ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ヒト

2016.07.08 FRI.

Lepidos 征矢まり子さん × Jonnlynx 林真理子さん
それは人生を楽しむためのヒントである。

2007年、ユナイテッドアローズのオリジナルスイムウェアブランドとして誕生した「Lepidos(レピドス)」。“太陽の下で思いきりHAPPYな時間を過ごしてほしい”という思いから掲げられたコンセプト“Under the sun”は、ディレクターである征矢まり子さんのライフスタイルそのもの。そして、征矢さんのお友だちであり「Jonnlynx(ジョンリンクス)」のデザイナー林真理子さんも、同じく“Under the sun”を地で行く女性の一人。夏本番を目前にした今回は、そんなふたりの対談を潮風ただよう逗子からお届けします。休日にはよく、逗子にある征矢さんのお宅でガールズトークを繰り広げているというふたり。いつものようにリラックスしたなか、話は出会いのエピソードから共通の趣味でもあるサーフィン、仕事、ものづくり、さらには日本男子への警告(!)まで。熱くゆるっと語っていただきました。

Photo_Kenji Nakata
Text_Shizuka Horikawa

サーフィンという共通項。

征矢:はじめて会ったのは6〜7年前、共通の知り合いの展示会が最初だよね。

林:そうそう。

征矢:私がまり子です、みたいな。

林:こちらこそ真理子です、みたいな(笑)。

征矢:そう、最初は話すというか、あいさつ程度だった。

林:で、次に会ったのが海。

征矢:葉山でサーフボードをつくってる友人のところで会って、そのままサーフィンしに行ったんだよね。

林:はじめて会った展示会もサーファー友だちのブランドだったし、ふたりとも黒いから、お互いがサーフィンしてるってことは話さなくてもわかって(笑)。

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征矢:サーファーの友だちは多いけど、いつもまわりにいるのは男のコのサーファーだったから、女のコと海に入るっていうことにはじめての感覚があって、なんだかすごく楽しかった。また一緒に入りたいなあって思ったこと、すごく覚えてる。

林:うん、すごくしっくりきたんだよね。そこから自然な流れで今に至るって感じかな。

征矢:とはいえ、真理子ちゃんは先輩なので。

林:覚えてたんだ? そんな態度、普段は感じないけど?(笑)。

征矢:うん(笑)。なんていうか、年齢的な歳の差は感じないんだけど、私がいま悩んでいることは、もう真理子ちゃんはすでに通過してたりするんだよね。話をしてると、これまでの真理子ちゃんの経験や考え方から教わることも多くて。先輩だなあと、ふと思うことがある感じ。

林:いつもこうやって話してるもんね。コーヒーじゃなくてビール片手にだったりするけど(笑)。話してる内容は細かいディテールっていうより、バランスとか感覚的なことのほうが多いよね。そしてその感覚の部分がたぶん合うんだろうね、私たち。

征矢:そうそう、心地いいの。

林:でもって、ふたりの共通点としてサーフィンの存在は大きいよね。

征矢:うん、そうだね。

林:サーフィンには哲学的なインスパイアがあると私は思ってて。

征矢:そういうところ! 真理子ちゃんは哲学的なところがあって、話をしてると、そんなふうに考えてたんだ!っていう発見がたくさんある。それって自分にはないことだからすごくおもしろいの。

林:その点でいうとまり子ちゃんはまっすぐ。何にも裏に隠れてないからね。感じ方も素直。私は考えはじめると変なポケットに入ってしまうことがよくあるんだけど、まり子ちゃんは違う。すごくピュアにものごとを受け止めてると思う。

征矢:そういうのってタイプがあるよね。私はあんまり考えないタイプだけど、真理子ちゃんは考えるタイプ。言われてみれば、そうかそういう考え方もあるなって。私はあんまり深掘りしないから(笑)。

林:そうだね。私、深掘りするね(笑)。そういうのが好きみたい。

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征矢:そして私はその話を聞くのが好き。すごく近い感覚を持ってるんだけど、でもそういう面ではぜんぜん違うっていうのがフレッシュで。真理子ちゃんて少年みたい。

林:(笑)。

征矢:お互い普段からそういうこと話して確かめ合ってるよね。プライベートなことも、仕事のことも、全般。

林:で、最終的にはどこかいい波乗りに行きたいね、で締める感じ。

征矢:真理子ちゃんはうちの旦那さんとも仲良しだしね。旦那さんに「このまりこたちはしょうがないな」って、ふたりして娘扱いされてるよね(笑)。

林:その感じも居心地いいんだよね。ここの夫婦はふたりとも器がでかい。だから猫のように突然ふらっと来て、猫のように帰れる(笑)。

征矢:真理子ちゃんに開放してるもんね。このソファとかまさに。

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林:サーフィンを通してのライフスタイルっていうか時間の使い方のペースが合うんだよね。実は私って人見知りだし、気ままだから普段は一人行動が多いんだけど、インディペンデントでお互いほっといても平気っていうのがどこかにあるこの感じがいいんだと思う。

征矢:そうそう、けっこう不思議な感覚があるかも。

林:ほかの女友だちとはちょっと感覚や距離感が違うかもね。そもそも私たちって約束したことないよね?

征矢:確かに、一度もないかも。

林:私、約束とか出来ないタイプ(笑)。

征矢:私も(笑)。

林:波乗りする人ってみんなそうかもね。何時に行くとも言わないで来ちゃっても平気な感じっていうか。私、ゴールデンウィーク中もこの家に2、3日ふつうにいたよね。

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サーフィンの魅力とは?

征矢:サーフィンって、気持ち的に抜ける感覚があるんだよね。

林:わかる。

征矢:海に入ってるとき、考えごとする?

林:しない。

征矢:そうだよね、しないよね。目の前のシチュエーションに向き合うっていうか、海に入る前に考えてたこととかどこかに行っちゃう感じ。

林:意識しなくてもそうなるよね。自然と対峙すると余計なこと考えられなくなるっていうか。

征矢:そうそう。

林:いま目の前にあることに集中するの。無になれる瞬間だよね。けど、仕事のストレス発散のためにやってるっていうのとも違う。

征矢:そう、わかる。

林:けど、サーフィンのこと考えてるとサーフィンがしたくなって、仕事したくなくなっちゃう(笑)。

征矢:そう? サーフィンのことをふと考えることはあるけど、仕事とはいいバランスを保てている気はしてるかな。まあ、こっち(逗子)に暮らすようになったっていうのも大きいかもしれないけど。

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林:引越したのは5年前だっけ?

征矢:そう。サーフィンの存在もそうだけど、漠然と山とか海が近くにある場所に住みたいなっていう思いが歳を重ねるごとに強くなってきたんだよね。こっちに住んでからよりいいバランスで仕事が出来てるなって感じはする。今は週5日東京に行って、週末また必ずこうやって海のそばで過ごすっていうサイクル。今後はこっちにいる時間をもっと増やしたいなって思ってる。

林:いいよねー、逗子。

征矢:時間の流れ方が違うんだよね。見える景色というか、緑との距離感とか、その奥に見える山とかに無意識的に癒やされてるのかな。こういうリズム、この環境、この時間軸で過ごす時間をもっと増やしたい。

林:うん、いいと思う。

征矢:都会に行くと、人も多いしめまぐるしいし、追われてる感覚があって、黙っていても物事が進んでいっちゃう感じがするんだよね。けど、こっちに来て、自分が求めているスタイルと現実との間にあるギャップに気づいたというか。

林:仕事は別に机に向かってなくたってできるしね。どこにいたって常に考えてるし。

征矢:そうなんだよね。

林:ふとした瞬間の積み重ねが仕事につながってるんだよね。仕事とプライベートは切り離してないっていうか。ずっと仕事してるのかって聞かれたら、実際そうかもしれない。遊んでるときも、サーフィンしてるときも。常に目で見て、耳で聴いて、肌で感じて、何かを食べてるときでもそう。オンとオフはみんなが期待してるよりないんだよね。ずっとオンかもしれないし、ずっとオフなのかもしれない。

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ものづくりの背景にあるものとは?

征矢:そもそも私は、私が好きなものとか普段から興味を持っているものしかつくれない。自分の生活と縁がないものや遠いプロダクトはこの先もつくれないと思うんだよね。いつもそのときの自分の等身大がプロダクトになってる。それ以上でもそれ以下でもなく、そのときの生活が反映されちゃう。そうしようとしてるわけではないんだけど。

林:プロダクトは生活そのものだよね。

征矢:お客さんに向けてああしたほうがいいとか、こうしたほうがいいんじゃないかっていうのはあっても、そこには辿りつけないというか、それはできないというか。

林:それがまり子ちゃんらしさなんだと思うよ。

征矢:それが私の弱点でもあるんだけど(笑)。

林:基本的に無理しないもんね。

征矢:自分らしくいることで、うまくいかないことあるんだなあって。

林:うんうん、それもらしいと思う(笑)。

征矢:もう少し社会に寄せれば、もっとうまくいくこともあるのかもしれないけど、まあ不器用っていうか(笑)。

林:それがスタイルってことだもん。プロダクトにそれが正直に出てるから、私はすごくいいと思う。

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征矢:ブランドのコンセプトはずっと変わらないけど、そのなかでやれることのテクニックっていうか発想やひらめき、武器はここ数年で少し増えた感じはしてる、かな。

林:変わってると思うよ。てか、そりゃそうだよ。生きてる限り自分が変わってくんだもん。ものをつくってるとゴールってないから自分では絶対満足しないもんね。

征矢:そうそうそう。いま売ってる水着って一年前の展示会で発表したものなわけで。来季の展示会がもうすぐはじまるけど、今それを見ると、もっとこうできたなとか、こうしたかったなとか考えちゃうんだよね(笑)。

林:私の場合、販売が開始された頃には飽き飽きしてる (笑)。なんて、それはちょっと大袈裟かもしれないけど、デリバリーの頃には次のこと考えてるからね。

征矢:次へ次へっていう考え方にはなってるかもね。

林:まあ、それがものをつくることのおもしろさでもあるわけだけど。

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立ち上げから間もなく10年。「Lepidos」が伝えたいこと。

征矢:ブランド立ち上げ当時、日本で水着を販売してるところって百貨店の夏の特設会場か老舗の水着メーカーとかしかなかったんだよね。

林:そうだね、確かに。

征矢:日本ってビーチカルチャーがないから水着に対してすごく消極的で。水着を着ることもそうだし、海で遊ぶことにもあまりポジティブじゃない感じがあって。つまるところ、お休みを上手に使えてないというか、休まない体質というか、お休みが取りづらい空気感というか。有給も取らずに消化しちゃうみたいな。なんかそういうのがイヤだなって。もっと正々堂々遊ぶ気持ちに、そういうスタイルに、みんながもっとなればいいのにって思っていて。

林:本当そうよね。

征矢:それで、可愛くって手に取ってみたくなるような水着をつくりたいなって思ったの。そして、手に取ってみたら着たくなって、思わず買ちゃったってなって。買ったからには海に行こう、プールに行こう! みたいな意識改革ができたらっていいなっていう思いがあって。こういうものを着て欲しい、っていうよりは、女のコたちの気持ちの底上げみたいなことのお手伝いができればいいなっていうのが、“Under the sun”っていうコンセプトの裏に、ずっと変わらずにある。もっともっと楽しむことに素直になってほしいんだよね。

林:うんうん。

征矢:水着に触れることがきっかけで、外に外に気持ちが向いてくれたらいいなって。やったもん勝ちっていうか、旅に出る、人に会う、何かを食べる、何かをするっていう経験が、仕事にせよ、プライベートにせよ、きっと自分の今後のスタイルに、方向性につながってくると思うから。

林:そう、遊びから学ぶっていうの大事だよね。日本人は真面目過ぎるっていうか、それが苦手なんだと思う。洒落がきかないっていうか。仕事で行った旅だって楽しまなきゃ。メモを取るより感じなきゃ。感覚として残さなきゃ。洒落があるほうが楽しいし、人にも物事にも寛容になれる。結果として、仕事の糧にもなると思う。

征矢:そうなんだよね。

林:ブランドにも本人にも、まり子ちゃんにはちゃんと洒落がある。今季のカタログ見てるだけでもワクワクするじゃない? そういうの大事だよね。

征矢:あの歳でよくあんなの着れるな、とか言う男性がいるけど。

林:そういうつまんないこと言う男いるよね。日本は、男が女の人を老けさせると思う。そもそも日本て、歳を重ねた女性のことをおばさんっていうじゃない? 海外って、マダムとかレディとかもっと別の呼び名があるのに。

征矢:何歳になっても女性のからだは綺麗、美しいっていう風土が海外にはあるのに、日本は賞味期限っていう言葉を使って、年を取ると可愛い水着は着ちゃダメみたいな。

林:海外だったら白髪のおばあちゃんがビキニ着て歩いててもみんな寛容だよね。実際に素敵だと思うし、みんな大人に対するリスペクトがある。

征矢:日本はビーチカルチャーが盛んじゃなかったから、しようがないところもあるんだけど、だから、これからかなって。こんなに世界が近くなって、いろんな経験をしている人が増えた今、まだそんなこと言ってるのもかっこ悪いし、変わってくんじゃないかな。ていうか、もっとそういう環境やムードが広がればいいなって思ってる。

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PROFILE

征矢まり子

2001年入社。バイヤーのアシスタント業務を経験したのち、2006年に応募したUAラボをきっかけにLepidosを立ち上げる。ビキニをデザインするかたわら、リゾートアイテムのバイイングも行ない、一年中、海と太陽とビキニのことを考える日々を送る。

林真理子

セレクトショップのプレス、デザイナーを経て2008年よりフリーのデザイナーに。プライベートブランド「jonnlynx」の他に、さまざまなブランドのデザインを手がける。

JP

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