ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ヒト

2021.03.24 WED.

多様化するキャンプシーン、「いま」と「これから」の楽しみ方。

キャンプシーンが、これまでにないほど盛り上がっています。老若男女わけへだてなく、多くのヒトが日常的に外遊びを楽しんでいる現状は、もはや一過性のブームではなく、むしろカルチャーとして多くの方に浸透しているのは明らかです。その盛り上がりと足並みを揃えるようにしてギアやウェアも拡充。おうちキャンプやソロキャンプなど、コロナ禍に見舞われたことで奇しくも、楽しみ方もいっそう多様化しています。そこで、外遊び好きであるスタイリストの平 健一さんと、俳優・水上 剣星さんに、キャンプブームのあらましから、お二人が考えるキャンプの醍醐味、ギアやウェアの最新の潮流についてまで、大自然のなかで訊きました。

Photo:Shunya Arai(YARD)
Movie:Ryoji Kamiyama
Text:Masahiro Kosaka(CORNELL)

ヒトとヒトとの距離を、キャンプが橋渡しする。

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ー本日は平さんと水上さんのおふたりに、実際に普段通りのキャンプを楽しんでいただきながら、キャンプにまつわるお話を訊かせてください。さっそくですが、お二人それぞれ、そもそもなにがきっかけでキャンプにのめり込むようになったのでしょうか?

平:僕は出身が山形県なのですが、子どもの頃から父親と野営をしていて、それがその頃の唯一の遊びでした。魚や山菜を取りに、近くの山に入ったりすることもありました。いまでも田舎に帰ると、そんな風に過ごしていますよ。

水上:僕にも同じような経験があります。家族で山のなかのロッジに泊まりに行ったりと、小さい頃から自然と触れ合う機会は多かった。いまでは家族ができて、こんどは自分が親として、子どもたちを連れて外遊びをするようになりました。面白いものですよね。5、6年前に家族でアウトドアフェスに行ったのをきっかけにキャンプ熱が再燃するまでは、けっこうブランクはあったのですが。

ーお2人とも、幼少期の家族との体験が外遊びの原点だったと。大人になってから楽しんでいるキャンプも、その地続き的なものというわけですね。平さんは、現在はどのようにキャンプを楽しむことが多いですか?

平:僕の場合はもっぱら友人同士か、仕事ですね。登山も好きなので、抱き合わせでキャンプを楽しむことも多いです。たとえば富士五湖を拠点にして、十二ヶ岳を登ったりすることも。12の尾根が連なっているアスレチック感覚の登山路で、すごく面白いんですよ。夜はテントサイトに戻ってきて、バーベキューをしたり、温泉に入ったりします。

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ー昨今のキャンプブームについては、どのように眺めていますか?

平:キャンプって、以前は、それ自体を目的にするようなアクティビティではなかったと思うんです。どちらかというと、登山やカヤックといったアクティビティをするときに付随していたもの。なのに、いまではキャンプそれ自体が、すっかり外遊びの目的として市民権を得ているのは面白いですよね。

ー近年のアウトドアフェスの盛り上がりもキャンプブームに火をつけた要因のひとつかと思いますが、コロナ禍が、さらにその背中を押したような印象もあります。

平:そうですね。おうちキャンプというキーワードも一般に浸透して、よりキャンプのハードルも下がりましたし、楽しみ方の幅も広がったんじゃないでしょうか。

ーなかなか友人同士で集まりにくい都心部に比較すると、自然のなかであれば、密集の心配も少ないですし。

水上:それに、都会にいるときと自然のなかとでは、同じように家族や友人と集まったとしても、関わり方がまったく異なってきます。じつは、平さんとは今日が初対面なんですけど、たぶん東京で会っていたら、もっとよそよそしかったかもしれない。キャンプにくると、やっぱり距離を詰めやすいというか。

ーたしかに、ヒトとヒトとの距離を、自然が橋渡ししてくれているのかもしれませんね。家族や友人といったコミュニティのつながりがより重要視されるようになったいま、キャンプがこれほどまでに受け入れられているのはそれゆえでしょうか。

平:いっぽうで、一人の時間を楽しむソロキャンプも人気ですよね。

水上:ひとりでもグループでも、それぞれ好みのやり方で自然を満喫する。その自由さが、キャンプの根本にあるような気がします。

イン&アウトに使えるからこそ、いいものを。

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ーそんなキャンプに欠かせないのが、アウトドアギアやウェアです。キャンプを楽しむための道具であるのはさることながら、デザインや機能の追求は天井知らずで、おのおの自慢のギアやウェアを試すためにフィールドに足を運んでいる感さえあります。キャンプとギア・ウェアの市場が相乗効果的に作用しているというのか。平さんは、仕事においても最新のアイテムに触れる機会が多いと思いますが、最近はどういった潮流が見えますか?

平:ここ数年は、コールマンやスノーピークといった大手のブランドだけではなく、とにかく“ガレージブランド”が大人気ですね。ガレージブランドとは個人が小規模でやっているブランドのこと。たとえば、焚き火台だけに特化したブランド、ランタンシェードだけを作っているブランドなど、小規模ゆえのコアでオリジナリティ溢れるものづくりが特徴です。リアルなユーザーの声や、自身のアウトドア体験から生まれるプロダクトも多くて、機能を徹底的に重視したものからデザインのみを追求したものまで、マニアックなアイテムが見つかります。

ー具体的には、どのようなブランドが人気ですか?

平:無骨で男らしいデザインを最優先する〈Sanzoku mountain〉や、レザーケースや斧などで人気となった〈Neru Design Works〉などは代表的ですよね。あと、焚き火台はとにかく新しいブランドが凄く増えていますね。月に2、3種は新しいのが出ている気がします。車メーカーや内装業といった、これまでにない風が入ってくると、業界も活性化されますよね。

水上:僕がキャンプを再開したときは、実家にあったおよそ30年前のコールマンのテントを引っ張り出したりなんかして使ったのですが、キャンプ場に行って驚きました。「ここまでアップデートされてるのか」と。それからは、北欧ブランドやガレージブランドを掘るようになりました。モノを探して買うまでの過程に、こんなにもワクワクしたのは久しぶりですね。

平:ガレージブランドの活況は、昔の裏原ブームにも似ていると思います。いちどにリリースされる数は少量で、それゆえにどんなアイテムでも争奪戦が繰り広げられています。僕なんかも、欲しくても買えないアイテムばかりで。

水上:ファッションと同じで、極力ひとが見つけていないものを手に入れたい。ガレージブランドは、そういう気持ちを掻き立ててきますよね。

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ーキャンプ人口がぐっと増えたことも、そうした気持ちに拍車をかけているのかもしれませんね。いかに周りと差をつけるか、という。

平:おうちキャンプの広がりも、よりギアやウェアが注目を浴びるきっかけになっているんじゃないでしょうか。家でやっているようなことを外に持ち出したり、反対に、アウトドアでの体験を家に持って帰ったり。インでもアウトでも使えるギアやウェアなら、いいものを揃えたいですよね。

ー外遊びのみならず、インテリアとしても使いたいし、家でも着たい。それなら、多少値段が張っても、贅沢なものを選びたくなりますね。

平:そうです。〈INOUT〉なんていうブランドは、文字通り、まさにそうしたムードを体現していますよね。

水上:キャンプカルチャーってもともと欧米から入ってきたものですけど、いまでは逆輸入的に、日本のギアやウェアが欧米でも人気を集めていたりするみたいです。そこには、日本特有の職人気質なものづくりが関係しているような気がしていて。欧米のカルチャーが、日本のフィルターを通すことでまったく新しい価値になっているように感じます。そこも、裏原ブームとの共通点かもしれませんね。

平:コアな専業ブランドが台頭してきたことによって、いま、ギアをカスタムするという楽しみ方も熱を帯びています。さまざまなメーカーのパーツを好き好きに組み合わせていくのが、また楽しいんですよね。〈GOALZERO〉のミニLEDランタンはその代表格で、キャップ、スタンド、ケース、ストラップ、シェード、ステッカー、それぞれに専業ブランドが何社もあって、しかも、そのどれもが常時品薄状態という(笑)

ー底なし沼ですね(笑)

テントサイトの土台にも、街着にも。〈koti BEAUTY&YOUTH〉の魅力とは。

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ーところで、本日キャンプ場に集まる道中のことですが、平さんはアウトドアショップに立ち寄ってきたそうですね。わざわざ朝早く起きてまで、どうしてですか?

平:その土地に行かないと出合えないお店には、ふだんから、なるべく立ち寄るようにしているんです。今日朝に寄ってきたお店は、キャンプ好きが高じて脱サラした店主がやっていて、セレクトしているアイテムも、ガレージブランドをはじめとしたユニークなラインナップです。ほかにも、ミリタリー用品にこだわったお店や、薪のクオリティや焚き火体験にまで力を入れる焚き火専門店のように、なにかを突き詰めていくという流れは、ガレージブランドにも個人店にも通じるところかもしれません。

水上:そこに行けば何でも揃うわけではなく、厳選された質のいいものや、ユニークなアイデアが光る商品が手に入る。そんなお店には、やっぱり惹かれますよね。

平:そうした意味では、ユナイテッドアローズが新しく始めるアウトドアレーベル〈koti BEAUTY&YOUTH〉もしかり。いまのキャンプシーンに欠かせない旬なアイテムをセレクト・別注しているということで、僕も注目しています。

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熟練された職人によって制作される真空管オーディオ。スピーカーに惜しみなく無垢材を、細部にオリジナル真鍮削り出しパーツを使用するなど大量生産をしないブランドならではの拘りが詰まっている。

ーありがとうございます。実際に〈koti BEAUTY&YOUTH〉で取り扱う商品を、別注品も含めていくつか試していただきました。とくに印象に残っているアイテムはありますか?

平:僕は、〈LOCKFIELD EQUIPMENT〉のサイドテーブルです。天板をところどころ肉抜きしてあって、いろんなギアやパーツと組み合わせて使えるのがいいですよね。

水上:僕は、〈koti BEAUTY&YOUTH〉オリジナルのセットアップが気に入りました。

ー3層構造の防水・透湿素材PERTEX SHIELDを使った、オーバーシャツとクライミングパンツですね。

水上:軽いのはもちろんのこと、ポケットの位置や角度まで、キャンプを熟知したうえでデザインされているのが感じられました。アウトドアでは本当にちょっとしたことがストレスになったりしますから、そうした設計は安心ですよね。あと、なんなら家でも着ていたいくらいの快適な着心地にも驚きました。

平:カラーリングもいいですよね。黒ってわりとどこにでもあるけど、チャコールグレーは珍しい。グレーって、すごくセンスが問われる難しい色だと思いますが、いい塩梅の色味に仕上がっていますね。

ー実際、何度も色出しを行なったほどこだわったポイントなんです。

平:なににでも合わせやすい色ですよね。カモフラ系でも、コールマンを使ってるひとでも、どんなテントサイトにも取り入れやすそう。それって、すごく重要なことだと思います。テントサイトの細かいところにまでこだわると、どうしても、サイトに統一感を出すのが難しくなってきますから。〈koti BEAUTY&YOUTH〉のようにひとつベースとなるカラーがあって、それがどんなものとも馴染みやすいとなれば、だれもが理想のテントサイトを簡単に作り上げられるんじゃないでしょうか。

水上:ウェアなら、そのまま街にも溶け込みやすそうですしね。必要な機能はしっかりと押さえられていながら、デザインはそぎ落とされている。そのファッショナブルなバランスがいいですね。それとアウトドアで使える真空管を使ったオーディオや薪を燃やすと炎でロゴが浮かび上がる焚き火台もキャンプが楽しくなるアイテムだと思いました。

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    スパインボードをデザインベースに再生プラスチックを使用したサイドテーブル。肉抜きされた穴にはシェラカップなどのギアをハンギングできるなど使い勝手の良さも考えられている。

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    小型のオイルランタンはLEDだけでは味気ないキャンプサイトを温かみのある雰囲気に演出。

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    黒皮鉄を使用した無骨な焚き火台。軽量・コンパクトとは対極にあるが豪快に薪をくべて楽しむことができる。

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これからのキャンプシーンの愉しみ方。

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ー本日はありがとうございました。おふたりそれぞれのキャンプの楽しみ方から、昨今のキャンプシーンの潮流まで、ざっくばらんに教えていただきました。ガレージブランドやギアのカスタムといった楽しみの幅もますます広がって、キャンプシーンは引き続き盛り上がっていきそうですね。

平:いろんな話をしましたが、最初に剣星くんが言っていたように、キャンプの売りはやはりその“自由さ”にあると思います。家族や友達と楽しむのも、ひとりで楽しむのも。おうちキャンプをしてみるのも、一人ひとりの自由。ギアやウェアについてもそうで、着崩す楽しさや自分なりのアレンジを楽しむ自由がある。そうしたキャンプの本質を、今後も忘れないようにしたいですね。

水上:こだわりのギアやテントサイトを仲間と共有して楽しむのもひとつですが、最終的には「そこでいかに時間を過ごすか」ということが重要なんじゃないでしょうか。

平:本当にそう思います。もちろん仕事柄、僕もギアやウェアにはこだわりますが、道具なんかなくても、水のせせらぎや鳥の鳴き声を聞いているだけで癒されるし、空気は美味しいし。一緒に過ごす仲間と時間や空気を共有するのが、なにより楽しいんですよね。ギアやウェアはあくまで、そうした場をさりげなく引き立てるくらいの役割と考えるのが、ちょうどいいのかもしれません。

PROFILE

水上 剣星

モデル、俳優。10代よりファッションモデルを始め18歳より5年間ニューヨークにてバイイングなどアパレル関係の仕事を行う。帰国後ファッション雑誌を始めドラマ、映画に出演。2016年よりキッズブランド”himher”を立ち上げる。2021年にアウトドアラインの立ち上げを予定している。

平 健一

スタイリスト。山形県出身。文化服装学院スタイリスト科卒業、高円寺の古着屋で働き、その後シガアキオ師事、2007年に独立し雑誌、広告、企業のブランディングなど自身のPOP UPショップ「平屋」も現在そごう横浜にて開催。 Instagram@runrun1980@tairaya_

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