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2026.07.23
注目の中国ブランドとコラボレーション。「ユナイテッドアローズ」のグローバルな視点。
ユナイテッドアローズ中国店舗では、上海・深圳それぞれの都市カルチャーを背景にしたローカルブランドとの別注企画を展開。今回は現在アジア圏で絶大な人気を誇る、上海のスニーカーブランド〈PANE〉、深圳のウェアブランド〈ROARINGWILD〉という注目の2ブランドのキーマンにインタビューを実施。現地ブランドから見た〈ユナイテッドアローズ〉について伺いました。
Photography:Shunya Arai
Interpreter:Takayuki Ozawa , NIGO
Text & Edit:Shoko Matsumoto
先進的なデザインで中国のスニーカーシーンを牽引する〈PANE〉
スニーカーブランド〈PANE〉ファウンダーGotyanさん
「ブランド名の〈PANE〉はラテン語が由来で、パン(食べるパン)とエンターテインメントという二つの意味があります。食べものとエンターテインメント、この二つがあれば人生は満たされる。そんな考えから、自分たちも人の人生を満たすものを生み出したいという思いで、この名前を付けました」
「〈PANE〉は2023年にスタートしました。まだ3年ほどのブランドです。ただ、今のメンバーはそれ以前から一緒にテーラリングブランドを運営していて、ブランドの方向性と扱うアイテムを変える形で〈PANE〉を立ち上げました」
スタイルのレンジを広げるシューズの可能性
「テーラリングブランドをやっていた頃は、スーツに合わせるレザーシューズも作っていたので、いろいろな工場と仕事をする機会がありました。その中で靴づくりの面白さや、レザーの種類の多さ、奥深さを知って、スニーカーブランドをやろうという話になったんです。ただ、レザーシューズだけだと履けるシーンが限られてしまいますよね。例えば今日みたいにロックTシャツにジャケットを合わせるようなスタイルなら、レザーシューズではなく外しでスニーカーを合わせたい。メンバーみんなファッションが好きなので、もっといろいろな場面で履けるスニーカーを作ろうという思いから〈PANE〉を始めました」
「創業メンバー全員、もともと大のスニーカー好きなんです。コレクションするほど好きで、ずっとスニーカーへの熱意を持ち続けてきました。その思いを形にしたのが〈PANE〉です」
「スポーツに関わるデザインは普段からずっと見ています。例えばペナントや昔のオリンピックのビジュアル。父がオリンピック選手だったこともあって、小さい頃からスポーツにまつわるクリエイティブには自然と惹かれてきました。もちろん家具やインテリアなど、身の回りにあるデザイン性の高いものもよく見ています。メンバーそれぞれ好きなテイストが違うので、お互いに持ち寄りながらクリエイティブのヒントを探しています」
架空のストーリーから生まれるクリエイティブ
「商品や空間を考えるときは、まず架空の人物を一人設定します。その人はどんな暮らしをしていて、どんな音楽や映画が好きで、家にはどんな家具やレコード、写真があるのか。そうした人物像を細かく想像し、その世界観をデザインに落とし込んでいきます。店内のディスプレイも同じ考え方。架空の人物の家をイメージし、この人ならこういう空間で暮らしているだろう、というストーリーをもとにクリエイティブを組み立てています」
「昨年6月にオープンしました。もともと2階は倉庫として使っていたのですが、売り上げも好調だったのでリノベーションを行い、今年5月末から2階も売り場としてオープンしました。現在は8店舗の路面店がありますが、店舗ごとにそれぞれコンセプトが異なります。この上海店の2階は、架空の人物のリビングルームという設定。ソファがあって、音楽が流れ、簡単なキッチンもある。その人の暮らしをそのまま体験できるような空間になっています。お店に来ていただければ、その世界観を自然に感じてもらえると思います」
目指すのは、高品質でベーシックな姿勢
「〈ユナイテッドアローズ〉(以下、UA)は昔から知っているブランドです。日本へ旅行すると必ずお店に立ち寄っていたので、中国初出店のタイミングでご一緒できたことは、メンバー全員にとって本当に光栄でした」
「メンバー全員が〈UA〉を好きなのは、ベーシックでありながら品質が高いからです。さらに、アパレルだけではなくライフスタイル全体を提案し、さまざまなブランドとのコラボレーションやコンテンツづくりにも取り組んでいます。そうした姿勢は、〈PANE〉がブランドとして目指したい方向とも重なる部分がありました。以前は原宿にあったお店にもよく通っていました。カフェがあり、カジュアルもストリートもテーラリングも揃っている。それだけ幅広いカテゴリーを扱いながら、一つのブランドとしてしっかり軸が通っている。その芯の強さは、とても勉強になりました」
「〈UA〉が中国初出店するにあたり、その世界観に自然と馴染むシューズを作ることを一番大切にしました。LOOK撮影でも、〈UA〉の服に〈PANE〉のシューズを合わせたときに、違和感がないことを意識しています。選んだのは、シンプルなモデルとアウトドアテイストのモデルの2型。どちらも〈UA〉らしい上質なベーシックさと遊び心を表現できると考えました。レザーや細かなパーツも世界観に合わせて厳選し、理想的なコラボレーションになったと思っています」
「細かな仕様は変更する可能性がありますが、ホースレザーを使った日本向けの別注モデルを準備しています。今年は午年なので、まず馬の素材を使いたいという思いがありました。ベースは70〜80年代のヴィンテージアウトドアスニーカーをイメージ。ホースレザー、レトロアウトドアという要素を組み合わせた一足です」
「コラボのお話をいただいた頃は、今ほど〈PANE〉の知名度は高くありませんでした。だからこそ、オファーをいただけたこと自体が本当に嬉しかったですね。実際に中国の店舗を見て、チームの皆さんとお会いすると、日本で培われた〈UA〉らしい世界観がそのまま中国でも表現されていることを強く感じました。その中に自分たちの商品が並ぶことは、大好きなブランドに認めてもらえたような感覚があり、本当に光栄でした。僕は工事中の現場を見るのも好きなんですが、コラボが決まった時には、建設中の店舗も見学させてもらいました。ここに日本の〈UA〉ができて、自分たちのシューズが並ぶんだ、と実感できて、とてもワクワクしました」
「朝起きてから寝るまで、常に人や街、ものを観察しているんです。街を歩いていて気になる素材があれば実際に触って確かめるので、家に帰ると手が汚れていることもよくあります(笑)。目で見るだけでなく、自分の手で触れて素材や質感を感じることが、デザインのインスピレーションにつながっていますね」
チャレンジし続け、長く愛されるブランドへ
「この数年で大きく成長しましたが、チームとしてはまだできていないことがたくさんあります。頭の中には実現したいアイデアがまだまだあるので、焦らず時間をかけてブランドを育てていきたいと思っています。そしてスニーカーブランドにとどまらず、ライフスタイルブランドとしてさまざまなカテゴリーにも挑戦していきたい。多くの人の暮らしに自然と馴染み、長く愛されるブランドへと育て、歴史を紡いでいきたいと考えています」
深圳から中国全土へストリートカルチャーを広げる〈ROARINGWILD〉
ウエアブランド〈ROARINGWILD〉ファウンダーppcさん(右)、MDヘッド阿梁さん(左)
ppc「ブランドをスタートして16年になります。その中でいくつか大きなターニングポイントがありました。最初の大きな出来事は、2017年に地元・深圳で初めてリアル店舗をオープンしたこと。その後、2019年には上海ファッションウィークのランウェイに参加し、2023年にはこの上海旗艦店をオープン。昨年からはパリのファッションウィークに合わせてポップアップも開催していて、これから少しずつ海外への展開も進めていきたいと考えています。そして今年は、〈UA〉とシリーズでコラボレーションできたことが、ブランドにとって大きな出来事になったと感じています」
ppc「僕たちはもともと大学の同級生。2012年、大学2〜3年の頃、全員ダンスサークルに所属していて、ダンスやストリートカルチャーが好きな仲間でした。でも、当時は着たいと思える服がなかなかなくて、それなら自分たちで作ろうという話になったんです。最初は自分たちが着るための服を作って、友人に配ったりしていました。すると“私も欲しい”“着てみたい”という声が少しずつ増えて、大学卒業と同時に会社を設立し、ブランドとして本格的にスタートしました」
一過性ではなく、長く着てもらえる服づくりへ
ppc「最初は本当に、自分たちがダンスをするときに着る服を作るというところから始まりました。ストリートカルチャーが好きなメンバーばかりだったので、当時の商品にもその要素が色濃く表れていたと思います。ただ、ブランドを長く続けていく中で、それだけでは難しいことも分かってきましたし、トレンドの変化もありました。そこで2023年以降は、その時だけ着る服ではなく、長く着てもらえる服づくりへと考え方を切り替えています。生地や縫製など商品のクオリティをさらに高め、レディースラインもスタートしました。より長く、より多くの人の暮らしに寄り添える服を作ることが、今のブランドのテーマになっています」
ppc「全員同じ大学でしたが、ファッションデザインコースに通っているメンバーもいれば、グラフィックデザインを学んでいるメンバーもいて、それぞれの得意分野を持ち寄ってブランドを作り始めたんです。最初のTシャツも、グラフィックが得意なメンバーがデザインを担当し、服づくりの知識があるメンバーが生産を管理するというように、6人それぞれができることを持ち寄っていました。現在、僕は営業やリテールを担当しています。ブランド立ち上げ当初から、商品を販売したり、取り扱ってもらえるショップを探したりする役割を担ってきました」
阿梁「僕はブランドに途中から加わりました。現在はMDとして商品全体を統括しています。例えば、次のシーズンはどんなテーマで、何型くらい作るか、といった全体設計を考え、それをデザインチームへ共有して、商品開発を進めています」
日々の生活の中から生まれるアイデアを形に
ppc「特別なルールはありません。阿梁を中心に、旅先で見た風景や街の空気、映画や音楽など、日々の生活の中で心に残ったインスピレーションを持ち寄り、それをコレクションのテーマへ落とし込んでいます」
阿梁「以前は春夏・秋冬で別々のテーマを設けていましたが、この数年は一年を通して一つのテーマでコレクションを展開しています。春夏と秋冬では作れるアイテムが異なるので、一年間を通して表現したほうが、そのテーマをより深く、多面的に伝えられると考えたからです」
阿梁「“LINE HOLDER”です。“LINE”は一本の線という意味だけではなく、人と人とのつながりや、さまざまなものを結ぶ関係性も表しています。そして“HOLDER”は、その線を持つ人という意味です。いろいろな人や価値観とのつながりをイメージし、その世界観をコレクション全体で表現しています」
阿梁「〈ROARINGWILD〉はブランドを立ち上げた当初から、“アーバンストリート”という考え方を大切にしてきました。ただ、2010年代と今では、その捉え方も少しずつ変わっています。今はアウトドアやアーバンといった要素が、ファッションの中でもキーワードになっている。僕たちにもその軸があり、〈UA〉にも同じような空気を感じていました。さらに、生地や細かなディテールへのこだわり、ものづくりのクオリティを大切にする姿勢も共通していて、僕たちが目指してきた方向性とも重なる部分がありました。そうした共通点がたくさんあったので、一緒にものづくりをしたら面白いと思い、今回のコラボレーションにつながりました」
ppc「日本へ行くたびに、南青山の〈H BEAUTY&YOUTH〉には必ず立ち寄っています。コラボレーションのお話をいただく前からよく買い物もしていましたし、以前から大好きなブランド。〈UA〉は日本だけではなく、世界のファッションシーンの中でも確かなポジションを築いていると思っています。ブランドとしての世界観がしっかり確立されていて、審美眼を持って編集されていることが、お店に行くたびによく伝わってきました。だからこそ、今回ご一緒できることを本当にうれしく思いました」
コラボレーションテーマは“融合”
阿梁「コラボレーション全体のテーマは“UNITED”、つまり“融合”です。その考え方は、商品の細かなディテールにも取り入れています。例えば、本来なら複数のパーツを組み合わせて作るトップスを、一枚の生地でつながるようにしたり、ネームタグも表には〈UNITED ARROWS〉、裏には〈ROARINGWILD〉のロゴが現れる仕様にしたり。ジップなど細かな付属にも“融合”というテーマを意識しながら、一つひとつのディテールを作り上げました」
阿梁「“UNITED”というテーマと、“アーバン”というブランドらしさ、この二つをしっかり表現したいと思いました。撮影は深圳で行いましたが、街で暮らす人の日常を切り取るような空気感を目指して、現代的な建築が並ぶロケーションを選んでいます。僕たちは日本の雑誌『POPEYE』のビジュアルが昔から好きなんですが、そのまま真似をするのではなく、その雰囲気を大切にしながら、今の時代らしいアーバンなムードとして表現することを意識しました」
ppc「2〜3か月に一度は上海を訪れていますが、上海は本当にファッションに対してオープンな街。それぞれが自分の好きなスタイルを楽しんでいて、街の中でも自然に受け入れられています。いろいろな価値観や着こなしを受け止める包容力がありますね。一方で深圳は金融やIT企業が多い若い街です。働く人のライフスタイルも違うので、洋服を着る場面やファッションのテイストも上海とは大きく異なります。ただ、街の空気を考えると、〈UA〉は深圳のマーケットにもとても合うブランドだと思っています」
阿梁「建物はもともと三階建ての洋館でした。柱や建物の構造はほとんど変えず、その歴史を残したまま、〈ROARINGWILD〉らしい新しいエッセンスを加えています。古いものの中に新しい価値を取り入れる、いわば温故知新のような考え方ですね。歴史ある建物とブランドの世界観を融合させることが、この旗艦店のコンセプト。一階にはシーズンのメインアイテムと、奥には“ROARINGWILD Corner”というライフスタイルスペースを設け、キャンドルやディフューザーなど、そのシーズンの世界観に合うアイテムをセレクトしています。1.5階はコラボレーションなど期間限定のコンテンツを展開するスペース、二階はレギュラー商品、三階はVIPのお客様や仲間とゆっくり過ごせるラウンジのような空間です。上海を代表する通り・長楽路に面する中庭も含めて、人が自然と集まり、ブランドのコミュニティが生まれる場所になればと思っています」
阿梁「一番印象に残っているのは、僕たちのアイデアやデザインをとても尊重してくれたことです。これまでさまざまなブランドとコラボレーションしてきましたが、コンセプトやデザインを提案すると、多くの場合は修正や要望が入ります。でも今回は、最初に提案したコンセプトやデザインをほとんどそのまま受け入れてくださいました。そのおかげで商品開発もスムーズに進みましたし、〈ROARINGWILD〉のものづくりに対してリスペクトを持ってくださっていることを強く感じて嬉しかったです」
誰もが納得できる良いものを作り続けたい
ppc「これまでもセレクトショップや新しいブランドなど、いろいろな挑戦をしてきました。その経験も踏まえて、これからは単独ブランドだけではなく、会社として複数のブランドを育てていきたいと考えています。中国には本当に多様なマーケットがあり、それぞれに異なる価値観やニーズがあります。その人たちに合ったブランドを、それぞれ適正な価格帯で提案していきたいですね。そういう意味では、〈UA〉はとても勉強になる存在です。一つのブランドからスタートし、それぞれ異なるターゲットに向けたブランドを展開しながら、全体をうまくマネジメントしている。その考え方は、僕たちも学びたいと思っています。社内ではサプライチェーンの改善や品質向上、効率化にも取り組んでいますが、一番大切なのは、やはりファッションブランドとして誰もが納得できる良いものを作り続けることです。そうすれば、これからブランドや会社をさらに成長させていけると信じています」
PROFILE
〈PANE〉
2021年設立の中国アパレル、シューズブランド。現在は中国国内のセレクトショップと自社ECチャネルを中心に販売している、デザイナー出身のチームで立ち上げたブランド。ブランドコンセプトとして”オリンピック”、”ギリシャ”というエッセンスを基に、レトロ&ヴィンテージを融合させたクリエイティブを発表している。
〈ROARINGWILD〉
2010年に中国・深圳にてスタート。現代のデザイン美学に焦点を当てたファッションブランドで、ストリートの記号やラベルにとらわれず、シンプルでありながら力強さを感じさせるデザインを特徴としている。新しさと実用性のバランスを追求し、先鋭的な意識と普遍性を兼ね備えた衣服を提案している。