ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ヒト

2019.08.22 THU.

“すべてはお客さまのために”サービス向上のための取り組み。

(株)ユナイテッドアローズ、(株)ビームス、(株)ベイクルーズグループで活躍する、販売のスペシャリスト6名が集結し行われた座談会。この貴重な機会をライブで見たいと100名近くの販売員が駆けつけ、スペシャリストたちの熱のある話に耳を傾けました。それぞれのブランドのスペシャリストが日々、どのような方法や気持ちで接客に向き合っているのか。当日の様子と一緒に、どの仕事にも通じるプロフェショナルとしての回答の数々をご紹介します!

photo_Shimpo Kimura
text_Noriko Ohba

sales-master_1二宮友美さん。ユナイテッドアローズ新宿店勤務。2008年にセールスマスターに認定、昨年より2回目のセールスマスター「ゴールド」に認定される。

sales-master_2藤田裕貴さん。ユナイテッドアローズ六本木ヒルズ店にて、セールスマスター「ゴールド」として、接客・販売に専念している。

名言続出! スペシャリストたちそれぞれの“接客の形”。

ユナイテッドアローズ(以下、UA)、ビームス、ベイクルーズのセレクトショップ3社からそれぞれに選ばれた販売のスペシャリストたち。その生の声を聞こうと会場に集まった販売員をメインにした参加者およそ100人で会場は満員。すでに熱気に満ちた雰囲気の中で始まった座談会は、自己紹介を終えるとさっそく本題に入ります。最初のトピックスは、「販売員として、自身が大切にしていること」。司会者より「あくまで主観による、個人の視点で語っていただければ」との前置きのもと、それぞれの想いを話してくれました。

開口一番の藤田さん(UA)は、「お客さまの想像を超えること」と切り出します。「ご依頼のもの以外の提案をすること、想定外のものを提案することで、お客さまに対する思いも伝わるのではないかと思っています。その日売れればOKではなく、この先のお付き合いにつながっていく提案をすること」とのこと。栗原さん(ベイクルーズ)からは、「わたしはシンプルにお客さまがこの時間を楽しんでくださっているか、そして自分も楽しめているかを大切にしています。わたしたちはお客さまと販売員という関係ですが、その根底にあるのは人と人とのコミュニケーション。その時間を一緒に楽しむことが大事。もうひとつは、おすすめするモノやブランドに誇りをもち、その価値を“自分の言葉”で伝えること」と熱意を込めて語ってくれました。

仲田さん(ビームス)からは、「お客さまありきでモノをすすめること」との言葉が。「一般的なセオリーを語るのではなく、そのお客さまのパーソナルな部分をしっかりと観察して、この方にはこれを提案したいという気持ちでおすすめすることが大事」だと言います。最初のトピックスから販売のスペシャリストたちが導き出した、経験に基づく言葉のオンパレード。それを惜しみなく伝える姿勢に参加者も一気に引き込まれます。

sales-master_3sales-master_4(写真左)山田慎平さん。EDIFICE横浜店勤務。大学在学時19歳の時から働き始め、現在14年目。パーソナルスタイリスト「プラチナ」として現場に立つ。(写真右)栗原知佳子さん。FRAMeWORK自由が丘店勤務。管理職を経て、パーソナルスタイリスト「ゴールド」として現場に立つ。

接客スキル向上のためのスペシャリストたちの習慣。

その後は特に販売員からの質問が多かったという「接客スキルについての勉強の仕方、情報の集め方」について。「洋服以外でお客さまとどういった話ができるのかを課題にしている。そのために為替や経済情報を日々頭に入れる。他には一流ホテルのラウンジに通い、自分が接客され、癒される立場になることで、自分がお客さまに対してなにができるかのヒントをもらう」(藤田さん)や、大岡さん(ビームス)の「接客スキルは先輩から目で盗み、モノについての知識は自分で買って体感するというやり方を徹底してきた。革靴などモノについてとことん調べたこと、コーディネートについてなど自分なりにまとめたこのファイルが自分だけの情報源になっていた」と、入社以来22年続けたという辞書のように分厚いファイルを実際に見せてくれました。

続いての「モチベーションが上がるときと、モチベーションを維持する方法」では、「お客さまに喜んでもらえたときにいちばんモチベーションがアップします」との意見が多数。そして、もしもその日にご案内したものがフィットしなかったとしても「今、このインスタがおもしろいですよ、このお店が流行っているんですよ」など、お買い物以外の話題にも触れながら、最後には“今日、お店に来てよかった”と思っていただけるよう、さまざまな方向から接客の糸口を探します」と仲田さん。

他にも「アンケートなどで自分以外のスタッフの接客について喜ばれ、それをスタッフに伝える嬉しさは格別」(仲田さん)「急いでいらっしゃるお客さまに対して、スムーズにお買い物していただけるようスタッフの連携がうまくいき、良い接客ができたときは、すごくモチベーションが上がります」(UA二宮さん)など、自分以外のスタッフが褒められたとき、チームとしていい仕事ができたときにも接客の楽しさを感じるというのも印象的。自分だけではない視野で接客を捉えているのもスペシャリストの志を感じます。

_KR_2993ok_1_KR_2866ok_2(写真左)大岡靖治さん。ビームスFにてサービスマスターとして勤務。確かな審美眼で物を語るブログも好評。(写真右)仲田文恵さん。ビームス 池袋勤務。ウィメンズカジュアルの首都圏の店舗を総括的に見ている。趣味はインドカレー屋を巡ること。

「接客の現場は、ブランドのロイヤリティをつくる場所」。

興味深いトピックスが次々と飛び出す座談会、あっという間に前半が終了。後半の最初には、これから先進んでいくであろう「オムニチャネル化」について、ビームスのCRM推進部の山崎さんよりお話がありました。「オムニチャネルとは、一般には複数のチャネルを横断した一貫性のある購買体制と言われていますが、これは企業側から見た概念。お客さまの側に立ちその本質を紐解けば、『お客さまにさらなる楽しさ、満足を感じていただき、顧客満足度を高めるためにオムニチャネルがある』ということ。デジタルが、ECが、リアルが、と分断されているのではなくて、誰でもスマホを持つ時代に、デジタルはあくまでベースにあって、店舗やスタッフなどリアルな現場はブランドのロイヤリティを醸成するハイタッチな場所になっている。デジタルで体験できないエモーショナルな部分を接客が担っていることを考え、次のアクションを取る必要がある」とのこと。この話を受けて、後半は「未来の話」へと移っていきます。

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「お客さまがご来店してくれた意図を想像すること」。

さて、後半最初のトピックスは、「これから販売員の役割はどう変化するか。販売員が今やるべきこと」について。「お店でもネットを見たお客さまが『これありますか?』とご来店いただくことがあります。そこで大事なのはお客さまはなぜ、ネットで買わずにご来店したのかの意図を考えること。サイズ感やコーディネートについて聞きたいのか、実際に試着をしたいのか、そこを解消するためにも店舗にわたしたちがいる役割や意味はあると思う」と二宮さん。

山田さんからも、「販売するだけでなく、店頭でしかできない付加価値を提供すること」とのお話が。さらに大岡さんからは「対面販売の形が変わっていく今、改めてセレクトショップらしい提案が大事なのではないか。なぜバイヤーがそれをセレクトしたのか等の背景を含めて、模範解答ではなく自分らしい言い回しで提案することが大事。また、販売員自ら発信していくことも大切だと思い、僕の場合はブログを始めました」とのこと。また、顧客づくりについては、「1回目でできる限りのサービス、想像を超えるサービスを行い、お客さまにお気に召していただき2回目に繋がったら、2回目こそが最も大事な勝負所。そこでしっかり話ができれば、その後はアポイントにつながり、いつの間にか強い信頼関係が出来上がってしまうんです(笑)」と藤田さん。会場からも笑いが起こると同時に、感心のため息も聞こえてきました。

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「お客さまの反応は、自分のサービスに対する回答です」。

スペシャリストそれぞれの視点で語られる「対面販売とは」「プロフェッショナルとは」の話に、参加者のみなさんのメモが止まらない様子。座談会も佳境、次のトピックスでは「販売員としてのキャリアを築くのに大切なこと」について。「接客の経験を積み重ねること。なぜならお客さまの反応こそが、自分のサービスの答えだから」(栗原さん)、「五感を使ってお客さまを観察し、接客すること。主役はもちろんお客さまですが、お客さまに必要とされるスタッフもまた主役だと考えて、常に“今”にフィットする接客ができれば大丈夫」(仲田さん)、「UAという看板を借りて、個人商店を営む気持ちで本気で商売に向き合う。限られた時間の中で最大限できるサービスを提供し続けること」(藤田さん)と、至言だらけの回答。最後は、それぞれのこれからの目標と参加者へのメッセージを聞いて座談会はお開きになりました。

「一方向では終わらないのが、この会のもうひとつの目的。みなさん、他ブランドの方と今日の感想について語り合ってください」と、参加者もまわりの人たちと今日のことを共有し、印象に残ったことなどの意見を交換。和気あいあいとした雰囲気のまま、会は終了となりました。参加者からは「販売員という仕事の奥深さ、おもしろさを改めて感じた。明日からの活力になりました!」「あっという間の2時間でした! 他ブランドの方のお話を聞ける貴重な機会に加えて、経験に基づいたエピソードや接客に対しての哲学が本当にためになりました。メモを見返して、自分にできることを考えます!」など、興奮冷めやらぬ様子。自分のやり方を模索しながら、日々アップデートさせ、輝き続けている販売のスペシャリストたちの声が、店舗に立つ多くのスタッフに届いたようです。

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JP

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