
ヒト
2022.09.01 THU.
イラストレーター イソガイ氏が「グリーンレーベル リラクシング」とともに描く
旭山動物園のありのままのいのちの姿とは。
〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉(以下GLR)のアイテムではもはやお馴染みといってもよいほど、たくさんのイラストを提供しているイソガイヒトヒサさん。その肩肘張らないポップでリラクシングなイラストは男女問わず多くの人を惹きつけている。そんなイソガイさんのイラストが北海道・旭山動物園の応援商品になって登場。今回はそのスペシャルなアイテムができるまでと、大人も子どもも魅了するイソガイさんのイラストが生まれるまでについてお話を伺いました。
Photo:Masashi Ura
Text:Masako Serizawa
自分の好きなものや美味しいものに
出会ったときのワクワク感を伝えたい。
「おいしいビールをイラストに」をテーマに、ビールの楽しさをたくさんの人に届けるiso Brewing Design(アイエスオーブルーイングデザイン)を立ち上げたことで知られるイソガイさん。ビールのパッケージやロゴ、グッズのデザインなどのアートワークのほか、雑誌『ビール王国』で「〆のビール」という記事を連載するなど、ビールにまつわるビアイラストレーターとして活動。最近ではモスバーガーとコラボレーションした、食べている人が思わずハッピーになるような食にまつわるイラストを手がけるなど、活動の幅を広げているいま注目のイラストレーター イソガイヒトヒサさん。
一ビールや食にまつわるものなど、日常のクオリティをあげてくれて、見る人をハッピーにしてくれるようなアートワークが印象的です。
最初はグラフィックデザイナーとしてアパレルに勤めながら、グラフィックに特化したものだけをやっていたのですが、20代でビールに出会ってクラフトビールにハマり、テイスティングセミナーなどに通っていました。ふとこれからの仕事について考えたときに、ビールと同じぐらい、パッションを注げるものを仕事にした方がいいかもと。そこからビールにまつわるイラストの仕事を手がけ、今に繋がっていった感じです。
作品を描くときは、よくスマホにアイデアをメモするんですが、思いついた分だけどんどん箇条書きにしていって。そこから実際できそうなものだけピックアップしていく感じです。
普段はリビングのソファに座り、タッチペンを使って気の向くままに作業することも。
デザイナー時代は何パターンも提出していた時もあったんですが、それだと目的が変わっていってしまう感じがして。いまはむしろラフ案をいくつも提案するよりかは、ムードボードに画像の切り貼りを用意して、「こういう方向性で合ってますかね?」と相手とすり合わせをして。漫然と形にしていくとよく分からないことって多いなと。なので、今回の〈GLR〉さんとの旭山動物園の企画にお声がけいただいた時もそうですが、プロジェクトがスタートする際はムードボードをできるだけ用意して相手と共有するようにしています『迷ったときにはここに立ち返ろう』という意味も込めています。
今回の〈GLR〉との旭山動物園のプロジェクトを進める上で作成したムードボード。
コミュニケーションツールとしての
洋服をどう活用するか。
一イラストレーターさんは感覚でお仕事されていらっしゃる方も多いと思うんですが、イソガイさんのように感覚も備えていて言語化できるというのはプロジェクトを進める上でパートナーも心強いですよね。
動物の生き生きとした表情を落とし込んだカットソー。デザインには「GUU」という動物がお腹の空いた時の音を入れ込むなどちょっとしたユーモアが散りばめられている。
今回の旭山動物園の企画も、〈GLR〉さんと「洋服って素敵なコミュニケーションツールだよね」というお話から始まって。洋服が入り口で旭山動物園のことをもっと知ってもらえたら最高だよねというところから進んでいった感じですね。事前に〈GLR〉の企画担当の方が北海道へ行き、先方とお話しされていて行動展示や動物園の思いなどミーティングで共有頂きました。動物のありのままの姿が見られるような行動展示を拝見して、何テイクもいろんな角度から動物を見ました。いのちの姿をありのままに感じてもらえる入り口になればなと思い、描き始めていきましたね。
(左から)ホッキョクグマが水面を気持ちよく泳ぐ姿と、旭山動物園がその絶滅をきっかけに環境保全団体に寄付活動を行なっているというエゾオオカミのショルダー。動物の生き生きとした写真を落とし込んだサコッシュはキッズが持ち歩き安いサイズ感に。
旭山動物園といえば…と言われるシンボル的な存在のホッキョクグマが気持ちよく水面を泳いでいるシーンをイラストだったり、旭山動物園が北海道で人の手によって絶滅させられたエゾオオカミをモチーフにしたアイテムを展開し、その売上金の一部を環境保全団体に寄付しているという動物園の根幹になるような活動も何かイラストに残したいと思ってエゾオオカミをモチーフにしたものを作ったりしました。動物のデフォルメをどの程度にしようか悩みながらひとつひとつ描いていきました。今回のアイテムで動物のリアル姿を感じてもらえたらうれしいです。
イソガイさんの描く一本一本の線が生き生きと現れたバンダナ。ホッキョクグマ、エゾオオカミ、旭山動物園の園内全体がわかるものの3種類。
特に園内マップを描いたバンダナに関しては、この動物園の特徴的な展示方法で、いまほかのどの動物園もこの展示方法を参考にしているといわれる「行動展示」がこのバンダナを見ればひとめでわかるようになっていて、どのエリアにどの動物がいるか、どのような展示方法かが子どもでもわかりやすく把握できるようにしています。鉄棒から鉄棒を腕で渡るサルの生き生きした姿だったり、ペンギンが列をなして足跡を残しながら移動していく姿だったり、お気に入りは色々あるんですが、描けば描くほどハマってしまい、ようやく完成した力作ですね(笑)。これを持ち歩いて園内を回るのも楽しいかなと。
今回の〈GLR〉さんとコラボレーションした洋服のタグは、サイズ感もあえて大きくして、子どもが見てもワクワクするような、いざタグをカットした後も手元に残しておきたくなるようなものにしたいと思って。旭山動物園へのエアラインのチケットみたいになればいいなと思ってデザインしました。動物園を代表する子どもたちも大好きなキャッチーな動物たちの写真の横には北海道の地形や飛行機、〈GLR〉のアイコンである雫のイラストを配して、QRは旭山動物園のサイトへアクセスできるようにレイアウトを組みました。このタグを手に取れば、いつでも動物園へ旅することができるようなイメージです。裏面には、オリジナルステッカーが付いています。
動物園のロゴもあえてリラクシングな表情の手描きに。「その方が温かみが伝わるかなと思って」。
ビールの泡の髭を蓄えたメガネのイラストが、イソガイさんのイラストの目印。
「イラストは気がついたらいつでも描いていますね。ソファに座って描いたりもできるので。朝起きてすぐ描き出せるので、コーヒーを飲みながらリビングで描いたりもしています。ビールのイラスト仕事のときは、家でビールを飲みながらビールの仕事ができるなんて最高だなぁっと思ってやっていますね(笑)」。
いま一番気になるのは
自分事として関われる未来のこと。
一ムードボードなど緻密なすり合わせと裏腹に、イソガイさんのリラックスした仕事のスタイルが作風に反映されている気がします。今後関わっていきたいことはどんなことでしょう。
「今手掛けたいと思っているのは、オフラインのアウトドアのイベントですね。例えば似顔絵を手がけるとか、実際購入していただいた人たちに楽しんでもらえるようなライブ感のあるイベントができたらと思っています。あとは、先日はゴミひろい活動をしているNPOのイベントに家族で参加したんですが、家族で学べるテーマっていいなと思って。いざ何かしようとすると大きな関心ごとに目が行きがちですが、ビールや子どもにまつわること、環境のことなど、自分の周辺にあるものにまずは目を向けて、自分事として広げていくことがいまは必要なのかなと思っています」。
INFORMATION
PROFILE

イソガイヒトヒサ
長野県佐久市生まれ。アパレルのデザイン会社に勤務したのち、独立。イラストを通じてビールの楽しさを伝える ため活動中。主な実績「PATAGONIA Provisions」や「ヤッホーブルーイング」へ アートワークを提供、雑誌『ビー ル王国』の「〆のビール」連載など。