モノ
2026.10.20
「GMO AI&ロボティクス商事」×「ユナイテッドアローズ」最先端の共同開発。人型ロボット(ヒューマノイド)ウェアをコラボレーション。
日本のインターネットの基盤を裏側で支え続けてきたIT企業である〈GMOインターネットグループのGMO AI&ロボティクス商事〉。最先端の人型ロボット(ヒューマノイド)にAIやセキュリティ、通信技術を組み合わせて社会実装を目指しています。今回その〈GMO AI&ロボティクス商事〉と、〈ユナイテッドアローズ〉がコラボレーションし、ヒューマノイドロボット専用のウェアを製作。ロボットが同じ街を歩き、同じ店で働き、同じ社会の中で、人と共に過ごすために。ヒューマノイドロボットに安心感や親しみを与えるための洋服をどのように生み出したのか、〈ユナイテッドアローズ〉のコーポレートビジネス部 プロデュース課 鈴木 脩さん、商品支援部 技術科 課長 祐宗 宏充さんに話を伺いました。
Photo&Movie:Kousuke Matsuki
Edit&Text:Shoko Matsumoto
『ヒューマノイドロボット用の洋服作り』という挑戦。
鈴木 脩(以下、鈴木)「僕はコーポレートビジネス部で、主にBtoBの法人に向けた企画・デザイン業務を担当しています。以前は10年弱くらい〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ〉のメンズ企画担当で、お店で販売する商品の企画をしていました。企画やデザインをするという意味では同じですが、求められるものはかなり違います。特に今回のような案件は、その違いがわかりやすいと思います。普段の〈UA〉の洋服は無地のものが多いと思います。ですが企業のユニフォームなどをデザインすると、ロゴや社名を強調した感じでデザインすることが求められることが多く、そこを、〈UA〉らしいイメージを崩さずに、どうロゴを強調していくか。そこが普段のものづくりとは一番違うところかもしれません」
コーポレートビジネス部 プロデュース課 企画担当 鈴木 脩さん
鈴木「〈GMO AIR〉さんから、『ヒューマノイドロボットに服を着せたい』というお話をいただいたのが始まりです。『何か一緒にやりたい』というより、すごくシンプルに『ロボットに服を着せたい。服を作ってもらうなら〈UA〉さんしか考えられない』というオファーだったと聞いています」
鈴木「率直に言うと、『面白そう』でした。その頃ちょうどヒューマノイドロボットがニュースで取り上げられ始めたくらいの時期だったのですが、もちろん実際に見たことがなかったんです。面白そうだけど、そもそもどう動くのか、洋服は着せられるのか?などの戸惑いがありました。『一回、実物を見ないとわからないよね』という感じでした」
商品支援部 技術課 課長 祐宗 宏充さん
ヒューマノイドロボットに洋服を着せる理由とは。
鈴木「かなり変わりました。『めちゃくちゃ面白そう』という気持ちと同時に、『めちゃくちゃ難しそうじゃない?』という両方がありました。最初に動いているところを見たときは、本当に人間みたいに動くので、正直ちょっと怖いくらいでした。でも、人間とは明らかに違う関節の動きもある。それを見て、『これは普通の服づくりとは全然違うな』と思いました。しかし、僕たちが着ていた洋服をちょっと着せてみたら、急に可愛く見えて、裸で動いているときとは印象が全く違ったんです。その瞬間に、〈GMO AIR〉さんが『洋服を着せたい』と言っていた理由もわかった気がしました」
祐宗「『UAさんを信頼していて、先入観なく自由に服作りをしてもらいたい』ということで、ほとんどなかったんです。だからこそ、最初はどうしようかな、と。通常だと、『こういう課題を解決したい』とか『こういうものを作りたい』というところからコンセプトを考えていくんですが、今回は前例がないので、参考にできるものが何もない。まずロボットを見て、そこから考えていくしかありませんでした」
鈴木「そういう意味では、今回が本当にゼロからのスタ―トでしたね」
辿り着いたのは『HELLO G1』というコンセプト。
祐宗「まず〈GMO AIR〉さんの本社に行って、実際にヒューマノイド(G1)が動くところを見せてもらいました。そのとき、たまたま僕たちが着ていたジャケットを試しに着せてみたり、〈グリーンレーベル リラクシング〉のキッズ服を借りてきて着せたりしました。ヒューマノイドは身長が130cmくらいなので、最初は130〜140cmくらいのキッズ服をベースに、実際に洋服を着せて動きを見ながら考えつつ、ドレッシー、カジュアル、スポーティといった方向でいくつか案を出してみました。その中で、やはり〈UA〉らしいのは、ジャケットやセットアップ、フレアパンツのようなきれいめなスタイルだな、と。そこからみんなで意見を出して、最終的にユニセックスでいこう、という方向になりました」
鈴木「はい。ヒューマノイド(G1)を最初に見たときは、正直ちょっと怖い感じがしました。ですが洋服を着せた瞬間に、急に親しみが出てきて、その体験が非常に大きかったんです。だから、ファッションのスタイルを表すコンセプトというより、『初めまして』という存在としてのコンセプト。『HELLO G1』という、すごくシンプルなところに行き着きました。そうするとデザインにも落とし込みやすくなり、社会性と品があり、少しクラシックなデザイン、そういうものは〈UA〉が得意とするところでもありますので、相性がいいんじゃないかと思いました」
祐宗「やっぱり体型と可動域です。G1は肩幅や腰回りはしっかりある一方で、腕が細かったり、ウエストがすごく細かったりする。特にウエストが小さいのに腰回りが張っているので、腰の形を保ちながら自然にウエストだけを絞るのがかなり難しかったです。人間の身体とは全く異なるので、普通のパターンの考え方では作れません。しかも、ある程度きれいに見せようとすると、今度は動けなくなってしまう。そのバランスを考えました」
祐宗「G1にはスリープモードがあり、充電するときは身体がかなり小さくなるんです。最初はつなぎのようなデザインも考えましたが、スリープモードになると身体の距離が変わるので、つなぎだと生地がついていかない。そこで、ジャケットとパンツのセットアップにしたほうがいいなと思いました。それから手がすごく大きいので、袖口を細くすると手が通らない。だから袖を少し太くしたり、実際に通るギリギリのところを見ながらパターンを調整しました。人間なら絶対に意識しないような、巻き込みや放熱のことも考えないといけない。そういうところは今回初めて経験しました」
祐宗「バッテリーがあるので、熱がこもらないようにする必要があります。インナーは半袖にして、丈も少し短く。パンツもワイドシルエットにして、空気が抜けるようにしています。裏地も付けず、なるべく薄く、しかし見えない部分の縫製にもこだわり、通気性のある仕様にしています。見た目としては制服のようなきちんとした印象を保ちつつ、機能面ではできるだけ熱がこもらないようにしました」
祐宗「ノーカラーなので、普通に作るとカ―ディガンっぽく見えてしまうんです。それは避けたかったので袖を少し前に振ったり、肩やアームホールの曲線を考えました。平面的でなく、きちんとジャケットに見える立体感を出すように、パターンとしてそこはかなり考えたところです。またG1の取っ手がある背中に実用的にファスナーを施しつつ、デザインとしても成立するよう工夫しました」
鈴木「実際に着せてみて、そこはすごく良かったと思います。『布を着せました』ではなく、ちゃんと洋服として立体感が出ていました」
鈴木「企業のロゴって、ただたくさん貼ると一気にユニフォームっぽくなってしまうんです。普段の〈UA〉では、そもそもロゴを強く見せる洋服はあまり作っていないので、そこをどうするかはかなり考えました。そこで、古着のレタードジャケットやスクールジャケット、スタジャンみたいなカレッジ的な要素を取り入れました。ロゴのフォントや背面のアーチロゴなどにも、そういうトラディショナルな文脈を持たせています。ワッペンも、プリントで入れるより、スタジャンについているような刺繍ワッペンにしたほうが面白いんじゃないかと。ちょっと立体感が出ますし、クラシックなものづくりとG1という未来的な存在の組み合わせも面白いと思いました」
鈴木「G1って首がすごく細くて、胸板もないんです。だから普通にTシャツを着せるだけだと、首回りの見え方が少し寂しい。そこで、スタイリングとしてもう一角、洋服屋らしいエッセンスを加えたいと思って、スカーフを提案しました。〈UA〉のスタッフもスカーフを巻くことがありますし、スタイリングとして面白い。それに、首回りや胸元の見え方も改善できる。二つの目的がちょうど一致しました。柄は〈GMO AIR〉さんと〈UA〉のロゴを、古いモノグラムのようなイメージで配置して、〈UA〉のカラーであるオレンジを使っています。クラシックですが、少し現代的。そこは気に入っています。企業との取り組みなのでロゴは必要なんですが、単純にロゴを入れるだけでは〈UA〉らしくない。だから、ロゴが入っていること自体がデザインとして成立するようにしたかったんです。アーチロゴにしたり、ワッペンにしたり。見る人が見れば『こういうところまで洋服屋として考えているんだな』とわかるような。例えばボタンも、実は貝を削り出したものを使っています。耐久性やコストを考えれば樹脂のほうが合理的かもしれない。でも、そこにあえてアナログで高級感のあるボタンを使う。そういう、ちょっとした服屋の遊び心は残しています」
鈴木「そうなんです。ポケットは全部ダミーで、実際には使えないんですけど、ちゃんと付けている(笑)。パンツのベルトル―プもダミーで付けています。そういう、機能としては必要ないけど、洋服として見たときに『ちゃんと服屋が作っているな』と思える部分は結構こだわりました。G1のための機能服でありながら、ただ機能だけに寄せない。そこは大事にしました」
目指したのは、〈UA〉らしさとロボット服としての機能性。
鈴木「そうですね。そこはかなり難しかったです。例えば、巻き込みや放熱を考えれば、すごく機能的なメッシュのポロシャツみたいなものにすることもできる。でも、それでは僕たちがやりたいこととは違う。見た目はトラディショナルで、品がある。一方で、ロボットとして必要な機能もある。その相反する要素をどう両立させるかが、一番難しかったかもしれません」
ヒューマノイドロボットが社会に参画する未来へ。
祐宗「そうですね。今回は完全に一着目なので、これが本当に正解なのかはまだわからないです。そもそも、ロボットに洋服を着せること自体が本当にいいのかどうかも、まだ誰も正解を知らないと思うんです。だから、これが世の中に出たときにどんな反響があるのかは、すごく聞いてみたい。もし次にできることがあれば、そういう声を聞きながら改善して、ブラッシュアップしていけたらと思っています」
祐宗「やっぱり、〈UA〉らしさは残したつもりです。ロボットの洋服ということで、普段のお客様にはちょっとイメージしにくいかもしれないですけど、きれいめに見えるようにしていますし、スカーフやワッペンなど、洋服としての楽しさも取り入れています」
鈴木「僕たちとしては、ものすごく特殊なことをしたという感覚はあまりないんです。ただ、ロボットという新しいものに対して、僕たちが今まで培ってきた洋服の考え方を掛け合わせた。その結果として、こういうものができた。今後、ヒューマノイドロボットがもっと社会に入ってくるようになったときに、『ロボットにも洋服を着せるんだ』というところから、少しでも身近に感じてもらえたらいいなと思います。今回が最初の一歩なので、これからどうなっていくのか、僕たちも楽しみです」
※実際の洋服の仕様は変更する可能性があります。
INFORMATION
PROFILE
鈴木 脩
2004年ユナイテッドアローズ入社。2012年カジュアル部門の販売スタッフを経て本社へ。ビューティー&ユースで扱うアイテムの企画とデザインを行う。2022年より現在のコーポレートビジネス部に異動。グッズやユニフォームの企画/デザインの監修を行う。
祐宗 宏充
メンズ重衣料メーカーなどでの技術経験を経て、2005年にUA社へ 入社。以来、各ブランドにてパターン、技術、品質に関わる業務を 歴任し、2023年より商品支援部 技術課課長に就任。現在もH BEAUTY&YOUTH、SOVEREIGNなど一部ブランドも担当している。