
モノ
2022.08.26 FRI.
“もったいない”の精神に立ち返る。「green label relaxing」と「WILD THINGS」のアップサイクルプロジェクト。
1981年にアメリカで生まれ、「LIGHT is RIGHT(軽くてタフでなければいけない)」をコンセプトにタフで機能的なアイテムを発信し続ける〈WILD THINGS〉。アウトドアがライフスタイルの一部として定着した今、〈WILD THINGS〉が〈ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング〉(以下GLR)と新たにコラボレーション、キッズのリメイクアイテムを展開する領域に踏み込む。インラインにはないアイテムに挑戦する想いやサステナビリティに対してのブランドの向き合い方について、国内でブランドを統括する和田賢治さんにお話を伺いました。
Photo:Eri Morikawa
Text:Masako Serizawa
登山家が生み出した最高峰ブランドが
ものづくりの原点に立ち返ってリメイク。
〈WILD THINGS〉は1981年、アメリカ・ニューハンプシャー州ノースコンウェイにて、登山家のジョン・ボチャードとマリー・ミューニエール夫婦のタッグによりブランドがスタートしました。近年はミリタリーウェアのサンプル作成もスタートし、ECWCS(拡張式寒冷地被服システム)のサプライヤーに認定され、2010年には、ミリタリーライン〈WILD THINGS TACTICAL(ワイルドシングスタクティカル)〉をローンチ。米アウトドアギアメーカーの米軍特殊部隊向けに開発された衣類を、全て官給品として製造していたり、その完成度の高さとタフさから、日本国内でも多くの人に愛され続けています。
一今回ユナイテッドアローズ社でも初めての在庫のリメイクをするという取り組みですが、〈GLR〉との協業プロジェクトがスタートしたきっかけは?
近年、アウトドアやキャンプはトレンドにもなり、そこからライフスタイルの一部となりました。
アウトドアシーンだけでなく、ライフスタイル領域においても、皆様にブランドの魅力を知ってもらいたいという思いから、GLR様は、ターゲット層も幅広く、キッズやファミリーと広くカバーされていることもあり、インラインには無い、キッズアイテムを協業させて頂いたことがキッカケです。
今回の試みもブランドの残在庫でなく、〈GLR〉の在庫を活用させてもらうことで、ブランドのフィルターを通して新しい価値を作り出せるのでは、と考えました。なので、背裏ネームはあえて〈GLR〉のネームを残し、我々のブランドとしての軌跡を残す意味も込めてインラインにはないプリントを施しています。
配置は一枚一枚異なるが、WILD THINGSのロゴがさりげなくあしらわれている。
一今回のリメイクアイテムは遊び心がありながら、よく見ると細部にまでこだわりが詰め込まれていて、完成度の高い仕上がりになっていますよね。
いざやってみると、Tシャツ一枚を作るよりもリメイクの方が大変なんです。全く違うデザインのTシャツをドッキングする場合、身幅や着丈が違うので。インラインにはない新鮮なデザインのアイテムで、認知の層を広げていけたらと思っています。
2枚の生地をロックミシンでオーバーロックしたもの。ステッチの糸は右見頃に合わせたこだわりの配色に。
着丈が違うことを活かして、裾がずれた遊びのあるデザインに仕上がった。
目標は足し算でも引き算でもない
無駄のないアップデート。
一無数にあるサステナブルな取り組みの中から、今ある製品にアレンジを加える「リメイク」という手法を選んだ理由を教えてください。
我々のブランドは、毎シーズン大きなトレンドがあるわけでもなく、歴史の中で生まれたユーザーの需要や環境に合わせて完成されたプロダクトがほとんど。なので、毎シーズン大きな変更をするのではなく、マイナーチェンジやアップデートをすることが使命だと思っています。既存の重要な要素を残しつつ、その時代に合わせたリメイクで新たな付加価値を作っていくのは自然な流れだったとも言えます。足し算でも引き算でもない、無駄がなく捨てるところがない、というのが目標です。また僕らはB to Bの卸売業的なビジネスが割合を占めているので、無駄な在庫を持たないというのも重要です。ものづくりにおいては、主要モデルで採用している機能素材を別モデルに移植するなど、過度なプロモーションを目的にしたプロダクトを開発しないように意識しています。
よく言われるSDGsも、もうサステナブルって謳う必要がないくらい、当たり前の世の中になる未来がすぐそこまで来ていますよね。自分たちの周りのクライマーや地球に接している人と会話すると、それを直接肌で感じられることが多いです。
日々の「実験的なアプローチが
この先のゴールを変化させると信じて。
一SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任―すべての人の意識と行動をシフト」に絡めて、ブランドとしてこのゴールに向かうため、いま具体的に動いていることはどんなことでしょう。
特に大きく謳うことではないんですが、些細なことで言えば、ブランドの下げ札の素材をLIMEX(石灰石)素材にしたり、糸ロックスもすぐに外して再利用できるものを使用していたり。小さなことから意識するのが重要だなと感じています。
いま考えているのは、どうしても出てしまうB品や展示会で使用したサンプルをどう活用するか。10月にオープンを予定している「THE PX WILD THINGS」という直営店で、そこでしか手に入れることができないアイテムに進化させて、実験的に提案できればと思っています。
一最後に、これから環境に配慮した新たなアプローチとして、どんなことに挑戦していきたいですか?
今回の〈GLR〉との試みもそうですが、我々が特に大切にしているのは人との繋がり。誰かと一緒に生み出すということを常に意識しています。今後、ブランドの新たな側面として「FIELD&CITY」をコンセプトにやっていきたいなと。ハードなフィールドユースはもちろん、日常のタウンユースでも。これは機能的なアイテムを提供するという話だけでなく、いろんな人たちのアクティブなマインドを刺激できるようなブランドでいられたら。人との繋がりから生まれるアイデアを社会的に意味のあるものへと醸成していくのがこれからの目標ですね。
INFORMATION
PROFILE

和田 賢治
1976年生まれ。
インポートメーカーを経て、株式会社インスに入社。海外バイイングからオリジナル企画・営業を担当。2012年〜2018年までGRAMICCIディレクターを務める。2016年~WILD THINGSディレクターに就任。拡張型実験レーベルと称し「THE PX WILD THINGS」を立ち上げる傍ら、ワークウェアブランド「BIGMAC」等も手掛ける。