ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

販売員兼バイヤー自らが企画立案し、実現させた「ソブリン」の新たなる試みと、その想いとは。

ヒト

2023.12.07

販売員兼バイヤー自らが企画立案し、実現させた「ソブリン」の新たなる試みと、その想いとは。

11月某日。都内某所において合同企画展示会「THE GENTLEMAN LIVING」が開催。北欧ヴィンテージ家具やヴィンテージのサウンドシステム、そして一流のアート作品などが揃うラグジュアリーな空間に、〈ソブリン〉のワードローブも並び、盛況ののちに終幕しました。本イベントを企画立案したのが、〈ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店〉に在籍し、〈ソブリン〉のバイヤーも務める木原 大輔さん。ここに至るまでのご自身のキャリアや、彼が思い描く理想の空間を体現したこのイベントへの想いなどを通じて、仕事に向き合う姿勢や意気込みまでを伺いました。

Photo:Takehiro Sakashita
Text:Masashi Takamura

「好き」を追求してたどり着いたマルチプレーヤーの現在地。

―新卒で入社されたということですが、やはりユナイテッドアローズ社(以下、UA社)が第一希望だったのでしょうか。

木原 はい。もともと洋服は好きだったんですが、ワンブランドで着こなすというよりもコーディネイトを楽しみたいタイプでしたので、セレクトショップに惹かれていました。なかでもUA社は、雑誌などに掲載されることも多くて、栗野や鴨志田など、格好いい先輩方も数多く紹介されていましたので、憧れのショップのひとつだったんです。

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―ということは、かなりお洒落な学生時代を過ごしたようにお見受けしますが、ファッションを好きになったきっかけは?

木原 お洒落が好きな母親の影響が大きかったかもしれません。小さい頃からファッションや洋服が身近にありましたし、当初は着せられていただけですが、周囲に褒められることもあって、自分の着ているものにも徐々に興味を持ち始めました。おかげで洋服にはポジティブな思いしかなくて、小学生くらいからすでに、割と自分の好きな服を選び始めていたんです。

―しっかりと「洋服オタク」に育っていますね。UA社に憧れたということは、さらにドレッシーな要素も好きになっていったわけですか。

木原 そうですね。若い頃からジャケットスタイルは結構好きで、特にUA社の先輩方は、自由で自然な着こなしをされていたので、非常に魅力的に感じました。就職活動の際の着こなしも、勝手ながらUA社らしく着こなせていたから受かったのかな、なんて想像しています。

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―ファッション好きな木原青年が無事にUA社に入社へと至りますが、最初は日本橋の店舗にいらしたそうですね。

木原 それまでただの服好きで、店舗スタッフとしてはアルバイト経験もありませんでしたから、日本橋店でしっかりと接客の基礎を教えていただきました。その後、六本木ヒルズ店に配属となってセールスマスター(UA社の優れた販売のスペシャリストに授与する称号)の称号もいただきました。

―そこで学ばれた接客についてのモットーや、木原さんが大事にされていることを教えてください。

木原 お客さまにどれだけ寄り添えるかということでしょうか。常にお客さまのお役に立ちたいと考えていますので、お店に来て良かった、また来ようと思っていただける店舗づくりが大事。一期一会で共有できた時間を充実したものと感じていただけるようなコミュニケーションをしたいと思います。ご購入いただいても、いただかなくても、来店して得したなと思えるようなことがあれば幸いです。


―そのためにしているようなことがあれば、教えてください。

木原 話題作りは重視しています。洋服の話はもちろんですが、衣食住に加えて「知」は大事な要素。インテリアやアート、カルチャーなど、さまざまな分野に興味をもって、何かひとつでも、お客さまとの接点をもてたらいいですよね。一人ひとり価値観が異なりますので、何かひとつでもハマればいいなと。お客さまと共有できる価値観がひとつでも増えるように、時には美術展に行ってみたり、美味しい料理を食べたり、というふうに自分の幅を広げています。

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―現在、店舗と〈ソブリン〉のバイヤー兼任ということですが、入社当初からバイヤーを目指されていたのでしょうか?

木原 入社以来の目標が、バイヤーになることでした。ですから、バイヤーになるためにはどうしたらいいか、ということも接客と同時に考えながら仕事に当たっていました。一番お洒落じゃないといけないし、お客さまを知っていないといけないですから。

―よい商品を仕入れることは、まさにお客さまの満足につながりますものね。

木原 おっしゃるとおりです。同時に、店舗でのコミュニケーションも生かしつつ、ものづくりや仕入れの現場も見たいという想いが、自分自身強かったので、休暇を使い、自腹でバイヤーの仕入れについて行くことも頻繁にしていました。何より「なりたい」という自分の熱意のままに動きました。結果、カルーゾというブランドの社内アンバサダーという役割をいただきましたし、その後、商品部でオリジナル商品の開発にも携わることができました。

―セールスパーソン兼バイヤーとなることで、理想の姿にたどり着いた木原さん。まさにお客さまを知ることで満足度を高めることに貢献するお仕事ぶりとお見受けします。

木原 セールスマスターとして接客に心をこめてトップ販売員になれたことや、現地に赴きリアルなバイイングの様子を知ることができたのは、自分にとっては大きな経験だったと思います。

「THE GENTLE MAN LIVING」の開催に込めた企画者の想いとは?

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―木原さんが企画して参加されたイベント「THE GENTLEMAN LIVING」について伺います。こちらはどのような展示会なのでしょうか?

木原 注文服を扱うサロン〈LECTEUR〉、ヴィンテージ家具を扱う〈KAMADA〉、銀座・並木通りのオーディオショップ〈SOUNDCREATE〉、美術商〈日動画廊〉の4社が集うプライベートサロンに、UA社の〈ソブリン〉が加わって開かれた展示会です。ここに〈ソブリン〉の顧客さまと、4社それぞれの顧客さまをご招待して、お互いに交流することが目的です。

―一流のヴィンテージ家具やアート、音楽に包まれて非常にラグジュアリーな空間となっていますが、このプライベートサロンに〈ソブリン〉が参加してイベントを開催することにした想いを教えてください。

木原 こちら4社のご担当社さまとの個人的な交流がありました。そのなかで、元来〈ソブリン〉のお客さまが、このサロンにいらっしゃる方々とのライフスタイルが非常に似ているということで、〈ソブリン〉も参加させていただき、さらなる付加価値を高められないかという想いがありました。
―おっしゃるように、この空間が〈ソブリン〉の世界観にマッチしていると感じます。

木原 〈ソブリン〉ブランドは、名前のとおり、UA社内でも最良のものづくりを目指す、価格帯もハイエンドなブランドです。いかに上質なアイテムでも、商品の説明だけでは、お客さまにその魅力が届きにくい状況もありますので、ライフスタイルにフィットしたウェアというのを、よりイメージしていただけるように、こちらの4社と合同で展示会をさせていただくことで、お互いにシナジー効果を生むのではないかという想いがありました。

―文化的なアプローチというのも、先ほど木原さんのお話にあったとおり、洋服以外の話題の提供という点とも重なる印象です。

木原 普段、美術館や画廊などでしか見られないアート作品や、市場でもレアなヴィンテージ家具が揃うことで、特別な体験をしていただけるのではと思っています。一方で、オーダー服のサロンは、既製服を中心とした〈ソブリン〉にはない部分を補完していただけていると思います。その点では、〈ソブリン〉のオリジナルの魅力も併せて、上質なウェアを提案できたらと思っています。

ー店舗スタッフの方たちの来場もありましたね。

木原 はい。店舗スタッフたちにも、お客さまと同じように「本物」に触れる機会を設けることで、今後の話題作りや、価値観の共有ができたらと考えています。多忙ななかで、なかなか機会がないスタッフもいると思いますので、こうした場を活用してもらえればと考えました。
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―〈ソブリン〉からはどのような展示をしたのですか?

木原 今季の冬はウィンターリゾート地としても知られる「サンモリッツ」がテーマ。そこから着想してつくった代表的なコートをはじめ、カシミヤやムートンなど特に素材の上質さを堪能いただけるアイテムなど、ウェアラック2本分程度をご用意しました。

―ピックアップアイテムを教えてください。

木原 ひとつは、バルカラーコートです。英国のテキスタイルメーカー〈ジョシュア エリス〉に別注したウール生地を使っていて、上質な肌触りと、豊富な生地量の割には軽やかな仕上がりが特徴。インバーテッドプリーツによるAラインもエレガントです。

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もうひとつは、スイングトップ。ドッグイヤーのクラシカルなデザインで、カシミヤ混のビーバー素材による起毛感がスポーティななかに上品さを加えてくれています。

―こうした世界観の提供に対して、お客さまたちの反響はいかがでしたか?

木原 おかげさまでおおむね好評いただけました。UA社側のお客さまにとっては、ご存じいただいている方も、「こんな服あったんだね」というような新たな気づきもいただけました。服以外の点でもご満足いただけた様子です。

一方で、ほか4社のお客さまには、「店舗に行ったよ」というような方もいらっしゃいましたし、普段は別のブランドを愛用されている方には「この価格でこのクオリティを出せるんだね」というお言葉もいただけました。非常に有意義だったと思います。

―木原さんご自身はいかがでしたか?

木原 普段見過ごしてしまいがちな部分、例えば、「こんな服があったんだ」というお声に対しては、アプローチ方法や魅せ方などに気付きがありましたし、休憩時間などを使って来場してくれたUA社のスタッフの方たちには、本物に触れる良さを伝えてもらったりできました。ですから、自分としても非常に学びを得ることができた機会になりましたし、次にも生かしていきたいです。

木原さんを支える愛用小物たち

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―閑話休題ですが、木原さんの必須商売道具を見せていただけますか?

木原 レザーのアイテムは、クロコが多いです。右が名刺入れ、左がペンケースです。名刺入れは、自己紹介の際に相手方にお見せする機会があるものですから、最良のものをという想いがあります。使う前は、少しギラつくのかなと思いましたが、使ってみると、経年変化で艶が増して、なるほど、だから先輩たちも使っているのかと納得でした。

ペンケースは、先輩から譲っていただいたものです。中にはお客さま用に〈モンブラン〉のボールペンを常備しています。書ければなんでもいいのではなくて、お客さまに何かご記入いただく際にも、最良の瞬間を共有できたらと思っています。
最後はご覧のとおりメジャーです。大柄な方にも対応できるように2mの長尺をご用意しています。実は意外と消耗品なので、フィレンツェに行くたびに、行きつけのお店で調達しています。

―なるほど、それぞれのこだわりにも、「お客さま想い」が徹底されていますね。

木原さんが思い描く今後のキャリア

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―最後となりますが、木原さんの思い描く今後を教えてください。

木原 バイヤーとセールスパーソンを兼任することで、ある意味で商品を提供する、製造の川上から、そして、お客さまとの接点となる川下に至るまでを経験できています。運良く、それらのすべてを順序立てて経験できましたので、それを生かして、お客さまへどんなメリットを提供できるのか、ということを日々考えています。

今回のイベントもそうですが、こうした自分の経験をお伝えできるようなことを企画したいです。そのなかで具体的なことは会社やディレクターが定めるにしても、〈ソブリン〉というブランドを今以上に、お客さまにも、そして、UA社のスタッフの方たちにも愛されるブランドにしていきたいです。

今は、〈ソブリン〉のオリジナル商品の開発にも携わらせていただいているので、お客さまにものづくりの熱量を店頭でそのまま届けられるわけですから、その立場を生かして、さらなる発展に貢献したいです。

PROFILE

木原 大輔

木原 大輔

メンズ商品本部UA部クリエイション課ソブリンバイヤー
2013年入社。UA日本橋店から六本木ヒルズ店の勤務と並行して、商品部バイヤーとして〈ソブリン〉を担当。店舗では4年間セールスマスターも経験。また過去には、イタリアブランド〈カルーゾ〉のアンバサダーとしても活躍。現在は、バイヤーと六本木ヒルズ店のセールスパーソンを兼任。

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