ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

「ユナイテッドアローズ」と「スパイバー」が6ブランド15アイテムでコラボレーション。ファッションを通じたサステナブルな取り組み。

モノ

2025.02.05

「ユナイテッドアローズ」と「スパイバー」が6ブランド15アイテムでコラボレーション。ファッションを通じたサステナブルな取り組み。

サステナビリティ活動「SARROWS(サローズ)」をすすめるユナイテッドアローズは、2025年春夏シーズン、Spiberが開発した、植物由来の原料をもとに微生物発酵というプロセスから生まれる新素材「ブリュード・プロテイン™ファイバー」を使ってオリジナルの生地を制作し、同社が展開する6ブランドそれぞれでさまざまなアイテムを企画しました。各ブランド担当者に、今回の取り組みについて、そしてサステナブルな未来についての展望を伺いました。

Photo:Yudai Emmei
Text & Edit:Shoko Matsumoto

サステナビリティ活動「SARROWS」の一環として、2030年までに環境配慮商品を、品番ベースで50%にしようという目標を立てているユナイテッドアローズ。現在はまだ7%ほどですが、50%をめざして、リサイクル素材や新開発素材の使用や、生産過程の環境負荷を減らす取り組みなど、環境に配慮して作る商品を増やし、お客様にその価値に触れていただく機会を増やしたいと思っています。その象徴的な取り組みとして、6ブランドが連携する今回の企画が生まれました。2024年2月に発売した〈BATONER(バトナー)〉の別注ニットに続き、Spiberが開発した次世代のタンパク質繊維「ブリュード・プロテイン™ファイバー」を採用してオリジナル生地を制作し、複数ブランドで横断的に使用して一斉に商品化。これはユナイテッドアローズ初の試みとなります。同一の生地でありながら、ブランド独自のデザインや世界観が反映されたアイテムは、どのような未来を描くのでしょうか。各ブランドのディレクターに聞きました。

▼〈UNITED ARROWS MEN(ユナイテッドアローズ メンズ)〉内山省治さん

画像 アウター(7万9970円)

ブリュード・プロテイン™ファイバーについては、素材の詳細まで理解出来ていない点もあったので、今回の取り組みはとても良い機会だと、率直に興味が湧きました。まず素材に対しては、新しい素材でありながら天然素材に近い馴染みやすさがあり、違和感のない点が印象的でした。この素材なら、〈ユナイテッドアローズ〉の中心的なスタイルであるスーツやジャケットと親和性が高く、タイムレスかつシーンレスに使えるアウターが作れると思いました。このコートは一見シンプルながら、ウエスト部分にドローコードを採用し、シルエットを変化させる楽しさと機能性を両立しています。また、背ヨークは深い位置まで覆い、トラディショナルな印象を与えつつ、メッシュの切り替えを加えることで、ベンチレーション機能も備えています。全体のフォルムはリラックス感を保ちつつも過度にオーバーサイズにすることなく、着丈を短くすることで軽快さを演出しました。ドレスのコーディネートに合わせやすく、幅広いシーンで活躍できるバルマカンタイプのコートをベースにしたギミックを取り入れたデザインに仕上がったと思います。ブリュード・プロテイン™ファイバー素材の採用によって、すぐに大きな変化をもたらすわけではありませんが、持続可能なものづくりを継続するための重要な一歩であると考えています。環境への配慮はもちろんのこと、製品自体のデザインやバランスを高めることで、長く愛用される価値を持つアイテムを生み出すことをブランドの使命としています。これからも素材選びから製品開発に至るまで、環境と品質の両立を目指していきたいと思います。

▼〈UNITED ARROWS WOMEN(ユナイテッドアローズ ウィメンズ)〉浅子智美さん

画像 左から:ブラウスブルゾン(4万6970円)BLACK/WHITE、スカート(2万7940円)BLACK/WHITE、ハット(1万2980円)BLACK/WHITE

ブリュード・プロテイン™ファイバーは以前から注目されている未来志向のサステナブル素材だったので、弊社で本格的に取り組むことになり、とても嬉しく感じました。また、複数のストアブランドを横断してこのような取り組みを進めることで、スケールメリットを活かせる点にも大きな期待を寄せています。実際に生地を手に取った際、しっかりとしたハリ感や肌離れの良さ、シルエットを美しく保つところが印象的でした。この素材感であれば一般的にはカジュアルなデザインが想像されると思いますが、素材のハリ感を活かしながら、女性らしいボリューム感や空気を含んだようなシルエットを加えることで、意外性のある魅力的なウェアを提案できると感じました。今回制作したアイテムには、〈ユナイテッドアローズ〉で人気のデザインをベースに、羽織りアイテムは、袖と裾のボリュームで華やかさを演出。ジップを閉じればブラウスのようにも人気のバルーンシルエットを採用し、ドラマティックな雰囲気を演出しています。また、ハットはシンプルなデザインのバケットハットタイプに落とし込み、素材の良さを際立たせました。意外性のあるアイテムが生まれたことで、サステナブル素材への関心が広がることを期待しています。同時に、アイテムからも幅広いスタイルの可能性を感じていただけたら嬉しいです。ブランドとしてのサステナブルな取り組みも継続しており、素材の産地との連携や「United LOVE Project」など、寄付を通じた活動を続けています。限られたリサイクル素材やオーガニック素材に頼るだけでなく、環境負荷を減らしつつ新しい可能性を切り開く素材として「Spiber」に期待しています。今回の挑戦を通じて、素材の特性を最大限に活かしながら、未来に向けた一歩を踏み出せたことを誇りに思います。

▼〈BEAUTY & YOUTH UNITED ARROWS MEN(ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ メンズ)〉藤橋享平さん

画像 左から:ジャケット(3万5200円)BLACK/NAVY、パンツ(2万4200円)BLACK/NAVY

ブリュード・プロテイン™ファイバーを使用した今回の取り組みにおいて、最初にお話をいただいた際は、話題の素材を〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ 〉で商品化できることに純粋なワクワク感を覚えました。素材自体に高い関心がありましたが、単独で取り組むにはハードルが高いと感じていたため、企業の複数のブランドと連動したプロジェクトとして実施できることになり、とても嬉しかったです。実際の生地に触れた際は、この独特のハリ感と上質さが印象的でした。この特徴を活かし、展開している合繊系セットアップとの差別化を図りながら、リラックス感のある新たな提案をしたいと思いました。特に、肩肘張らず日常に馴染む価値をご提供し、Tシャツやスウェットとの相性も良い、カジュアルなデザインに仕上げることを目指しました。ジャケットは肩の傾斜を少しつけ、ハリ感のあるブリュード・プロテイン™ファイバー素材が身体に自然と馴染むよう設計。一重仕立てで軽やかに羽織れるデザインにしています。一方、パンツは、ノータックのセミワイドシルエットで、単品でも取り入れやすく、生地の立体性を活かして日常使いに最適な仕上がりにしました。このアイテムを通じて、まずはお客様に「服として欲しい」と思っていただき、その先にサステナブルな取り組みへの共感が生まれることを望んでいます。このような意識が広がれば、お客様とともに持続可能な未来を作り上げる流れが生まれ、ブランドにも良い影響をもたらすと感じたからです。サステナブルな商品企画は、ブランドとして重要な要素であり、一つの基盤として大切なこと。同時に、長く愛用される商品を提案することにも力を注ぎ、環境に優しい取り組みと高い品質を両立させることを目指しています。この過程には時間がかかるかもしれませんが、着実に取り組みを進め、ブランドとしての新たな可能性を模索し続けていきたいと考えています。

▼〈BEAUTY & YOUTH UNITED ARROWS WOMEN(ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ ウィメンズ)〉小沼悠子さん

画像 オールインワン(3万9930円)BLACK/DK.GRAY

ブリュード・プロテイン™ファイバーを採用した素材に関しては、いくつかのブランドがいち早く取り組んでいるのを知っていました。しかし、我々が取り扱えるのはまだ先の未来だと考えており、この度予想よりも早いタイミングで取り組めることへの驚きと共に、「サステナブル」のキーワードに、より積極的な取り組みの必要性を感じていたのでいい機会と捉えました。実際に生地を見た際、微光沢でありながらタフな印象があり、耐久性についての心配も払拭されて扱いやすい素材だと感じました。生地そのものはシンプルでベーシックな雰囲気があるため、どこかに個性を持たせたいと考え、ブランドの得意とするジャンプスーツ型を採用しました。さらに、襟と袖裏に別生地を合わせることでデザイン性を高めました。ワーク由来のディテールを残しつつ、襟や袖元にレザーライクな素材を使用することでシックな雰囲気を演出しています。サイズ感はルーズで動きやすく、ワークテイストを活かした、一日中動き回るような日にも適したデザイン。この取り組みを通じて「サステナブル」というテーマに対し、効率的な考えを超えて、環境への配慮を反映させたモノづくりを、お客様に届ける機会になればと思っています。そしてクオリティとファッション性を両立させ、コスト面も含めて着実に進めていく意向です。このような取り組みを通じて、ブランドとしての姿勢をお客様に理解していただけたらうれしいです。

▼〈H BEAUTY&YOUTH MEN・WOMEN(エイチ ビューティー&ユース メンズ・ウィメンズ)〉松本真哉さん

画像 上段左からメンズ:パンツ(4万1910円)
下段左からウィメンズ:キャミソール(2万7940円)、ワンピース(4万9940円)、ショートパンツ(2万9920円)

今回のプロジェクトには、高いデザイン性を持つ6ブランドが参加しており、個性が際立つ、とても魅力的な取り組みになったと思っています。ブリュード・プロテイン™ファイバーを採用した素材は、70年代の「60/40クロス」のような生地感が印象的でした。サステナブルな素材として自然な優しさを感じつつも、既存の生地に遜色はないハードさも兼ね備え、黒、グレー、ネイビー、白を基調とした強い色合いが、企業の強い意志を反映しているように感じました。今回の生地を使って、他のブランドと差別化するためにはどうすれば良いか、〈エイチ ビューティー&ユース〉ならではのデザインを熟考した結果、メンズはシンプルながらもディテールにこだわり、ワーク由来の要素を残しつつ、シックなデザインに。ハイエンドなストリートカジュアルスタイルにも焦点を当てて、膝部分のジップでフルレングスとハーフパンツの2WAYで着脱できる、太く豪快なシルエットのデタッチャブルパンツに仕上げました。ラグジュアリーブランドにも見られるディテールも積極的に取り入れ、ブランドのイデオロギーを表現しています。ウィメンズはヘルシーなベアトップやショートパンツ、エッジの効いたマキシ丈のワンピースに仕上げました。企業としてはじめての取り組みなので、まずは認知を広げることを目的としています。サステナブル素材を取り入れることで、企業とブランドの意志の強さが表れます。その意志の強さが共感を呼び、ファンにメッセージが届きやすくなると思っています。そのためには個性的な商品作りが重要ですが、最終的には、サステナブルな素材や製法を取り入れた魅力的な商品を作り続けることで、ファッション業界に影響を与えることが目標です。デザイン力とブランドの魅力で、環境問題についてとりわけ意識していない人々にも、サステナブルな製品を広めていきたいと思っています。

▼〈STEVEN ALAN MEN(スティーブン アラン メンズ)〉伊東正彦さん

画像 パンツ(2万9920円)

6ブランドが同じ素材を使ってモノづくりをするという取り組みに、まずは魅力を感じました。化石資源に頼らない微生物発酵で作られたブリュード・プロテイン™ファイバーと聞いて、ハイテク感のあるテクスチャーを想像していましたが、実際にはとても自然で、一般的に馴染みのある風合いの生地でした。これを用いて〈スティーブン アラン〉らしさをどう表現するかを考えた結果、ブランドを象徴するアイテムの一つである、マーベルト仕様のトラウザーズを作ることにしました。特徴はアウトドアブランドに象徴される60/40クロス素材と、マーベルト仕様のコントラスト。トラウザーズはスティーブン アランの人気アイテムとはいえ、今回のような素材に特徴がない限り、面白みに欠けてしまいます。カジュアルな印象のトラウザーズに、テイラーのオーダーメイドに由来するマーベルトを加えることで意外性を出してブランドらしさを表現しました。ブランドとしてデザインを売りにするのではなく、ものづくりの背景が魅力として伝わることを大切にしており、どんな生地を使っても、完成形が明確であれば、スティーブン アランらしさを表現できることを実証できたと感じています。サステナブルな取り組みについては、無理なく小さく、継続的に行えることを目指しています。〈スティーブン アラン〉は12年目を迎えますが、無理をすることなく取り入れられる自然素材を積極的に取り入れています。サステナブルだからといって素材を選ぶわけではなく、結果的にサステナブルな素材が適していれば使用したい。時代とお客様にあったサステナブルな素材は少ないのですが、これからも積極的に取り入れていきます。

▼〈STEVEN ALAN WOMEN(スティーブン アラン ウィメンズ)〉福吉孝枝さん

画像 シャツジャケット(4万4000円)BLACK/WHITE

サステナブルというテーマはファッションの中でもさまざまな切り口があると感じましたが、ブリュード・プロテイン™ファイバーは科学的に開発された、未来志向の素材である点が非常に印象的でした。この素材を扱うことが現実になっていることに、改めて21世紀の進歩を実感。新たな試みとして、このようなチャンスには積極的に挑戦したくて参加しました。生地には、ナイロン混のような落ち着いた風合いのナチュラルな感触で、バイオテクノロジーを活用した天然素材に近い印象を受けて、特にモノトーンでシンプルに見せるアプローチが適していると感じました。〈スティーブン アラン〉では、基本的に天然繊維を中心に素材を選び、各素材の特性を活かしてデザインを考えており、この撥水性のある素材と、ナイロンのスポーティーさを抑えた印象を活かして、雨の日でも気軽に着られるシンプルなシャツブルゾンを作りたいと思いました。短い着丈が合わせやすく、着用シーンを選ばない便利なアイテムを提案しています。ワードローブに新たな選択肢を与えつつ、ブリュード・プロテイン™ファイバーを後から知ったときに、知的好奇心を刺激する要素をご提供できたのではないかと思っています。私たちは、科学的に開発された素材がファッションに結びつくことに非常に面白さを感じていますし、表面的なサステナブルを超えて、未来を見据えた意味のある商品作りを、今後も続けていきたいと思います。

▼〈ASTRAET WOMEN(アストラット ウィメンズ)〉東谷 太さん

画像 ウィメンズのベスト(5万7200円)

今回の取り組みには、サステナブルな観点からものづくりを進める一歩として、社会貢献を加速できる可能性を感じています。小ロットからのスタートですが、これが続くことで、より多くのサステナブルな商品が生まれ、社会的にも良い影響を与えると確信しています。生地を実際に見たとき、適度な張り感と保形性があり、非常にしっかりとした素材だと感じました。この特性があれば、構築的なシルエットを作りやすい。特に、断ち切りで仕立てるのに適しており、クチュールのような仕様にも対応できる素材。そこでM65の袖をカットオフしたデザインをオーバーサイズで作り、ウエストのドローコードを絞ることで、クチュール的な美しいシルエットを表現しました。今回は1型の展開ですが、ユナイテッドアローズ社として取り組みを進めていく中で、今後の展開量が増えれば、〈アストラット〉としても汎用性が高まり、サステナブルな取り組みがより加速すると思います。それぞれのブランドならではの特徴を活かしていけば、差別化も進み、さらにサステナブルなプロジェクトとして注目されるでしょう。〈アストラット〉としては、サステナブルな取り組みを今後も継続的に進め、取扱量が増えることで、さらに多くの人々に良い影響を与えることを目指しています。少量でも良いものを作り、それを伝えていく努力が必要。環境にとってより良い方向に進んでいくために、明確な説明をできるようにしていきたいと思います。

▼〈LOEFF MEN・WOMEN(ロエフ メンズ・ウィメンズ)〉鈴木里香さん

画像 オールインワン(6万9300円)

この取り組みは、素材が持つ長い歴史の中で、未来に向けた重要な試みだと感じました。ブリュード・プロテイン™ファイバーを使用すること自体に意義があり、特に64クロスに新しい原料を用いることでその価値が生まれると考えています。ブランド定番アイテムの中から選んだのは、〈ロエフ〉が目指す「何年後、何十年後も大切に着られる服作り」を表現するユニセックスなオールインワン。64クロスのスポーティーさと、実用的なワークアイテムであるオールインワンが、非常に相性が良いと感じたからです。カジュアルでありつつも、きれいめな印象で、フロントジップが着脱のしやすさを叶えています。これをきっかけに〈ロエフ〉がサステナブルに取り組んでいることを知ってもらえたらうれしいですね。ブランド認知には時間がかかるかもしれませんが、新しい素材を積極的に取り入れていく、このアプローチは大事だと考えています。多くの原料がサステナブルに移行しはじめていますが、今後ますます増えると予想しています。〈ロエフ〉では、持続可能性を大切にしながら、これまで培ってきたクオリティを意識した服作りを行っていきたいと思っています。

先駆的にブリュード・プロテイン™ファイバーを使用することで、サステナブルな活動に取り組んでいきたいという思いから実現した、今回のプロジェクト。高いサステナビリティの意識を根底に、ブランドそれぞれの独自のデザインや世界観が反映された様々なアイテムが誕生しました。ユナイテッドアローズは、これからも自然と調和した循環するファッションを目指し、持続可能な世界に貢献できたらと考えます。

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