ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2016.08.19 FRI.

「ユニフォーム×ファッション」、新しいかけ算の方法。

2016年6月、「uniform UNITED ARROWS LTD.(ユニフォーム ユナイテッドアローズ)」という新しい制服レーベルが立ち上がりました。毎日着る制服は、お客さまとしっかり向き合うための大切なツール。だからこそ、上質でデザインにもこだわりのあるものが必要になってきます。この取り組みに㈱ユナイテッドアローズと共に参加しているUNIX TOKYO 株式会社の代表取締役・堀 和博さんは、もともとホテルに勤めていたサービス業の出身者。毎日制服を着ていた掘さんだからこそ、ユニフォームにかけるこだわりや哲学、そして今回のプロジェクトに対する期待があるはずです。太陽が燦々と降り注ぐとある夏の日、そんな想いを伺いに掘さんのもとを訪ねてみました。

Photo:Jun Okada、Yosuke Morimoto
Text:Yuichiro Tsuji
Special Thanks:THE SODOH HIGASHIYAMA KYOTO、THE GARDEN ORIENTAL OSAKA、ORIENTAL HOTEL KOBE

ファッションに対する探究心がユニフォームの価値を向上させる。

ー今回スタートした「ユニフォーム ユナイテッドアローズ」はどんな取り組みなのか教えてください。

堀:私たちUNIX TOKYO 株式会社は、さまざまな企業に向けて“ユニフォーム(制服)”をつくる会社です。デザインの提案から製造の管理、追加生産のアフターケアに至るまでをご案内しているのですが、今回㈱ユナイテッドアローズと協業することにより、従来以上のクオリティのユニフォームをお客さまにご提案していきます。

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ー“従来以上のクオリティ”というのは具体的にどういうことなのでしょうか?

堀:これまでの我々の仕事内容は、お客さまのご要望を伺い、ご希望に添ってカウンセリングを行ないながらアイデアをカタチにするというものでした。今後は我々の経験と㈱ユナイテッドアローズがこれまで培ってきたファッションのノウハウを組み合わせて、お客さまのご要望に対してプラスアルファとなるご提案を行なっていきます。「袖口の細かな仕様はこうしたほうがいい」とか「この生地に対してステッチの色はこのカラーリングにすると合うんじゃないか」など、デザインに関してよりソフィスティケートされたアドバイスをお伝えすることが可能になったんです。

ーなるほど。

堀:長年ユニフォームづくりに携わっていると、お客さまのデザインに対する悩みへの回答が明確になってくるんですが、その反面、考え方がどこかステレオタイプになっていたような気もするんです。しかし、今回㈱ユナイテッドアローズのスタッフの方から第三者的な目線でデザインに対するアドバイスをされて、目から鱗だったといいいますか、「そういうアプローチもあるんだ」と気付かされることが多かった。直感的に素晴らしいと感じるだけでなく、より細かな部分にフォーカスしても魅力的と思えるユニフォームがつくれるようになったので、ディテールの一つひとつに価値を感じて頂ければうれしいですね。

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キリッとしているのにどこか柔らかな佇まいのユニフォームは、京都にある「THE SODOH HIGASHIYAMA KYOTO」のもの。日本の伝統的な建物と、洋風のデザインがあしらわれたユニフォームのコントラストが、非日常でありながらもどこか心地のいい風情を演出しています。

ー掘さんご自身は㈱ユナイテッドアローズに対してどんな印象をお持ちですか?

堀:私自身ファッションがとても好きで、若い頃からユナイテッドアローズのショップで買物をしていました。トラッドマインドを軸に、クオリティの高いオリジナルアイテムと独自の視点でセレクトされたインポートアイテムが、お店のなかで上手に溶け込んでいて、他にはできないお店づくりをしているなぁ、とショップに伺っていつも感じています。

ー現在は共に手を取り合ってお仕事をされていますが、そこで感じることはありますか?

堀:あたり前のことなのですが、洋服づくりにおいてデザインに対する突き詰め方が我々の持っているものとははるかにレベルが違いますね。洋服のパターンや、色や柄の組み合わせ、生地選びの精度、どれをとってもすごく繊細で磨き抜かれているんです。これなら自信をもってお客さまに新しいご提案ができると思いましたね。

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1959年に大阪市の迎賓館として建てられた大阪市公館をリノベーションし、2014年にステーキダイニングとしてオープンした「THE GARDEN ORIENTAL OSAKA」。パリのラルフローレンカフェをイメージしてデザインされたトラッドなユニフォームは、50年代のアメリカのミッドセンチュリーをコンセプトとした内装にピッタリとマッチしています。


必要なのは消費者としての目線。

ー掘さんがもともと手掛けていたユニフォームはどういったものなのでしょうか?

堀:“ユニフォーム”という言葉を辞書で引くと、「同型の、均一な」といった意味が出てきます。この言葉からイメージされるものって、肩章がついているようないわゆるコスチューム的なものだと思うんです。しかし、我々が得意とするのは、そういったものではありません。「仕事着としてしっかり通用するもの」ということを念頭に置きながら、もっとシンプルで肩肘の張らない、洋服屋で売っていても遜色ないような洒脱なユニフォームをつくるように心掛けています。

ー“ユニフォーム=固い”というイメージからいい意味で逸脱する、と。

堀:そうです。ユニフォームというのは毎日着用するものなので、やはり着ていて気分がいいもののほうがいいですよね。私自身、この仕事をする前はホテルでサービスマンをしていたので、制服を着て働く人の気持ちが理解できるんです。ユニフォームはスタッフのモチベーションをつくるモノだと私は思っています。

ーとはいえ、デザイン性ばかりを重視して動きやすさなどの機能の部分が疎かになるのも良くないですよね?

堀:その通りです。動きやすさはもちろん、何度もクリーニングしなければならないものなので、パターンや生地選びに関しても妥協はできません。デザインと機能のバランスを取ることは常に考えてますね。

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1870年に開業し、140年以上に渡ってその伝統を守り続けている「ORIENTAL HOTEL KOBE」のユニフォームは、上下ホワイトで統一され、清潔感を感じるデザインに。通常、汚れが目立つホワイトはサービスの現場では採用されにくいものですが、ここでは「簡単に汚してしまうような雑なサービスをしない」という想いが込められています。

ーその他にこだわっていること、意識していることはありますか?

堀:我々が行なっている仕事は企業を対象としたビジネスですが、その企業のことだけを考えるのではなく、クライアントのお客さま、つまり消費者の目線を持つことを意識しています。いわゆる“BtoB”の考え方でユニフォームをつくってしまうと、表情に欠けた平坦なものになってしまうからです。消費者がその企業に対してどんなことを求められているか? そういった視線でクライアントとなる企業を見つめることで、誰にとっても気持ちのいいユニフォームづくりができると私は考えています。

ーそういった消費者の目線を持つために、意識的に行なっていることはありますか?

堀:実際に自分が消費者になるようにしています。例えば、ホテルからお仕事のお問い合わせをいただいたら、そちらのホテルに宿泊したり、カフェやレストランであればお店へ行って食事をしたり。そこで自分が消費者となってスタッフの動きを見ることで、デザインのイメージが浮かびやすくなるんです。それに、作業に必要な運動量や可動域もリサーチすることができるので、私たちにとっては欠かすことのできない業務のひとつですね。

ー今回、掘さんが手掛けたユニフォームを実際に拝見しにホテルやレストランへ伺ったんですが、どんなことを考えながら制作をされたんですか?

堀:サーバーはシャツにベスト、エプロン。レセプショニストはジャケットにスラックというように、スタイリングに関するベースはどこも同じですね。働いているスタッフの方々は20代、30代が多く、みなさん洋服好きということもあって、自分たちが着たいユニフォームのイメージをある程度明確に持っているんです。なので、そのイメージを上手に膨らませながらそれを形にしていくことを大事にしました。サービス業は見られることも仕事のひとつなので、スタッフ自身が自分の姿に誇りを持って働くことがサービスの向上に繋がるんじゃないかと思ったんです。

ー見られている意識を持つことで、仕事中の気持ちがキリッと引き締まりますもんね。

堀:そうですね。スタッフからは「もっと細くタイトにつくって欲しい」という要望もあったのですが、それでは動きやすさが損なわれてしまうので、「タイトなことが正解ではない」ということをお伝えして、お互いに意見を出し合いながらいいユニフォームづくりができました。

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リラックスしていて親近感のあるユニフォームは、ハワイにある「HALEKUKANI HOTEL」のもの。「オーセンティック&クラシック」というオーナーの要望をもとにつくられたユニフォームからは、柔和さだけではなく、伝統に対する経緯も感じられます。


ユニフォームを通して社会と繋がっていく。

ーこれまでたくさんのユニフォームを手掛けてこられて、実際にお取引先の反響はいかがでしたか?

堀:お陰さまでたくさんの反響を頂戴しています。私たちがつくるユニフォームは少量生産のオリジナル企画、つまりオーダーメイドになるため、その分コストが高くなってしまうんですが、それでも喜んでいただけるのは我々にとってもうれしいことです。とある企業には、採用に関して大きな効果があったという声もいただきました。

ーそれはどういうことですか?

堀:とあるメディアのビジネスランキングにおいて、新卒で働きたい企業の部門にランクインしたそうなんです。「ユニフォームが素敵」というのが要因の一つだったそうで、採用において大きな強味になったということでした。

ーそれはすごいですね。消費者の目線を持つという掘さんのこだわりが、本当の消費者にも伝わっている証でもありますね。

堀:ありがとうございます。私自身、それを聞いたときは心の底から感動しました。

ー今回「ユニフォーム ユナイテッドアローズ」のプロジェクトが発足したばかりですが、今後どういったチャレンジをしていきたいか、最後に教えてください。

堀:これまで食い込んで行けなかった業種のユニフォームづくりに携われたらと思っています。例えば、学校の制服などです。㈱ユナイテッドアローズというファッション業界の第一線を走るパートナーと手を取り合うことで、そういった未開拓の分野にも切り込んでいくチャンスができたと思います。生徒さんが毎日の通学、学校生活が楽しいと思える魅力的なユニフォームをつくって、わずかではあると思うんですが不登校などの教育機関が抱える問題の解決の一助になれればと。そうしてユニフォームを通して、より広く社会と関わっていきたいですね。

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「ユニフォーム ユナイテッドアローズ」がいちばん最初に取り組んだのは、スカイマーク株式会社のユニフォームでした。空の旅の安全性、誠実なサービスと快適な空間を身近な価格で提供する、とそんなお客さまへの約束」を具現化したいというご要望のもと、今回は客室乗務員と地上旅客スタッフのユニフォームを手掛けることに。デザインは同社の社内公募によって集められた70ものデザイン案を選考によってひとつに絞り、そちらを「ユニフォーム ユナイテッドアローズ」が機能性や細かなデザインまでを監修し完成させました。スカイマーク株式会社のコーポレートカラーであるイエローとネイビーが効果的に表現されたユニフォームは、神戸空港支店ランプ管理課の山中哲馬さんのアイデア。今秋より、みなさまにお披露目となります。

INFORMATION

uniform UNITED ARROWS LTD.

PROFILE

堀 和博

UNIX TOKYO 株式会社 代表取締役

JP

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