
モノ
2015.08.31 MON.
メイド・イン・ジャパンにこだわった大切に長く着られる服。
さまざまなライフスタイルに合わせて、ほどよいオシャレを提供してくれる〈グリーンレーベル リラクシング〉。オリジナルアイテム豊富なこのブランドの中に、スタッフたちの思いが込められた特別なラインがあることを知っていますか? メイド・イン・ジャパンにこだわった〈GLRスタンダード〉について、ブランドディレクターの百々 徹さんにお話しを伺っていきましょう。
Photo:Takeshi Wakabayashi
Text:Masaki Hirano
このままでいいのだろうか?という声がスタッフからあがってきた。
ーまず最初に〈GLRスタンダード〉とはどんなラインなのかを教えてください。
百々:始まったのは2013年の秋冬シーズンの最後の方だったと思います。〈グリーンレーベル リラクシング(以下:GLR)〉業態を長く続けてきたことや、苦戦を強いられることの多い昨今のマーケットの状況下において、ファッションとしての魅力や、ものづくりに対する情熱が希薄になってきてるのではないか、という危機感を少しずつ感じ始めていました。目先の売り上げを気にしすぎて、結果的に自分たちが持っているはずの魅力的な商品を、お客様に対してお届けできているのだろうか? そんなことを考えるようになりました。
ーなるほど。〈GLR〉はオリジナル商品が6割を超えると伺っていますが、その商品自体の在り方に、百々さんたち中のスタッフが疑問を感じていたということでしょうか?
百々:そういうことですね。「このままでいいのか?」という声が何人もの内部スタッフからあがってきました。〈GLR〉が本来持っている魅力的なオリジナル商品という分野で、なおかつ大人から子供までの横軸を通したスタンダードなアイテムを開発できないか? そういう商材が必要なタイミングになってきているのではないだろうか? そんな意見が多く出てきました。それが〈GLRスタンダード〉誕生の発端ですね。
ースタートした当初はどんなアイテムがラインナップされていたんでしょうか?
百々:無地のポケットTシャツやボーダーTシャツ、チノパンなど、いろいろあったのですが、僕らが真っ先にやりたいと思ったのは吊り編み機を使った裏毛のスウェットでした。この編み機は1時間に1メートル程しか生地を編めないんですが、その代わりに空気を含んだふわっとした風合いが特徴です。この編み機はいまや世界中を見ても日本の和歌山にしかないもので、そういった生産背景なども絡み合いながら、ごく自然と「メイド・イン・ジャパン」にこだわりたいという考えが出てきました。
5年後も着用していただけるような本当の意味でのスタンダードアイテムを提供していきたい。
百々:シャツだったら兵庫の西脇、デニムだったら岡山という感じで、日本各地から工場や職人さんを探してきました。ここにあるトレンチコートを作っているのは、海外の老舗ブランドの製品を作っていた工場さんなんですが、非常に高い技術とノウハウを持っています。細部の作り込みのすごさには、本当に驚かされることがいっぱいあるんです。
ーメイド・イン・ジャパンにこだわるという点で、特に思い入れの強いアイテムはありますか?
百々:110年の歴史を持つ毛織物メーカー〈御幸毛織〉の生地を使った紺ブレがあるんですが、これは素晴らしい出来映えですよ。この生地のスムーズさは圧巻で、袖を通したときの装着感は言葉で表現しがたいものがあります。いまは中国の工場で作っているのですが、それを来年からは国内の工場にシフトする予定です。
ーそうすると値段が少し高くなってしまうんじゃないですか?
百々:そうですね。約1万円ほど上がってしまうのですが、より高いクオリティを求めるということと、やっぱり日本の産地そのものを大事にしようという考えもあります。お客様に5年後もしっかり着用していただけるような、本当の意味でのスタンダードアイテムをご提供していきたい。その思いを実現するためには、質の伴ったよいものを大切に長く着ることが豊かであるといった価値観に対して、我々自身がコミットしていくことが、最終的にブランドとしての理念や、〈GLRスタンダード〉のものづくりにつながっていくのではないでしょうか。
ー理念というお話しがでましたが、4月からスタートした「1% フォー・ザ・プラネット」への参加もトピックスのひとつですね。
百々:〈パタゴニア〉社の創設者イヴォン・シュイナード氏と〈ブルー・リボン・フライズ〉社のオーナーであるクレイグ・マシューズ氏が立ち上げた非営利団体で、私たちも4月からこのプロジェクトに参加しています。地球環境の保護のために〈GLRスタンダード〉の売り上げの1%を環境保全団体へ寄付していくことにしました。お店に並ぶ〈GLRスタンダード〉の商品すべてに「1% FOR THE PLANET」のタグが付けられています。
ーユナイテッドアローズが掲げている「ヒト・モノ・ウツワ」というキーワードにおいて、「モノ」=商品ということだと思うのですが、百々さんにとっての「モノ」とはどのようなものでしょうか?
百々:僕というよりは、私たちにとってという意味で考えると、ファッションを動かす大きなモチベーションですね。もしかすると“情熱”と言い換えてもよいかもしれません。ファッションへの情熱、ものづくりへの情熱。それらを具現化したものが「モノ」であると考えられると思います。デザインは人々をハッピーにできると信じて僕らは開発を進めてきました。最も興味があるのは、ポケットの形や、たったひとつのジャケットがその人の生活をどれだけ豊かにできるかってことですね。
INFORMATION
PROFILE

百々 徹
前職はインテリアショップのクリエイティブ・ディレクター。2000年8月〈グリーンレーベル リラクシング〉のクリエイティブ・ディレクターに就任。