ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ヒト

2019.10.02 WED.

これからのユナイテッドアローズについて「次の時代のために、今すべきこと」。

企業にとって30年というのは節目の年。それまでを振り返り、そしてその先を見据えなければいけない大事な時期です。そこで竹田光広 代表取締役社長が行ったのが、経営理念の改定。しかもそれを全国の店舗を回って、スタッフと顔を合わせながら自らがその真意を伝えるという全国行脚を行なっています。経営理念の重要性とは。その先にあるユナイテッドアローズの未来とは。その想いを伺いました。

Photo_Go Tanabe
Text_Jun Namekata

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―まずは経営理念を改定することにした理由やきっかけ、意図をお教えいただけますか。

経営理念の理解が人によって違っていたり、また若いスタッフの中には経営理念というものが自分の仕事にどう結びついているのかを理解できていない人もいる状況を認識しました。それでは100年企業を目指せない。ですので、まずはそこを整理し、改めて共有することで、経営理念の実践と日々の仕事がどういうふうに繋がっているのかを理解してもらいたく改定に取り掛かりました。

―やはり経営理念を理解して仕事に取り組むということは重要でしょうか?

役割や役職、働く場所にかかわらず、誰にとっても、何のために仕事をしているかを理解することは非常に大切です。そして、私たちが社業を通じて、お客様や社会とどう繋がっているのかを正しく理解する事が重要です。

―改定された経営理念を教えていただけますでしょうか。

「真心と美意識を込めてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける」。これが新しい経営理念です。根本的に改定したというわけではなく、表現をわかりやすく、すべてのスタッフが“自分ごと化”出来るようにしました。これから先100年続く会社を作るためには、社会から必要とされるお店でなくてはいけません。

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―洋服を売るだけでなく“生活文化を創造する”。これが、社会から必要とされるというところでしょうか。

社会とどう繋がっているかを理解し、社会貢献をしていくことは非常に重要なことです。企業が発展していくことで経済的に貢献できるということもありますが、国連で採択されたSDGs=Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の実現にいかに寄与できるかも大事。世界基準で見ると、そこに関して日本の企業は欧米に比べて遅れていると感じます。そこを早くキャッチアップしなくてはいけない。ひいてはそれが、お客様からの信頼につながるのだと思っています。

―会社としてということは理解できますが、自分個人の仕事がどのように社会貢献につながっているか、実感しづらいのではないでしょうか。

そんなことはありません。例えばSDGsの目標の一つである「つくる責任。つかう責任」は、非常にわかりやすく寄与できる。実際に各担当者が起案し実現した羽毛をリサイクルする「グリーンダウンプロジェクト」や、基準外商品や店舗什器・家具をリペアして販売する「REプロジェクト」などがある。できることはたくさんあるんです。

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―それが、100年続く企業につながるということでしょうか?

30年というのはあくまでひとつの節目です。大事なのはここから先のさらなる発展。つまり、いかに社会に必要とされる会社になるかだと思っています。例えばエルメスはいいベンチマークです。柔軟に時代対応をしながら、本物の価値を社会に提供し続けている。それは、伝統工芸を守りつつも社会の潮流やお客様の変化とともに変わっていけたから実現できたことだと思うのです。日本にも素晴らしい技術や文化がありますが、残念ながら伝統工芸で終わってしまっていることが多い。なぜか。それは日常と密着していないから。お客様に必要とされるスタンダードになれなかったからです。我々もそのことを理解し、追求していかないと100年企業にはなれません。

―ファッションを主軸にしつつも、それだけでない、様々な分野での貢献が期待できます。

そうですね。飲食やホテルなど、やりたいことはたくさんあります。スタッフからもいろんな声が上がってくる。例えば先日、青山にユナイテッドアローズのウィメンズストアがオープンしたのですが、その中にはカジュアルなバーが併設されています。これもスタッフの発案により実現したこと。こういった“場”の提供もまた我々のミッションです。

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現在、改定した経営理念の真意を説明するために全国のショップを回っているのですが、スタッフからすごく熱いものを感じます。ユナイテッドアローズのメンバーはみんな経営理念にコミットして入社されているというのを改めて知ることができた。そしてその経営理念を再認識することで、改めて束ねた矢の強みが増すことを実感しています。

―スタッフとのコミュニケーションはいかがですか。

非常に有意義です。少し落ち込んでいる入社3年目の若手の悩みを聞いたり、私のユナイテッドアローズ入社のきっかけを話したり。社長とは苦虫を噛み潰したような顔で毎日ハンコを押しているだけだと思っている人も少なくないでしょうから(笑)。しかし前職の時に私がクロムハーツの日本1号店を作るためにリチャードの自宅まで行って店舗内装を詰めたことや、ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシングの最初のオリジナル商品作りに携わったこと、入社してからキャスキッドソンの代官山1号店をオープンさせて店頭にも立っていたことなどを理解してもらうことで、スタッフたちとの距離も近くなる。そういうことが大切なのだと実感しています。

―竹田社長が思う、ユナイテッドアローズらしさを感じる、大切にしているものを教えてください。

まずはやはりクロムハーツでしょうか。プロダクトとして本物であり、それをお客様に提供できているということに価値があると自負しています。そしてお互いの強みをリスペクトし合い、弱いところを補い合いながら今までやってきた。ユナイテッドアローズだからこそ実現できた取り組みだと思っています。

この手帳は初めてLAのファクトリーに行った時に購入したものですが、使い混みすぎて擦り切れてしまったところをリチャードがいつも補修してくれるんです。それでこんな見た目になってしまいました(笑)。

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もうひとつはソブリンハウスのスーツ。大切な時に私が着るスーツは、すべてここのオーダースーツです。パターン、縫製、デザイン全てのクオリティが徹底的に追及されていて素晴らしい。私はシャツもソブリンハウスでオーダーしています。

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そしてピエール=ルイ・マシアのスカーフですね。私なりの正装としてスーツにも合わせています。

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ブランドとの協業。オリジナルのプロダクトの追求。ファクトリーとの連携。それぞれの背景を含め、どれもユナイテッドアローズにとってなくてはならないものだと思います。

―100年構想を掲げるにあたり、最後に改めてその展望をお聞かせいただけますでしょうか。

まずは先ほどからお伝えしているように、社会に貢献できる存在であることが大前提です。その上で、我々はセレクトショップ、つまり世の中の新しいもの、いいものを発掘して提案するというこれまでの概念だけでは、私は100年企業にはなれないと思っています。バイイングして売るだけならばそれはセンスの問題ですし、それは継承できるものではありませんから。そこで必要になってくるのが、バイイングしたものと合わせても遜色のないオリジナルのプロダクトを生み出すこと。単なるセレクトショップのオリジナルではなく、海外のトップブランドや国内ブランドとスタイリングできるクオリティを備えたものです。そこでお客様に評価いただけることが急務だと思っています。

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またユナイテッドアローズには、細分化されるマーケットに合わせて様々なレーベルを展開していますが、その全てが各カテゴリーのトップになることを目指しています。今はお客様が一つのカテゴリーにとどまってお買い物をされるのではなく、必要に応じてカテゴリーを横断しながらお買い物をされる時代です。私自身もソブリンハウスで買い物もすれば、グリーンレーベルリラクシングで買い物をすることもある。それぞれのカテゴリーでお客様からの信頼を得るためには、そういったお客様のニーズに立って求められているものを的確に理解する必要がある。その努力を惜しまずやっていきたいと思っています。

それ以外にもおしゃれを楽しむ“場”の提供、着なくなった洋服を回収してリサイクルするサステナブルな取り組みなど、やらなければいけないことはたくさんある。その全てに対してベストな回答を示していきたいと思っています。

PROFILE

竹田光広

1963年、福岡県生まれ。大学卒業後、当時の兼松江商に入社し、 海外ブランドのリテールや商品開発に従事。2005年ユナイテッドアローズに入社後、 事業部門の部長、本部長、上席執行役員、取締役 常務執行役員、同 副社長執行役員などを経て、2012年4月代表取締役 社長執行役員に就任。

JP

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