ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2022.06.30 THU.

最高のボードショーツを作り、海を守る。
グローバルブランド「BILLABONG(ビラボン)」が真摯に取り組んでいること。

1973年にオーストラリアで生まれた、ボードショーツでお馴染みのブランド〈BILLABONG(ビラボン)〉。SDGsが声高に叫ばれるはるか以前の2007年より、リサイクル素材を用いたボードショーツ作りをはじめ、2019年には世界で初めて、ボードショーツとビキニにおいて100%リサイクル素材を使用することになりました。日本では、2002年に湘南に1号店を構えて以来、サーファーを中心に長く愛されてきた歴史もあります。そんなブランドが、6月末より〈California General Store(以下、CGS)〉とのコラボレーションを実施。そこで、日本でブランドを統括する清水 英知さんに、サステナビリティに深くコミットするブランドの真髄についてじっくりと話を伺いました。

Photo:Taro Hirayama
Text:Masashi Takamura

遊び場でありビジネスの場でもある
自分たちのフィールドを守りたい。

1973年、オーストラリアはゴールドコーストのバーレーヘッズで設立。自身もサーファーである創業者、ゴードン・マーチャント氏が、妻レイナとともにボードショーツを作って販売したのがブランドのはじまりだそう。

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「グローバル会議でよく聞くのは、ブランドが掲げるスローガンでもある“Know the feeling”というフレーズです。これは創業者であるゴードンがいまも大切にしている言葉です。

海に入れば誰もが感じられる、特別な感覚のことを言っています。例えば、ひたすらサーフして日に焼けるとか、ラウンド後にサンセットの中でチルアウトするとか、ショーツのポケットから砂が出てくるみたいな、”ちょっとしたことだけど特別な“あの感覚です。

僕らのモノづくりは、このキーワードが感じられるかどうかがポイント。当初は”Only a surfer”が頭についていましたが、いまは“誰もが”としています。海で得られる感覚は、サーファーに限定した話ではないですよね。海で感じる楽しさも海洋保護についても、みんなで共有したほうがいいですから」。

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〈BILLABONG(ビラボン)〉が制作したブランドブックより。”Know the feeling”のイメージを色濃く伝えています。

こうした理念の元で、ブランドは2007年から早くもリサイクル素材を使った商材を作りはじめていくことに。その後、徐々に時間を掛け、2019年には世界で初めて、ブランドの中核となるボードショーツとビキニにおいて、100%リサイクル素材という商品構成を実現します。この再生素材コレクションは「リサイクラー(Recycler)」と銘打たれ、その他のアイテムにも徐々に広まっている最中とのこと。

「最初の頃は、リサイクルへの取り組みが早すぎて、まだまだ僕ら自身がサステナビリティの重要性に気付けていませんでした。けれど、取り組むうちに“世界に先駆けているな”という自負も生まれました。また、最近になって取引先やユーザーからも注目されているのを実感しますね」。

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「リサイクラー」コレクションでは、「最高のボードショーツ(ビキニ)を作り、海を大切にする」といったメッセージを掲げていますが、まさにその言葉通りとなっています。

「もちろん、早ければいいとか商材が多ければいい、という競争の話ではありません。いつかは誰もが取り組まなければならないことなので。僕らは、遊び場でもあり、ビジネスの場所でもあるフィールドを大切にする。これはビラボンで働く全員が同じ気持ちで動いていることです」。


サステナビリティへの意識の高まりと
ブランドに見る再生素材の広がり。

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数々のブランドがサステナビリティを掲げる中でも、〈BILLABONG(ビラボン)〉のスピード感と規模は、ひとつ抜きん出た印象に。それほど、取り組みの質と量が高いものと想像されます。

「リサイクラー」で使用されている再生素材は、すべてリサイクルペットボトルを使用したものだそう。いわゆる「マテリアルリサイクル」と呼ばれる方式で、回収されたボトルから形を変えてプラスチックがリサイクルされていきます。

「回収されたペットボトルをペレットに変換し、繊維にして縫製するという一般的な工程を辿ります。この過程自体は特別ということではないのですが、15年前に取り組んで以来、ビラボンの手でこれまで2億本のペットボトルがボードショーツ、あるいはビキニとなってきたわけです。残念ながら日本ではあまり知られてはいないのですが、この実績は胸を張って強調できるものだと思います」。

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ペットボトルの再生以外にも、「CiCLO(シクロ)」と呼ばれる生分解性を備えた再生ポリエステルや、トレーサビリティのあるコットン、リサイクルコットンなど、再生素材の種目を拡大中。さらに、ボードショーツやウエットスーツだけでなく、さまざまなアイテムにもその使用範囲を広げているところです。

「2020年にはパッケージのリサイクル化も実現しています。ビラボンは、自然環境へのインパクトを最小限に抑えるために、クリエイティブな解決法を常に模索し実現に向けているわけです。2022年の終わりまでにはプロダクトの50%以上、A/Div(アドベンチャーディビジョン)の70%以上をリサイクル素材ないしは、アップサイクルダウン、オーガニック/リサイクルコットンを使用することを掲げています」。


同じ海を愛する同志として意気投合。
リスペクトを胸にコラボレーション。

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1985年に誕生した「クレヨンウエーブ」ロゴをアレンジしバックプリント。ブランドを代表するライダー「オッキー(Occy)」ことマーク・オクルーポが、本ロゴの入ったボードを使用しプロツアーで優勝したことで一躍人気に。ブランドの過去と現在を繋ぐ象徴的なデザイン。

6月末からは〈BILLABONG(ビラボン)〉と〈CGS〉とのコラボレーションがスタートします。アイテムとしては、特別なロゴが入るTシャツとショーツを展開。また、アートワークに力を入れている本ブランドらしく、グローバルクリエイティブチームに所属するデザイナー3名によるアートブースをポップアップ展示します。さて、湘南をベースとする両者がコラボに至ったきっかけとはなんだったのでしょうか。

「〈ビラボン〉の1号店を湘南に構えて20年。世界を代表するサーフブランドのショップという自負もありました。そんな折に、有名店の〈CGS〉をUAさんが引き継ぐ、という話を耳にしたので、大変驚きました。もちろん前のショップ店舗から存じ上げていましたし、実際行ったこともありますから。

そんな粋で骨のある担当者の方は一体どなたなんだろうと気になり、一度お会いしたいと思っていたら、うちのスタッフに同級生がいることがわかって。そんな不思議な縁もあって、〈CGS〉ディレクターの清水 学さんをご紹介いただいたんですよ。

僕らが愛するこの海を一緒に盛り上げてくれるのはとてもウェルカムな話で、“Know the feeling”にも共感していただき、お互い意気投合することができました」。

そして、とんとん拍子に話は進み、コラボレーションの運びに。結果、〈ビラボン〉の長い歴史にリスペクトを捧げつつ、新鮮さが強調できるようにと、バイヤーの青谷 克也が選んだ「クレヨンウエーブロゴ」を基調にし、同社自慢のリサイクル素材を使用したアイテムが登場します。

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〈BILLABONG(ビラボン)〉と〈CGS〉のコラボロゴが入ったショーツ。こちらもちろんリサイクル素材を使用している。

コラボアイテムの他に、ショップではアートブースを設けて、〈BILLABONG(ビラボン)〉のクリエーティブチームに所属するアーティスト3名の作品を展示。社員でありながら、アーティストとしての活動も行っているクリス・ハニー、カミロ・ハラミロ、アーロン・ラスボーンの各者は、5月末に開催された「グリーンルームフェスティバル2022」にも来日。オリジナリティ溢れる自由な作風が人気で、本コラボでは直接お目にかかれる絶好の機会となります。

「社員がアーティストとして活躍できるような社風も〈BILLABONG(ビラボン)〉のいいところだと思います。僕らが大事にしている世界観をぜひ“Know the feeling”していただければ(笑)」。


湘南から世界へ。
ローカルの目線で誇れる未来を目指す。

ひとつの信念に基づいて、さまざまな行動を起こしている〈BILLABONG(ビラボン)〉。リサイクル素材の使用以外にも、ローカルでさまざまな活動が見られるのも特徴的です。

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「湘南のブランド同士だからこそ生まれた今回の取り組みもそうですが、他にも“Know the feeling”の精神のもと、さまざまな取り組みを行っています。

西浜サーフライフセービングクラブとは20年ものお付き合いで、ユニフォームの提供だけでなくて、ビーチクリーンやイベントなどでリレーションシップを取っています。同じ方向性を持つ団体とともに地域を活性化したいですね。

結局は“いいよね!”“そうだね!”という現場でのリアルなノリこそが、”Know the feeling”の真髄(笑)。楽しいことが大事なんです。売れるか売れないかは二の次で楽しみたいですね」。

また、キッズ向けのサーフイベントなども数多く実施。グローバルでは、「BILLABONG BLOODLINES CAMP」と呼ばれる、ライダーの子どもたちのサーフキャンプを通じて、ブランド理念を継承しています。日本においては「湘南最高カップ」などでキッズ向けのコンテストを多数開催しています。

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コロンビア出身のカミロ・ハラミロのアートTシャツは、「グリーンルームフェスティバル‘22」の来日時に作成したもの。今回のポップアップでの販売はなく展示のみになるそう。

「地元のハンバーガーチェーンに協賛してもらって、子どもたちにハンバーガーを配ったりしたこともありましたね(笑)。サーフブランドとしての一等地である湘南から、世界に発信できたらいいなと思っています。

いま、実は湘南のビーチはとてもキレイなんです。それも、みんなで毎週のように違う団体がビーチクリーンをしてきた結果。それでも、マイクロプラスチックなど、目を皿のようにして見れば、いろいろ落ちています。その辺もよりローカルならではの視点で進めていけたらと」

日本を中心にブランディングを手掛ける清水さんが考える今後の〈BILLABONG(ビラボン)〉とは、どのようなものなのでしょうか。

「過去からビラボンブランドは繋がっています。誰のものでもなくて、いまの時代は僕らが責任をもって携わっています。こうした僕らの思いは正しいカタチで未来に繋げていきます。子どもたちにもこのブランドが誇れるように、関わっていけたらと思っています」。

PROFILE

清水 英知

複数のアクション系ブランドを所有する会社ボードライダーズジャパンで、ビラボンブランドのジャパンリージョンのブランティングを統括。原宿のオフィスと湘南のショップを往来。自身もサーフィンを嗜み、出社前に社員たちと海に入ることもしばしば。

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