
ヒト
2020.08.27 THU.
理解の心と支え合いの精神から生まれる新しい働き方のカタチ。
十人十色の個性があれば、人それぞれの働き方もあってしかり。多様的な働き方が実現できるようになったいま、そのワークスタイルのあり方に変化が生まれてきています。「周りの理解があるからこそいまのわたしがいます」と語るのは、デジタルマーケティング部WEB PR課の一員として本部勤務をする傍ら、〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉のセールスパーソンとしても活躍する多原亜矢子さん。店舗と本部の仕事を兼任する彼女だからこそ思いつくアイデアやひらめきが、いま、大きな歯車となって会社を動かしています。多原さんの生活様式に合った働き方のカタチと、そこから生まれたいまの時代に合ったサービスとは? その秘密に迫ります。
Photo:Shunya Arai(YARD)
Text:Masaki Hirano
上司に相談してみたら「やってみなよ」と背中を押してくれた。
多原さんがユナイテッドアローズに入社したのは2007年のことだと伺いました。
多原:アパレルのVP(Visual Presentation)の仕事をしたくて仕事を探していたところ、〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉でVP担当を募集していて、中途で応募して入社しました。配属されたのはセールスプロモーションの部署で、当時は5人しかスタッフがいなかったこともあって、VP以外にも仕事の領域を広げながら仕事をしていて、メール配信など、顧客さまへの施策の仕事にも関わることになりました。そうしてお仕事をしながら業務もだんだん軌道に乗り始めた頃に主人の広島への転勤が決まり、わたしも一緒に行くことになったんです。
ご主人は転勤の多いお仕事をされているんですよね。
多原:そうですね。主人も転職をして、転勤の多い職種になるというのはわかっていたことだったんです。なので、あらかじめ地方へ行く覚悟はできていました。それで今後の仕事についてどうするか上司に相談したところ、「店長に興味はあるか?」と尋ねられました。販促の仕事は店長とのやりとりが多い仕事なので、店舗で働くなら店長としてチャレンジしてみたいという気持ちがあったのと、当時のわたしはマネジメントの経験がなかったので、キャリアアップのためにもそうした仕事をしたいという想いがありましたね。
それで広島の店舗で店長を経験されたんですね。現在の札幌の店舗に配属になり、セールスパーソンとWEB PR課の仕事を兼任されています。これは多原さんご自身で望まれたことなんですか?
多原:3年間広島で店長を経験して、主人の転勤で今度は札幌へ行くことになり、その頃はまだ仕事を兼任するのは決まっていませんでした。ただ、お取り引き先で札幌に住みながら東京に出張する形で本社勤務をされている方がいらっしゃって、そういう形でわたしも働きたいなと思っていたんです。店長会で上司に会う機会があり、何気なくそんなことを相談してみたら「じゃあやってみなよ」ということでいろいろと動いてくださって。
「札幌に転勤してからの1ヶ月間は準備期間だった」そう。その間に本部勤務のための用意を整えた。デスクを構えたのは所属する札幌ステラプレイス店ではなく、スペースがあった「ワークトリップ アウトフィッツ グリーンレーベル リラクシング 札幌ポールタウン店」のバックヤード。
販売員が熱量を持って商品について語れる場が欲しいと思っていた。
そして昨年の10月から、現在のお仕事をされていると。店頭での接客というのは想像しやすいのですが、WEB PRというのはどんなお仕事なんですか?
多原:WEB PR課ができたのは今年の4月のことなんです。昨年の10月からやっていたのは、店長になる前にやっていた顧客さまへの施策に関わることですね。それが4月に入って組織変更があり、WEB PR課ができて、わたしが担当していた顧客さまへの施策は運営課の業務になりました。会社としても店頭とオンラインの融合をさせていく必要があるということで、未来に向けてオンライン上でお客さまがお買い物をしやすい状態を目指し、クイックに対応していくのがWEB PR課の仕事です。わかりやすい内容だと、“Twitter接客”がありますね。
SNSのTwitterで接客をするということですか?
多原:すごく安易な考えなんですけど…、商品についてなにか投稿をして、それに興味を持ったお客さまの購入につながればいいなと思っていたんです。ただ、その投稿内容に関しては単に商品について説明するのではなくて、お客さまのニッチな要望に刺さるようなコメントを書きたいなと。たとえば二の腕が気になっている方であったり、カジュアルだけどどこかキチンとした服が着たいとか、そうしたピンポイントな需要に対するコメントはオンラインショップの商品説明では書けないんですよ。でも、それは店頭でスタッフがお客さまに伝えている内容なんですよね。Twitter接客では、そうした接客の切り口で商品について紹介しているんです。角度が変われば伝わり方も変わる。そこに共感してくださるお客さまが絶対にいらっしゃると思ってスタートしました。
自粛期間中は在宅勤務だった為、業務のうちの95%ほどはWEB PR課の仕事をしていた。当時は、リプライも含めて週に200ツイートほどしていたそうだが、店頭での業務も再開した現在は週に何回ほどがいいのかベストを探っているという。「1日に4、5件は投稿したい」と多原さん。
それは多原さんの部署の方々が呟かれているんですか?
多原:投稿をしているのはわたしですが、内容は全国の〈グリーンレーベル リラクシング〉のスタッフが考えたものです。4月はちょうど自粛期間がスタートした時期で、スタッフもみんな家にいたので、時間があるときに過去の接客内容を思い出して送ってもらうようにしました。わたしひとりだと限られた視点にしかなりませんが、全国のスタッフだといろんな視点があるので、より広くお客さまに伝わるだろうと思うんです。
お客さまからの返信にもお答えしているんですか?
多原:自粛による休業に入ってすぐはTwitter上でリプライをいただき、質問にお答えしたり、商品をご提案するなど、まさに“接客”をおこなっていました。
4月末からはLINE接客がスタートして、Twitter上でおこなっていたものが吸収されて減っていく中で、いまではTwitter上でのお客さまの声を拾い、こちらからご質問に答えたり、オンラインストアの機能を説明したりする「アクティブサポート」をおこなっています。そこから“LINE接客”というのも立ち上がって、お問い合わせはそちらに吸収されるようになったので、ツイートへお客さまからご返信いただくというのは現状では減っていますね。
本来であれば今年の秋頃から導入予定だった“Twitter接客”。しかし「新型コロナウィルスの影響もあり、半年以上前倒ししてスタートしました」と多原さん。「Twitterの利用はそこまで優先順位の高いものではなかったのですが、3月末ごろに提案したところ『すぐにやろう』ということになりました」。
LINEでも接客されているんですか?
多原:LINEで「GLRオンラインストア」のアカウントに友達申請をしてくだされば、どなたでも商品について問い合わせできるようになっています。そこではわたしたちは名前を名乗ってご対応させていただいています。Twitterだとオープンな状態なので、他のユーザーの目を気にされるお客さまもいらっしゃいます。一方でLINEではパーソナルに会話ができるのがお客さまにとってのメリットで、利用される方が増えていますね。
従来だとメールを送って問い合わせるということが多かったと思うのですが、TwitterやLINEだとやりとりのスピード感が圧倒的にちがいますよね。
多原:そうなんです。LINEの場合、お客さまからお問い合わせがくると、「じゃあこちらのお客さまはわたしが担当します」みたいな感じでスタッフ内で割り振るんです。いろんな企業でチャット形式の問い合わせ窓口を設けていると思いますが、ユナイテッドアローズの場合はAIではありません。インターネットを介すと、どうしてもロボットなのかなと思ってしまいがちですけど、わたしたちの対応はまぁまぁ人間味があるので(笑)。プラットフォームはデジタルでも、行われているのはアナログなやり取りなんです。実際に企画や運用しているのは販売課とWEB PR課ですが、お客さまとのやりとりは現職のセールスパーソンがやっているのも魅力だと思いますね。
普段の接客の仕事を活用できるということですよね。
多原:SNSを活用したかったのは、販売員が熱量を持って商品について語れる場が欲しいなと思っていたのがそもそものきっかけで。お家にいながら販売員の接客を受けられるというか、すごく感動的なサービスだと思っています。お客さまの中にはやりとりのスクリーンショットを撮って、「こんなことをしてくれた」とSNSで投稿してくださる方もいらっしゃって、それがすごくうれしかったですね。
そうしてお客さまからの問い合わせをいただける場ができたことで、そこからヒントを得てサービス改善につながるという循環ができあがっているんです。
そうした声をベースにして、WEB PR課としていま力を入れている施策はありますか?
多原:お客さまが必要だと思われる情報をさまざまな形でご提供したいという気持ちがあり、WEB PR課としてやりたいことはたくさんあるんです(笑)。今後はライブコマースもスタートする予定でいます。ライブ動画を見ながら、スタッフがその場でコメントにお答えしていくというものです。そのほかにも、ブログで商品情報を発信したり、動画をつくったりもしています。
わたし自身がいま力を入れているのは「販売員メルマガ」ですね。店頭、LINEチャット接客などの振り返りを経て挙がってきたお客さまの声を反映させていて、Twitterと連動した内容です。でもSNSやLINEではアプローチできない方や、一気にまとめて読みたいというお客さまに向けたツールとして活用しています。Twitterではお客さまの体型に関するお悩みを伺うことがあり、そちら解決に向けてサポートするための企画もいま進めています。
会社や他のスタッフに支えられながら仕事ができているのは感謝しかない。
店頭とWEB PRの仕事の両立をされていて、上手に切り替えはできるものですか?
多原:いまシフト上では日で分けて、週に2.5日ずつ半々のバランスで業務にあたっています。本部と店頭で目標とすることは一緒ですけど、それぞれの立場にいるとそこへ辿り着くまでのアプローチの仕方はやはり異なるんです。そのためには思考を切り替える必要があって、曜日によって区切ることでそれがうまくできているという実感はあります。
札幌内でのお気に入りスポットのひとつである大通り公園。高いビルが立ち並ぶ札幌駅前の喧騒の中で、多くの人が憩いの場として利用している。芝生に座りながらゆっくりと過ごす時間が、心身ともにリフレッシュさせてくれる。
体づくりのためにはじめたヨガは、自身の身体的な健康はもちろんのこと精神的な鍛錬にもなっている。「ヨガ哲学で学ぶ『エゴを捨て、他者のことを真剣に考えて行動することで、常に笑顔で穏やかな気持ちでいられる』というのは、仕事で大切にしていることと一緒だなと感じました」。
多原:これはすごく個人的なことですが、わたしは腰痛持ちなので、身体的な意味でも座り仕事をさせてもらえるのは本当にありがたいんです。それをケアするためにプライベートでヨガをはじめて、仕事を継続できる体づくりを心掛けています。
兼任業務に難しさを感じる場面はありますか?
多原:わたしが所属している店舗は大型店舗ですが、それでも人員が潤沢というわけではありません。なので、兼務のわたしがいることで他のスタッフにその分の負担をかけているような状態です。本部のスタッフも同様にコミュニケーションなどで時間と手間を取らせてしまっているので、今後の改善点としてとらえています。
ただ、店舗のスタッフも、本部のスタッフも、わたしの仕事のことをとてもよく理解してくれて、その支えがあるからこそできているのが現状。わたし自身、広島で店長をやっているときにやっぱり店頭は大変だということを身も持って体験していて、だからいまこうした働き方ができるのは、とてもありがたいことですし、いい環境にいるということは忘れてはいけないことだと思っています。
食べることが大好きだという多原さんがご主人とも通っているのがビストロ「ELSKA」。カジュアルな雰囲気ながら、本格的な料理と店主が厳選したこだわりのワインがラインナップする人気店だ。(ELSKA 北海道札幌市中央区南3条西6-3-1 011-312-0393)
会社や周りのスタッフからの理解があるというのはとても大きなことですね。
多原:正直なところ、主人の転勤でいまの仕事を辞めるという選択肢もありました。でも、いまこうして会社や他のスタッフに支えられながら仕事ができていて、感謝の気持ちでいっぱいです。
いま、すごくいいバランスでお仕事ができているということですよね。
多原:そうですね。こうした働き方が浸透すれば、いろんな理由で仕事を辞めざるを得なくなった人も続けられると思いますね。わたしの働き方を友人たちに話すと「転勤させてくれるなんて、いい会社だね」と言われます。スタッフ一人ひとりの暮らしをきちんと考えてくれて、本当にありがたいですね。ユナイテッドアローズはいま100年企業になることを目指してがんばっていますが、だからこそ少しでもその役に立ちたいというのは常に考えていますね。そして周りのスタッフにも還元していきたいという気持ちを持って働いています。
PROFILE

多原 亜矢子
第二事業本部 デジタルマーケティング部 WEB PR課 兼 ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング 札幌ステラプレイス店 2007年社GLR本部 営業企画部 SP課(当時)に入社後 販売戦略部門において、VP・SP・CRM(顧客政策)など幅広く担当。 2016年に夫の転勤に伴い、GLR 広島パルコ店へ異動し店長経験を経て 2019年9月、GLR札幌ステラプレイス店に異動。 同年10月から第2事業本部 販売戦略課とGLR札幌ステラプレイス店の兼務を開始。 2020年4月より現職。