ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

〈SUNSPEL〉×〈UNITED ARROWS〉、創業35周年を記念したタイムレスなカットソーの魅力を紐とく。

モノ

2024.12.25

〈SUNSPEL〉×〈UNITED ARROWS〉、創業35周年を記念したタイムレスなカットソーの魅力を紐とく。

160年以上の歴史を持つ、イギリスの老舗アンダーウェアメーカー〈SUNSPEL(サンスペル)〉と創業35年を迎えた〈UNITED ARROWS(ユナイテッドアローズ)〉が、周年を記念した別注モデルをリリースします。今回は、実際に〈SUNSPEL〉の工場を視察された〈UNITED ARROWS〉のディレクター、内山 省治さんと浅子 智美さんのお二人に、コラボレーションのきっかけや工場視察された際の感想やエピソードを交えながら、コラボアイテムの特徴やこだわりを伺いました。

Photo:Takehiro Sakashita
Text:Hisamoto Chikaraishi(S/T/D/Y)

アニバーサリーを飾るカットソーを作るなら〈SUNSPEL〉一択。

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─〈UNITED ARROWS〉創業35周年を記念した、〈SUNSPEL〉とのコラボレーションに至った経緯を教えてください。

内山:〈SUNSPEL〉とは20年以上ずっとお付き合いさせていただいています。その中で、高品質のTシャツをお客様にご提案したいと思ったときに、やっぱり〈SUNSPEL〉をセレクトしているので、この35周年記念としてカットソーでコラボレーションアイテムを作るなら、〈SUNSPEL〉一択かなと思いました。それはメンズとウィメンズで共通した認識だったので、自然な流れで浅子とも「一緒にスペシャルなものを作ろう」となりました。

浅子:そうですね。〈SUNSPEL〉を含めて、35周年を記念したコラボレーションは、私たち〈UNITED ARROWS〉が長いお付き合いのあるブランドにご依頼しています。

ハンドメイドを守り続ける最古の工場を見てコラボを決意した。

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─コラボレーションが決まって、工場に行かれたのでしょうか。

浅子:以前より〈SUNSPEL〉の方から、「一度工場にいらしてください」という申し出をいただいていたので、35周年のコラボを考えているときと並行して、イギリスのロングイートンの工場にお邪魔しました。

内山:〈SUNSPEL〉とのコラボをやろうとほぼ決めてはいましたが、改めて工場を訪問してブランドへの理解を深めながら、工場を見学して最終的に決めようと思っていました。

浅子:ここはハンドメイドでカットソーを作っている最古の工場です。1860年から160年以上伝統を守ってきている場所。そこでブランドの歴史や工場の作業工程を見せていただくことで、改めてここで作られた洋服をお客様に提供したいという気持ちが生まれました。

画像 イギリス・ロングイートンで受け継がれているパターンのハンドカッティング。

画像 パーツごとに担当する分業制を採用しています。それぞれが高いプロ意識のもと、緻密に仕立てていく。

─実際にロングイートンの工場を訪問してみていかがでしたか?

内山:〈SUNSPEL〉は英国製やポルトガル製などがあるのですが、ハンドメイドしているのは英国の工場のみだと思います。実際にハンドカッティングしている様子やディテールを作り込んでいる作業を間近で見たことで、品質と値段の整合性に納得して、自信を持ってお客様におすすめできるアイテムを作れるという確信を得ました。

浅子:そうですね。この工場では、パーツごとに仕立てる人がいる分業制を取り入れていて、みなさんが自分の仕事に対して誇りとプロ意識を持っていることを感じました。長年、地元の方が働かれていて、最後の検品では、誰が行ったかわかるように名前のシールを貼っています。

画像 着たときに立体的な首まわりに沿うように、ネックの曲線を最終調整している。

画像 製品の検品も人の目で行います。品質を保証するために、最後に担当者の名前のシールを貼る。

内山:人の手でモノづくりが始まって、最後も人の目で見届ける。作業しているところを見ると、人のぬくもりも感じられて、すごく素敵なモノづくりをしていると思いました。


─〈SUNSPEL〉の英国の工場は初めて訪れましたか?

内山:〈SUNSPEL〉の英国工場は初めて伺いました。さきほど浅子も言っていた、イギリスの伝統である分業の現場を見られて嬉しかったです。ロングイートンの工場で魅力を感じたのは、伝統をすごく重んじているのですが、私たちが今回お願いしたようなカットソーのオーダーにも応じてくれるというところ。この“伝統と柔軟性のバランス”がすばらしい。歴史を重んじている老舗のブランドや工場の中には、「うちはこういうものを作るところじゃない」という工場もあると思います。ウィメンズのコミュニケーションをずっと横で見ながら、そういった柔軟なところにも〈SUNSPEL〉の良さがあると教えてもらいましたね。

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浅子:また、〈SUNSPEL〉のロングイートン工場には、クリエイティブディレクターの席が5秒で行ける場所にあります。「こういうのをやりたい」というファッションについて細かく話せる方がいて、すぐに工場の作業を担う方たちに伝えられる体制が整っていました。歴史に裏打ちされたモノづくりと現代のファッションが融合し、進化するポイントを見た気がしました。

内山:さきほど言ったように一発で決まるっていうのは多分そういった環境だからだと思います。

伝統と今のムードが見事に融合した満足のいく形ができた。

画像 メンズの別注アイテム。レギュラーのボディのシルエットをそのままに、英国工場でのみ作ることができるバインダー仕様のネックを取り入れている。

─今回、生地に「カーボンブラッシュドコットン」を採用した理由を教えてください。

内山:ご存知の通り、〈SUNSPEL〉はTシャツやカットソーだけでなくアンダーウェアも手掛けていて、さまざまな生地を扱っています。

浅子:ウィメンズでも、スーピマコットンなどのアイテムも扱っています。

内山:今回、私たちの生活スタイルやファッションを考えたとき、主役になれるアイテムを作りたくて、そのために「カーボンブラッシュドコットン」が最適だと思いました。透けが気にならない適度な厚みとピーチスキンのようなぬめり感があり、見た目、肌触りともにすごく上品。シーズンにとらわれることなく、一枚でもインナーでも着られる素材としてちょうどいいです。

画像 ウィメンズの別注アイテム。既存のボディをベースに、身幅を広く、丈を短くアレンジ。イングリッシュストライプより広いピッチでかわいらしい上品さを演出。

浅子:ウィメンズでも、一枚でもインナーもさまになるという観点から、メンズでも以前から好評を得ている「カーボンブラッシュドコットン」を使って、女性にとって使い勝手のいい“主役T”を作ろうと考えました。

─メンズとウィメンズ、それぞれのデザインやシルエットの特徴は?

内山:メンズはゆとりのあるボディにしています。〈SUNSPEL〉のレギュラーアイテムにイメージに合った形があったので、それをベースにしています。〈SUNSPEL〉は英国製やポルトガル製などいくつかの生産地があるのですが、イギリスの自社工場でしか作っていないものがあり、それがネックのバインダー仕様なんです。これをメンズのアイテムには取り入れました。
このバインダー仕様は、他のリブ仕様などに比べて丈夫なのですが、一方で少し伸縮性が制限される特徴があります。なので、通常は首まわりがゆるく作られています。このコラボでは、一枚で着ても、またジャケットのインナーに着てもさまになるように、可能な限り首まわりのラインに沿いながら、かつだらしなく見えないように作っています。メンズとしては、首まわりの見え方を特にこだわりましたね。

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浅子:メンズは〈SUNSPEL〉との別注を過去にやっていましたけど、英国製は初めてですよね?

内山:はい、今回が初めてなので、すごく思い入れもあります。正直、今の時代、どこの国でもすごく質のいい素敵な服を作っているので、「この国じゃないと!」というこだわりはなくて。あえていうなら、〈SUNSPEL〉の神髄を感じられる場所で、なぜここで作り続けているのかを見た結果、コラボのアイテムが出来上がったわけです。
メンズもウィメンズも共通している意図は、〈SUNSPEL〉が持つ伝統的な背景とモノづくりをリスペクトしながら、今の気分のエッセンスを加えたカットソーを作ること。

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浅子:ウィメンズの方は一枚でもさらっと主役になる形にしたいと考えていたので、結構大胆に丈が短く、身幅を広くアレンジしました。ゆとりと抜け感があるので、オーバーサイズのスウェットを緩く着る感覚でさらっと着られます。また、丈が短すぎず生地がしっかりしているので、パンツインしたときもすっきりと、キレイめにスタイリングすることもできます。
究極に普通だけど、究極にテンションが上がる一枚を作りたくて、そのために、私たちが生まれる前から長い歴史と伝統を持っているブランドのノウハウや歴史が生きてくると思いました。

内山:それで行き着いたのが、メンズはネックにこだわったシンプルな一枚、ウィメンズはゆったりしたクロップド丈の一枚。見る目線は一緒ですが、それぞれの空気感を大事にしています。


素材とシルエットにあった柄と色味を追求。

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─ボーダー柄の違いに理由はありますか?

内山:メンズとしては、“究極に普通”を目指したので、定番のイングリッシュボーダーに決めました。小さくなると、男性にとっては少し可愛く見えてしまうので、ピッチを大きくしています。

浅子:ウィメンズでは、イングリッシュストライプの薄手タイプは定番として展開しているのもあり、今回は広い身幅に細いピッチのボーダー柄を合わせたデザインにしました。上品さと可愛さがあって、すごく着やすいバランスに仕上がっています。

─今回のキーカラーとしてネイビーを選ばれた理由は?

浅子:〈UNITED ARROWS〉と言えば、ネイビーというところもあり、色から出していただいて、特別な別注カラーを作っていただきました。

内山:一枚でも主役になることを考えたときに、濃いネイビーは最適ですし、さらにカーボンブラッシュドコットン特有の起毛感、ぬめり感によって、見る角度で表情が変わる様子が面白いと思いました。そこで、私たちが本当にいいと思えるネイビーを選びたくて、色出しからやってもらいました。

浅子:〈SUNSPEL〉に既存のネイビーがありますが、少し青みがかった明るいネイビーだったので、一枚でもジャケットと合わせてもシックに着られる色を考えて、このネイビーにしました。〈UNITED ARROWS〉らしい上品な雰囲気と着やすさが同居しながら、かつ素材に非常にあった色味になりましたね。

今回のコラボのように、これからもブランドと一緒に進化していきたい。

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─35周年を記念した〈SUNSPEL〉との取り組みを含め、〈UNITED ARROWS〉としての今後の展望を伺えますでしょうか。

浅子:〈SUNSPEL〉をはじめ、いろいろなブランドと別注アイテムを作ることでお客様に、そしてお取引先様に日頃のご愛顧への感謝を伝えられたらと思っています。今年だけに終わらせずに継続して、〈UNITED ARROWS〉の定番になっていったらいいなという気持ちもありますし、引き続き長いお付き合いをしていきたいと思っています。

内山:35周年を機に、長年お付き合いのあるさまざまなブランドとコラボレーションをして改めて思ったのは「その値段になるには理由がある」ということ。私自身、商品調達に関わる中で、質と値段の整合性が買い付けの一つの基準ですが、〈SUNSPEL〉のように“質と値段の理由”を伝え続けられる取り組みを、今まで以上にやっていきたいと感じました。これからも〈UNITED ARROWS〉は、多くのブランドと手を取り合いながら、一緒に歴史を積み上げ、進化していけたらと考えています。

PROFILE

〈SUNSPEL〉

〈SUNSPEL〉

1860年にイギリスで創業した、ラグジュアリーな日常着ブランド。カシミヤをはじめ、シルクやメリノウールなど高品質な素材を使い、アンダーウェア、Tシャツ、カットソーを製造する。1937年以来、イギリス・ロングイートンにある工場に拠点を置き、伝統に裏打ちされた知識やノウハウを受け継いでいる。現在は、イギリスの他、ポルトガルなどさまざまな国で生産しながら、高いクオリティを守っている。

〈UNITED ARROWS〉 メンズブランドディレクター<br>内山 省治

〈UNITED ARROWS〉 メンズブランドディレクター
内山 省治

1997年〈UNITED ARROWS〉入社。原宿本店にてセールスパーソンを10年間務めた後、2007年よりバイヤーに。メンズ全体のバイイングを統括し、世界中を飛び回っている。現在はUNITED ARROWS MEN’Sのブランドディレクターを務める。

〈UNITED ARROWS〉 ウィメンズブランドディレクター<br>浅子 智美

〈UNITED ARROWS〉 ウィメンズブランドディレクター
浅子 智美

2006年、大学在学中にアルバイトとして〈UNITED ARROWS〉でのキャリアをスタート。2007年に〈UNITED ARROWS〉に入社し、店舗勤務、マーケティング部門、ウィメンズ商品部でのバイヤーを経て、21年よりウィメンズのファッションディレクターへ就任し、バイヤーと兼任。

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