ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ヒト

2022.06.25 SAT.

尾花 大輔氏のトレーニングから生まれた
「OBANA SWIMMING CLUB」のスイムウェア。

40代になってからジムでのトレーニング、そして水泳をはじめた〈N.ハリウッド〉デザイナーの尾花 大輔さん。体づくりを生活の一部とし、無理せず長く続けることを目指して日々鍛え続ける尾花さんが、水着ブランドの〈アリーナ〉とコラボレートして水着をデザインしました。この度〈ユナイテッドアローズ(以下UA)〉の店舗で販売されることになった〈OBANA SWIMMING CLUB(オバナ スイミング クラブ)〉の水着やコラボアイテムが生まれた背景について、お話を伺いました。

Photo : Go Tanabe
Text : Ayumi Machida

積み重ねていくことの楽しさと
ライフスタイルとしての体づくり。

_DSC0627

—尾花さんが体づくりをはじめたきっかけはなんだったのでしょうか?

尾花:40代になって、やはり20代や30代とは体が変わってきたと感じていたのですが、ちょうどその頃原因不明の大病を患ったこともあり、何かはじめなければと強く思いました。最初は我流でトレーニングしていたのですが、これで健康になれるのか、自分が理想とするボディラインが作れるのかと不安を感じていた矢先、45歳を過ぎた頃にいいトレーナーとの出会いがあり、しっかり体づくりを教わるようになりました。正しいやり方で鍛えると、体のバランスやボディラインがきちんと整っていくということに気づき、積み重ねていくことの楽しさを実感しました。

—目に見えて変化を感じたのはどのくらい経ってからですか? 

尾花:半年過ぎたくらいですね。僕が手掛けているブランドのイメージもあり、やはりマッチョにはなりたくなかったので、重いものを持ち上げるとかそういう単純な鍛え方はしないようにしました。肩、胸、背中などは鍛えて、足にはあまり筋肉をつけないように、とにかく大きくなりすぎないように調整しました。40代になるとどうしても体が重力に負けはじめるのですが、負けた体にはなりたくない! と(笑)。

_DSC0647

—食生活で気をつけていることはありますか?

尾花:いまはオートファジーという16時間ファスティングする方法を続けています。夜はしっかり食べますが、翌日は昼過ぎまで食べないようにして16時間空ける。それだと無理せず続けられるんです。体づくりははりきってやり過ぎると続かないので、あまり無理しないということが大事ですね。自分らしいやり方を常に意識しています。

僕は凝り性なので、ついついやり過ぎてしまいがちなのですが、やり過ぎて飽きてしまってはいけない。だってこれは趣味というよりライフスタイルですから。体を動かすことを、食べるとか寝るとかと同じように生活サイクルの一部にしたいんです。土曜日以外は毎日スポーツクラブに行っていますが、しんどいなと思ったら集中力を欠くのでその日は途中でやめるとか、とにかく楽しく続けるということを心掛けています。


コロナ禍をきっかけに
水泳の魅力を再発見。

_DSC0526

—トレーニングに水泳を取り入れるようになったのはいつ頃からでしょうか?

尾花:小学校の頃はずっと水泳をやっていたし、大人になってからもときどき泳いではいましたが、本格的にはじめたのは2020年の夏です。パンデミックでいろいろなことがストップし、いよいよやることがないというときに、芝公園にある区営プールはなぜか閉鎖せずにオープンしていたんです。野外だから気持ちいいし、そこに毎朝通うようになりました。最初は適当に楽しんでいたのですが、ふと周りをみると、トライアスロンをやっているような本気の泳ぎをする人たちがたくさんいた。それを見ているうちに自分も本気で水泳をやってみたくなりました。きちんと教わってみたら、当然ですが自分が小学生のときに習った常識とは全く違っていました。競泳の泳ぎ方というのもありますが、僕が目指すのは長い時間、美しく泳ぐこと。キレイなフォームで推進力が高いという大人っぽい泳ぎが理想です。

—なぜご自分で水着を作ろうと思ったのですか?

尾花:水泳をはじめた頃、たまたま取引先さまとの話の流れで最近泳いでいると話したら、そこで取り扱いのある〈アリーナ〉の水着を送ってくださったんです。それを着て泳いでみたところ、はじめたばかりだからこそ気付くことがありました。たとえばまだあまり体もしまっていなかったから、お腹のあたりのコンプレックスをきれいにカバーできないかなとか、ヒップまわりのバランスを少し変えたいなとか。それを伝えたら、「じゃあ一緒に作りませんか?」と言われ、なるほど、それもいいなと。泳ぎながら考えているといろいろアイデアが湧いてきて、気付いたら本格的に作りはじめていました。ビジネスというより、自分が着るものを作りたいという想いが強かったですね。

_DSC0525

—〈OBANA SWIMMING CLUB〉という名前がとてもかわいいですね。

尾花:ありがとうございます。自分の活動をSNSで見返せるようにハッシュタグを付けているのですが、水泳のときに使っていたのが「#obanaswimmingclub」なんです。本格的に水着を作りはじめたとき、これを記号化したら面白いと思いました。

_DSC0573
「OBNSWMC」(OBANA SWIMMING CLUB)の文字が入ったTシャツやスウェット、パーカはUAとのコラボレーション。グレーの他にブラックとホワイトもあり。

—〈OBANA SWIMMING CLUB〉はUAで取り扱いをすることになりましたが、販路としてUAを選んだ理由を教えていただけますか?

尾花:僕はUAで〈UNITED ARROWS & SONS by DAISUKE OBANA〉(通称DO)というブランドを展開しているのですが、買ってくださるお客さまは皆、服を熟知されていて、自分のライフスタイルをしっかり持っているという印象があります。スーツを着なくても生活できる人たち、コンファタブルさを大切にしていて、力の抜けた服がいいと考える人たちが僕の服を選んでくださっていると捉えています。〈OBANA SWIMMING CLUB〉を一緒に扱うことで、〈DO〉をデザインしている人間が泳いだり鍛えたりしているということが伝わったら、面白い相乗効果が生まれるんじゃないかと思ったのです。フィジカルな人が作るとこういうデザインになるんだと〈DO〉に爪痕も残せるし、〈DO〉を着る人が泳いだり鍛えたりしはじめたら〈OBANA SWIMMING CLUB〉が役に立つかもしれないし。

_DSC8182
水着はハイカット、ショートボックス、ハーフのほか、外にも穿いていけるショートパンツの4型がある。水着以外ではゴーグルやキャップ、ラッシュガード、カラビナも製作。

—4型ある水着のラインナップを見ると、どれも真っ黒でとてもシンプルですね。

尾花:水着は生地の面積が小さいので、差別化するために柄やカッティングを派手にすることが多いですが、初心者だと派手な水着ってちょっとプレッシャーになりませんか? だからあえて地味で、でもいままでありそうでなかったものを作りました。真っ黒な水着なんて、いまどき学校指定の水着でもないかもしれない(笑)。これならエントリーユーザーから本格的なユーザーまで着られると思います。

現在、世界水泳選手権大会が開催されていますが、嬉しいことに日本代表でアリーナの水着を着用する選手たちは、トレーニングするときに〈OBANA SWIMMING CLUB〉の水着を着てくれるそうです。あと、水着だけではなく、水から上がったときのためのTシャツやスエット、パーカも合わせて販売します。これはUAと〈OBANA SWIMMING CLUB〉のコラボになります。


健康な暮らしを送る人たちのために
モノづくりをしていきたい。

_DSC0612
カラビナはタオルやウェアを掛けるのに便利。

—水着は今後も展開していく予定ですか?

尾花:たまたまきっかけがあって作ってみたらできあがったというものなので、これから継続するかどうかはまだ考えていません。ただ、かなり使い込んで研究して作り上げているので、今回作った水着をベースにさらに追求するということならまた作るかもしれません。

—体づくりにおいて、今後の目標を教えてください。

尾花:もっと極めていったらそこに何かがあるのかもしれないですが、まだ旅の途中という感じですね。サイクリングをはじめたらトライアスロンができるんじゃない? とよく言われるんですが、競技をしたいわけではないんです。競技だと目標ができてしまい、そこに意識が集中して日々のトレーニングがやりにくくなる。やはり長く続けるということを優先したいです。

人生100年時代と言われていますが、例えば最後の20年が寝たきりだったら辛いですよね。だからこれからはフィジカルを鍛えるということが当たり前になっていくのではないでしょうか。もはやいい服を着ているからカッコいいということはなく、きちんと自分を管理できている人のほうがずっとカッコいい。自分のライフスタイルを確立し、自然で動きやすい格好をしていること、そして健康でキレイなボディラインをキープすることの方が価値があるのではないかと思います。そういう人たちのお手伝いができるようなモノづくりに興味があるんです。

PROFILE

尾花 大輔

1974年、神奈川県生まれ。古着屋「ヴォイス」でバイヤーを務めた後、原宿の古着屋「ゴーゲッター」の立ち上げに参加する。2000年にショップ「ミスターハリウッド」をオープンし、2001年に自身のブランド〈N.ハリウッド〉をスタート。2010年9月より、NYでコレクションを発表している。

JP

TAG

SHARE