ウツワ
2024.09.09
「SARROWS」が育む、企業と人材。リスキリングがもたらすモチベーションの変化。
ユナイテッドアローズ社は、2022年8月よりサステナビリティ活動のスローガンを「SARROWS」と名付けて、さまざまなアクションを推進してきました。3つの活動目標となる「Circularity(循環するファッション)」「Carbon Neutrality(カーボンニュートラルな世界へ)」「Humanity(健やかに働く、暮らす)」は、それぞれどのような進捗があったのでしょうか。さらに、その実績報告とともに見えてきたのが「従業員エンゲージメントスコア」の著しい伸び率でした。そこで「SARROWS」の施策のひとつ「リスキリング」を行なうユナイテッドアローズ(以下、UA)日本橋店の富永 将弥さんにインタビュー。取り組みを始めた経緯からビジネスパーソンとしての気づきまで、成果や醍醐味について語ってもらいました。
Photo:Yuko Nanamura
Text:Maho Honjo
35期の「SARROWS」は概ね目標の数値を達成。
商品素材を見直し、CO2削減を目指す。
「従業員エンゲージメントスコア」が優れた数値に。
意識の変化と具体的な行動が目標達成に導く。
リスキリングが「従業員エンゲージメントスコア」を上昇させた。
「販売員の市場価値を上げる」とは、UA社が創業当時から掲げていたテーマ。「教育制度」は、会社の内外で能力を発揮する、価値ある人材を育成していく思いを叶えるものとなります。では、その制度はどのように利用され、どんな成果を上げているのでしょうか。実際にリスキリングを行なっているUA 日本橋店の富永さんにお話を聞いていきます。
視野を広げて学ぶことで自分の価値を上げる。
コロナ禍で店舗がクローズし、約1ヶ月半何もできない状態が続いたことがきっかけです。人生何が起こるかわからないし、自分の足で立って生きていくためには、もっと視野を広げるべきだと思い、リスキリングを真剣に考え始めました。
―実際にどのような講座を受講したのですか? また、その講座を選んだ理由は?
「マーケティング・経営戦略基礎」「アカウンティング基礎」「リーダーシップと人材マネジメント基礎」を受講しました。会社では学べないこと、販売員の業務だけでは知り得ないこと、またお金の知識も得たいと思っていたので、この3つを選び、順番に学んでいきました。1講座につき授業は全6回で、月に2回あるので3ヶ月間通うというペース。なので、自分は9ヶ月通ったことになります。
まず驚いたのは、プロジェクトリーダーだったり部長などの役職がついていたりなど、40代以上の優秀なビジネスパーソンの方が多くいたことです。他業種の方がいるのはわかっていたことですが、みなさんそれぞれ知識が豊富で、そこに自分が同席しているのは場違いな感じがして、焦ったことをよく覚えています。
―そこで感じたほかの受講生との差は、どのように埋めていったのでしょう。
事前準備をしっかりやることで、少しずつ解消されていったように思います。授業ごとに課題が出て、次の講義で発表するのですが、教科書を見るだけではなく、ある業界をすみずみまで調べたり、年代ごとにリサーチしたりなど、幅広い視点で物事を掘り下げることを続けて、自分なりに視点が磨かれていきました。
「自分が経営者ならば」という視点が身につく。
いちばん変化したのは「経営者目線で物事を考えるようになった」ことです。受講する前も、視座を高くもつことを意識して店舗やスタッフを捉えていたつもりではありましたが、店長、リーダー、課長部長を飛び越えて、経営者の視点を学んだのはすごく大きかったです。社会動向、業界動向、店舗の特徴などを把握しながら、どのタイミングでどの戦略を練るか、どう人に伝えて巻き込んでいくのかを考えて仕事に取り組むようになりました。
たとえば僕自身は、指示されたことにはすぐに取り組み、納期を守って提出するタイプなので、そうではないタイプの人を不思議に思うところがあったのです。でも今はもっと時間軸をゆったり捉えられるようになり、半期、もしくは1年かけてしっかりゴールに向かえばいいのではないかと考えるようになりました。さらに取り組めない人がいたとして、その人に問題があるのではなく、仕組みを変えることで前向きに動いてもらうことができるのではないか、とも考えるようになりました。目先のこと、現場のことだけでなく、もっと俯瞰した目線で仕事全体を見るようになったのだと思います。
―セールススタッフとしてプラスになったことはどんなことでしょうか。
店舗のある場所がどんな歴史や背景、文化をもつエリアなのか、その「商圏」を意識するようになりました。たとえば日本橋というエリアは大企業が多く、収入レベルも高い人が集う印象がありますが、すごく堅実な買い物をされる方が多いんです。それはなぜなのか。彼ら彼女らにとって洋服は生活必需品で、個性を発揮するというより、質の高いものを賢く身につけたいと考えているからなんですよね。感性より理論を前に出して「○○という理由で、おすすめします」と根拠を述べる。もともとそういう接客が得意ではあったものの、お客さまに寄り添いながらのアイテムセレクトの精度や、ご購入の決定力がより上がった気がします。
リスキリングを経て感じているのが、よりマーケティングのスキルを深めていきたいということです。それも得意とするデータ分析を用いて行なっていきたいですね。ここまで目標が明確になったのは、会社の教育制度があったからこそです。視野を広くもって外の世界を学んでこそ、初めて会社の業務に落とし込める。これからも学びを続けて、自分自身と会社と、両方の成長に繋げていきたいと思っています。
INFORMATION
PROFILE
富永 将弥
2016年入社、UA立川店配属。その後、都内の六本木店を経て原宿本店へ。主に店舗では商品関連の業務を推進。2021年からダブルジョブでEC課の仕事も兼務しながら、グロービスビジネススクールにも通い、3つの講座を受講。