ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

ハイクオリティな生地の生産と、持続可能な社会と。どちらも叶える「Manteco®️」のリサイクルウール。

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2024.11.28

ハイクオリティな生地の生産と、持続可能な社会と。どちらも叶える「Manteco®️」のリサイクルウール。

日々の暮らしはもちろん、ファッションを楽しむ上でもサステナブルへの意識が根付き始めた昨今。自分が選ぶ洋服の生地が、どんな環境で、どのようにつくられているのか、少しずつ知識を深めていくべき時代がやってきています。そこで今回は、〈ユナイテッドアローズ〉(以下、UA)ウィメンズが採用している〈Manteco®️〉のリサイクルウールに注目。「リサイクルウールはバージンウールと同じポジションにいるべき」という考えをもつManteco®️社とは、どんな企業なのでしょうか。歴史やこだわり、環境負荷への想い、さらに製造過程まで、を紐解きます。

Photo:Takehiro Sakashita
Text:Maho Honjo

バージンウールに比べて気候変動への影響が99.2%減少。

画像 Manteco®️社提供

まず、そもそもリサイクルウールとは何か、そのことから触れていきましょう。ウール生地を生産する過程で出てしまう残り糸や端材、また一度商品になったアイテムを回収した衣類など、今ある素材を再利用してつくられるウール生地のことを言います。羊毛をそのまま使うバージンウールは、紡績や染色の過程で水やエネルギーを大量に消費しますが、その量が格段に少ないのがリサイクルウール。地球環境に配慮した素材として、今世界で注目を浴びているのです。今回フォーカスする〈Manteco®️〉では、なかでも2種類のウールを扱っているとのことです。

まずひとつが「MWool®️」。これはポストコンシューマーと呼ばれ、消費者が使用した製品をリサイクルしたものです。もうひとつが「ReviWool®️」。これはプレコンシューマーといって、消費者の手元に渡る前の素材をリサイクルしたものです。それぞれに特徴はありますが、私たちがネクストジェネレーションウールと呼んでいるのが、前者の「MWool®️」。バージンウールに比べて、気候変動への影響が99.2%、水の使用量は99.9% 、総エネルギー消費量は93.3% 、それぞれ少なくなることがわかっています。

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驚くべきこれらの数値は、トリノ工科大学と共同で徹底的に分析し、導き出されたもの。科学論文として国際的に認証されています。ヨーロッパでは、地球環境を守るためにどんなアクションを起こしている企業なのか、常に問われるような風潮ができあがりつつあります。それでも〈Manteco®️〉のように、科学的かつ定量的に分析し、証明している企業はまだ少ないのだそう。

「今あるものを生かす」という哲学を掲げて、未来へ。

さて、ここで〈Manteco®️〉の成り立ちについて掘り下げていきましょう。創業は1943年、毛織物の産地として名高いイタリアのプラトー地区にあり、昨年で80周年を迎えた歴史ある企業です。当時からリサイクルウールを生産していたものの、まだ小規模生産者だったそう。著しい成長を遂げ始めたのは、この10年ほどだと言います。

創業当時は戦時中ということもあって、羊たちの餌となる牧草地が荒廃していったようです。そこで〈Manteco®️〉は、高品質の軍事用ブランケットなどを回収して再生するという事業をスタートさせます。さらにリサイクル業者や紡績業者などとパートナーシップを組み、小さいながらも「今あるものを生かす」という独自の哲学を掲げ、「MWool®️」や「ReviWool®️」など、自社のブランドを生み出すまでになりました。そこに並行して、社会で叫ばれるようになったのが、気候変動などの地球環境問題です。持続可能な社会に向けて社会が動き始めるのと同時に、〈Manteco®️〉の取り組みに注目が集まるようになりました。時代が〈Manteco®️〉に追いついた、と言えるのかもしれません。
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Manteco®️社提供
(左)創業当初の〈Manteco®️〉倉庫。(右)現在の〈Manteco®️〉本社社屋。創業当時の倉庫をリノベーションし、活用している。

その結果、この10年ほどで売上は約15倍以上に伸びたほか、今なお地球の未来に向けてさらなる行動を起こし続けています。たとえば2018年には「マンテコアカデミー」を設立。ファッションを学ぶ学生たちに循環型経済や環境に配慮したテキスタイルを教えるなどの啓蒙活動を行っています。また2023年は「サステナブルファッションアワード」にて「気候行動賞」を受賞。これはファッション業界のCO2排出量削減ソリューションを開発したブランドやサプライヤーに贈られるもの。まさに持続可能な社会に向けて、さまざまなことを実践している企業なのです。

美しい色を再現するレシピづくりこそが〈Manteco®️〉の真骨頂。

画像 Manteco®️社提供

では実際に、〈Manteco®️〉のリサイクルウールがどのようにしてつくられるのかを見ていきましょう。まず行われるのが、ソーティングという仕分けの作業です。リサイクル業者から送られてきた大量のアイテムを、生地構成ごと、かつ色ごとに選別していきます。この工程は、触るだけで生地とその構成がわかる熟練の職人によって行われているそう。さらにリサイクルできない要素、たとえばボタンやジッパー、ポリエステルでつくられているブランドラベルやケアラベルを手作業で外していきます。

次がシェービングと呼ばれる工程で、衣類や生地を機械で裁断し、さらに細かく粉砕し、繊維の状態に戻していきます。ここで使うのは少量の水のみ。薬品などを使用せずに、リサイクルウール繊維を生み出していくのです。

画像 Manteco®️社提供

このあとに行われるのがブレンディングという工程。ここで〈Manteco®️〉の生地づくりの肝となる「レシピづくり」という作業が行われます。リサイクルウールで新たな色をつくる場合は、染料を使わず、今ある繊維同士を組み合わせながら、クライアントからオーダーされた色を完成させることになります。画家がいろんな絵の具を使って、特定の色をつくることを想像するとわかりやすいかもしれません。そのために職人と呼ばれる人々が、さまざまな色の繊維を特定の割合で混ぜ、ウールの色を考案。それらが「レシピ」と呼ばれ、アーカイブ化され、次に同じ色をオーダーされた場合は、そのレシピを見て制作します。そうやってリサイクルウールの持続的な再現性を高めているのです。
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Manteco®️社提供

さらに糸をつくり、撚糸をかける工程(スピニング)から、横糸と縦糸を織り合わせて生地をつくる工程(ウィービング)へ。さらにできあがった生地をなめらかに整えたり、起毛させて表情を出すなどの工程(フィニッシング)を経て、ようやく完成!
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Manteco®️社提供

一般的にリサイクルウールというと、バージンウールに比べて強度が低かったり、風合いが硬いとか、仕上がった生地の表面にツヤがなかったりなど、課題が残るイメージがあったかもしれません。ただ〈Manteco®️〉は「リサイクルウールとバージンウールは同じポジションにいるべきであり、それが私たちのスタンダード」という姿勢を取っていて、実際に数々の厳しいチェックポイントを設けています。それらをクリアし、堂々たる風格を備えているのが、まさに〈Manteco®️〉のリサイクルウールなのです。
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Manteco®️社提供


「Manteco®️」の特質を最大限に生かした、タイムレスなコートが完成。

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〈Manteco®️〉のリサイクルウールとUA社の付き合いは長く、このエレガントな素材を使って、さまざまな気品あふれるコートが生まれてきました。この秋冬も、クラシカルなムードをたたえたステンカラータイプのコートが誕生。〈UA〉デザイナーの高橋さんは、実際に〈Manteco®️〉の生地を使ったコートを愛用するひとりです。

「初めて〈Manteco®️〉のコートを手に入れたのは、今から約10年ほど前でしょうか。その時はサステナブルな背景は知らず、当時国内の素材感にはあまりない綾目を感じる組織感や、ハリのある風合い、そしてきれいにおさまった表面感に惹かれて使用したいと思いました。実際に着ていて感じたのは、型崩れしにくく、生地表面の乱れがない、ということ。お客様の立場に立ったとき、これは長く着ていただける一着になるなという思いもありました」

時は経ち、高橋さんが実際にManteco®️社を訪れたのは、今年の2月のこと。そこで、改めて環境に配慮した姿勢を深く知ることになります。さまざまな原料は有限であり、地球のことを考えると今あるものを最大限に生かすのは自分たちのミッション。その思いに共感し、今年もコートを展開したいと考えたのだそう。

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「Manteco®️が素晴らしいのは、リサイクルウールとなると色や風合いが限定されるものもあるなかで、それらのバリエーションが豊かに展開されているところ。ハリ感や綾目の美しさがあって、仕立て映えするところにも惚れ惚れしてしまうんです。」

「時代を超えて長く着続けてほしい」と、高橋さんはあえて時代に左右されないベーシックなステンカラータイプを提案。ディテールを削ぎ落としながらも衿は少しだけ大きめにして優雅な雰囲気に。どんなシーンにもフィットし、何より時代を超えて長く着続けられる、そんな一着ができあがりました。

お気に入りの一着を長く着続けることが、究極のサステナビリティ

高橋さんも、〈Manteco®️〉のデザイナーであるアンドレア氏のこんな言葉が特に印象に残っているそう。「お気に入りの一着を探して、それを長く着続けることこそが、究極のサステナビリティ」。自分はどんなファッションを楽しみたいのか、その思いで選んだアイテムは地球環境にフィットしたものなのか。これからの時代は、そのふたつの視点が必要になってくるのかもしれません。ハイセンスとサステナビリティ、その両軸を叶える「Manteco®️」のリサイクルウール、ぜひ注目してみてはいかがでしょうか。

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PROFILE

MANTECO社

MANTECO社

1943年設立のイタリアPrato地区にあるファブリックメーカー。設立当初よりエコロジーかつファッショナブルな素材を開発。イタリアでは繊維業界だけではなく、他業界含めて環境に配慮している企業として広く認知されており、2023年、2024年と連続でファッション業界から表彰を受けている。リサイクルウール、テンセルやリサイクルコットン、オーガニックコットンなども幅広く取り扱う世界のトップメーカー。
https://manteco.com/

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