
ヒト
2023.05.25
販売員と在店VMDを兼務。スペシャリストが打ち出す店づくりのポリシー。
大学時代から明確なキャリアプランを持ってユナイテッドアローズ(以下、UA)に入社し、販売員として着実にステップアップを続ける〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(以下、GLR)〉アミュプラザ 鹿児島店の姫野 亜弥さん。出産を経て母となり、産休から復帰後は販売員と在店VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)職を兼任。販売員としてのポリシーと、仕事と子育てを両立するための秘訣、そしてこれからの自身のビジョンについてお話を伺いました。
Photo:Shunya Arai(Yard)
Text:Akiko Maeda
ライフスタイルが変わっても年齢を重ねても活躍できる環境に惹かれて、UAに入社。
姫野:就職活動をはじめた当初は、アパレル業界とブライダル業界に興味がありました。ブライダル業界は「人生で1回のご提案」という点に惹かれたのですが、一度出会ったお客さまと接客を通して関係性を築き上げていく販売員の仕事に魅力を感じ、最終的にアパレル業界を志しました。
姫野:まずは、UA社はお客さまと販売員の関係性にフォーカスしている点に強く共感が持てたことです。また、30代、40代でも販売員としてバリバリ活躍している販売員さんが多かったので、結婚したり、出産したりとライフスタイルが変わっても自分がやりたいことが実現できるなと思えたことです。
―就職活動の段階でそこまで見据えてキャリアプランを立てていたのはすごいですね!
姫野:自分には転職する勇気がなかったというか、できればひとつの会社で長く働きたいと思っていたんです。UA社にはママさんで役職を持っている方もたくさんいらっしゃいます。年齢を重ねても挑戦できる場があるというのはありがたいですし、安心して働けます。
―それは大きな決め手ですね。では、これまで経験された店舗について伺っていきます。
姫野:2013年に新卒として〈GLR〉博多店に配属されて、その年の年末に〈GLR〉福岡パルコ店に異動して店舗のオープンに立ち会わせていただきました。
―続いて2015年に大分店のオープンに合わせて異動になったんですね。姫野さんにとっては地元に戻る形でしたが、そのときはどんな気持ちでしたか?
姫野:新店舗なので地元の人に働いてほしいということで、その当時の課長に推薦していただきました。わたしは入社してからひとつの店舗にじっくり携わる機会が少なかったので、福岡店でそのままキャリアを積んでいくのか、地元に戻って挑戦するのか、すごく迷いました。そのときの店長に「苦労することもあるかもしれないけれど、絶対今後に活かせる経験になると思うからチャンスがあるなら行ってみた方がいい」と動機付けをしていただいて大分に行くことを決心しました。
姫野:そうですね。店長の推薦があったからこそ、覚悟を決めて大分に行くことができました。新店舗なので、新人スタッフと一緒にお店を作っていかなければならないということに、強いプレッシャーを感じていました。
―そして、2017年の年末に現在働いている〈GLR〉鹿児島店に異動されたんですね。
姫野:はい。ありがたいことに店長として配属させていただきました。この年に結婚をしたのですが、主人の地元である鹿児島に戻る形になって。結婚に異動に引っ越しと、環境が大きく変わった時期でした。
2年間の産休を経て復帰後、在店VMDとして新たな道に挑戦。
姫野:昨年春の社内公募に応募したのがきっかけです。入社以来携わってきたのが新店舗やリニューアル店舗ばかりだったので、本部のVMDメンバーがお店を一から作っているのを間近でみていて憧れていましたが、「時短勤務だとやれる活動も少ないからやめよう」と諦めていました。ですが、「時短勤務でも活躍できるようにフローを考えて、やってみたい人が誰でもチャレンジできるような職種にしていきたいから」と打診していただいて、「やってみよう!」と。
姫野:本当にそう思います。また別の先輩ママさんからも、「子どもの小学校入学のタイミングで一旦仕事との向き合い方を考えたよ」とアドバイスをいただいきました。娘がいま2歳なので4年後に小学校入学と考えたときに、あと数年しか仕事にガムシャラに打ち込めないのか…と考えて、チャレンジするならいまかも、と思って決意しました。
―姫野さんのように在店VMDとして活動されている方は他にもいらっしゃるんですか?
姫野:はい。ウィメンズ担当は関東1名、九州、四国で1名、関西で1名いて、関西地区の方も時短勤務のママさんです。
―では、VMDがどんなお仕事なのか、簡単に教えてください。
姫野:主に中四国・九州エリアの12店舗の美観レベルの向上とVMD戦略の具現化が大きな仕事です。美観チェックリストというシートを使って担当店舗の点検のレベルを採点した上で、店長や店舗担当者と課題を共有し、店舗の美観レベルを上げるのが目的です。
―では続いて販売について伺っていきます。姫野さんが販売員として心掛けていることはありますか?
姫野:店頭でお客さまの負をできるだけ解消することを心掛けています。お買い物をして自宅に帰って、結局どれと合わせていいかわからなかったり、お手持ちのお洋服と合わなかったり…。そうやって悩んで着る機会がどんどん後ろ倒しになったり、着る機会が減ってしまったりするのは悲しいことだなと。なので、できるだけ店頭でお手持ちのアイテムを伺って、お好みのテイストやシルエットを把握した上でご提案するようにしています。
姫野:わたし自身も買い物したときはすごい高揚感があって、着たいなと思って買うんですけど、実際クローゼットに並べてみると、「あれ!? なにと合わせてもしっくりこないな…」ってなることが多くて。子どもが産まれて頻繁に買い物に行けなくなったので、よりいっそう一回の買い物の機会がすごく貴重だということに気付きました。
―姫野さん自身のライフスタイルが変わったことによって、接客への意識も変化したんですね。
姫野:そうですね。コロナ禍を経て、買い物への価値観や手法が変わったこともあって、対面接客の大切さを感じるようになりました。わたし自身もインスタライブを観たりして欲しいものを見つけることも増えたのですが、実際に店頭に来て試着してみないと着心地やサイズ感はわからないですよね。
そして、販売員さんから提案してもらうことで新しい発見が絶対にあると思っているので、後輩にも提案力を身につけるようにアドバイスしています。特に、若い世代はオンラインショッピング全盛で、自分自身が接客をしてもらった機会があまりないスタッフも多いので。
仕事中に欠かせないアイテムは、ペン、メジャー、名刺入れ、腕時計の4つ。お客さまにも名刺をお渡しして名前を覚えてもらえるようにしているとか。
この4月からはご主人が時短勤務に。仕事に子育てに、夫婦で奮闘中。
姫野:主人と2歳の娘と一緒に外に遊びに行くことが多いですね。最近は、鶴丸城御楼門にお出掛けしました。桜島が見渡せる広々とした公園で、娘も元気に走り回れるのでよく訪れています。
―ひとり休みの日はなにをしていますか?
姫野:娘が生まれてからはなかなかひとりの時間を取るのが難しいのですが、ランチで美味しいものを食べに行ったり、ゆっくり美容室に行ったりする時間を大事にしています。結婚前は、K-POPとか韓国ドラマが好きで、サブスクで観たりしていましたね。ハマると、とことん夢中になってしまうタイプです(笑)。
―最後に、今後鹿児島店をどのように盛り上げていきたいですか?
姫野:実はこの4月から主人が時短勤務で働くことになり、わたしは時短勤務からフルタイムに戻ることになりました。昨年、VMDとしての活動が本格的にスタートするときに、「もっと仕事に注力したい」という気持ちが大きくなってしまって…。そんなときに主人に相談したところ、「僕が時短勤務するという選択肢もあるよ」と提案してくれたんです。そのときは、「そんな提案もあるんだ!」と驚くと同時にすごく嬉しかったですね。
市内の美術センター黎明館の中にある「チンジュカンポタリー喫茶室」は、薩摩焼の窯元「沈壽官釜」と「ランドスケーププロダクツ」が手掛ける陶器シリーズのギャラリー兼カフェスペース。子ども連れでも入りやすく、大好きな場所のひとつだそう。
姫野:UA社も主人の勤めている会社も、男性の育児参加への理解があったので、前向きに動いてくださって、思ったよりも早くフルタイム勤務に復帰できたので、とても感謝しています。主人も比較的楽しんで育児をしているというか、子どもと関わる時間が増えて、「いままで見られなかった表情が見られるのが嬉しい」って話していて。お互いが仕事と育児を兼務することで、お互いの大変さが理解できるのも良かったですね。
―久しぶりにフルタイム勤務に復帰していかがですか?
姫野:単純に仕事をやれる時間が増えたということもあるんですけど、やっぱり時短勤務のときはメンバーとのコミュニケーションもすごい限られていたんです。いまの鹿児島店のメンバーは20代から30代の若いチームで、一緒に働いて1年未満のメンバーがほとんどなので、積極的にコミュニケーションを取ることを心掛けています。
VMDとしては、鹿児島店を訪れるお客さまにいつ来ても魅力的に感じてもらえるお店づくりをしてお出迎えすることはもちろんですが、メンバーの個々の強みを生かしながらお客さまに多方面でアプローチできるスタッフを増やすのが目標です。また、一人でも多くのメンバーに「鹿児島店で働けて良かった」とか、「鹿児島にいても仕事の領域を広げられるんだ!」と実感してもらえるといいですね。
ひとりではお店づくりはできないので、みんなの力を借りながらもっともっといいお店にしていきたいです。