
モノ
2017.02.28 TUE.
ファッションを楽しみながらチャリティする
『united LOVE project 2017』
「着たいモノを着て、自分でもファッションを楽しみながらチャリティを」との思いから2010年にスタートした『united LOVE project』。8年目となる今年は「ストライプ」をテーマに、9名の人気デザイナーとのコラボレーションが実現しました。普段は自身のブランドで洋服づくりを続けるデザイナーが、このチャリティプロジェクトに参加するのは何故なのか? CINOH、ELIN、AKIRA NAKA、3ブランドのデザイナーにお話を伺ってきました。
Photo:Takahiro Michinaka
Text:Rie Hayashi
“ディテールに思いを込めたドレスシャツを届けたかった”
CINOH 茅野誉之さん
ー『united LOVE project』に参加されたきっかけは?
「ブランド単体としても2011年の東北大震災後2年ほど、チャリティバッジを作って販売していたことがあるんです。だから、このプロジェクトにはかなり共感する部分が大きくて、昨年、初めて参加させてもらい、僕らが単体でチャリティ活動をするよりも、たくさんの人に思いを届けられるな、と実感しました」。
ードレスシャツへのこだわりを教えてください。
全国の店舗で販売するということで、“より多くのお客様に共感してもらう”ことを意識してデザインしました。多くのお客様に着たいと思ってもらえることを前提として、チャリティプロジェクトという企画に沿うようにデザインすることは、すごく楽しかったですね。とはいえ、素材にはいつも通りこだわり、生地のストライプの部分はグログラン織りにして、しっかりと白とネイビーのコントラストと立体感を出しています。最初はシャツの想定だったのですが、デザインしているうちに、ドレスシャツの形を自然と思い浮かべていました。肩がジャストサイズでボディは程よくゆとりのあるシルエット。ドットボタンも、ボタンを外しても美しく見えるようにデザインしています。普段から“実際に身にまとう時に触れる素材感やボタンの感触”までかなりディテールにこだわっているので、今回のプロジェクトでも、その思いが届くと良いですね」。
“着ていて気分が高揚する、ドラマティックな素材とシルエットを”
ELIN榎本実穂さん
ーチャリティには以前より興味があったのですか?
「今まで誰にも話してはこなかったのですが、自分の将来の漠然としたビジョンとして、何か人の役に立つこと、社会貢献をしたい、という思いはずっと持っていたんです。ただ、いま自分が仕事としている“ファッション”で、しかも日本の中の小さなブランドで、なかなかそこにつなげるのは難しいな、と思っていて…。そんな時に、このプロジェクトのお話をいただいたんです。まさに、ファッションで直接的にチャリティに関われる!と思い、本当に嬉しかったですね」。
ー今回カットソーが出来るまでのエピソードはありますか?
「身体をすっきり綺麗に見せてくれつつ歩くたびに袖が揺れる、ドラマティックなカットソー。実は、この型は2016年秋冬にクルーネックで発表したものを、春夏用に抜け感のある首元のカットにしているんです。“ストライプ”は昔から私にとっても大事な素材で常に探して歩いているのですが、昨年たまたま、ふくふくとした素材感がすごく綺麗な生地に出会うことができて、そうしたら、今回のテーマが“ストライプ”だったので、ここぞとばかりに袖にたっぷりレイヤードしました(笑)。上質なものを知る大人の女性に選んでいただきたくて洋服づくりをしているので、このアイテムも、シンプルだけれど上品な素材や、ヘルシーな艶っぽいラインを意識しています。ロングスカートに合わせたり、今年ですと上からビスチェを着けたりしても素敵だと思います。自分のクローゼットの中のお気に入りのお洋服と合わせて、楽しんでくださいね」。
“日常的に着られる、クチュールライクなストライプ”
AKIRA NAKA 中章さん
ー「ファッションでチャリティ」というプロジェクトですが、参加してみていかがですか?
「実は、2011年にAKIRA NAKAをリブランドしたのも、東北大震災がきっかけだったんです。それまでは、コンセプチュアルな洋服を作って海外で評価を受けていたのですが、震災後、“日本のために何ができるのか?”という気持ちが大きくなり、いままでブランドとしてはあり得なかったカラフルな色や柄を取り入れて、日常的に身に纏えるプレタポルテを作ろうと思ったんです。だから、まず良いモノがあって、そこにプラスして復興への思いがあるこのプロジェクトにも大いに共感して、参加を決めました。スタッフやバイト総出で取り組んでいます」。
ーこちらのニットはどのような想いで制作されましたか?
「“クチュール感”を大事にしました。テーマである“ストライプ”を、いかにラグジュアリーに作れるか。かなり時間をかけて作っていますよ。具体的には、最後に前面を切ることを前提に編み上げていく特殊な技術を使って飛ばし目を作ることで編み地の表情に違いを出し、ケーブルと毛足の長いモヘアの糸を織り交ぜることで、全体が立体的になるようにしています。仕上げのカットは、ランダムさが出るように手作業で行いブラッシング。この糸の違い、編み柄、特殊なカット技術によって、編み地から糸が出ているようなフロントデザインが完成しました。バックスタイルは、前後で表情が変わるように透かし柄に。この価格帯にしては、かなりこだわったアイテムになっているんじゃないかなぁ。モダンなだけでなく、モノの力という確固たる裏打ちが必要だと思っているので、どう仕立ててどう作っているのか、その技術や思いも感じてほしいです」。
9名のデザイナーそれぞれの“LOVE” アイテム
第一弾ではそのほかにも、白とネイビーの「ストライプ」をテーマに各ブランドの特徴をとり入れた、素敵な限定アイテムが揃いました。
〈SACRA〉のピンストライプ柄ボリュームブラウスは、広めのボートネックで袖にはたっぷりとギャザーが入り、爽やかで女性らしいシルエット。〈AKIRA NAKA〉のニットは、クチュールライクなディテールが魅力的です。〈LUDLOW〉からは、ころんとした巾着型のフォルムと、風合いのある編み地が可愛らしいバッグがラインナップ。
ピッチの異なるストライプを組み合わせた春夏らしい〈LAULA〉のブラウスは、今季のキーディテールであるバックスタイルのリボンがポイント。〈CINOH〉のドレスシャツは、着心地や触り心地まで計算されたこだわりの一枚。カラフルなタッセルが華やかなバスケットは、〈PIPPICHIC〉のシーズンテーマである「コロニアル&ヴィンテージ」が表現されています。
ボリュームスリーブとつやのある生地が〈KAON〉らしい、カジュアル&フェミニンなブラウスや、ドレープされた袖の動きがエレガントな〈ELIN〉のカットソー。〈ATHENA NEW YORK〉は、シグネチャーモデルである“RISAKO”のリボンを、今回のテーマのストライプ柄に仕上げたハットです。
今年で8年目を迎えた、人気デザイナーと〈ユナイテッドアローズ〉のコラボレーションによるチャリティプロジェクト『united LOVE project』。爽やかなストライプアイテムが揃う第一弾のラインナップで、春夏のファッションを楽しみながらチャリティをしてみてはいかがでしょうか。
INFORMATION

PROFILE

茅野誉之
「CINOH」デザイナー。2004年 文化ファッションビジネススクール修了。2007年に「MOULD」を創業し、2008年より、レディスブランドを始動。2014年S/Sコレクションよりブランド名を「CINOH(チノ)」に改称。ユナイデットアローズでも、2016年より取扱いを開始。

榎本実穂
「ELIN」ディレクター。バイヤーとしてファッション業界で経験を積み、2015年春夏「ELIN」をスタート。ELINとは“エッセンシャル(本質的)”と“マスキュリン(男性的)”を掛け合わせた造語で、男性的なディテールにこだわりながらも、女性が美しく見える上質で上品なデザインを打ち出している。

中 章
「AKIRA NAKA」デザイナー。アントワープ王立芸術アカデミー出身。在学中に「イェール国際新人フェスティバル」デザイナーに選出され参加後、ニットデザイナーEls Arnolsに師事。2006年に帰国後、翌年、自身のブランド「POESIE」をスタート。2008年に、レーベル名を「AKIRA NAKA」に変更した。