ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

最愛品を、長く大切に使い続ける喜び。 その価値観を共有できる、リペアというアプローチ。

ウツワ

2025.04.17

最愛品を、長く大切に使い続ける喜び。 その価値観を共有できる、リペアというアプローチ。

「お気に入りのピアスの金具が壊れてしまった。」、「愛用しているコートのほつれを直したいけれど…。」など、大切にしているアイテムを蘇らせたいと考えている人は、実は多いのではないでしょうか。そこで頼りになるのが、ユナイテッドアローズ社(以下、UA社)が行っているリペアのサービスです。これはUA社サステナビリティ活動「SARROWS」が掲げている「Circularity(循環するファッション)」の取り組みのひとつ。「好きなものを長く、大切に使うことの喜びを共有したい」と語るのは、修理受付センターの藤原 逸平さん。どんなやりとりが行われるのか、お客様とのふれあいで実感したことまで、教えてもらいました。

Photo:Yuko Sugimoto
Text:Maho Honjo

お客様とリペアする側の間に立つ、架け橋のような存在。

−藤原さんは、どんなキャリアを経て、今の部署にたどり着いたのでしょうか。

UA社に入ったのは2007年、まずフロア担当として店舗で接客を行っていました。その後、店舗責任者も経験するなかで「店頭のスタッフがもっと現場に集中できる環境を整えたい。」と思うようになりました。店舗での作業はさまざまありますが、まず大切なのは、お客様と向き合ってしっかり心を通わせること。ならば、店舗業務の一部分を、本部が引き取ってもいいのではないか。そうすることで現場の効率が上がったり、本部として見えることもあるのではないかと思ったんです。その思いが叶って、販売支援部に異動。そこにお客様相談室の修理受付センターがあり、リペアの業務に携わるようになって約5年が経とうとしています。

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−では、リペアの業務内容について、教えてください。

リペアが必要なアイテムを持ち込まれたお客様と、それをリペアするメーカー様、もしくは修理業者様の間に立ってやりとりを行う、架け橋のような存在といえばいいのでしょうか。まず、全国の店舗にもち込まれたアイテムが修理受付センターに集約されるので、「このお品物はメーカー様にお渡ししよう」とか「この状態ならば、あの修理業者様に依頼しよう」とか、それぞれを振り分ける作業をします。その後、届いたお見積もりをお客様にお伝えして、進行を管理するという流れです。

−全国からのアイテムが集約されるということは、かなりの件数になりそうですね。

リペアの件数は、年間で約5,000件ほどです。ちなみに、お客様がスーツを購入したとき、ジャケットの袖上げやパンツの丈詰めなどを店頭で行いますが、それは「お直し」と呼んでいます。ご愛用いただくなかで劣化してしまったり、破損してしまったりしたものを修理する。そのことを「リペア」と呼んでいます。

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−リペア業務に携わるにあたって、藤原さんはある資格を取得されたとか。

「繊維製品品質管理士(TES)」を取得しました。繊維の組成など幅広い基礎知識が身につく資格です。繊維製品の商品が届いたときに、何が原因でこうなっているのか、この場合どうすればいいのかなど、ある程度読み解くことができます。なので商品をメーカー様や修理業者様に渡すだけではなく「こういう状態になっているので、こういう作業を施したら、美しく直すことができるのでは」などの見立てを伝えた上でやりとりができます。専門用語も多い業界なので、この資格を取得したことで、スムーズなコミュニケーションができていると感じています。

リペアして再び使い続ける。その喜びを分かち合う。

−実際に、どんなリペアの依頼が来るのかを教えてください。

いちばん多いのは、アクセサリー類ですね。ネックレスのチェーンが切れてしまったり、ピアスのポストが折れてしまったり。それらが全体の3割ほどを占めています。次に多いのが、バッグやシューズなどの革小物類です。バッグの取っ手が壊れてしまったり、レザーの色が褪せてしまったり、シューズのソールが摩耗してしまったりなどが2割ほどでしょうか。ほかには時計の電池交換や、メガネの金具の故障なども。ダウンに穴が空いてしまった、などもあります。

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−リペアといっても、依頼はさまざまですね。心がけていることや、やりがいを感じたことなど、聞いてみたいです。

いちばん気を遣うのは、すべて替えが効かない一点ものだ、ということです。もちろんリーズナブルなものもあれば、高額なものもあります。ただお客様の手に渡って愛用していただいている時点で、思い入れのある唯一無二の品物となる。失敗しないのは大前提で、それを現状復帰させるために何ができるのか。日々、背筋を伸ばして向き合っています。だからこそ、お客様からお礼の言葉をいただいたとき、すごくやりがいを感じます。


−印象に残っているお客様とのエピソードはありますか?

UA社の企業サイトに「修理受付」というWEBフォームがあるのですが、そこからご依頼してくださったお客様のことがすごく記憶に残っています。「お気に入りの〈ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ〉のダッフルコートを持っており、そのトグル周辺が劣化しているので、それを含めて全体をリペアしたい」という依頼でした。WEBフォームを介していることもあり、直接やりとりをしていたのですが、大切に着続けてくださっていることが文章の端々からにじみ出ていたんです。実際に品物が届いたときも詳細が丁寧に書かれた手書きのメモが添えられていて、コートへの温かな愛情が僕らにもよく伝わってきました。

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−素敵なお話です。きちんとリペアしてお戻ししたいと思いますね。

基本的に私たちが目指しているのは、現状復帰してお戻しすることです。となると、メーカー様にお渡しして、同じ素材やパーツを使い、同じ製法でリペアするのが理想です。ただ製造から年数が経っていると、それが叶わないこともあります。今回の件がまさにそうで、その場合は信頼する外部の修理業者様に依頼することになります。またリペア箇所が多岐に渡っていたので、メーカーでは直せないことを含めて、複数のお見積もりをご用意してお客様にご提案することになりました。そんなやりとりを経て無事リペアへと進み、仕上がった商品をお届けしたのですが、後日ご丁寧にメッセージをいただきました。

−どんなメッセージだったのか、気になります。

仕上がりを見て、期待以上の出来栄えに驚きました、というお礼でした。「素敵なダッフルコートを手に入れることができたのはもちろんのこと、リペアしてまた着続けられるようにしてもらったことが何より嬉しい。それがいちばんのギフトです」とおっしゃってくださいました。人は本当に気に入ったものでないとなかなかリペアに出さないものですよね。ならばその思いになんとしても応えたいというのが我がチームの思い。それを実感できた出来事でした。

WEBフォームを活用して、リペアの価値観を広げていく。

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−では、今後の展望について教えてください。

先ほどダッフルコートのご依頼をされたお客様は、企業サイトからお申し込みがあったという話をしましたが、このWEBフォームをさらに拡大、活用していきたいと思っています。店舗に持ち込まなくても、自宅にいながらリペアの専任スタッフとやりとりができるのは、お客様にとっても利点が多いと思います。また、現在はまだ一部店舗での運用となりますが、店舗にいらした方には、LINEの窓口もご案内しています。申し込みのハードルを下げることで、もっとリペアを身近なものにできればと考えています。

−お気に入りのアイテムをリペアして、着続ける。藤原さんはその案内人でもあるのですね。

今、世の中にはモノがあふれていますが、これからの時代はひとつのものを長く、大切に扱うという価値観が広がっていくと考えています。これまで多くのリペアを担当し、やりとりを進めるなかで、そういう考えをもつ人々が増えてきているのかなと思うようになりました。これからもプライドをもってリペアという名の橋渡しに取り組んでいきたいです。この仕事に大きなやりがいを感じています。

PROFILE

藤原 逸平

藤原 逸平

2007年入社。店舗スタッフからキャリアをスタートし、店舗責任者も経験した後、販売支援部に配属。現在は「長く大切に着ていただきたい」という思いを胸に、お客様相談室 修理受付センターにて、リペア業務を担当する。

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