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大人の遊び心から誕生。俳優・光石 研と「ユナイテッドアローズ」のコラボレーションTシャツ

モノ

2024.05.24

大人の遊び心から誕生。俳優・光石 研と「ユナイテッドアローズ」のコラボレーションTシャツ

俳優の光石 研さんが〈ユナイテッドアローズ〉〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ〉とタッグを組んで、架空バンド「リバーサイドボーイズ」のツアーTシャツをリリース。コラボレーション発足のきっかけ、そもそも「リバーサイドボーイズ」とは何なのか、どんなイメージで完成まで進めていったのかを、光石 研さん、スタイリストの上野 健太郎さん、〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ〉ディレクターの藤橋 享平さんに伺いました。

Photo:Go Tanabe
Hair & Make:Chiho Oshima
Text & Edit:Shoko Matsumoto

大人の遊び心から生まれたアイデアが実現

——今回のプロジェクトのきっかけを教えてください。

光石 研(以下、光石) 最初はよもやま話から始まりました。一昨年くらいに、たまたま僕と同じ福岡県北九州市出身の俳優、でんでんさんと、鈴木 浩介君と一緒に食事する機会があって。そのときはスケジュールの都合上、(リバーサイドボーイズのメンバーである)野間口 徹君は参加できなかったのですが、みんな北九州を流れる遠賀川の近くで育ったから「僕らはリバーサイドボーイズですよね」って話したんです。「そうだね」「良い名前だね」なんて言い合って、洒落で「Tシャツでも作りましょうよ!」って提案して、その瞬間は盛り上がったけれど、結局そのままになってしまいました。僕はそういうのをすぐに作りたいタイプなのですが、みんな忙しいから声を上げられずにいたんです。そんなことをスタイリストの上野 健太郎さんとお仕事したときに、なんとなくお話したんですよね。

上野 健太郎(以下、上野) そのときに、光石さんご自身が作られたステッカーをいただきました。

光石 まず「リバーサイドボーイズ」を何かしらの形にしなくちゃと思って、自分でステッカーを作ったんです。手描きでロゴを描いて、友人に印刷してもらって。それをいろんな方に配ったりしていたんですが、上野さんにも差し上げつつ、「僕、Tシャツも作りたいんです」ってぽろっと口にしたら、「やりましょうよ」って言ってくださって。

上野 一視聴者として、光石さんが出演されていたライフスタイル誌『Pen』から生まれたYouTube番組『東京古着日和』のファンだったんですけど、光石さんの、真剣に遊ぶ、ふざけるみたいなところに好感を抱いていたんですよね。手描きのステッカーを配るというパロディ精神も素敵じゃないですか。それで形にするなら〈ユナイテッドアローズ(以下、UA)〉さんのような大きな会社を巻き込んでやったほうが、枚数も作れるし、盛り上がると思い、昔から仲が良い〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ(以下、BY)〉ディレクターの藤橋 享平くんに相談したんです。

画像 スタイリストの上野 健太郎さん。

——藤橋さんは、上野さんから相談を受けて、どう思われましたか。

藤橋 享平(以下、藤橋) ディレクター職をやりながら、ブランドを長く見ている中で、洋服屋が作るTシャツとか、カルチャーなものを洋服に昇華するという表現が、あまりにも偏っているのかなと気になっていて。相談を受けたのは、他業種や、洋服のジャンルではない人たちとやる面白さを、自分の中で探っていたタイミングでした。光石さんが出演されている作品は数多く拝見させていただいていますし、イメージもすこぶる良い。とにかくおしゃれで、ファッションに精通していて説得力もある。自分がブランドとしてこれから表現していきたいところともグリップしたので、ぜひお願いしたい、やらせていただきたいとお答えしました。

光石 本当にありがたいです。でも僕、騙されているのかと思いましたよ。

藤橋 まさか(笑)。

光石 こんなに話がうまく進むなんて。上野さんから、UAさんと一緒に作れることになったと聞いて、「そんな噓でしょう!」って。

上野 それですぐに3人で食事に行き、どんなことをしたいのかをざっくばらんに話し合いました。お酒を飲みながらだったので、そこではそんなに中身の詰まった話はできなかったんですけどね(笑)。

画像 〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ〉ディレクターの藤橋 享平さん。

——最初にコラボレーションの話が出てから、半年ほどでリリースとなるわけですが、制作は順調でしたか。

藤橋 Tシャツというアイテムは、ベースがあれば、実はすぐに出来上がるんです。しかし今回は一からだったので、コンセプトの擦り合わせ、デザインはどうするか、イラストレーターは誰に依頼するか、というところから話し合いました。光石さんのアイデアと、販売するUAの意見を、上野さんがまとめ、トライアングルのようにコミュニケーションを取りながら進めたのですが、非常にスムーズかつ、良いスケジュールでここまでこられたんじゃないでしょうか。

光石 サンプルが上がるたびにメールをいただいたのですが、チェックしながら「デザインを少し変えられますか?」とか「こっちの色はどうでしょう?」とか「そこはお任せします」とか、やり取りするのが楽しかったですね。僕が本職としている俳優とは違う作業だったので。

藤橋 最初に光石さんが手描きのイラストをいくつか見せてくださったんですが、それがまたすごく可愛くて。なにかに活かしたいと思って、タグに使用させていただきました。

光石 ロゴが採用されてすごくうれしかったです。

画像 UA、BYそれぞれのネームタグに、光石さんの手描きのロゴが採用されている。


コミュニケーションによって生まれたコラボアイテム

——どのようなイメージで制作を進めていったのでしょうか。

光石 最初に僕がツアーTシャツというものを意識したのは1988年くらい。イギリスのロックバンド・The Rolling Stonesが来日した際にコンサートを観に行って購入しました。Tシャツには、ワールドツアーでまわる都市の名前なども描いてあって面白いなと思っていたんです。そうしたら最近、古着屋さんで、昔のバンドTシャツがすごく高値で販売されているのを知って、今の若い子たちがおしゃれで着るものなんだっていうイメージが、どこか頭の片隅にあったんですよね。それで実在しないバンドが、実際にツアーに行かない場所の名前をプリントしたTシャツを作っていたら面白いなと考えました。

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上野 それからいわゆるリファレンスのようなものを光石さんからいただいて。50〜60年代の昔の映画のポスターの写真などを送ってもらいました。

光石 海外の本などを読み、フォントや色の組み合わせなどの参考にしましたね。

上野 昔のレコードジャケットなども見ながら話しました。どんなメンバーで、どんな音楽性なのか、バンドの設定を伺いながら。

光石 でもそんなにガッチリ決めていないから、ブレブレなんですよ。毎回言うことが変わってきちゃう(笑)。

上野 それも面白かったですよ。イラストは、ファッションも音楽もサブカルも好きな、イラストレーターのdokkoiさんに依頼しました。共通言語もあってセンスも良い。このコンセプトを話して、彼なりにデザインを作ってもらって、光石さんの意見と、藤橋くんの確認を取りつつ、すり合わせしていきました。

画像 音楽雑誌、洋書や映画のポスターなどをアイデアソースに。

——デザインにおいてこだわったポイントを教えてください。

藤橋 今回、同じコンセプトのアイテムをUAとBY、2レーベルをまたいで展開するというのが、実は異例中の異例なんです。僕が担当するBYはカジュアルなブランドですが、光石さんとこのプロジェクトを進める際に、光石さんのカッコよさやファッション性みたいなものを、BYだけで完結させるにはもったいないと感じて。それでUAのディレクターに相談したところ、面白いね、やりましょうと二つ返事で承諾してくれました。光石さんと僕が着ているBYのTシャツは、デニムとチノパンに合う、ちょっと元気があるイメージです。

光石 2色展開で、一枚は女性にも気軽に手に取ってもらえるよう、ピンクのプリントにしてもらいました。

上野 ちゃんとパントーンからご自身で色を選ばれていましたね。さまざまなコーディネートに合うので、ファッション的に着られると思います。僕が着ているUAのほうは、フロッキープリントで、大人っぽく高見えもします。

光石 ジャケットを羽織ってもフロントのプリントが映えるデザインになっています。カッコよく着こなして欲しいですね。

画像 BYのカジュアルなデザイン。右のピンクは光石さんこだわりの選色。

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UAのシンプルなデザイン。着込むほどに味が出るフロッキープリント。


誰かのストーリーを生む服になったら嬉しい

——ひとつのプロジェクトをお三方で進めてみてどうでしたか。

光石 僕はもうありがたい、感謝のひとこと。

上野 まったく同感です。

藤橋 僕としてもありがたいし、ひとりでも多くのお客さんにこのプロジェクトの楽しさを届けられたら嬉しいです。

上野 良かったのは、ちょうど光石さんの書籍も発売されるタイミングだったということ。エッセイ集も面白いし、Tシャツと書籍、お互いが相乗効果を生んでくれる良いなと思います。

藤橋 発売時期が重なったのは、たまたまなんですよね。

光石 そうなんですよね。本は別で進行していたし、Tシャツは飲み屋話の延長ですし。面白いです。

藤橋 自然な形でいろんな縁がつながりました。

画像 5月21日に上梓したばかりの光石さん2冊目のエッセイ集『リバーサイドボーイズ』(三栄)。

——どんな方たちに、どんなふうに着てもらいたいですか。

光石 たとえば下北沢の街を歩いているとき、知らない若者がこのTシャツを着ていたら、泣くかもしれない。

上野 それは嬉しいですよね。

光石 僕は昔からこういうのを作るのが好きなんですが、20代の前半くらいに渋谷のアメカジショップ「BACKDROP」で草野球チームのユニフォームやジャンパーを作ったことがあるんです。それで40歳近くなった頃、屋外でロケをしていたら、僕が作ったサテン地のジャンパーを着ている人が群衆の中にいたんですよ。お芝居しながら気になっちゃって気になっちゃって。セッティングの合間に、その人のところへ行って「この服どうしたの?」って聞いたら、お兄さんがどこかで手に入れてきたものをお下がりでもらったらしくて。「これ僕が作ったやつなんだよ!」って言ったら、すごく驚いていましたね。

上野 すごい!

藤橋 それは面白いですね! このTシャツも、そういうストーリーが生まれるかもしれない。

光石 何十年後とかに、どこかの古着屋さんにあったりしたら、面白いですよね。

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PROFILE

光石 研

光石 研

俳優。1961年生まれ、福岡県出身。78年に映画『博多っ子純情』で主演デビュー。以降、数多くの映画やドラマに出演。著書に『リバーサイドボーイズ』(三栄)、『SOUND TRACK』(パルコ出版)。5/24には代官山蔦屋書店にて『リバーサイドボーイズ』発売記念イベントを開催予定。

上野 健太郎

上野 健太郎

スタイリスト。1978年生まれ、東京都出身。広告制作会社「KEN OFFICE」主宰。 ライター、編集を経験した後、スタイリストとして活動中。
http://ken-office.jp

藤橋 享平

藤橋 享平

ビューティー&ユース ユナイテッドアローズディレクター。2002年入社。販売スタッフを経て、2010年より商品部に異動。アシスタントバイヤー、バイヤーを経験した後、2018年よりビューティー&ユース ユナイテッドアローズのメンズファッションディレクターを務める。

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