ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2021.01.28 THU.

身体を芯から変える光電子®のチカラ。 「Re-Pose」がわたしたちの生活にもたらすものとは。

スキーをルーツに持つ本格的なアウトドブランドでありながら、近年はライフスタイルにフィーチャーしたモダンな高機能ウェアも人気を博している〈ゴールドウイン〉。中でも休養や睡眠などで心身のコンディションを整えることへの関心が飛躍的に高まっている現在、あらためて室内用のリラックスアイテムとして注目を集めているのが光電子素材®を使ったリカバリー専用ウェア「Re-Pose」(リポーズ)です。今季、〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ〉で別注カラーも展開するその「Re-Pose」のテクノロジーについて、〈ゴールドウイン〉ブランドの事業を統括する新井 元氏にじっくり解説していただきました。

Photo:Wataru Kakuta
Text:Kai Tokuhara

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遠赤外線が適切な体温維持と良質な睡眠を促す。

—「Re-Pose」は〈ゴールドウイン〉の最先端技術が集約されたリカバリー専用ウェアとして近年注目を集めていますが、あらためてプロダクトが生まれた背景からお伺いできますでしょうか。

「Re-Pose」は元をたどれば光電子®素材の効果に着眼したところから生まれたと言えますので、まずは光電子®について少し膨らませてお話させていただきますね。ゴールドウイン社で光電子®の開発をはじめたのは20年ほど前。きっかけは、夏場のハイシーズンであっても寒暖差が大きくなる山において、身体のコンディションをきちんと整えるためにはどのような機能が本当に必要なのかをもう一度考え直したこと。特にアンダーウェアは汗を吸い上げ、外に逃すことで肌を冷やさないことが大事になるのですが、逆に温めすぎてもダメなんですね。そこで冷えすぎず、温めすぎない、一定した保温効果を得るためにはどうしたら良いのかを何度も検証しました。その結果、「遠赤外線」というものに、体温やエネルギーをうまく利用しながら身体に適度な熱を戻す機能があることを知り、それをアンダーウェアに取り入れてみようと試みたのがはじまりです。

—その光電子®はいまや〈ゴールドウイン〉や〈ザ・ノース・フェイス〉のアイテム開発に欠かせない素材になっていますよね。

そうですね。アンダーウェアの開発を皮切りに、その後フリースやダウンジャケットなど様々な商品開発をしてきましたし、10年前にはコンディショニングウェアや着圧設計のコンプレッションギアに特化した〈C3fit〉※というブランドもスタートしました。

※現在〈C3fit〉は〈ゴールドウイン〉ブランドの1カテゴリーとしてコンプレッションタイツやカーフスリーブなどを展開。「Re-Pose」も〈C3fit〉のプロダクトとなる。

それらの開発過程において、実は遠赤外線はアウトドアのみならず日常のあらゆるシーンで身体の温度調整に非常に有効であることを発見したのです。中でも特筆すべき効果が見られたのが睡眠時。良質な睡眠こそがより良い疲労回復=リカバリーに繋がることはいまや多くの方が認識されていると思いますが、遠赤外線が身体に放たれることで体温の一定化が期待でき、それによるリラックス効果が深い睡眠を促すメカニズムが健康医科学の分野で長く研究を続けられている大学教授らの調査によって解明されました。それによって我々は、感覚値ではなくしっかりとしたエビデンスの元、より広く一般の方々に向けたリカバリーウェアの開発に進むことができたのです。

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—光電子®素材が生み出す遠赤外線が体温を一定に保ち、良質な睡眠を促す。その光電子をベースに開発されたリカバリーウェアが「Re-Pose」というわけですね。

実は「Re-Pose」をリカバリーウェアとして開発した背景にはもう1つ理由があります。近年はアウトドアの環境でなくとも一年を通して寒暖差がすごく不規則になっていますよね。真夏なら40℃くらいまで気温が上がるケースも増え、空調で冷えた室内との温度差がより激しくなっています。そのような平地における環境変化への順応性を高めるためにも、光電子®を用いて良質な室内用コンディショニングウェアを提案できるのではないかと。その考えも「Re-Pose」を商品化する上で大きな後押しになりました。

—遠赤外線が放つ熱とは、具体的にどのような温かさなのでしょうか?

寒い冬にカイロのような外的要素によって身体を温める、それもそれで有効なシーンが多いと思うんです。しかしながら人間には本来、人それぞれ基礎体温があり、そこから少しの体温上昇によって蒸し暑さを感じたり、逆に少しの体温低下だけで身体がブルっと震えます。それを防ぐために毛穴を閉じたり開いたり、汗などで体温調節をするわけですが、遠赤外線というのはその身体の自浄作用に近いレベルで体温を保ってくれる力を備えているため、極めて自然な形でほんわかしたリラックス感をもたらしてくれるのです。これは自分自身が近年ずっと「Re-Pose」を着用してきて、体感レベルとして得られているフィードバックです。

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ai_2人体から出る遠赤外線を活用して直接体を保温することで、快適な温もりを生み出し、暑くなりすぎずにあたたかさをキープしてくれる。光電子®️繊維は、一本一本に小さなセラミックスの粒子を練り込むことで効率的に遠赤外線を輻射することを可能にした画期的な素材。

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—人それぞれの“体温に近い温かさ”を、遠赤外線、すなわち光電子®がもたらしてくれるということですね。

そう言えますね。遠赤外線の放射検証では体温に対して2℃程度の保温効果がある事がわかっていますが、その反射熱が身体を冷やさない重要なポイントになっています。また「Re-Pose」を着ると服と身体の間にふわりと空気の膜みたいなものができる感覚があるのですが、その膜のようなものが身体全体を包みながらプラスの2℃をキープしてくれるイメージでしょうか。

—プロフリークライマーの野口 啓代選手をはじめ、〈ゴールドウイン〉のサポートアスリートも多くの方が「Re-Pose」を愛用されているそうですね。

身体を極限まで追い込んで、休めて、ということを繰り返すアスリートは、我々以上に休みの時間をどう過ごすかがパフォーマンスの良し悪しに直結しますから。光電子®の遠赤外線効果によって、前述したような「体温を正常に保つ」「リラックス感を向上させる」「睡眠の質を高める」「疲れを早く取る」というサイクルがより良いものになってくれているとしたら非常に嬉しいことですね。

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原料のセラミックスが遠赤外線を放射し体内の水分に働きかける。

—生産背景についても少し伺います。現在、「Re-Pose」はどのような過程で制作されているのですか?

ざっくりお話しますと、まずセラミックスをナノレベルに粉砕し、レーヨンチップやポリエステルチップの中に練り込みます。体から発せられる遠赤外線の反射がセラミックスによって得られますが、そこに反射を強化する別の原料をさらに入れて、糸状になったものを違う糸とブレンドして紡績する。編立は裏側が柔らかなパイル地になるダブルニット仕立てに。そのことで生地の表面はハリやコシのない、良く言うとすごくふわふわしたソフトな肌触りとなり、それがリラックスした着心地に繋がるというコンセプトの元、国内の工場で生産しています。

—その細やかな粉状のセラミックスが、遠赤外線を放つ光電子®素材の原料になっているということですね。

余談ですが、植木鉢などの観葉植物をこのセラミックスの上に置いておくと水分がよく行き届いて育ちが良くなる感じがします。水分に働きかける効果があるという1つの例ですが、遠赤外線を発する炭でお米を炊くとその効果で水分子が細かくなって火の通りが良くなると言われます。また、同じく炭を使う焼き芋も、遠赤外線効果によって焦げずにしっかり中に火が通って、ホクホクなのに中はパサパサせず瑞々しいですよね。

—身体はしっかり保温、水分をしっかりとって体を休めることで効果が高まるということですね。

そういうことです。水分をよく取っていただいて、遠赤外線を放つ「Re-Pose」を着て休んでいただくとより良い効果が期待できると思います。

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—「Re-Pose」は、基本的に寝る時に着ることでリカバリー効果が高めるという認識で間違いないでしょうか。

コンセプトとしてはそうですね。ただ、「これを寝巻きにするのはちょっともったいないな」というような方はもちろん部屋着のスウェットとしてお使いいただいてもグッドですし、物臭な方ならそのまま部屋で仕事をしていただいても良いと思います(笑)。わたしたちとしては用途を限定しておすすめするよりも、お使いいただく方それぞれの生活スタイルに合わせて、着ていて心地よいシーンで自由に着ていただくのがベストだと考えています。

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当たり前のように生活の中に存在するアイテムに。

—ここ1年はコロナ禍の影響もあって、体温や免疫力というワード、そしてそれらの相互関係にフォーカスされることも増えました。その点、着ることで基礎体温に近い温かさを保つことができる「Re-Pose」が免疫力の向上にも一役買う可能性はあるのでしょうか?

体温を一定に保つことはもちろん、それ以上に、重複しますが良質な睡眠を取ることが身体の健康を維持する上で何より重要だと考えています。「よく寝るとイライラしない」「食欲が増す」「朝日をきちんと浴びると身体のリズムが規則正しくなる」とはよく言われますよね。「Re-Pose」でサポートしたいのはまさにその部分。だからこれを着たからすぐに免疫力が高まるというのではなく、体温が安定してよく眠れるようになり、その結果として身体が丈夫になって、菌やウイルスに対する抑止力も強くなることに期待できるということではないでしょうか。

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—いわゆる「ニューノーマル」なライフスタイルとの親和性もすごく高い印象を受けます。

光電子®がもたらす遠赤外線がリカバリー効果を高めるという確信を持って、開発を続けてきたことが図らずしていまの時勢にフィットした感じはありますね。とはいえ「Re-Pose」が大切にしているのは、ニューノーマルとのマッチング以前にまずは身体の健康維持に向けてのサポート。そこに尽きます。これまで忙しさにかまけて睡眠を削ったり、お酒を飲みすぎるなど生活習慣を乱してきてしまった方がライフスタイルを見つめ直す良いきっかけになる服を提供できればと思っています。

—最後に、「Re-Pose」をはじめとする光電子®素材を使った〈ゴールドウイン〉のプロダクトはこの先どのような進化・普及を目指していますか? 展望をお聞かせください。

シンプルですが、継続して着ていただけるものを作ることですね。「Re-Pose」にしても他の光電子®素材の製品にしても、身体にしっかり馴染んでこそより良い効果のサイクルが生まれると言われていますから、着続けていただくことが何より大切なんです。「Re-Pose」を日常着にしていただくことはもちろん、より身近なものとして光電子®を使ったソックスでもいいですし、最近は腹巻きも結構おすすめしています。わたしたちとしては、そのように何かしらの光電子®アイテムを半永久的にお使いいただけるようにラインナップをどんどんアップデートしていくことが必要だと思っています。それでいて、生活に馴染みつつ、身につけたいと思っていただけるかっこいいプロダクトを作り続けたいですね。

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INFORMATION

PROFILE

新井 元

1967年東京生まれ。1991年に株式会社ゴールドウインに入社。以来、〈ザ・ノース・フェイス〉などのアウトドアブランドで20年以上に渡って商品企画に携わり、2014年にスキーブランド〈ゴールドウイン〉の事業部長に就任。本格的なアウトドアフィールドと現代の都市生活をダイレクトに繋ぐ画期的なプロダクト開発を先導する。www.goldwin.co.jp

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