モノ
2026.02.19
いい素材をきちんと届けたい。「グリーンレーベル リラクシング」と「第一織物 」“DICROS”のものづくり。
上質な日本の織物技術を背景に、ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(以下、GLR)が2026春夏シーズンより、福井県のテキスタイルメーカー「第一織物」が手がける高密度で機能的な合成繊維織物“DICROS”の生地を使用したアイテムの展開を拡大。本企画では、GLRメンズ企画担当である栁 厚次さんへのインタビューと、第一織物の工場見学を通して、“いい素材を、買いやすい価格で届けたい”という〈GLR〉のものづくりの背景を紹介します。
Photo:Taro Oota
Text&Edit:Shoko Matsumoto
上質な合繊を求めて。第一織物との出会い
「知ったのはかなり前です。以前勤めていた会社時代からなので、正直いつだったかは覚えていないのですが、本格的に使わせていただくようになったのは2022年の秋冬からです。ダウンのシェル素材を探している中で、第一織物さんの生地を使いたいなと思ったのがきっかけでした」
―数ある素材の中で、DICROSを選ばれた理由を教えてください。
「それまでは、どちらかというとウールの紡毛素材のような、仕事着寄りのダウンが主力でした。その後いろいろ試行錯誤するなかで、ジャケットの上に着るというより、もっとカジュアルに着られるような合繊のシェルを探していたんです。そのときに、第一織物さんの素材が持つ“上品さ”と“機能性”のバランスが一番しっくりきました。第一織物さん自身も“機能美”を打ち出されている会社だと思うのですが、そこに対する姿勢が明確で、〈GLR〉の考え方とも重なったんです」
「はい。第一織物さんは、自社で開発された素材を使っていくというスタンスが基本だと思っています。今回はセットアップのみ、少し珍しい形でお話をさせてもらいました。というのも、ちょうど使用したいと考えていたDICROS素材がリサイクルポリエステルに切り替わるタイミングだったんです。その際に、セットアップに合う風合いにできないかご相談させていただき、調整を共同で行いました。今回僕たちの意見をしっかり汲み取っていただけたのは、とてもありがたかったです」
工場を訪れて見えた、品質を支える現場の力
「合繊素材の織物屋さんは、経糸の本数が本当に多いです。昔はそれを全部、人の手で一本一本通していたと聞いて驚きました。検反機でシワをチェックしながら経糸の問題を見つけていく工程も見せてもらい、クオリティに対する意識の高さを強く感じました。それから、働き方改革の一環で、週末は工場を止めているというのも印象的でした。ものづくりだけでなく、企業としてもかなり先進的だと思います」
生機から美しい。第一織物のものづくり
第一織物の工場。約100台の織機を自社で保有する。
受託生産が主流とされる福井の産地において、第一織物は自社のアイデアを起点に生地を開発。サンプル段階から営業自らが提案を行い、自販率は95%に達するそう。ファッション衣料向けが全体の約95%を占める点からも、マーケットと密接につながったものづくりを続けてきたことがわかります。
第一織物が特に重視するのが、「生機(きばた)」の完成度です。染色や加工で化粧をする前から美しい状態、いわば「素肌美人」であることを追求しています。そのため、あえて旧型のウォータージェットルームを使い、井戸水の水質管理や低速での製織にこだわっています。織り上がった後も、外観検査だけでなく、試験染めによる事前チェックを実施し、加工トラブルの芽を早い段階で摘み取る体制を整えています。
水流で緯糸を飛ばし空気よりも低速で織り上げることで風合いのある生機に。
検反機に織り上がった反物を広げて、長さ、幅、欠点をチェックする。
リサイクル素材への切り替えが、共同開発のきっかけに
「もともと第一織物さんの既存素材を使わせてもらう予定だったのですが、そのタイミングで全てリサイクルポリエステルに切り替えるという話を聞きました。リサイクルになると、どうしても風合いが変わるので、細かく“このくらいにしてほしい”というリクエストをしながら、何度かやり取りをさせていただき、理想的な質感、素材感、手触りを実現していきました」
―目指した生地感はどういうものですか?
「セットアップに使いたかったので、かたすぎず、柔らかすぎず、しなやかなストレッチ性を持ちながら、きれいにシルエットが出ること。張り感のバランスをかなり細かく相談しました」
合繊における、日本の生産背景の強さ
「どこの国の生地が一番、とは言えませんが、合繊に関しては、日本は本当に強いと思います。帝人さんや東レさんといった世界的な原料メーカーがあり、それを受けて生地を織る機屋さん、加工場まで揃っています。合繊に関して言えば、世界的にも戦える環境が整っていると思います」
―サステナブル素材についてはどうでしょうか。
「正直、風合いが変わったり、コストが上がったりと大変なことが多いのが現状です。ただ、第一織物さんのように海外向けにも展開しているメーカーさんは、こちらが言わなくてもリサイクル対応を進めてくださることも多い。使いたいけど使えないというケースもありますが、使える状態にまで仕上げてくれる取り組みは、本当にありがたいです」
―今回のアイテムの特徴を教えてください。
「ダウンでは3年前から第一織物さんの素材を使っていましたが、どうしても秋冬シーズン中心になりがちでした。なので、春夏でも“DICROS”という素材名をしっかり打ち出し、年間を通して認知を広げていきたいと考えました」
セットアップは、オフィスカジュアルでも使えるよう、程よくゆったりしつつクリーンな印象に。パンツは渡りにゆとりを持たせつつ、裾はテーパードさせています。
モッズコートは軍ものをベースに、高密度に織ったナイロンに洗い加工でシワ感を出し、スポーティになりすぎない上品さを意識しました。ブルゾンはジャケットの上から羽織ってもきれいに見えるよう、ステンカラーライクなシルエットに。フードは取り外し可能で、汎用性も高いです。
「生地は糸からこだわろうと思うと、経糸を形成する際の最低ロットが出てきてしまいますが、GLRの規模感なら可能です。GLRのメンズは特にそうですが、大きくトレンドが動くことも少ないので、他社との差別化を図るためにも、色や素材に関してはかなり毎シーズン力を入れて開発しています。デザインがシンプルだからこそ、素材で勝負ができると思っています」
―理想の風合いに仕上げるうえで苦労した点はありますか?
「“このくらいの硬さにしたい”という話をする中で、どうしてもできること、できないことがあります。最初はかなり柔らかく上がってきたものを、セットアップに合う硬さまで何度か調整してもらいました。生機を織る会社が、ここまで前に出てきてくれて、染めまで含めて提案してくれるケースは少ないので、第一織物さんのような存在はかなり貴重だと思います」
お客様のニーズに寄り添う高品質のアイテムを
「オフィスウェアのニーズが本当に幅広くなっています。きっちりスーツが必要な人もいれば、商談で失礼じゃなければOKという方もいる。リモートワークで働く人も多くなってきました。GLRの強みは、クリーンで上品、それでいて日常にもなじむ洋服をご提案できること。その価値を大切にしながら、売上データをしっかり見て、外にリサーチに行き、変化するニーズにしっかりと応えていきたいと思っています」
INFORMATION
PROFILE
栁 厚次
前職ではアメトラをベースにしたブランドで企画を担当。2016年にUA社に入社し、その後GLRの商品部でメンズカジュアルの企画を担当。