
ヒト
2025.07.25
大好きなアニメカルチャーをアートピースに。MZ 世代へ向けた「UACG」プロジェクトが始動。
「消費されないアニメTシャツ」をコンセプトに、ファッション感度の高いMZ世代と作品ファンに向けた新たなプロジェクト〈UACG(ユーエーシージー)〉が始動。アニメやマンガ、ゲームをこよなく愛し、作品の魅力をファッションの力で次世代へと繋げたいという想いから、本プロジェクトを立ち上げたPRの本山 綺良莉さん。プロジェクト誕生の背景から、漫画家・江口 寿史さんとのコラボアイテム、そしてモノづくりへのこだわりまで、お話を伺いました。
Photo:Takehiro Sakashita
Text:Riho Abe
カルチャー愛を原動力に、企画をゼロから立ち上げ
大阪文化服装学院専門学校に2年間通い、2018年にユナイテッドアローズ(以下UA)に入社しました。入社後は〈UA 新宿店〉に配属され、その後〈UA 渋谷スクランブルスクエア店〉を経て、2021年より〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ〉のPR担当に。現在は〈エイチ ビューティー&ユース〉、〈スティーブン アラン〉のPRを担当しています。今回立ち上げた〈UACG〉では、ディレクター兼PRを務めています。
―〈UACG〉の企画を立案したきっかけを教えてください。
物心ついた頃から、アニメやマンガ、ゲームに親しんできました。両親がマンガとゲーム好きだったこともあり、そういったカルチャーが身近な存在だったんです。だからこそ、世の中に出ているコラボアイテムが“ただの消費物”のように扱われていることに、ずっと違和感がありました。だったら自分が企画することで、作品と誠実に向き合ったモノづくりがどこまでできるのか挑戦してみたいと思ったんです。
構想自体は、実はコロナ禍前からありました。でも当時は“自分には無理だろう”と、どこかで諦めていて…。それでも少しずつ、“やっぱり挑戦してみたい!”という気持ちが大きくなっていき、最終的には企画書にまとめ、思い切って、上司に『どうしてもこの企画をやりたくて、プレゼンの場をいただけませんか?』と直談判しました。結果的に、社長をはじめ役員の方々に直接プレゼンする機会をいただくことができました。
―ものすごい勇気ですね!その時の反応はいかがでしたか?
今思い返すと、企画書は拙いものでしたが、熱意はしっかり伝わったのではないかと思います。UA社としては、アニメを軸に据えたプロジェクトは〈UACG〉が初の試みです。社内からは『本当に大丈夫?』という声もありましたが、最終的には『それだけ熱量があるなら、やってみなよ』と背中を押していただき、2024年2月に本格的に始動しました。
日本が誇るカルチャーを後世まで伝えたい
〈UACG〉とは、UAと、ANIME、COMIC(MANGA)、GAMEを組み合わせた造語です。 “消費されないアニメTシャツ”をコンセプトに、作品へのリスペクトを込めながら、その世界観を自分なりに解釈して表現しています。Tシャツをはじめとしたアパレルアイテムとして、日本が誇るカルチャーの魅力を幅広く発信し、いつまでも色褪せない不朽の名作を未来に繋げるような役割を担えたらと思っています。特に、ファッション感度の高いMZ世代や作品ファンの方に届けたいと思っています。
―本山さんが特にこだわっていることは何ですか?
作品を“消費物”としてではなく、カルチャーとしてどう未来につなげていくかを意識しています。単なるファングッズではなく、作品の魅力を最大限に伝え、長く愛される存在にしたい。そのためにも大量生産は行わず、小ロットで丁寧につくること、素材やプリント技法へのこだわりも徹底しています。アートを身にまとうような感覚で楽しんでいただけたら嬉しいです。将来的には、“アニメTシャツ”が映画やロックバンドのTシャツのように、ひとつのジャンルとして確立していくことを願っています。
第一弾は漫画家・江口 寿史さんとのタッグ
BIKES Tシャツ 価格:11,000円(税込)、カラー:ホワイト、ブラック、サイズ:S、M
もともと母が江口先生の大ファンで、気づけば私自身も自然と先生の作品に惹かれていました。先生の描くキャラクターは、線の美しさが際立っていて、昔の作品も常にアップデートされているように感じています。だからこそ、このプロジェクトを立ち上げると決めたとき、第一弾は絶対に江口先生にお願いしたいと決めていました。先生と初めて打ち合わせでお会いしたとき、感動で胸がいっぱいに…。先生は『熱量を感じます』『若い方が頑張っているのはいいですね』と、前向きに受け止めてくださいました。
―7/26(土)発売のアイテムについて、詳細を教えてください。
今回は、江口先生がキャラクターデザインを手がけた作品から、3柄を使用したTシャツを3型作りました。そのうち「BASIC Tシャツ」と「BIKES Tシャツ」の2型は、当時のムードを表現する質感にこだわりたかったのでシルクスクリーンを採用しています。もう1型は、ブリスターパックに入った「PREMIUM Tシャツ」。99点限定で、全てに手書きのシリアルナンバーを刻んでいます。フィギュアやコレクターズアイテムのような作品を所有する高揚感を感じていただきたくてこの仕様にしました。ブリスターパックも完全オリジナルデザインで、初めて手に取った時はとても感動しました!
PREMIUM Tシャツ 価格:15,400円(税込)、カラー:ホワイト、サイズ:S、M
ブリスターパックは裏面まで抜かりないデザイン。また、そのまま飾ってインテリアとしても楽しめるよう、自立式のパッケージに。ディテールに宿るこだわりが魅力。当時の風合いを意識して、インクジェットプリントを採用。少し滲んだような色味が出るのが特徴で、イラストの陰影や繊細な線をしっかり表現できるようにこだわった。※こちらは抽選販売となります。
©1991 TOKYO THEATRES CO.,INC./KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD./MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.
特に悩んだのは、作品の世界観を損なわずに、どうデザインとして落とし込むかという点でした。たとえばシルクスクリーンは、色ごとに版を分け、職人さんが一枚ずつ手作業で刷る技法。その分、繊細な表現が難しく、江口先生のイラストの魅力がうまく再現できないことも多くて。どれだけ細い線で刷っても、わずかなにじみで目元が潰れてしまったり、印象が大きく変わってしまうんです。何十枚とサンプルをつくり直しながら、細部まで丁寧に調整を重ねていきました。
―それでもシルクスクリーンを選んだのですね。
職人さんが手作業で刷るという工程自体にも大きな魅力を感じていました。版の数が増えるほどコストも手間もかかりますが、「BIKES Tシャツ」では全10版を使用し、肌の色味に至るまで徹底的にこだわっています。江口先生とも何度も打ち合わせを重ねて、ようやく納得のいく形にたどり着きました。今こうして、自信を持って皆さんにお届けできるアイテムが完成したことをとても嬉しく思っています。


BASIC Tシャツ 価格:8,800円(税込)、カラー:ホワイト、ブラック、サイズ:S、M、L
©1991 TOKYO THEATRES CO.,INC./KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD./MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.
「BASIC T」に使用したビジュアルは、もともと上下が切れているデータでしたが、Tシャツとしての完成度を高めるために、なんと江口先生ご自身が足りない部分を描き足してくださいました。本当にありがたいことです!さらに、すべての型に今回のために書き下ろしてくださった最新のサインが入っていて、ファンの方にも喜んでいただける仕上がりになっていると思います。そのサインの配置も、先生ご自身が考えてくださったんです。
©1991 TOKYO THEATRES CO.,INC./KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD./MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.
3型全てに今回のために書き下ろされた江口先生のサイン入り。配置も先生自らがディレクション。
90年代の作品ということもあり、さまざまなハードルもありましたが、第一弾で江口先生とご一緒できたこと、個人的に思い入れのある作品を特別なアイテムとして形にできたことを心から嬉しく思っています。また、社内でも多くの方に関わっていただき、ひとつのモノをつくり上げていく過程に、自分も加われたことが大きなやりがいになりました。
自由な感性を持つMZ世代とカルチャーの橋渡し役として
特にMZ世代は感度が高く、ジャンルやジェンダーにとらわれず、好きなものを自由に取り入れて、個性にしている印象があります。そんな世代だからこそ、アニメやマンガ、ゲームといったカルチャーも、気軽に取り入れてもらいたいです。あえて90年代の作品を選んだのは、今の感覚で“古き良きもの”を見せることで、当時のことを知らない人にも魅力が届けられると思ったから。江口先生のイラストも『見たことがある』という同世代が多いので、このTシャツをきっかけに作品に触れてもらえたら嬉しいです。
Instagramでは、ファッション×アニメの世界観が伝わるよう、ビジュアル重視の投稿を意識。世代や性別を問わず、さまざまな人に着てもらったルックも展開していきます。また、Xも開設予定で、制作の舞台裏や工場の様子、工程の映像など、こだわりが伝わるようなリアルな発信をしていきたいです。さらに、作品の魅力を体感できるポップアップも構想中。MZ世代は時間の使い方にシビアだからこそ、濃い体験をお届けできたらと思っています。
―第二弾以降の展望も教えてください。
今後も、さまざまな作品を軸にしたアイテムを展開していきます。今回はTシャツのみでしたが、今後はアイテムの幅も少しずつ広げていきたいと思っています。UAの強みを活かして、ジャガードニットなど挑戦的なアイテムにもトライしたくて。商品部の方々と毎日のように相談を重ねながら、唯一無二のアイテムを届けられるように奮闘中です!
PROFILE

本山 綺良莉
1997年生まれ。大阪文化服装学院卒業後、2017年にユナイテッドアローズへ入社。〈ユナイテッドアローズ 新宿店〉などでの販売経験を経て、2022年より〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ〉のPRに。現在は〈スティーブンアラン〉〈エイチ ビューティー&ユース〉を担当。幼い頃からのアニメ、マンガ、ゲーム好きが高じて、2025年に新プロジェクト〈UACG〉を立ち上げ、ディレクター兼PRとして活動している。