ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2018.07.11 WED.

スイムウエアブランド〈Lepidos〉と日本を代表するウェットスーツメーカー〈AXXE Classic〉、コラボの裏側。

メイドインジャパンのウェットスーツは、他の日本製プロダクトと同様に、品質が良い、着心地がいい、丈夫だという理由から国内のみならず海外からも高い評価を受けています。特に今業界が注目しているのは〈AXXE Classic〉。世界のプロやアーティスティックなサーファーがこぞって着用している、匠のブランドです。そんな〈AXXE Classic〉と〈BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS〉のオリジナルスイムウエアブランド〈Lepidos〉が今夏、別注ウェットスーツを発売。自身もサーファーであるディレクターの征矢まり子が、ブランド初のウェットスーツ作りにかけた想いとは。神奈川県平塚市にあるウェットスーツ工房 シ・ワールドを訪れ、〈AXXE Classic〉の責任者である高橋さんと対談をしてきました。サーファー2人が語る、ものづくりの裏側です。

Photo:Lisa Mogami
Text:Alice Kazama

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安心と信頼のウェットスーツができるまで。

今回訪れたシ・ワールドは、1982年に〈BREAKER OUT〉というウェットスーツブランドからスタートした老舗メーカー。現在では〈AXXE Classic〉、〈AXXE〉などの自社ブランドに加え、他ブランドの製造も行っています。コアなサーファーがひっそりと暮らす街、平塚市で生まれたウェットスーツ作りの高い技術。まずは1着のウェットができあがるまでの流れを、高橋さんが工房内を案内しながら教えてくれました。

高橋:ウェットスーツは、基本的にはオーダー製。秋冬ものは特に、その人の身体にフィットさせることで寒さ対策になり、動きやすくなります。ですので、ウェット作りの丁寧さ、正確さがそのままパフォーマンスにつながることもあるんです。

身体の各パーツのサイズが書いてあるお客様のオーダーシートをもとに、まずは型紙を作成。全30〜40パーツで構成されています。すでにプログラムに組み込まれているサンプルサイズに合えばPCで調整する程度で、そうでない場合はフルハンドメイドで作っていきます。

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次にその型紙を生地の裏側に当て、裁断線をつけます。ウェットの生地は縦横で伸び方向が異なっていて、横に伸びて欲しいところ、縦に伸びて欲しいところがあるので、体の部位に合わせて、生地効率を考えながら作るんです。ここで、海外の大量生産の場合は生地を何枚も重ね合わせて裁断機で一気に切ってしまうんですが、うちでは1枚1枚手作業でカットしていきます。そのときに生じる微差が品質の良し悪しにつながってきますから。また、生地は後で貼り合わせていくため、裁断面が生地に対して垂直になるように、刃をまっすぐに入れて切るのがコツなんです。

裁断が終わったものには一度生地を温めて、ロゴマークをプレスしていきます。ウェットは通常「ジャージ」というジャージ素材と、「ラバー」というゴム素材の2種類があるのですが、それぞれロゴを貼り付けるための温度が違ってくるので、別のプレス機で作業を行います。

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次に1着ずつ裁断面に糊を塗り、10分程度乾かし硬化させてから2度目を塗って、貼る作業に入ります。これも通常は1回なのですが、弊社では2回繰り返すことで接着力を強化させているんです。貼り合わせて形になってきたものをミシンで縫い合わせます。普通のミシンは針が上から下に降りますが、ウェット用のものは横からすくう形で針が通るものもあるんですよ。表にミシン目を貫通し、そこから水が入ってくるのを防ぐためです。すべてを縫い合わせ、品質確認をした上でお客様にお届けします。

日本製のウェットスーツは高いというイメージがありますが、手間がかかっているから、ということがわかっていただけたかと思います。ちなみに弊社では8割くらいが自社で研究開発した生地を組み合わせて使っています。スーツの作り方はほとんどのメーカーが同じ。しかし、丁寧さや見えないこだわりが僕たちの誇りなんです。


水着とのレイヤーを楽しめるウェットスーツに。

−今回、別注オーダーに至ったきっかけは何だったのでしょうか?

征矢:私もサーフィンをするので、いつかウェットスーツを作りたいなと前から思っていました。今年それをカタチにすると決めて、お任せするメーカーさんを探していた際に、シ・ワールドさんが候補に上がったんですが、私がサーフィンを始めた頃一番最初に買った冬用ウェットスーツ〈BREAKER OUT〉を作っている会社だと知り、それが決め手になった部分もあります。

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高橋:お話をいただいたのは今年の2月くらいですよね。ご提案いただいたデザインでいくつかサンプルをお渡しして、方向性が定まってからはすぐに進みました。

征矢:当初は春秋用の3mmフルスーツを作ろうと思っていて、ボディもひざ下も、腕もすべてのパーツの色が違うカラフルなのものを考えていたんです。でもフルスーツだと1着だけで完成してしまう。やはり〈Lepidos〉はスイムウエアブランドなので水着と一緒に組み合わせて欲しい気持ちもあり、最終的にレイヤーも楽しめる、ジャケット、サーフレギンス、ロングジョンの3型に落ち着きました。〈Lepidos〉はサーファーに向けたブランドでもなければ、サーフィンに特化したイメージがあるブランドでもない。だけど今、サーフィン向けの水着と一般的な水着の境があまりなくなってきている中で、こうした提案もいいんじゃないかな? と思うんです。サーフィンしない人には、これをきっかけにウェットスーツやサーフィンを身近に感じて頂けたり、サーフィンする人には新しいウェットスーツを選ぶときのひとつの選択肢になったらうれしいですね。

高橋:最初はどんな方向に行くのかな、なんて心配だった部分もありましたが、うまく着地しましたよね。特にこのラインナップはジャケットとロングジョン、ジャケットとレギンスなど組み合わせても楽しめます。


違う畑の者同士が混ざり合う “ものづくり”の楽しさ。

ーどのようにデザインが進んでいったのでしょうか。

高橋:“ものづくり”という点では一緒ですが、やはりウェットスーツメーカーとスイムウエアブランドでは、畑が違う。僕は機能性のことを第一に考えて作り、征矢さんは今までにない新しいデザインを提案してくださる。2つの畑が混ざり合い、間をとって、いいものができたという感覚です。ハイウエストレギンスも、オールスムースラバーも弊社では初めての仕様なんです。

征矢:私は、いちサーファーとして、リアルなユーザーとしての意見をどんどんぶつけさせていただきました。もちろん高橋さんにアドバイスをいただきながら。クラシックなスタイルは大切にしたかったので、スムースラバーを使うことにもこだわりました。

高橋:メーカーからすると、スムースラバーは耐久性が少し心配になってしまう。けれどビジュアルを大切にしたい、着心地を良くしたいという征矢さんの想いを尊重させていただき、脇や膝など、最低限可動が必要な場所は動かしやすいジャージ素材を取り入れるというところでまとまりました。


スタイルとパフォーマンスの融合。

−別注ウェット、征矢さんは実際に着てみていかがでしたか。

征矢:今回すべて2mmの生地で作っていただいたのですが、3mmとの動きやすさの違いを感じました。素材が抜群にやわらかいのでパドルも楽だし、着心地もすごくいい。薄いから、真夏に着てても暑すぎないと思いますよ。ジャケットはフロントのジップを開けると、ロングジョンとお揃いのヘザーブルーの生地が見えるようになっています。ウェットでこの色ってなかなか見ないけど、最初にシ・ワールドさんの工房を見学させていただいたときに気になっちゃって。この生地を使ったデザインにしようと決めました。メインで使用しているブラックラバーはクラシックな印象があるので、水着との色のコントラストも楽しんでいただけたらと思っています。

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ビジネスに走りすぎず、純粋に「着たいもの」を。

−おふたりが“ものづくり”をする上で大切にしていることを教えてください。

高橋:「自分が着たいもの」を作ることでしょうか。気持ち良く、着やすく、暖かく、ストレスがないもの。そこを忘れてビジネスに走りすぎてしまうといいものも作れなくなる。ユーザーとして、初心に戻ることを忘れないようにしています。

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征矢:私も高橋さんと一緒ですね。まずは自分が着たいと思うものかどうか。だけどその中で新しいデザインも積極的に取り入れるようにしています。ただしそればかりが先行しないよう、例えば身近にいる友人たちはこのアイテムでどう楽しんでくれるかな? ということは常に考えているかもしれません。最近は、いろいろな素材を取り入れたり、その素材を生かしたデザインを考えたり、これまでの経験をもとにチャレンジすることも増えました。けれど根底にあるのは、〈Lepidos〉の水着を見たときに、なにか新しさを感じてくれたり、ワクワクしてくれたりするものづくりをしたいなという想いがあります。

高橋:チャレンジは、ものづくりの上で大事ですよね。クラシックなロングボードを乗りこなすのって、女性の方が映えるから、僕らもそういうのを見せてあげたかったんです。男性が考案したウェットスーツがほとんどの中、〈AXXE Classic〉のウィメンズライン「FEMME」はすべて女性に考えていただいています。女性が作る、女性のためのウェットスーツブランドという今のカタチが完成しました。

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それぞれが描くブランド展望とは。

−今後、どのようなものづくりをしていきたいですか?

高橋:サーフィンをする人を増やすのが僕らの仕事、と思っているので、コンテストのサーフィンではなく、純粋に楽しむサーフィンの提案をしていけたらと。また、これから子供たちにサーフィンをさせる機会を増やせたらとも思っています。僕らのひとつのテーマとして「ファミリー」があるので、パートナーでも、子供でも、自分の身近な人とサーフィンを楽しめるような環境作りを大切にしていきたいですね。

征矢:大好きな人とサーフィンができるのって、本当に幸せなこと。私は、歳を重ねていくにつれて、環境も変わってきたり、興味の対象も少しずつ変化したりするけれど、そうした中でも〈Lepidos〉らしさを失わず、ブランドを好きでいてくれる人と一緒に感覚を共有出来たらいいなと思っています。そういった想いもあって、水着だけでなく、ライフスタイルに向き合ったブランドにしていきたい、というのが目指しているところ。今、アフリカンファブリックを使ったコレクションの製作中なのですが、もともと個人的に興味があって、以前から小物やお洋服を海外から仕入れていました。今回は生地を仕入れ、そこに〈Lepidos〉の要素が加わったお洋服を作る、ということにチャレンジしています。常にお客さまに新しいニュースを届けたいという想いがあるので、こうした取り組みも楽しみにしてもらえたらうれしいですね。ぜひ〈AXXE Classic〉とも、スポット的な取り組みではなく、継続して取り組んでいけたらと思っています。

高橋:ぜひ、お願いします。今後も楽しみにしています。

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今回ご紹介した別注ウェットスーツは、代々木上原で行われている 〈Lepidos〉×〈ISLAND SLIPPER〉POP UP STOREでも販売いたします。スイムウエアを幅広いラインナップで展開するほか、スペシャルアイテムや、グリーン、食器などのインテリアも取り入れ、ブランドの世界観たっぷりでお待ちしています。

INFORMATION

〈Lepidos〉POP UP STORE

開催期間:6月29日(金)~8月5日(日)
※期間中、月曜日は定休日
場所:東京都渋谷区西原3-5-2 石川ビル1F Burnish SALON
(代々木上原駅 北2番出口すぐ)
営業時間:12:00~20:00

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PROFILE

高橋 伸郎

1970年岩手県生まれ。バンタンデザイン研究所を卒業後、1991年より現在の(株)シ・ワールドに入社。以来長年にわたってウェットスーツ業界に従事。 『ジャパンメイド・クォリティ』というこだわりとプライドをもとに2005年に〈AXXE Classic〉を立ち上げる。日本、アメリカ、ヨーロッパ、韓国、オーストラリアでグローバル化を推進するドメスティックブランドとして展開。

征矢まり子

2001年、株式会社ユナイテッドアローズ入社。バイヤーのアシスタント業務を経験したのち、2006年に応募したUAラボをきっかけに〈Lepidos〉を立ち上げる。ビキニをデザインするかたわら、リゾートアイテムのバイイングも行ない、一年中、海と太陽とビキニのことを考える日々を送る。

JP

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