ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

社員も、企業も、共に成長。 「セルフ・キャリアドック」というキャリア健診プログラム。

ヒト

2022.11.28

社員も、企業も、共に成長。 「セルフ・キャリアドック」というキャリア健診プログラム。

仕事にやりがいを感じながらも、ふと将来のことを考えて「このままでいいのかな?」と不安に思うことはないでしょうか。今後のキャリアについて「誰かに相談できれば…」と感じることもあるかもしれません。コロナ禍を経て、未来の働き方について真剣に考える人が増えている今、〈ユナイテッドアローズ〉は「セルフ・キャリアドック」という施策を導入しました。それを推し進めているのが、キャリアコンサルタントという国家資格を取得した、人事部の田村 輝美さんと人材開発サポート課の松橋 和久さんです。では、なぜその資格を取得したのか? そして「セルフ・キャリアドック」とは一体何なのか?働き方、そして生き方を考えている人に向けて、熱量たっぷりに語っていただきました。

Photo:Masashi Ura
Text:Maho Honjo

話を聞くことで、気づきと成長を促す。 それが「キャリアコンサルタント」という資格。

画像 国家資格であるキャリアコンサルタントの講座テキスト。膨大な知識、そして実践の積み重ねが必要とされる。

−まずは人事部の田村さんにお伺いさせてください。どんな経緯があって、キャリアコンサルタント資格を取得されたのでしょうか。

田村:わたしは店舗での販売経験はなく、ずっと営業部門のサポートに携わってきました。現場で困っていることを吸い上げながら、「どうすれば人の役に立てるか」を考えてキャリアを積み上げてきたように思います。その後、人事部で労務管理や評価などに携わり、今は採用を担当しています。こうやって社会人生活が長くなると、個人的な相談を受ける機会も多くなります。産業カウンセラーの勉強をしていたので、そういう場では“傾聴”を心掛けながら、もっと専門的に、一歩踏み込んだものができないかと考えるようになりました。そこで辿り着いたのが、キャリアコンサルタントという国家資格です。すぐに学ぼうと決めて、スクールに通い始めたのが、2019年4月のことでした。

画像 人事部の田村 輝美さん

−実際に学び始めて、どんなことを感じましたか?

田村:とにかく大変。そのひと言に尽きます(笑)。最初の4ヶ月は、まず基礎理論から。理論家たちの名前と思想、さらに系譜までを体系的に頭に入れていきます。私が選んだのは土曜クラスで、朝10時から8時間、みっちりと授業がありました。その後は養成講座となり、ロールプレイングを含めた実践編へと移っていきます。何より大切なのは“傾聴”。まずは、人の話をしっかり聞く。「もっとここを丁寧に聞くべきでは」「なぜあそこを掘り下げなかったのか」そんな厳しい指摘を素直に受け止めて、を繰り返していくという訓練です。クラスメンバーは20〜60代という幅広い年齢層で、年上の方が学ぶ姿に大いに刺激を受けて、その年の11月、合格に至りました。


−では同様に、人材開発サポート課の松橋さんにもお聞きしたいです。キャリアコンサルタントの資格を取得した理由を教えてください。

松橋:わたしは店舗販売の経験を経て、人材開発に携わるようになり、約10年が経とうとしています。さまざまな研修に関わるなかで、40代以降の人々が定年までのキャリアを見据えたとき、どうすればもう一度モチベーションアップできるのか、そのことを常々考えていました。ちなみにそれは、わたし自身にも当てはまること。40代半ばでコロナ禍を経験し、自分はこのままでいいのか、今後何か会社に貢献できることはあるのだろうか。そんな不安に襲われていたときに、キャリアコンサルタントという資格があることを知り、挑戦しようと決めたんです。

−周囲に貢献したい思いと、自分が成長したい思いと、両方が重なったんですね。

松橋:教育を担当しながら、相手の成長を促すのに、自分も成長する必要があると感じていました。自分がこの資格を得ると、販売スキルだけでなく、キャリア構築という壮大なストーリーに関わることができるようになります。その知見を得ること、それを生かして人と社会に貢献すること、そこに大きな可能性を感じました。ただ勉強は本当に大変で、受験勉強より辛かったというのが実感(笑)。だからこそ、最初は会社への貢献を考えていたのが、少しずつ社会への還元まで考えるようになりました。私は、ユナイテッドアローズ社の経営理念にある「お客様を豊かにする」という考えに共感しているのですが、自分に関わる人々の話を聞かせてもらうことによって、その人自身のキャリア、そして人生まで豊かにしたい。そんな気持ちが芽生えてきたのです。

−取得が大変だからこそ、やりがいも大きそうです。ほかにもキャリアコンサルタント資格を取得しているスタッフはいるのでしょうか。

田村:関西の店舗で、すでに取得したスタッフが2名います。店舗、オフィス問わず、現在勉強中のスタッフもいて、今後も増えていくと思います。日々お客様とコミュニケーションをとっているユナイテッドアローズ社の販売員は、この資格と親和性があるし、向いている人も多いと思うんです。

人間ドックならぬ「セルフ・キャリアドック」で キャリアを振り返り、未来を組み立てる。

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−ではさっそく、「セルフ・キャリアドック」について、教えてください。聞いたことがない人も多いと思うので、わかりやすい言葉でお願いできますか?

田村:松橋さんが使っていた言葉でわかりやすいなと思ったのが、「人間ドックのようなもの」という説明。健康診断ならぬ、キャリア診断ですね。過去にどんな仕事をしてきたのか、今どんな状態なのか、未来のために何をするべきなのか。それを明確にするのが「セルフ・キャリアドック」。健やかなキャリアを築くための検診、というとわかりやすいでしょうか。

松橋:日々の仕事に忙殺されながらも、ふと「自分には何ができるんだろう」とモヤモヤしてしまうことってあると思うんです。わたし自身がまさにそうでした。でも他者との対話を重ねて自分のキャリアを棚卸ししてみると、「実はこういうことが好きだったな」「いちばん大切にしたいのは○○だった」「ならば、もっとこういうことがやりたい!」などなど、いろんなことが溢れ出てくるんですよね。

田村:「自分には強みがなくて…」などと憂える人も多いのですが、「ない」のではなくて「気がついていない」だけ。「何ができるんだろう?」から「これがやりたい!」という気づきを導き出していく。それが「セルフ・キャリアドック」なのです。

画像 「セルフ・キャリアドック」で過去から現在までのモチベーションカーブを描くことで、キャリアを丁寧に振り返ることができる。

−では、「セルフ・キャリアドック」はどうやって行われるのか、実際の様子をぜひ聞いてみたいです。

田村:「セルフ・キャリアドック」を導入するにあたって、どんな方々を対象にするのかを時間をかけて検討し、初回となる今年は入社3年目の社員に向けて実施することになりました。まず行われるのが「ガイダンス」、そこから「面談」へと進む流れです。

松橋:「ガイダンス」は40人ずつぐらいに分けてオンラインで行いました。まずは自分のキャリアを振り返る場だという趣旨を説明し、事前に配ったシートにこれまでのキャリアを記載してもらう時間を設けます。たとえばモチベーションカーブの記入。学生時代から今までを振り返って、受験に合格してカーブが上がり、苦しい就職活動でカーブが落ちて、当社に受かってまた上がって、配属が決まってまた…といった具合です。ほかにもこれまでの仕事ぶりや、1年後、10年後の目標まで、ひたすらキャリアについて書き込んでもらったのち、グループディスカッションに移行。お互いの考えを共有しながらアウトプットする時間をとって、全行程の90分が終了するような形です。

画像 どんな内容のどんな資格をもっているのかを書き込む。仕事人としての自分を客観視するいい機会に。

田村:その後、個々に時間をとって、外部のキャリアコンサルタントと「面談」を行います。キャリアコンサルタントはガイダンスで記載したシートに目を通しているので、それをもとに過去を振り返り、今の課題を相談しながら、今後どうしていきたいのか、それらを具体的に話していくという流れです。ガイダンスでしっかりキャリアを棚卸しし、面談をすることで、自己理解が深まっていきます。

悩みを抱える人、自分を掘り下げたい人に向けて 「キャリアコンサルティング面談」も実施中。

−「セルフ・キャリアドック」を受けることで、心のモヤモヤが晴れていきそうです。受けた人々からはどんな反響があったのでしょうか。

田村:「日頃考えていることを再認識するきっかけになった」「自分の強みを探していこうと思った」「いろいろな仕事に関してもっと知りたいと感じた」などなど、ポジティブな感想をもらっています。自分に向き合うことで、キャリアを切り拓いたり、積み重ねたりするきっかけに繋がっているなと感じています。

松橋:特に入社3年目は、ある程度仕事を覚えて、ときに中弛みを感じながらも、気がつけば後輩が入ってきて、もっと成長しなければ…と葛藤する年代ですよね。周囲と比べて「このままでいいのかな」と思い悩むなか、「セルフ・キャリアドック」を受けることで「ここまでできるようになったんだ」と再認識でき、「じゃあ、次はこの道を歩きたい」と考えられるようになる。それって大きな収穫だと思うんです。具体的なことで悩んでいる人はもちろん、「より深く自分を知りたい」人にも、ぜひ受けてほしいですね。

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−自分のキャリアに不安を覚えたとき、「セルフ・キャリアドック」の対象ではなくても、個人の面談を希望する人もいるのではないでしょうか。

田村:「セルフ・キャリアドック」を導入したのは今年からですが、それ以前から個別のキャリアコンサルティング面談も行っています。利用した方々の「よかったよ」という口コミから、少しずつ広がっていると感じています。仕事の具体的な悩みを相談するうち、「将来が見えなくて不安」「定年まで働く姿がイメージできない」という話に発展することも。そういう場合はどんな風になりたいのか?イメージできないのはどうしてか?と一つずつ丁寧に確認していきます。そうすることで、”ありたい自分”に気づくきっかけになり、「モヤモヤが晴れてすっきりした」「次にやることが見えてきた」。すっきりした顔でそう話してくれる社員もいるんです。

松橋:キャリアコンサルタントには守秘義務があるので、「誰に相談したらいいのかわからない」という場合も、ぜひ利用してもらえればと思います。相談者の許可を取って、その内容に応えられる人を紹介することも。コロナ禍を経験して、この先どう働くのかを考えるのが当たり前になった今、状況を一緒に整理することができればと思っています。

これからもさまざまなキャリア施策を提供。 人と会社の豊かな成長のために。

−まだ始まったばかりの「セルフ・キャリアドック」ですが、これからの展望を聞かせてください。

田村:今後は全社員を対象に「セルフ・キャリアドック」を行っていきます。どの方々から実施していくかなどを検討し、詳細を組み立てていく予定です。

松橋:キャリアの構築について悩むタイミングは、誰にも訪れるもの。それは理論でも証明されています。だからこそ、それを転機と捉えて、ポジティブに受け止めてほしい。「セルフ・キャリアドック」、そして個別の「キャリアコンサルティング面談」も含めて、悩みを抱え込まず、今はオンライン環境も整っているので、もっと気軽に活用してもらいたいですね。

田村:また人事部として、新たにタレントマネジメントを始めています。それはタレントマネジメントシステムの中にあるキャリアシートに、自分の前職をふくめた経歴、持っている資格やスキル、将来志向を記入してもらうというもの。それを参考に会社が配属や業務アサインメントを検討することもあり、自分の能力資産をぜひ会社側に教えてもらいたいのです。さらにこの先に向けて「個々の学びにフォーカスしていく」という教育投資の強化方針を掲げています。具体的にいうと、個々がなりたい自分に近づくための学びの費用を一部援助します。キャリアコンサルタントや簿記など、公的資格だけでなく民間資格までフォローしていく予定です。まずは「セルフ・キャリアドックの全社員への実施」、そして「タレントマネジメントシステムへの個人の意思・志向を含めたデータ蓄積」、さらに「キャリア自立のための資金援助」。これら3つの施策が動き始めたところです。

画像 人材開発サポート課の松橋 和久さん

−未来の自分に投資する。そしてロングスパンでキャリア自立を目指す。それらを支える仕組みがどんどん出来上がりつつあるのですね。では、田村さん、松橋さんご自身の今後の展望も聞かせてください。

田村:わたし自身、キャリアコンサルタントを取得したとき、2年後には「セルフ・キャリアドック」を導入し、10年後には「キャリア相談室」をつくりたいという目標を掲げました。「キャリア相談室」は、かかりつけのクリニックのようなイメージです。そういう場所になれたらいいなと思っています。それももっと前倒しして実現させたいと思っています。また本社に在籍していなくても、連携やコンタクトを取りながら、活躍できる場をつくりたい。全国にキャリアコンサルタントがいて、いつでもどこでも気軽に利用できる、そんな環境を整えたいと思っています。「セルフ・キャリアドック」と「キャリア相談室」の両輪を展開するべく、粛々と進めていきます。

松橋:わたしは、〈ユナイテッドアローズ〉社で働いてきてよかった、と感じる人をひとりでも増やしたいと思っています。愛社精神が強い人は多いし、素晴らしい経営理念に共感する人も多いけれど、それでも何らかの理由で辞めていく人もいます。もし辞める手前で話を聞かせてもらうことで、社内で輝ける場所を見つける手伝いができれば…。まず人に、そして会社に貢献することで、私もキャリアを重ねることができる。その循環を豊かに生み出したい。そんなふうに考えているところです。

PROFILE

田村 輝美

田村 輝美

1995年入社。販売、営業部門の支援、アウトレット立ち上げ、在庫や物流センターの管理を担当。2006年人事部へ異動し、労務管理、メンタルヘルス、福利厚生、評価管理を担当。現在は採用担当。2019年に国家資格キャリアコンサルタント取得。

松橋 和久

松橋 和久

2001年入社。グリーンレーベル リラクシングの関東、札幌、都内店舗で販売員と店長を経験し、2012年に当時の人事部教育チームへ異動。
現在は人材開発サポート課で全社教育を担当。2022年に国家資格キャリアコンサルタント取得。

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