭に立っているため、必ずどこかでひと笑い起こさせることを意識しています。お客様と共通する話題を広げてみたり、身に着けていらっしゃるマスコットなどを褒めてみたり。提案の説得力だけでなく、お客様が少しでもリラックスしてお買い物を楽しんでいただける瞬間を工夫することが自分らしさであり強みかなと思っています。
市川 これまでは接客の上手な方たちをみてなにかを盗もうと思っていましたが、今回の大会に向けて練習を重ねるうちに、わたしにしか出せない雰囲気や表現があるということに気づくことができました。自分の強みは、笑顔と自然体で温かみのある接客を通じて、家族や友人と接するように、目の前のお客様に寄り添うことだと考えています。
まだまだできないことや苦手なことはありますが、そういった人間味のある部分をこれからも磨いて、お客様にとって居心地のよい存在になっていきたいと思っています。
伊藤 2年前に出場したときは、緊張からか自分らしさをあまり出すことができなかったので、今年はとにかくはお客様に楽しんでもらいたい、ワクワクしてもらいたいという気持ちで臨みました。その結果、自分らしい接客をすることができたのでとても満足しています。
市川 競技が始まってからさまざまな不安要素が浮かんでしまい、あまり集中ができなかったような気がします。終えてからも、もっとこういうこともできたんじゃないかという反省がたくさん生まれて、直後の感想はとにかく悔しかったですね。
改めて気づかされた、周囲のサポートと接客の楽しさ。
市川 ここまで熱くなれるものに出会え、改めて接客の楽しさに気づくことができました。他の出場者の方たちからも同様の熱量を感じて、自分と同じように接客が好きで、毎日ひたむきにお客様と向き合っている方が日本全国にいることがただただ嬉しく、表彰式では思わず涙が流れてしまいました。
寺尾 周りの方たちの協力のおかげでこの舞台に立つことができ、さらにいつもの自分らしさを発揮できたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。実は、数年前まで自分の個性という部分で伸び悩みを感じていた時期もあったんです。ですが、今回の大会に向けた研修で、すでに立ち居振る舞いが個性となっているからそのままでいいというアドバイスをいただいて「無理につくらなくてもいいんだ」と楽になったというか、そのことばを受け止められたことが大きな変化としてありました。そこからさらに相槌やリアクションの中で抑揚をつけることなど、自分の個性に深みを出せるように努力を重ねてきたことで会話のバランス力を高めることができたと実感しています。
− 大会を通して刺激を受けたことはありますか?
伊藤 日々のお店での接客とロールプレイングに境はないということを改めて感じました。コツコツとトレーニングしてきたことが未来の成長に繋がるということを身をもって学ぶことができて、自信にも繋がりましたし、これからも続けていきたいと思いました。
寺尾 市川さんがおっしゃったように、接客に対して同じように熱いエネルギーを持った方たちと想いをぶつけ合えたことでたくさんの刺激を受けました。これまで接客力における後輩育成の場面や、DX活動を通してお客様へ発信する表現といった部分で軸があったのですが、今回さらにそこから派生して自分自身の可能性を感じることができたので、より自分らしさを加えたアプローチを社内で共有したり、発信することにも積極的に挑戦していきたいと思いました。
市川 わたしは、大会を通して接客の奥深さや楽しさを改めて発見することができたので、この感覚を店舗のメンバーや他の人に少しでも伝えていけたらいいなと思いました。また、今回言葉選びや話し方次第で、商品の魅力の伝わり方がこんなにも変わるんだということが気づきとしてあって。ひとつの商品ができるまでに多くの方が関わっていて、最後にお届けするのがわたしたち販売員の役目なので、お客様に長く商品を愛していただくためにこれからも伝え方を磨いていきたいと強く思いました。
大会出場を経て生まれた新たな目標。
寺尾 競技中から自己ベストを更新できた手応えがあったので、実際にこのような成績を残すことが出来て、とても嬉しかったです。ただ、もう少し自分らしい要素をプラスできたら、総合優勝もできたのではないかという悔しさもあります。今回受賞させていただいたことで、さまざまなところからお声がけをいただいていて、いままで以上にお客様のニーズに対して、わたしなりの言葉で伝えていきたいという使命感が芽生えました。
− 最後に、みなさんの今後の展望についても教えてください。
寺尾 今後どんなポジションにおいても、自身の成長なくしてはブランドの想いを伝えることはできないと思うので、これからも自分らしさを更新していきたいです。まずは目の前のお客様一人ひとりにこれからも丁寧に向き合っていくこと。また、これまで以上にブランドの魅力を伝えてファンになっていただけるようにということを意識して、その想いを周囲にも波及していけたらと思っています。
市川 こういったロールプレイングの場面ではまだ100%納得のいく演技ができたことがないので、これからもっと勉強や経験を重ねてお客様と向き合い、自信を持ってまたこの場に戻ってきたいです。きっと完璧だと感じることはないと思うのですが、それでも自分らしさを出せたと思えるように努力を重ねて、もう一度チャレンジしたいです。
ユナイテッドアローズ社の応援団の皆さん
PROFILE

寺尾 円香
2014年入社。いくつかの転属を経て、2023年に〈オデット エ オディール〉渋谷シンクス店に異動、現在に至る。商業施設主催のロールプレイングコンテストでは幾度も優勝。2023年東京支部大会に進出し、準優勝。今年は悲願の全国優勝を果たした。

伊藤 聡
2010年入社。〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉名古屋店に配属。2017年に〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉タカシマヤ ゲートタワーモール店に異動、現在に至る。商業施設主催のロールプレイング大会へは過去8回出場、2021年から4年連続で支部大会進出を果たしている。

市川 莉緒
2020年入社。人事部での先行アルバイトを経て、入社後は〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉 岡山一番街店に配属、現在に至る。過去に2度、商業施設主催のロールプレイング大会に出場。3度目となる今回初めて支部大会を突破し、ファイナリストに選出された。