ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2021.07.15 THU.

「モンキータイム」のアウトドアグッズ。山でくつろぐ、あの心地よさを日常に。

ヒッピー文化が花開き、バックパッカーが急増したあの時代。若者たちがアウトドアへとのめり込んだ理由は、自然を好んだためだけじゃありません。社会の閉塞感に疲れて、解放と安らぎを求めて都市を後にしたのです。時は2021年。今もアウトドアの道具を目にしたときにどこか高揚感を覚える私たちは、もしかするとそこに無意識に往時のような自由を見出しているのかも知れません。〈モンキータイム〉が初めて制作したアウトドアグッズは、自宅にいながらそうした開放感と心地よさを与えてくれるラインナップ。バイヤーの森本 聡さんにこのコンセプトにたどり着いた経緯や想いを語ってもらいました。

photo:Takuroh Toyama
text:Rui Konno

家や公園で過ごすための丁度いいギアが欲しかった。

1_DSCF6267

ーまずは森本さんの近況からうかがえたらなと思います。世相がだいぶ変わりましたが、最近はどんな風にお過ごしでしたか?

相変わらずですよ、と言いたいところなんですが、やっぱり結構生活は変わりましたね。この1年はリモートワークとかも多かったし。それで、普段気づかなかったことにもいろいろ気づいたりして。

ー具体的にはどんな部分に気づきましたか?

家での時間をどう過ごすのか、ってことですね。どうやったら自分の家や近所でもっと楽しめるかな、とかって考えることが圧倒的に増えました。ベランダでぼーっとしたり、お酒を飲んだりとか。あとは近所の公園に出かけたり。そういうときに使えるギアとかがあったらいいなと思ったのが、今回〈モンキータイム〉でアウトドアグッズを作ろうと思った理由です。

ー世間のアウトドア流行りとはまたちょっと違う文脈だったんですね。

周りにはすごく本格的にアウトドアをやってる方々がたくさんいるんですが、正直僕自体はほとんどやってこなかったんです。もちろん興味はずっとあったんですけど。社内で「最近、どんなギアがイケてるんですか? 今、どんなアウトドアブランドが面白いんですか?」とか、リサーチをしていて、そういう部分から買い付けのヒントをもらうことも多かったです。

ーわかります。アウトドアギアにはファッションアイテムとは別の驚きがたくさんありますもんね。

本当にそう思います。僕がもともと PR をやっていた〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ〉では長年〈コールマン〉に別注していて、ワンタッチで開くシェードをずっと展開しているんですけど、 あれもしまうときにはすごく小さくなって便利だなと思っていたので、そういうところは今回も意識しました。

2_DSCF6385

ーそれで、このタイミングで実現したのには何かきっかけがあったんですか?

昨年、お取引先さまの展示会にお邪魔したのですが、その会社さまが元々いくつかアウトドアギアを作られていたんです。それがすごくいい感じで、眺めていたらご担当の方から「何かやりませんか?」とお声をかけていただいて。それで二つ返事で「是非!」という感じでした。展示されていたのは黒の無地だったんですが、僕らのファッションの視点から、それを面白くて新しいものにできないかなと思ったのが最初です。

ー森本さんから見て、従来のギアにしっくりこないところがあったんですか? 今回のベースモデルに限らずに。

良いものを見たときには素直に欲しいな、使ってみたいなと思うことも多いんですよ。でも、色とか柄についてはもっとこういうものがあったら良いなと思うことは多くて。今回はもともと山で使うためのアウトドアギアを作ろうとは思っていなかったので、柄もいかにも! って感じじゃないものがいいなと思っていました。特に、あんまりテイストをアウトドアフィールドに寄せてしまうと、自分のようなライフスタイルとはかけ離れてしまうので。あくまで自宅や近所の公園で使用する目線で考えました。

3_DSCF6298

ーそれでこの柄に行き着いたということですね。

そうです。初めて見たときから直感的に柄モノにしたいなという気持ちはありました。でも、先にお話ししたような自宅や公園で使用する目線、普段使いというコンセプトで始めたので、普段の〈モンキータイム〉の世界観からかけ離れたものにはしたくなかったんです。そう思って自分のワードローブを見直したときに、去年から継続で作っているエスニック柄のシャツのことを思い出しました。個人的にもそれは気に入っていて、繊細で上品だし、機能的なギアとはちょっと距離がありそうなイメージだから面白いかなと思ったんです。

ー確かに新鮮ですよね。時代もテイストも性別も、いい意味ではっきりと特定できない感じがします。

そう言ってもらえると嬉しいです。先シーズンのこの柄のシャツを僕がよく着ていて、奥さんから「その柄カワイイね」って言ってもらえてたので、男性でも女性でも使いやすそうだな、というのは最初から考えていました。本格的なギアってどうしても「男心をくすぐる!」みたいな色柄やデザインが多くなりがちじゃないですか。

ーそうですね。それはそれで楽しいんですけどね。


使うときも、それ以外のときもノンストレスであるために。

4_DSCF6362

ー今回の商品を作る際にこだわったポイントを教えてください。

僕自身、例えばカモ柄のような定番ギアもすごく好きなんですけど、それが新しいのかって言ったらそうではないし、僕らが新たにやる意味合いはあんまりないかなと思っていたので、〈モンキータイム〉らしさをデザインしました。あとはシーンを選ばず手軽に使えることと、かさばらずに収納できることも最初から目指していた部分です。

ー日本の住宅事情だと、収納しやすさは大事ですよね。今回のアイテムバリエーションについても教えていただけますか?

アームレストの無いチェア2脚とカップホルダー付きのテーブル、3点セットがまずひとつです。後は背もたれ無しのベンチ、カップホルダー付きのチェア、首から提げられるドリンクホルダーというラインナップです。あ、後はエコバッグですね。これも近年使う人が増えたと思うんですけど、コンビニに買い物に行ったりするときに小さくして持ち歩けるバッグが欲しいなと思って作りました。普段持ち歩いてても、ファッション的にアクセントになるものを目指しました。ドリンクホルダーは350mlの缶がちょうど入る大きさなんですけど、内側が保冷仕様で持ち手も付いているので使っていて快適ですよ。

ー確かにどれも使い勝手が良さそうですが、どういう経緯でこのラインナップにされたんですか?

アイテムを加えていったというよりは、実は何点か削ってるんです。最初の構想段階では保冷機能を持ったクーラーボックスみたいなバッグや、蓋を閉めるとイスとして使える筒状のバケツとかもありました。でも、本格的なアウトドアフィールドに繰り出すには便利でも、家や公園を移動するくらいならそんなに容量は必要無いなと思って、趣旨とズレちゃうので今回は削りました。もちろん、ドリンクホルダーやチェアなんかは例えばフェスの会場でもすごく便利だろうなと思っていましたし、そうやって使ってもらえるのもすごく嬉しいんですけどね。


〈モンキータイム〉が「サステナビリティ」にこだわる理由

5_DSCF6351

ーこの柄、細かいのにきれいに出てますね。

はい。サンプル作成をした際に一回でちゃんとキレイに出たんですよ。同じ柄のシャツは柔らかい素材で柄が出やすいんですけど、これは再生ポリエステルなので、本当はもう少しボヤケるかなと思ってたんですけど。

ーこれはリサイクル素材なんですか?

そうなんです。これに限らず、〈モンキータイム〉では特にここ数年、サステナブルなものづくりには積極的に取り組んでいて。それまでは普通のコットンだったものをオーガニックに変えたり、再生素材に置き換えられるものはそうしたり。可能な範囲で、やれることを探して実行していっているというのが現状です。

ーブランドとして、そういう意識を持たれているんですね。

はい。でも、だからこそ見栄えとクオリティが重要だと思っています。サステナブルな素材に変えることで品質だとか格好良さが失われてしまうのは違うと思うので。環境に適した素材に変えながら、そういう根幹の部分はちゃんと担保していくっていうのは意識しています。

6_DSCF6281

ーサステナビリティの大切さを強く意識したエピソードで印象的なものがあったら聞かせてもらえますか?

それこそ大手のアウトドアブランドだったりスポーツブランドだったりの姿勢から学ぶことはたくさんあるんですけど、一番はマーティン・ローズの言葉ですね。何年か前にデザイナー本人が来日するタイミングがあって、そのときに弊社で商品説明会を開催していただいたんです。そのときに「サステナビリティについては、どういう風に考えていますか?」と訊いたら、「必ず取り組まなければいけないことです」って彼女が答えたんです。“できたらやろう”じゃなくて、マストだって。もう、そういう考え方が世界では当たり前になっているんだなっていうのを痛感しました。

ー世界的にもトガったブランドのデザイナーだから、余計にそう感じますよね。

そうなんです。今は日本でもモノを選ぶ方々がすごくシビアにそういう部分を見るようになってきましたし、海外では特にそういう取り組みに消極的なブランドに消費者が厳しいんです。僕たちも、こういう風に「リサイクル素材を使っています」ということを伝えることで、手に取って頂いたり、買って頂いた方の中でもそういう意識が強くなっていって欲しいなと思っています。そうすれば、行動もそれに即したものになると思うから。

ーこのアウトドアグッズで言えば、リラックスして使うアイテムにそういう大切なメッセージが込められているのが素敵だなと思いました。

ありがとうございます。自分のライフスタイルや、気分にマッチするものだと気分が高揚するっていうのはファッションもギアも同じだと思うんです。それが、去年からより明確に感じられるようになってきた気がしています。

ー確かに行動が制限された分、感受性は強まりましたよね。また自由に行動できるようになったら何をしたいですか?

外出するのが楽しくなると思うけど、やっぱりそれでも自分の家や近所の公園とかでくつろぎたいですね。奥さんとお酒を飲んで、音楽でも聴きながらリラックスした時間を過ごしたいです。自作の夏のプレイリストとか、作ってみようかなと思っています。

PROFILE

森本 聡

1981年生まれ、群馬県出身。ショップスタッフを経て、その後〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ〉と〈モンキータイム〉のプレスを兼任。現在は後者のバイヤーとして、国内外の良品を探す日々を送っている。

JP

TAG

SHARE