ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2016.11.18 FRI.

限りある資源を大切にする「グリーンダウンプロジェクト」の想い。

羽毛は再生可能な資源であることを掲げ、羽毛循環サイクル社会を目指す活動団体「一般社団法人グリーンダウンプロジェクト」。これに賛同した〈グリーンレーベル リラクシング〉は、昨年からリサイクルダウンを使用したオリジナルダウンを販売。全店でダウンウェアの回収もはじまり、取り組みは2年目に入りました。「グリーンダウンプロジェクト」の理事長・長井一浩さんの話を交えながら、羽毛リサイクルの意義、そして同プロジェクトが生み出す「グリーンダウン」の高品質の理由に迫ります。

Photo:Takeshi Wakabayashi
Text:Yu Fujita

「グリーンダウンプロジェクト」が生まれた背景。

2015年4月に設立された「グリーンダウンプロジェクト」は、羽毛製品の回収→羽毛の精製→リサイクルダウンの製品化→販売を循環して行うことで、羽毛のリサイクル社会を目指すプロジェクト。現在、25社の企業がこの活動に関わっています。

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プロジェクトの設立地は三重県。ここは明治24年から羽毛商としてはじまり、羽毛専門メーカーとして活躍する「河田フェザー株式会社」が拠点とする場所でもあります。「グリーンダウンプロジェクト」の設立は、現プロジェクト理事長である長井一浩さんに、河田フェザーからのある相談がきっかけでした。

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河田フェザー提供

「僕の前身の仕事が、『赤い羽根共同募金』に関わっていたこともあり、一般家庭から羽毛を回収するにはどうしたらいいか、と聞かれたんです。僕の提案としては、回収された羽毛製品を循環資源のサイクルだけではなく、羽毛製品を買い取った金額を、自分の地域を活性化する『赤い羽根共同募金』を通じて循環させるダブルサイクルを確立する、ということだったのです。しかし、羽毛製品がリサイクルできることを知らない地域の方々に知ってもらうためには、地域社会へのアプローチだけでは限度がありました。そこで羽毛製品に関わる企業にもご協力いただく形で行うのはどうか、ということでした。河田フェザーとしては、羽毛の安定供給と自社が誇るリサイクルを可能にする技術を生かしたい、その2つが目的でした」


羽毛は100年以上再生可能な資源だから。

「『グリーンダウンプロジェクト』を立ち上げるまで、羽毛製品についてまったく知識のなかった僕にとっては、あんなに軽くて暖かい羽毛が実は丈夫で、再生利用をすれば100年以上はもつ素材であるということに驚きでした。また、無知だったなぁと思うのは、羽毛の提供源である水鳥は、ダウンジャケット1着にして10羽から15羽必要となること。羽毛布団にしたら、その100倍です。これは結構な量ですよね?

 羽毛は食用水鳥の副産物なので、食肉の需要が減れば羽毛の供給も減っていきます。さらに、鳥に病気感染などが広がれば、需要と供給のバランスが崩れるのは明快で、羽毛の価格が高騰するだけでなく、粗悪品の羽毛製品も出回るようになる。羽毛が循環できる素材であり、それを再生できる技術が河田フェザーにあるならば、これは循環資源として、リサイクルダウンを世の中に生み出していくべきでは、と思ったんです」


羽毛を専門に扱う河田フェザーとは?

あまり知られていないことですが、ダウンジャケットの中身の羽毛は、新毛の洗浄より、一度着用した羽毛を洗うほうがきれいになるのだとか。というのも、新毛の隙間には、洗っても取り除くことが出来ない微量の垢などがあり、着用するうちにこすれあって落ちるから。これは、羽毛製品における経年変化の利点のひとつです。

そこに加わるのが河田フェザーのもつ高レベルの羽毛精製技術。すべてをここで紹介することは難しいですが、まず挙げるとすれば洗浄力。それは、工場のある伊勢平野の理想的な環境にありました。

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河田フェザー提供

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河田フェザー提供

世界有数の多雨地帯である大台山系から地下深くを流れる超軟水には、ミネラルがほとんど含まれていません。工場で使うこの超軟水が羽毛の隅々まで浸透し、垢や汚れをきれいに取り除きます。さらに、西側三方向を山に囲まれているため、常に乾いた風が吹き込むように。この乾いた気候により、羽毛の繊維が開くのでほこりが取れる、最適な環境でもあるのです。

実は河田フェザーはこの環境に惚れ込み、名古屋にあった工場を三重の現地に移転したというほど。羽毛にベストな環境と「研ぎ洗い」といった、独自の技術がリサイクルダウンの洗浄に大いに発揮されています。

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左が洗浄前のダウンで、右が洗浄後のダウン。独自の「研ぎ洗い」があってこその洗浄力。地域特長の超軟水と、からっ風が吹く環境が功を奏しています。


「グリーンダウン」には厳しい品質チェックあり。

「リサイクルダウンに対して、まったく素人の僕だからできた発想」と長井さんは言いますが、「グリーンダウンプロジェクト」から生まれるリサイクルダウン=「グリーンダウン」は、製品になるために、厳しい品質基準が設けられました。

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「リサイクルダウンが新品のダウンに引けを取らないものとご理解いただき、手に取っていただくためには、ダウンの品質に対してとにかく厳しい基準を設ける。それが、お客様の信用を得ることだと思ったからです。いかにきれいにするかの検査にはじまり、未熟な羽毛などは取り除くなど、トップクラスのダウンになるよう河田フェザーが応えてくれたのがありがたかったです」


ダウンジャケットを循環させる社会に。

「いい羽毛だけを選んでグリーンダウンに使う」という「グリーンダウンプロジェクト」が掲げた想いを持続していくためには、一定量の羽毛が回収されることが必要条件となります。現在、羽毛の回収拠点は常設では国内で250ヶ所以上。同時にイベントでも回収を呼びかけ、その数は年間300ほど。活動スタート時よりも徐々に増えてきているとはいえ、より広く知られることが団体の目標だそうです。

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〈グリーンレーベル リラクシング〉では、ダウンジャケットの品質表示組式に記載されている「ダウン率」が50%以上のものでしたら、汚れている商品や穴があいている商品でも、ブランド問わず回収対象商品とさせていただいております。

「回収することだけを目標にしてもダメで、リサイクルダウンをお客様に着ていただかないと、この輪は循環していきません。着用しなくなったダウンジャケットをご提供していただくこと、そしてグリーンダウンを選んでいただくこと。動脈と静脈がきちんと動いて健康であるように、この両方の行為があって、よりよい社会に変わると信じています」

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飲み物の自動販売機の隣には、今では必ず缶の回収箱が置かれるようなりました。同様に、「羽毛製品を販売する空間には羽毛を回収する場所が設置されることがあたり前になる」ことを長井さんは目指しているとか。ちなみに「グリーンダウン」を使ったダウンジャケットも、また再生することができるそう。環境に、社会に好影響を与える「グリーンダウン」という選択。これも社会参加のひとつなのです。

PROFILE

Green Down Project

http://www.gdp.or.jp/

長井一浩

特定非営利活動法人「明日育」常務理事・事務局長、元赤い羽根共同募金モデル事業パートナー、一般社団法人「グリーンダウンプロジェクト」理事長。さらには障がい者雇用の創出も加え、環境に優しいだけでなく、社会に人に優しいプロジェクトへの活動に邁進中。

河田フェザー

http://kwd.jp/

JP

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